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『アキラとあきら』ネタバレあらすじ結末と感想評価の解説。“最後に土下座するのは誰だ!”池井戸潤原作を竹内涼真×横浜流星の共演で描く

  • Writer :
  • もりのちこ

あなたは宿命を信じますか?
正反対の宿命を背負った「アキラとあきら」の物語。

「半沢直樹」シリーズでお馴染みの人気作家・池井戸潤の同名小説を、三木孝浩監督が竹内涼真と横浜流星の共演で映画化。

父親の経営する町工場が倒産し辛い幼少期を過ごした山崎瑛(アキラ)と、大手企業グループの御曹司でありながら一族の権力争いに巻き込まれてきた階堂彬(あきら)。

正反対の境遇で育った2人の「あきら」は、運命に導かれるように、日本有数のメガバンクに同期入社を果たします。

互いの信念は違えどトップバイヤーを目指し切磋琢磨する2人の前に、まさに宿命ともいうべき大きな壁が立ちはだかります。

人生は色々あるけれど、乗り越えられない宿命はない。最後に土下座するのは誰だ!池井戸ワールド炸裂『アキラとあきら』を紹介します。

映画『アキラとあきら』の作品情報


(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
池井戸潤

【監督】
三木孝浩

【キャスト】
竹内涼真、横浜流星、高橋海人、上白石萌歌、児嶋一哉、満島真之介、塚地武雅、宇野祥平、奥田瑛二、石丸幹二、ユースケ・サンタマリア、江口洋介、戸田菜穂、野間口徹、杉本哲太、酒井美紀、山寺宏一、津田寛治、徳重聡、矢島健一、馬渕英里何、山内圭哉、山村紅葉、竹原慎二、アキラ100%

【作品概要】
WOWOWにて連ドラ化となった池井戸潤の小説『アキラとあきら』が、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)『TANG タング』(2022)の三木孝浩監督により映画化されました。

主演の2人の「あきら」を演じるのは、人気俳優の竹内涼真と横浜流星。竹内涼真は、『下町ロケット』『陸王』に続く池井戸作品3度目の出演となりました。

共演には、2人に憧れる若き銀行員・水島カンナに上白石萌歌、鉄壁の上司・不動公二に江口洋介、アキラに宿命を教えた町工場の元従業員・保原茂久に塚地武雅。

骨肉の争いを繰り広げる階堂一族に、ユースケ・サンタマリアと児嶋一哉が兄弟役で登場。この役にこの人が!?という豪華キャストの配役にも注目です。

主題歌は、back numberの「ベルベットの詩」。情熱と信念を武器に宿命に挑む男たちをイメージした書き下ろし曲となっています。

映画『アキラとあきら』のあらすじとネタバレ


(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

幼い山崎瑛(アキラ)は、父親の経営する町工場に遊びにいっていました。父親が必死な形相で土下座をしています。男達は冷たい態度で立ち去りました。その男達はバンカーでした。

