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映画『五億円のじんせい』は、2019年7月20日(土)よりユーロスペースほかにて公開!
善意で集まった五億円により、命を救われた過去を持つ高校生の、人生を見つめ直す旅を描いた映画『五億円のじんせい』。
脚本は映画『女の機嫌の直し方』やドラマ『これは経費で落ちません!』の蛭田直美、監督は、短編映画『ミチずレ』の文晟豪(ムン・ソンホ)が、現代社会におけるお金と人生の関係をテーマに描いた作品です。
CONTENTS
映画『五億円のじんせい』の作品情報
【公開】
2019年公開
【監督】
文晟豪
【脚本】
蛭田直美
【プロデューサー】
遠藤日登思
【キャスト】
望月歩、山田杏奈、森岡龍、松尾諭、芦那すみれ、吉岡睦雄、兵頭功海、小林ひかり、水澤紳吾、諏訪太朗、江本純子、坂口涼太郎、平田満、西田尚美
【作品概要】
「GYAO!」と「Amuse」の合同映画プロジェクト「NEW CINEMA PROJECT」で、343本の応募からグランプリに選ばれた、映画監督の文晟豪と脚本の蛭田直美による企画作品の映画化。
主役の高月望来を演じるのは、映画『ソロモンの偽証』、ドラマ『3年A組 今から皆さんは、人質です』などに出演している、若手注目の俳優、望月歩。
また、望来に救いの手を差し伸べる、ホームレス役の平田満や、望来の母親役の西田尚美など、実力派俳優が多数出演。
映画『五億円のじんせい』あらすじ
17歳の高校生、高月望来(みらい)。
彼は幼い頃に、心臓病を患っていましたが、善意の募金で五億円が集まり、命を救われました。
健康的に成長した望来ですが、毎年成長の記録を放送するマスコミや、募金をしてくれた人達の目を気にして「五億円にふさわしい人物」を演じるようになります。
「医者になりたい」など、思ってもいない事を口にして「みんなが大好きな望来ちゃん」を演じ続けてきた望来ですが、周囲の期待に応え続ける自信がなくなり、疲れ切っていました。
ある日、望来は自身のSNSで自殺する事を宣言しますが、見知らぬアカウント名「キヨ丸」からの「死ぬなら五億円返してから死ね」というメッセージを受け取り、自殺をする為に五億円を稼ぐ事を決意します。
高校生の望来ができる、時給1000円のアルバイトで計算した際、1日8時間、365日働いても五億円まで171年かかる事が発覚。
それどころか、漫画喫茶やビジネスホテルは未成年は1人で宿泊できない為、望来はその日に寝泊まりする場所も見つかりません。
追い打ちをかけるような、土砂降りの雨の中、途方に暮れる望来を救ったのは、1人のホームレスでした。
ホームレスの紹介で、仕事を斡旋されるようになった望来は、これまで想像もしなかった世界を突き進む事になります。
自殺の為に、五億円を貯める事を決意した望来の、行き着く先は…?
善意により生かされた命
善意による五億円の募金により、命を生かされた主人公の望来が、五億円の重圧を受け続けた事で始まる本作の物語。
「美しい物語」を求める、現代の日本を皮肉った、凄い視点の作品だと思います。
特に作品前半、望来の募金活動に参加した人達が、年に1回集まり、過去の映像を見ながら思い出に浸った後、ほぼ強制的に望来がお礼を言わされる場面は、善意の暴力とも言えます。
そんな環境から逃げ出した望来を通して、本作で語られる物語とは?
