ロマンスを求める世界的推理作家が、イラクで起きた事件の謎を解くミステリードラマ
サム・イエーツが監督を務めた、2019年製作のイギリスのミステリードラマ映画、『アガサとイシュタルの呪い』。
離婚で傷心中のアガサ・クリスティがイラクへ旅立ち、知り合いのウーリー夫妻が発掘した遺跡を訪れた際、発掘品の盗難や殺人事件に巻き込まれてしまうとは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
前作『アガサと殺人の真相』の続編であり、世界的推理作家アガサ・クリスティの史実をもとに描く、ミステリードラマシリーズ第2弾、『アガサとイシュタルの呪い』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『アガサとイシュタルの呪い』の作品情報
【公開】
2019年(イギリス映画)
【脚本】
トム・ダルトン
【監督】
サム・イエーツ
【キャスト】
リンゼイ・マーシャル、ジョナ・ハウアー=キング、ジャック・ディーム、ジェームズ・スタッドン、キャサリン・キングスレー、ロリー・フレック・バーンズ、スタンリー・タウンゼント、ブロナー・ワウ、クリスタル・クラーク
【作品概要】
イギリスの映画監督、サム・イエーツが監督を務めた、イギリスのミステリードラマ作品です。
前作『アガサと殺人の真相』に続き、世界的推理作家アガサ・クリスティの史実をもとに描くドラマシリーズ第2弾です。
TVドラマ『トラウマ:心的外傷』や映画『アウトサイダーズ』(2016)などに出演する女優、リンゼイ・マーシャルが主演を務めています。
映画『アガサとイシュタルの呪い』のあらすじとネタバレ
1928年、イラク・バスラ。英国人考古学者マックス・マローワンと、考古学者パトリック・マルホランドは、未発掘の墓を調査していました。
しかしある日、パトリックは調査中、何者かに殺されてしまいます。
パトリックは息を引き取る直前、マックスに「イシュタルの呪い」と書かれた石板を渡しました。
マックスは、友人でもあるパトリックを殺した犯人探しを行いました。
一方その頃、1928年11月。世界的推理作家アガサ・クリスティは、夫アーチボルトの不倫により、離婚が成立。
傷心中のアガサは、恋愛小説を書いて新境地を開きたいと思い、夕食会で会った考古学者レナード・ウーリーとその妻キャサリンに、ロマンス溢れたところはないか相談します。
するとウーリー夫妻は、現在遺跡発掘のために駐留している、イラク・ウルに行ってみたらどうだと、アガサに勧めました。
アガサは未完成の恋愛小説を、一度出版社に持っていって見せましたが、出版社側からは『ポワロ』の続編を求められてしまうのです。
そこでアガサは、未完成の恋愛小説を完成させるためのロマンスを求めて、思い切って長距離夜行列車「シンプロン=オリエント急行」に乗ってイラクへ旅立つことにしました。
アガサはイラク・ウルの遺跡発掘現場に到着後、早速ウーリー夫妻に会おうとしましたが、2人の姿はありません。
その場にいたのは、頭から血を流して倒れているマックスだけです。アガサはマックスを助け、彼を車に乗せて病院へ連れて行きました。
翌日。幸い骨折程度の怪我で済んだマックスに、アガサは怪我をしていた理由を尋ねます。
マックス曰く、パトリック殺しの犯人を探している途中、誰かに命を狙われ、頭を撃たれてしまったのです。
アガサは、警察に任せるべきだと忠告しますが、まともに捜査しようとしない警察よりも、自分で犯人を探したいとマックスは言います。
それにマックスは、読書の習慣がないのか、アガサのことを知りませんでした。
アガサは、危なっかしい若者のマックスが心配なのと、自分を知らない彼に興味を抱いたのでしょう。
彼女はこのまま別れて、ウーリー夫妻の屋敷へ行こうとしましたが、彼をその屋敷へ送ることにしました。
ウーリー夫妻の屋敷は、遺跡発掘に携わる関係者や、マックスたち考古学者が寝泊まりする宿舎でもあったからです。
ウーリー夫妻の屋敷へ到着したアガサたち。しかしそこでは、キャサリンが飼っていた猿が首を吊られて殺されており、警察官が駆けつける騒ぎになっていました。
キャサリンから、溺愛していた猿を殺した犯人探しを依頼されたアガサ。翌日、彼女はまず、屋敷にいる住人と顔合わせすることにしました。
1人目は、ウルの遺跡所有者であり、遺跡で発掘したものを大英博物館に売って、富を得ている27歳の領主マーマデューク。
2、3人目はウーリー夫妻、4人目は29歳の警備員エゼキエル。5人目はマックスと同じ24歳で、医学の博士号を持つ黒人女性パール。
6人目は、英国大使コンスタンス・バーナードの妻、キャサリン。彼女は発掘品の記録と書類の用意、輸出の準備などを担当しています。
マーマデュークとエゼキエルは、キャサリンが飼っていた猿をあまりよく思っておらず、「殺されて清々した」という様子でした。
パールは、本当はキャサリンのお供として、発掘品の記録を担当するはずが、現地に着いたら雑用係を任されて不満を募らせていました。