しばらくして、工場は倒産。工場の機材が運び出されます。山崎一家は追い出され、瑛の手元に残ったのは、父親が開発した部品の一部だけでした。

泣きじゃくる瑛に従業員の保原が声をかけます。キリスト教徒でもある保原は「人生には色々あるが、乗り越えられない宿命はないのだ」と言い聞かせるのでした。

それでも悔しさに、機材を積んだトラックを追いかける瑛は、道路に飛び出してしまいます。

後方からきていた高級車が急ブレーキで止まりました。乗っていた少年は、大企業「東海郵船」の御曹司・階堂彬(あきら)でした。

瑛の握りしめていた部品が道路に転がり、彬が拾いあげます。「大事なものなの?」「うん」。彬は、ハンカチで丁寧に拭い、瑛の手に戻してあげました。

アキラとあきら。同じ名前を持ちながら、正反対の境遇で育った2人が、初めてあった瞬間でした。

彬の父親が経営する東海グループは、父親であり長男の階堂一磨が「東海郵船」、次男の晋が「東海商会」、三男の崇が「東海観光」とそれぞれ社長を務めています。

3兄弟は仲が悪く、嫉妬や足の引っ張り合いを繰り返しています。彬はそんな一族の争いに幼いながら心を痛めていました。

12年後。産業中央銀行では新人研修が行われていました。この研修のメインは融資戦略研修。銀行側と企業側にわかれ、融資をかけ熱戦が繰り広げられます。

ファイナルに残ったのは、山崎瑛が率いる銀行チームと、階堂彬が率いる企業チームです。アキラとあきら。宿命とも呼べる同期入社を果たした2人でしたが、幼い頃の記憶は残っていませんでした。

大胆に仕掛ける企業チームの穴を見逃さず鉄壁を崩さない銀行チーム。この戦いはのちにバンカーの間で語り継がれるほど見事な戦いとなりました。

伝説のトップバンカーと呼ばれる融資部長の羽根田もこの戦いを見守っていました。「銀行は、社会の縮図です。相手を見て生きた金を貸す。それがバンカーです。金は人のために、バンカーが貸す金は輝いていないといけません」。

上野支店に配属となった瑛は、町工場の井口ファクトリーの融資を担当していました。人を信じ厳しい状況でも親身になって相談にのる良きバンカーです。

ある日、井口ファクトリーの大手取引先が倒産。工場の運営も回らず不渡りをだしてしまいます。

融資の確実性を重視する冷徹な上司・不動は、ただちに融資を取りやめ他行の預金を押え融資金の回収に乗り出します。

瑛は、その預金が難病の娘さんの手術費であることを知っていました。どうにか融資を続けるよう頼み込む瑛でしたが、相手にされません。

幼い頃の記憶が蘇ります。辛い思いをさせたくない。瑛は、井口社長に銀行から急いで預金をすべておろすように助言します。この件で、瑛は地方支店へ左遷となりました。

4年後。彬は、本社勤務で順調に出世コースを歩んでいましたが、父親の一磨が突然倒れ亡くなってしまいます。遺産相続でもめた一族は、さらに憎しみ合うように。

東海郵船の後を継いだのは、弟の龍馬です。一族の争いから目を背け、自ら跡継ぎの座を退き銀行員となった兄・彬に、龍馬は不満を抱いていました。

兄には負けない。しかし、経験不足でプライドが高い龍馬は、たちまち東海郵船を倒産の危機に追い込みます。伯父である晋と崇に、はめられたのです。

共に手を組みリゾートホテル開発に乗り出していた晋と崇は経営難に陥り、母体である東海郵船の資金に目をつけていました。龍馬を挑発し、連帯保証金を巻き上げます。

その頃、瑛は左遷先で企業と銀行の信頼関係の薄さに苦しんでいました。期待されないバンカーは、何人も助けることができませんでした。

そんな瑛のもとに、井口社長から手紙が届きます。おかげさまで娘の手術も成功し、幸せに暮らしているという報告でした。

驚くことに、娘の手術費を集めてくれた教会の牧師が、瑛の幼い頃を良く知る人物・保原だったと教えてくれました。

井口から瑛のことを聞いた保原は「アキラちゃんらしい」と涙を流したと言います。瑛は保原の言葉を思い出します。「乗り越えられない宿命はない」。

奮起した瑛は、経営難に陥る企業を救うことに成功。そこで働く人たちを大切に、親身に相談に乗り道を開くトップバンカーに成長します。実績を残した瑛は、本社へと返り咲きます。

以下、『アキラとあきら』ネタバレ・結末の記載がございます。『アキラとあきら』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

