Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アニメーション

Entry 2020/11/13
Update

『ミッシングリンク』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。スタジオライカが贈るアニメ映画の遊び心【英国紳士と秘密の相棒】

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は2020年11月13日公開。

ストップモーションアニメを作り続けている職人集団スタジオライカ。

2020年11月13日より日本公開の『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』では、ヴィクトリア朝時代のロンドンを舞台に、身勝手な英国紳士と、未確認生物との友情を描きます。

主人公の英国紳士・ライオネル卿をヒュー・ジャックマン、相棒となるMr.リンクを「ハング・オーバー」シリーズのザック・ガリフィアナキスと、実力派俳優たちが個性豊かなキャラクターに命を吹き込みました。
 
監督は、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)で脚本を務めたクリス・バトラーが担当しています。

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』の作品情報


(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
Missing Link

【監督】
クリス・バトラー

【声のキャスト】
ヒュー・ジャックマン、ザック・ガリフィアナキス、ゾーイ・サルダナ、スティーヴン・フライ、ティモシー・オリファント、エマ・トンプソン、アムリタ・アチャリア、

【作品概要】
『コララインとボタンの魔女』(2009)や『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)などで知られるスタジオライカが手がけたストップモーションアニメ。

ライオネル卿の声をヒュー・ジャックマンが担当したほか、ザック・ガリフィアナキス、ゾーイ・サルダナ、エマ・トンプソンらが声優を務めました。

監督は、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012)では脚本と監督、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)では脚本を手がけたクリス・バトラー。

第77回ゴールデングローブ賞で最優秀長編アニメーション映画賞を受賞。第92回アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされました。

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』のあらすじとネタバレ

(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

英国、ヴィクトリア朝時代。探検家のライオネル卿の夢は、伝説の生き物の存在を証明して、「貴族クラブ」の入会資格を得ること。

ダンスビー卿が首領を務めている「貴族クラブ」は、神がヒトを造ったと信じている保守的な男性たちの集まりで、伝説の生き物の存在をはなから否定しています。

ネッシーを写真に収めることに失敗し、助手も逃げ出してしまったライオネル卿の元に、一通の手紙が届きます。

「ビッグフットがどこにいるか教えましょう」。

ビッグフットとは巨大な体を持った毛むくじゃらの生き物で、類人猿から人間へと進化する過程「ミッシング・リンク(失われた環)」をつなぐ、伝説の存在。

ビッグフットを発見すれば、ダンスビー卿にも認めてもらえるはずです。

手紙に書かれていた、アメリカ、ワシントン州の森の奥地へとやって来たライオネル卿は、ビッグフットに遭遇。

人間の本や新聞を読んで言葉を覚えたというそのビッグフットは、英語を巧みに操り、ライオネル卿を驚かせます。

手紙を書いたのも、ビッグフット自身でした。一人ぼっちで森に暮らしていた彼は、新聞記事でライオネル卿のことを知り、ビッグフットの仲間、イエティ(雪男)がいるヒマラヤへ連れて行って欲しいと頼みます。

彼の願いを叶えれば、「ミッシング・リンク」を証明できると目論んだライオネル卿は、ビッグフットを“Mr.リンク”と名付け、ヒマラヤまで連れていくことを約束しました。

村へ向かったライオネル卿は、Mr.リンクに布を巻き付け、共に酒場に入って宿を取ろうとします。しかし、そこで待っていたのは、ダンスビー卿に雇われた、珍獣ハンターのステンクたちでした。

格闘の末、なんとかピンチを逃れたふたり。ライオネル卿は、ステンクの手下が着ていたスーツをMr.リンクに着せ、列車に乗り込みます。

次に向かったのは、亡くなってしまった探検家仲間の屋敷。そこには未亡人で、ライオネル卿のかつての恋人でもあったアデリーナが住んでいます。

ライオネル卿の目的は、冒険の手がかりになる地図。ですが、相変わらず身勝手な彼にアデリーナは激怒し、追い返してしまいす。

(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

ライオネル卿とMr.リンクは夜中に屋敷に忍び込み、地図を盗み出そうとします。大きな音でアデリーナに気付かれてしまったものの、無事に地図を奪い、汽車に乗るため駅へ向かいました。

