恋に生きるか仕事に生きるか。
ふたりの女王に学ぶ女性の生き方。
16世紀、英国に君臨していた2人の女王。スコットランド女王メアリーと、イングランド女王エリザベス。
ふたりの女王は同じ時代に生きながら、全く違う道を選んでいきます。お互いを意識しながらも、認め合うことが出来ない因縁の関係。
彼女たちを取り巻く男たちの陰謀と、歴史のゆがみの中で、ふたりの女王がたどり着いた終着点とは?
ふたりの女王が選んだ生き方に注目。歴史ドラマ『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』を紹介します。
映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』の作品情報
【日本公開】
2019年(イギリス)
【監督】
ジョージー・ルーク
【キャスト】
シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー、ジャック・ロウデン、ジョー・アルウィン、デビッド・テナント、ガイ・ピアース、ジェンマ・チャン、マーティン・コムストン、イスマエル・クルス・コルドバ、ブレンダン・コイル、イアン・ハート、エイドリアン・レスター、ジェームズ・マッカードル
【作品概要】
1998年公開映画『エリザベス』を手掛けたプロデューサー陣が集結。今作は、エリザベスと同じ時代に生きたメアリーに着目し製作しました。
メアリー役には『レディ・バード』のアーシャ・ローナン、エリザベス役を『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』のマーゴット・ロビーが演じています。
実力派ふたりの演技合戦が、これまでにないメアリーとエリザベスの常識を覆す、新たな物語を生み出します。
映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』のあらすじとネタバレ
1587年、イングランド。断頭台の上には、真っ赤なドレスを身にまとったメアリー・スチュアートの姿がありました。
1542年から1567年までスコットランドの女王として君臨したメアリー。イングランドでの幽閉生活は20年。今まさに最期を向かえようとしていました。
スコットランド王だった父の戦死で0歳で女王となったメアリーは、16歳でフランス王妃に、18歳で夫を病気で亡くし未亡人となり、スコットランドへ帰国します。
メアリーの帰りを待っていたのは、腹違いの兄・マリ伯と保守的な臣下たちでした。プロテスタントを受容していたスコットランドでは、幼少期からカトリックの教えを受けてきたメアリーのことを非難する者もいました。
そして、隣国に位置するイングランドでは、メアリーの従姉妹にあたる女王エリザベスⅠ世が国を統治していました。
メアリーはエリザベスに「親愛なるお姉妹様」と手紙を送ります。その内容は平和な関係を求めながらも王位継承権を主張する内容でした。
若く美しく自信にあふれたメアリーの存在は、スコットランド、イングランドの両国にとって脅威の存在となります。
宗教は個人の自由とするメアリーに激しく対立するプロテスタントの長老派教会創始者ジョン・ノックスは、女性が力を持つことを好まない臣下、マリ伯や国務大臣メイトランドとともに、メアリーの失脚を画策します。
一方、イングランドでもメアリーに王位継承を諦めさせるようと策が練られていました。それは、エリザベス女王の寵臣とメアリーを結婚させようとするものでした。
その相手に選ばれたのは、エリザベス女王の枢密顧問官であり、寵愛を受けていたレスター伯爵でした。
エリザベスは、自分が結婚することで権力争いが起こることを何より恐れていました。自分は結婚せず子供も産まないと非婚宣言をしていました。
レスター伯爵はエリザベスの心中を察しながらも側にいてくれる大事な恋人でした。
国の混乱を避けるため、エリザベスは泣く泣くレスター伯爵をメアリーの元へと送ります。
しかし、メアリーはそれをも知っていたかのように「今は結婚よりも王位継承が先よ。女同志で会って話がしたい」。と突き返します。
メアリーの態度に表面上は穏やかに対応するも、エリザベスは面会を拒否し続けます。
ある日メアリーは、エリザベスが自分との面会を拒絶する理由を突き止めます。エリザベスは天然痘を患っていたのです。死は免れたものの、髪の毛は抜け落ち、顔には醜い痕が残ってしまいました。
