Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

Entry 2024/09/30
Update

『顔(イェン)さんの仕事』あらすじ感想評価。台湾の映画絵看板師の巨大な作品を手描きで生み出す職人技にしびれる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

ドキュメンタリー映画『顔さんの仕事』が2024年10月19日(土)より大阪・シアターセブンにて公開されるほか全国順次公開予定

台湾の映画絵看板師・顔振発(イェン・ジェンファ)に迫るドキュメンタリー映画『顔さんの仕事』が、2024年10月19日(金)より大阪・シアターセブンにて公開されるほか、全国順次公開となります。

『クレヴァニ、愛のトンネル』(2015)『恋恋豆花』(2020)の今関あきよしが監督を務めます。ナビゲーターはイラストレーターの三留まゆみ。

数え切れないほど沢山の生き生きとした素晴らしい作品を生み出してきた天才職人・顔振発の人生に迫る本作の魅力をご紹介します。

映画『顔さんの仕事』の作品情報


(C)映画「顔さんの仕事」製作委員会

【公開】
2024年(日本映画)

【監督】
今関あきよし

【編集】
鈴木理

【キャスト】
顔振発、三留まゆみ、柏豪

【作品概要】
台湾の映画絵看板師・顔振発(イェン・ジェンファ)の人生を映し出すドキュメンタリー作品。右目がほぼ見えなくなりながらも描き続ける顔振発の奇跡を生み出す仕事に迫ります。

監督は、『クレヴァニ、愛のトンネル』(2015)『恋恋豆花』(2020)など海外を舞台にした映画作品を多数手がけている今関あきよし。

ナビゲーターは、今関監督と8mm映画時代からの名共でもあるイラストレーターの三留まゆみが務めます。通訳として、台湾俳優・柏豪も参加しています。

映画『顔さんの仕事』のあらすじ


(C)映画「顔さんの仕事」製作委員会

現在の台南市下営区に生まれた顔振発は、幼い頃から絵を描くことが好きでした。絵の才能を感じた家族にすすめられ、彼は看板職人の陳峰永の弟子入りします。

台湾映画界が盛り上がった1970年代には、1カ月に100~200枚もの手描き映画看板を描き、台南の映画館「全美戯院」では看板の制作から設置までを一手に引き受けていました。

しかし生涯にわたる絵の制作は彼の目に負担をかけていました。網膜が異常をきたし、現在は右目がほぼ見えない状態になっていますが、それでもなお、顔振発は絵を描き続けています。

映画『顔さんの仕事』の感想と評価


(C)映画「顔さんの仕事」製作委員会

現在では数少なくなった映画看板を描く職人そのレジェンド・顔振発に迫るドキュメンタリー映画です。

職人・顔振発の手によって美しく混ぜ合わされていくペンキに、鮮やかな筆遣いまるで魔法を見ているかのように感じることでしょう。

すでに老齢となった顔振発ですが、その手の動きにはまったく迷いはなく、色使い、縁取りをスマートに素早くすすめていきます。タイトル字までも、下書きも無しに美しく仕上げる様は圧巻です。

その腕同様、風貌や表情までも神様のように穏やかな顔氏は、これまでの思い出や仕事への思いを優しく語ります。ナビゲートする三留まゆみの、素で見せる感嘆の表情にも納得です。

神様の仕事を見られる幸せに浸ることのできるとても優れた一作です。

まとめ


(C)映画「顔さんの仕事」製作委員会

顔振発という天才看板職人の仕事ぶりを余すことなく映し出す『顔さんの仕事』

経費や収納の問題から、何作もの作品を塗り重ねていくため、古い作品は2度と見ることが叶いません。まるではかない夢のようです。

それでも、巨大なキャンバスに向かい淡々と己の仕事と向き合う顔氏からは、自分の作品への深い愛情が伝わってきます

ドキュメンタリー映画『顔さんの仕事』は2024年10月19日(金)より大阪・シアターセブンにて公開されるほか、全国順次公開予定です。


関連記事

ドキュメンタリー映画

映画オーストリアからオーストラリアへ|あらすじ感想と評価解説。ドキュメンタリーで描く《ふたりの自転車大冒険》と過酷な旅で知る“これからも続く旅”

映画『オーストリアからオーストラリアへ~ふたりの自転車大冒険』は2022年2月11日(金)より全国ロードショー! 「オーストリアからオーストラリアへ」……似たような国名ながらも行き先ははるか遠く、日常 …

ドキュメンタリー映画

映画『津軽のカマリ』あらすじネタバレと感想。高橋竹山のドキュメンタリーで描かれたものとは

3歳の時に視力を失いつつも、津軽三味線の巨星となった初代、高橋竹山。 生前「津軽のカマリ(匂い)が湧き出るような音を出したい」と語っていた本人の映像や音声や生前の彼を知る人々の証言から、高橋竹山の人生 …

ドキュメンタリー映画

映画『僕が跳びはねる理由』感想と内容評価。自閉症の東田直樹が“普通とは何かを問い” 彼らの世界を疑似体験するドキュメンタリー

映画『僕が跳びはねる理由』は、2021年4月2日(金)ロードショー! 言いたいことが言えない。それは、気持ちを伝えられないということ。 自閉症という障害を抱える作家・東田直樹が13歳の時に執筆したエッ …

ドキュメンタリー映画

映画『ワンダーランド北朝鮮』感想と考察。崩壊はプロパガンダ映像にも見られる

映画『ワンダーランド北朝鮮』は、2018年6月30日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー。 これは北朝鮮のプロパガンダ映像なのか、それとも…。北朝鮮にとっての“普通”とは何に指す …

ドキュメンタリー映画

映画『縄文にハマる人々』あらすじネタバレと感想。教授や研究者が世界で最も美しい謎を求めてハマっていく⁈

縄文土器、弥生土器、どっちが好き?どっちも土器! 縄文と聞いて何を思い浮かべますか?縄文土器、土偶、竪穴式住居、貝塚、狩猟民族。 今から約1万3千年前。約1万年も続いた縄文時代。 名前は知っているけど …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学