屋敷にいる全員と顔合わせを済ませたアガサは、コナン・ドイルに助言を求めるべく、電報をうちました。
その結果、アガサはコナン・ドイルの助言に従い、マックスと一緒に猿の遺体を解剖。
猿の肝臓を取り出し、1対5の割合で希釈した硫酸と、重クロム酸カリウムを混ぜた液体の中に入れます。
解剖の結果、猿はストリキニーネという、殺虫剤として手に入る毒による、中毒死だと判明しました。
アガサたちは、屋敷内にいる犯人が誰かを殺すため、ストリキニーネを用意していたけど猿が誤飲してしまい、それを偽装するために首を吊ったのだと推測。
おそらく、その犯人はパトリックの殺害にも関与している同一犯の可能性が高い。そう考えたアガサは、裏付けを取るため、大英大使館を訪ねます。
アガサが話を聞きに行った相手は、ウルに派遣された英国大使で、パトリックの幼馴染でもあるコンスタンスです。
アガサはコンスタンスに、「猿もパトリックも、同じ犯人に毒殺された可能性が高い。パトリックの死因解明のために協力して欲しい」と頼みました。
コンスタンスは協力する代わりに、若い男性と不倫しているキャサリンを説得してくれないかと、アガサに頼みます。
アガサは一度、猿を屋敷の庭へ埋葬後、ルーシーに説得を試みましたが、彼女は聞く耳を持ってくれません。
次の日。アガサはマックスに案内され、ウルの遺跡の中にある保管室へ行きました。
ここ数日、行動を共にすることが多く、互いに相手のことを気になっているアガサたち。
密室で2人っきりになったことで、アガサたちは互いに惹かれあっていることを打ち明けるように、熱いキスを交わしました。
しかしその最中、施錠したはずの保管室に、突如爆発物が投げ込まれたのです。幸い、爆発はせず、助かったアガサたち。
アガサたちは、自分たちを狙った爆破未遂事件があったことを知らせるべく、昼食中だったウーリー夫妻たちを呼びました。
映画『アガサとイシュタルの呪い』の感想と評価
冴えわたるアガサの推理力
前作『アガサと殺人の真相』では、6年前に列車内で起きた、従軍看護師殺害事件の謎を解き明かしたアガサ・クリスティ。
前作でも、推理作家としての推理力を活かし、アガサは迷宮入りした殺人事件及び、屋敷に滞在していた間に起きた事件の真犯人を逮捕することが出来ました。
前作の続編である本作では、アガサの推理力は物語の前半から冴えわたっています。
アガサはキャサリンが飼っていた猿が殺された事件から、遺跡発掘現場で相次いで起きる爆発事件と殺人事件まで、全ての謎を解き明かすのです。
本作で、アガサと一緒に犯人探しを行ったマックスも、アガサに次ぐ推理力を持っています。2人の連携プレイはまさに、名探偵シャーロック・ホームズと助手のワトソンです。
アガサたちが犯人に命を狙われながらも、懸命に捜査を行った結果、物語の後半で真犯人が明かされます。
アガサたちに協力していたコンスタンスが、全ての事件に関与し、遺跡発掘の裏で自分の利益のために暗躍していたとは、驚きです。
しかもコンスタンスは、そのまま逮捕されるかと思いきや、自ら毒を飲んで自殺します。思いもよらない結末に、アガサたち同様、観ている人も驚かされることでしょう。
アガサとマックスの恋
劇中では、主人公のアガサとマックスが互いに惹かれ合い、結ばれていく様子が描かれています。
物語の最初では、アガサとマックスはただの考古学者と、ロマンスを求めて来た推理作家というだけの関係でした。
2人は数日間、犯人探しのために行動を共にしていくうちに、いつしか相手のことが気になりはじめていきます。
アガサが、マックスと同い年のパールにヤキモチを妬くところ、マックスが、アガサに言い寄るマーマデュークにヤキモチを妬くところは、観ていて微笑ましいです。
そして物語の途中で、アガサたちがようやく結ばれたと思いきや、アガサを狙った犯人に爆殺されかけます。
そんなハラハラドキドキする展開が相次いで起こる中、結ばれたアガサたちが結婚し、46年間連れ添ったという事実は感動します。
まとめ
ロマンスを求めた世界的推理作家が、旅の目的地イラクで、己の欲に走った男の陰謀と殺人事件に巻き込まれていく、ミステリードラマ作品でした。
本作の見どころは、アガサとマックスの恋と、遺跡発掘現場で相次いで起きる殺人事件となっています。
事件の真相に近づくにあたって、レナンドとパールが犯した行いも明らかになりますが、彼女たちに処罰が下ったのかは描かれていません。
代わりに、物語の後半まで発掘品を盗んだルーシーと、盗難した発掘品を闇市場に売り、ルーシーを殺害しアガサたちを殺そうとしたマーマデューク。
幼馴染のパトリックを邪魔に思い殺害し、マーマデュークを殺したコンスタンスが、犯した罪による罰を受けます。
犯人が服毒自殺をするバットエンドでしたが、夫と離婚し傷心中のアガサが、マックスと恋に落ち結ばれ、結婚したことがとても嬉しいです。
ロマンスを求める世界的推理作家が、若き考古学者と恋に落ちながら、殺人及び盗難事件の謎を解いていくミステリードラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。