それを知ったメアリーは不謹慎にも喜びを隠しきれません。「私はエリザベスとは違う。子供を産める女よ」。女王であり、ひとりの女性として恋愛も楽しむメアリーは、どこか勝ち誇っていました。
メアリーの元に、イングランドを追われたシチュアート家が挨拶にやってきます。子息のダーンリー卿と恋に落ちるメアリー。周りはふたりの結婚に反対します。
メアリーは、一時の感情に流されるなと心配し忠告する義兄マリ伯までも、追放してしまいます。
その結婚はメアリーの人生を闇へと導くものでした。ダーンリー卿は酒癖が悪く、横暴な性格でした。そして男色の彼は、メアリーの男性秘書リッチオと関係を持ってしまいます。
信頼していたリッチオの裏切りに悲しむメアリーでしたが、彼の懺悔に二人を許します。それよりもメアリーは正統な王位継承者となる息子の出産を望みます。
メアリーとダーンリーとの間に愛情はありませんでしたが、メアリーは待望の男の子を授かります。その男の子は、ジェームスと名付けられました。
ジェームス誕生の知らせはイングランドのエリザベスの元へも伝わってきます。仔馬の出産に立ち会うエリザベス。自分も子供が産めたならと思わずにはいられません。
映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』の感想と評価
これまで様々な作品で描かれてきた、ふたりの英国女王、メアリーとエリザベス。
気高くも孤独な女王ふたりの人生を、ローナンとロビーという共にアカデミー賞主演女優賞ノミネート女優が演じ合う。その迫力ある演技バトルは、映画の中のメアリーとエリザベスに重なります。
また映画のみどころのひとつに、華麗な英国の衣装や、目を惹くヘアスタイルとメイクが挙げられます。ドレスは素材の揺れ感までもが美しく、赤と青のコントラストも2人の女王を象徴しているかのようで、目を奪われます。
そして情熱的なメアリーの方が冷静な色、ブルーのドレスが多く、慎重なエリザベスが淡いピンクの可愛らしいドレスを着ていて、実はメアリーの方が男らしく、エリザベスの方が女性らしいという性格の違いが、衣装からも分かります。
第91回アカデミー賞で衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされたほどの圧倒的な美の世界がみどころです。
メアリーとエリザベスの2人の女王の生き方は、現代の女性たちにも通じるものがあります。恋に生きるか仕事に生きるか。
時代が変われど、人生の選択に迷い、孤独と戦う女子は多いことでしょう。友達に彼が出来た、ダイエットが成功した、仕事で収入が増えた。些細な出来事で女子の嫉妬心は湧き上がります。
映画の中のメアリーは、若さと美貌を持ち合わせ、女王としての権力を欲し、自由な恋愛を望みます。多くを望んだメアリーは、自らの行いによって滅びることになります。20年もの幽閉後、44歳で処刑されます。
一方、自分を律し、国のために自分の命を守り、争いの元となる結婚を諦めたエリザベス。天然痘という病になりながらも、男社会の中で隙をみせず女王として君臨し続けました。
どちらの女性の生き方が幸せだったかは、誰にも判断出来ることではありません。本人のみが知る所です。
この物語の救いは、エリザベス亡き後、英国を統一したのはメアリーの息子ジェームスでした。イングランドとスコットランドは共通の王で、それぞれ議会を持つ同君主連合国となりました。メアリーもエリザベスも共通の望みは国の平和でした。
何かを得るためには何かを諦めなければならない。激動の時代を生きたふたりの女王の気高くも切ない人生の選択に思いを馳せてしまいます。
まとめ
激動の16世紀英国を生きたふたりの女王の物語『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』を紹介しました。
アカデミー賞主演女優賞ノミネート女優による演技バトルに注目です。また、圧倒的なスケールと壮観美が、歴史ドラマをよりロマンティックに盛り上げます。
誰よりも理解し合えたはずの孤独な女王たちは、従姉妹でありながらもお互いを恐れ合い、臣下たちの陰謀により理解し合うこともなく、それぞれの運命に翻弄されていきます。
ふたりの女王の運命とは?メアリーとエリザベスを語った作品は多くあれど、新しい2人の関係が垣間見える作品です。