東海郵船のメインバンクとして融資を担当していた産業中央銀行の水島は、多額の資金運用に気付き問いただしますが、龍馬にはぐらかされてしまいます。

不審に思った水島は、彬の同期であり、尊敬するバンカー・瑛へ相談することにしました。

彬を呼び出す瑛。「弟の力になってやれ」という瑛に、「誰もそんなこと望んでいない」と突き放します。東海グループの経営がもうすでに取り返しのつかない所まできているのを2人のあきらは分かっていました。

晋と崇の会社の融資も降りなくなり、追い詰められた龍馬は倒れてしまいます。弟にすべてを押しつけ現実から逃げていた彬は、過去を悔やみ弟を家族を守る決意をします。

彬は銀行を辞め、東海郵船の社長となりました。晋と崇は悪びれもせず、彬と龍馬に「どうにかしろ」と冷たく当たります。

リゾートホテル「イーストオーシャン」の件で産業中央銀行の水島を訪ねる彬。再興のため140憶の融資の申し込みです。

そこにやってきたのは、新しいプロジェクトに引き抜かれ出世コースへ乗ったはずの瑛でした。「後悔するぞ」。彬の言葉に「宿命があるなら、俺はこの時のために銀行員になったんだと思う」と返す瑛。男たちの熱い戦いが始まります。

まずは、イーストオーシャンの売却に乗り出すも負債を抱えてまで買いたいという会社はありません。東海商会とのセット販売も試しますが、連帯保証が邪魔をします。

確実性がすべての不動本部長は、断固としてイーストオーシャンへの融資を許しませんでした。行き詰まるアキラとあきら。もはやこれまでか。

東海グループを救うには根本的な問題に踏み込まなければなりません。瑛が描いた稟議書は彬にとっては絵空事に思えました。しかし、自分も腹をくくる覚悟です。

ばらばらになっていた東海グループをひとつにまとめ、産業中央銀行の融資金で他行の借り入れを返済。東海商会を売却し、産業中央銀行へ返済。残金は東海郵船の業績ならば十分に返金が見込める範囲内です。

そのためには、東海商会、東海観光の全株を東海郵船に譲渡し、傘下に入ることになります。さらに、拠点をしぼり経費削減を求めます。あの伯父たちを説得できるとは思えませんでした。

彬の提案に「お前の親父と一緒で、俺らを見下してるんだろ」と怒り出す伯父たち。それでも彬は、階堂一族のために諦めませんでした。

「父は、自分は兄らしいことを何一つしてやれなかった。弟たちに申し訳ないと話していました。初めから決められた道は、舵を取り上げられたようなものだったと」。

血が繋がっているにも関わらず向き合うことから逃げて来た階堂一族。「これは和解策です。それぞれの人生の舵を取り戻すための」。土下座をする彬。「どうか同じ船に乗って欲しい」。

彬の態度に動揺する崇。晋は以前、兄の一磨と話した舵の話を思い出していました。元々はひとつだった東海グループ。今再び、ひとつになろうとしています。

ここからは瑛の戦いです。稟議書に目も通してくれない不動本部長に辞職をかけ挑みます。イーストオーシャンへの融資ではなく、東海郵船への融資へと変更し、返済の目途も見込んだ稟議書。