しかし、追ってきたアデリーナと、つけ狙うステンクの乱入で激しい銃撃戦に。

ステンクの裏をかいて逃げ出したライオネル卿、Mr.リンク、そしてアデリーナ。アデリーナも、亡き夫が探し求めていたヒマラヤにある伝説の谷“シャングリラ”を確かめたいと、旅に同行します。

彼らは、海路で世界を横断するため貨物船へ乗りこみました。

その夜、アデリーナは、ライオネル卿のMr.リンクへの態度の悪さを責めます。ライオネル卿は、自分の野心のためにMr.リンクを利用しているだけで、彼の孤独に寄り添ってはいなかったからです。

自分だけの名前が欲しいと呟くMr.リンクに「自分の心に触れた相手の名前をつけたらどうか」と提案するライオネル卿。

Mr.リンクは、以前森にやって来た採掘家のことを話します。自分の姿を見ても驚かず、微笑んでくれた、大切な存在です。

その採掘家は女性で、名前は「スーザン」でした。ライオネル卿は男性と女性の名前の違いをどう伝えたらいいかわからず、いい名前だと伝えます。

この時から、Mr.リンクの名前はスーザンになりました。

そこへ、船内に隠れていたステンクが現れ、アデリーナを人質に、銃を向けてきます。外は嵐で船が揺れる中、ライオネル卿たちは救命ボートに乗り込んで難を逃れました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』ネタバレ・結末の記載がございます。『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

スイスやエジプトを通って、ついにインドへたどり着いた3人は、歩いてヒマラヤの秘境を目指します。

山の中の村に、“シャングリラ”の場所を知っている老婆がおり、彼女の孫娘の案内で、“シャングリラ”の入り口まで到着。

その頃、業を煮やしたダンスビー卿はステンクを引き連れて、ライオネル卿の行き先を聞き出すために老婆を脅していました。

何も知らないライオネル卿たちは“シャングリラ”に足を踏み入れますが、そこを守るイエティたちに捕まってしまいます。

同じ種族に出会えたのを喜ぶスーザンとは反対に、イエティの長老は渋い顔で、スーザンは仲間では無いと突っぱねました。

そして、“シャングリラ”の存在は知られてはならないと、3人を深い竪穴に投げ込みます。

アデリーナは、ライオネル卿とスーザンは似ていると言いました。自分の居場所じゃないものを必死で居場所にしようとしている、と。

ライオネル卿は、スーザンを心から励まし、スーザンも前向きな気持ちを取り戻します。スーザンの怪力でアデリーナを穴から投げ出し、3人は穴から脱出成功。

“シャングリラ”と人間界の間にある、氷の架け橋を渡ろうとしたところに、ダンスビー卿たちが立ちはだかります。

ダンスビー卿は、人間では無いスーザンと、女性であるアデリーナとともに旅しているライオネル卿には「貴族クラブ」の入会資格はないと言い放ちますが、ライオネル卿は「貴族クラブ」への執着は無くなっていました。

ダンスビー卿は氷の架け橋にヒビを入れ、橋を壊して3人を殺そうと企てますが、自ら転落してしまいます。

崩れかけた橋に何とかぶら下がった3人でしたが、ステンクが突き落とそうしてきました。滑ったステンクもぶら下がり、重みで皆落ちそうになったところに、つららがステンクにぶつかり、ステンクは落下。

無事に橋の上へ這い上がった3人。今後のことを悩むスーザンに、ライオネル卿は、相棒にならないかと持ちかけ、スーザンは笑顔で応えました。

アデリーナは、これからは自分のために生きていくと、ひとりで冒険に出ていきます。

時は流れ、イギリスのライオネル卿の自宅。ライオネル卿が人魚の剥製を持って帰ってきます。そして、いますぐアトランティスへ行こうと、相棒のスーザンに声をかけました。

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』の感想と評価


(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

本作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は、スタジオライカの前作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』と打って変わって、コメディ色が強い、バディ物のエンターテインメントになりました。

シャーロックホームズのことを強く意識されている、ライオネル卿の自分勝手で偏屈なキャラクターと、森の中で暮らしながらも、ライオネル卿より礼儀正しく穏やかなMr.リンク(スーザン)ふたりの、軽妙なやりとりが笑いを誘います。