人生に必要な金額「約二億百万円」
「人が生まれてから死ぬまでにかかる日本人の平均金額、約二億百万円。死ぬまでに稼ぐ金額、約二億三百万円。つまり人は、自分が生きるために使う金額を一生かけて稼ぎ、そして死んでいく」というナレーションで始まる本作。
2017年に「独立行政法人労働政策研究・研修機構」が発表した、ユースフル労働統計による2015年の大卒・大学院卒の生涯賃金は、男性で2億7,000万円、女性で2億1,670万円という数字が出ています。
そして生涯支出は、累積約1億9,000万円と言われてます。
これに、教育資金や住宅資金、自動車を所有するケース、結婚式や新婚旅行などの費用、家電製品などの耐久消費財などを加えると生涯支出合計は、約3億2,700万円と言われています。
マイホームや自家用車を所有する、いわゆる「人並みの生活」を望むと、生涯支出が生涯賃金を上回るという、恐ろしい事になっています。
「生きる為に働いているのか?働く為に生きているのか?」1度は考えた事があるけど、目を逸らしてきた事実を、本作は冒頭から突きつけてきます。
「それでは、何を目的に生きていけば良いのか?」そんな疑問を感じている方へ、本作は主人公の望来を通して、1つの答えを示してくれます。
社会に一歩を踏み出した望来の問いかけ
人生を終わらせる為、五億円を稼ぐ事を考えた望来ですが、未成年の望来ができる仕事は限られており、望来は「添い寝ハウス」や「死体処理」などの、闇バイトでお金を稼ぐようになります。
望来が出会う人達は、これまで周囲にいた「清らかで尊い望来」を望む訳ではなく、むしろ望来の事など知らない為、厳しい態度で接してきます。
望来は、これまで会った事もないタイプの大人と出会い、お金を稼ぐ為に必死になります。
そして、苦労して稼いだお金を口座に入れて、どんどん残高が増えていきます。
仕事仲間の大人に認められるようになり、自分で稼いだお金が増えていく事に、何か「社会に認められた」嬉しさを感じる。
この感覚、あなたも経験ありませんか?
生涯の支出や収入の事を考えると、暗い気持ちになるかもしれませんが、初めて社会の信用と収入を得た時は、誰でも嬉しかったはずです。
何もかもが新鮮だった初心に、時には戻る事も必要ではないか?
社会への一歩を踏み出した望来の姿は、そんな事を問いかけているように感じます。
自分のキャラクターを否定する勇気
善意による五億円で助かった望来が、善意の重圧に耐えられず、自殺する事を目的にした旅に出る本作。
作中の望来のように、人前では全然違う人間を演じ続けて、世の中に息苦しさを感じている人もいるのではないでしょうか?
周囲の期待に合わせて、自分を偽り続ける「キャラ疲れ」という言葉もありますね。
もし、偽った今の自分や、いる場所に疑問を感じているなら、思い切って飛び出してみる事も大事です。
また、周囲の決めつけに「違うと思ったのなら、違うと言えば良い」のです。
これは、本作に登場する、ある人物のセリフなのですが、「お前が言うか!」という感じで、望来がこの言葉を浴びせられ、何も言えなくなる場面は、世の中の不条理さを強調しており必見です。
まとめ
五億円を返済して、自殺する事を目的にした望来は、さまざまな人との出会いと経験を重ね、人間として成長をしていきます。
大切なのは、収入や支出を計算し続ける事より、目の前の事に必死で取り組み、人との出会いを大切にする事。
そして、お金以外に人生の目的を持つ事。
それが、健全な人生だと感じます。
劇中の望来は、さまざまな形で、生きる理由を提案されていきます。
まるで、悩んでいる望来に、皆が手を差し伸べているようでもあります。
望来は、周囲の人間の助けに気付き、自殺を思いとどまる事ができるのでしょうか?
考えが変わるとしたら、そのキッカケは何なのでしょうか?
そこに、本作のテーマとも呼べる部分が込められています。
人生とお金という、現代人にとって切り離せないテーマを扱っていますが、望来を演じた望月歩が、力を抜いた自然な演技で作品を引っ張っており、コメディタッチで軽やかな印象の作品になっています。
本作は、人生に対して違う目線を与えてくれる、そんな作品かもしれません。
映画『五億円のじんせい』は、2019年7月20日(土)よりユーロスペースほかにて公開!