おまけに東海商会の売却先、東海グループの一体化とすでに手筈は整っています。「なにより東海郵船のトップには確実性があります」。

不動は瑛に尋ねます。「なぜ、救済にこだわる」。瑛は過去の体験を語ります。「救済こそが銀行員になった理由だからです。救うことで自分が救われているんです」。

退職願を書く瑛のもとに、不動がやってきます。連れて行かれたのは、融資部長の羽根田のところでした。

10年前の新人研修で伝説を残した「アキラとあきら」が、今こうして1つの会社を守ろうとしている。羽根田は「この案件は私にまかせろ」と稟議を通してくれました。

産業中央銀行の玄関には退職を止めようと彬が駆けつけていました。「やった!稟議が通ったんだ!」。硬く手を握り合うアキラとあきら。

2人は、瑛の故郷にいました。海を眺める瑛の手から、お守りにしていた父親が作った部品が零れ落ちます。

それを拾った彬は、あの頃のようにハンカチで丁寧に拭い、瑛の手に戻します。あの幼き頃が蘇ります。

この世界に宿命というものがあるのなら、「アキラとあきら」は会うべくして出会った宿命の相手だったのかもしれません。

映画『アキラとあきら』の感想と評価


(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

金融界と経済界のトップクラスを舞台に、企業の存続をかけ奮闘する男たちの熱い戦いが描かる、池井戸潤の小説『アキラとあきら』の映画化。

池井戸作品と言えば「半沢直樹」シリーズがドラマ化で話題となりましたが、『アキラとあきら』も銀行員にスポットをあてた作品となっています。

元銀行員という経歴をもつ池井戸潤ならではの、業界内部のリアルさに惹き込まれます。銀行は会社にではなく人に金を貸す。生きたお金は輝いていなければならない。

人情だけでは解決できないお金の問題。問題点を見つけ打開策を練り、さらに確実性をみいだしていく。融資を担当するバンカーのプロフェッショナルな仕事ぶりに爽快感を味わえます。

そして、気になるのは映画公式サイトでも煽っている「土下座をするのは誰だ!?」ということなのですが、土下座シーンは2度登場します。

山崎瑛(アキラ)の幼少期、父の町工場が倒産の危機に陥った時、融資を断る銀行員に父親が頭を下げます。冷たい態度をとる銀行員に、まだ幼なかった瑛は怒りを覚えます。

そしてもうひとつの土下座シーンは、なんと大企業の御曹司として銀行でもトップバンカーだった階堂彬(あきら)の土下座でした。

会社の運営や遺産相続で憎しみ合う階堂一族に生まれ、しがらみから逃げるように銀行員になった彬。

父が残した会社が倒産の危機となり、彬はバラバラになった一族をひとつにまとめようと奮闘します。屈辱の土下座ではなく、再起の想いを込めた土下座でした。

意外な人物の意外な行動に、なるほどこんな土下座もあるのかと感慨深いシーンとなっています。

「情けで金を貸すな。痛い目をみるぞ」と忠告をしていた冷淡な彬が、「救済こそが自分が銀行員になった理由だ」と人情を大切にする瑛に出会い、心を動かされます。

辛い境遇で育った瑛に対し、御曹司である彬の方が「お前、育ちがいいだろ」と言うやり取りも滑稽なようでいて確信にふれた台詞となっています。

人格を形成するのは、決して育った境遇だけではないのだと教えてくれます。ラストシーンでは、瑛の故郷に彬が訪ねていくシーンがあります。

視界いっぱいに広がる海を、気持ちよい風が吹き抜ける丘から見下ろす2人のあきら。宿命をひとつ乗り越えた2人の顔は共に輝いてみえました。

「人生は色々あるけれど、乗り越えられない宿命はない」。のちに牧師となる保原の言葉です。運命と宿命。似ているようで異なるものです。

生まれてから自分で切り開けるのが「運命」。生まれる前から決まっていて自分ではどうしようもできないのが「宿命」。2人の「アキラとあきら」は、互いの人生に必要な存在であったように思えます。

出会うべくして出会った「アキラとあきら」の関係性のように、それぞれを演じた竹内涼真と横浜流星の相性も抜群でした。

まとめ


(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

金融業界を舞台に男たちの熱い戦いを描いた、池井戸ワールド炸裂の映画『アキラとあきら』を紹介しました。

同じ名前を持ちながら、正反対の境遇で育ったアキラとあきらが出会う時、人生の大きな壁が2人の前にたちはだかる。

果たして宿命というものは存在するのだろうか。「乗り越えられない宿命はない」。その言葉を信じ、アキラとあきらの人生をかけた戦いが始まります。

宿命の壁を乗り越えた時、「すべては偶然じゃなかった」と気付くのかもしれません。

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