キャラクター・スケッチの段階からヒュー・ジャックマンをイメージして作られたというライオネル卿。

ただの嫌なやつではなく、認めてもらいたいという真っ直ぐな欲求に満ちたキャラクター像を、ヒュー・ジャックマンが愛嬌たっぷりに演じます。

Mr.リンクを演じたザック・ガリフィアナキスは、安定のウザ可愛さを発揮。「ハング・オーバー」を観ているのかと勘違いしそうになるほど、小さなボケを積み重ね、画面が切り替わっても喋り倒しています。

そしてなにより、ゾーイ・サルダナのハスキーでキレのある口調が、アデリーナの輪郭をはっきり描き、出色のキャラクターとなりました。

縛りつけられていたものから解放され、自分の足で立とうと前を向くしなやかな芯の強さが、他にはないヒロイン像を生み出します。

ライオネル卿との結末も単純なラブストーリーにはせず、自分を取り戻すという点を重視していたのも、本作を大人な後味に仕上げました。

また、ストップモーションとCGの融合も見事で、果てなく広がる世界が展開。象が歩くショットは、映画内では20秒ほどですが、セットを分解、組み立てをしながら様々な角度から撮ったため、撮影に3ヶ月もかかったそうです。

スタジオライカならではの細部へのこだわりと、遊び心に満ち溢れていました。

まとめ


(C)2019 SHANGRILA FILMS LLC. All Rights Reserved

本作のテーマとなっているのは、誤った価値観からの解放

身勝手だったライオネル卿は他の誰かのために動けるようになり、Mr.リンクは名前と本当の居場所を手に入れ、アデリーナは亡き夫の目的を果たすことで自分の道を歩めるようになりました。

反対に、悪役に配されているのは「閉鎖的」で「保守的」な人物たち。狭いコミュニティの中でしか生きられない彼らには、明るい未来はありませんでした。

とても魅力的なキャラクターが揃った本作。アトランティス探しへ向かった彼らの冒険も、ぜひ続編として作って欲しいものです。

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は、2020年11月13日(金)よりロードショー







関連記事

アニメーション

【ネタバレ】HUMAN LOST人間失格|感想と内容解説。人間らしさについて進歩した社会から描く

太宰治を原作に大胆解釈された新しい『人間失格』がSFダークヒーロー作品に生まれ変わった、映画『HUMAN LOST 人間失格』。 豪華スタッフと声優陣が贈る、太宰治『人間失格』とアニメーションの融合。 …

アニメーション

映画『ラーヤと龍の王国』ネタバレあらすじ感想と結末の内容解説。ディズニーアニメのニューヒロインが贈る‟人を信じること”の大切さ

信じる心が道を切り開く。 その先にある平和な世界を信じて一緒に進もう。 ディズニーの新たなヒロインが誕生しました。 ひとりぼっちの救世主・ラーヤ。彼女はバラバラになった世界を救うため、姿を消した最後の …

アニメーション

【ネタバレ】屋根裏のラジャー|感想評価と内容考察。想像が生んだ少年が体験する想像を絶するファンタジー

現実とイマジネーションが同居したファンタジーアドベンチャー 『メアリと魔女の花』(2017)のスタジオポノックが贈るアニメーション映画『屋根裏のラジャー』。 A・F・ハロルド著『ぼくが消えないうちに( …

アニメーション

映画『サマーウォーズ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。細田守代表作は困難に立ち向かう意義を“現在”もなお問いかける

細田守監督の代表作映画『サマーウォーズ』 『時をかける少女』などで知られる細田守監督によって、2009年に公開されたアニメーション映画『サマーウォーズ』。 人工知能や仮想空間との関わり方について問うた …

アニメーション

【ネタバレ】ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー|映画あらすじ感想と結末評価。アニメーションで描く“配管工の兄弟”がスーパースターになるまで!

世界的な人気を誇るゲームキャラクター「スーパーマリオ」のアニメーション映画 任天堂のアクションゲーム「スーパーマリオ」シリーズでお馴染みの、マリオの冒険を描いた、アニメーション映画『ザ・スーパーマリオ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学