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Entry 2016/12/09
Update

映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

建築家ル・コルビュジエが設計した西洋美術館が、世界遺産に登録されたことで、とても賑わいを見せていますね。

昨今では、博物館、美術館を運営していくのも、とても大変な苦労があるようです。

そんな美術館の普段は見られない裏側を撮影した映画。

現在上映中の『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』をご紹介。

映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』の作品情報

【公開】
2016年(オーストラリア)

【監督】
ヨハネス・ホルツハウゼン

【作品概要】

ヨーロッパの美術館のトップ3に入るといわれる、オーストリアにある、「ウィーン美術史美術館」。

2016年に創立125周年を迎えるの前に、館内を大幅に改装していく様子を、2011年後半から2013年3月まで撮影を行なったドキュメンタリー映画です。

映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』のあらすじとネタバレ

グレート・ミュージアム
(C)Navigator Film 2014

この映画の冒頭に登場するのは、「ウィーン美術史美術館」に赴任したザビーネ・ハーク館長。

彼女は、大英博物館から訪ねて来たゲストを案内しながら、改装予定の館内を説明します。

ゲストの客人は、こんな素晴らしい収集品は大英博物館には無いと、ザビーネの美術館を称えます。

やがて、元宮廷の静まり返った荘厳な室内に、1人の工事スタッフが現れます。

大理石の敷かれた展示場の床を、大きなハンマーで叩き割る。金属の塊と大理石が強くぶつかる音が響きます…。

「ウィーン美術史美術館」の改装工事の始まりです。

ザビーネ館長は理想も高く、美術館を後世まで残す意義に熱弁をふるいます。

しかし、最高財務責任者のパウル・フライは、税金が元手の限られた予算。節約をすることを口うるさくいいます。

国から支援された美術館の文化的予算は、今後は医療費などと争って確保するのだとパウルは息をまきます。

館内の各館長の絵画担当シルヴィア、馬車担当モニカ、美術史フランツの面々も、予算の使い方と展示方法や収集品の修復に頭を悩ませます…。

以下、『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』ネタバレ・結末の記載がございます。『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状)』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

一方でパウルは、「ウィーン美術史美術館」で働く、すべてのスタッフから聞き取りを行います。

運搬係や清掃員、美術史家に至るまで、こと細やかに改革の意見を集めて行くのです。

また、長年の間、接客業を担当した女性スタッフは、自分がここで働いてきたことにプライドを語ります。

パウルは、絵画館長シルヴィアの予算を幾度も削減したり、「ウィーン美術史美術館」が世界に誇るブリューゲルコレクションの展覧会は一旦中止を指示します。

改装の予算をすべてを取り仕切るパウルには、改築こそが最重要課題なのです。

また、美術館が今後生き残るためには、政治家や軍人たちと摂政する付き合いも必要不可欠。

大統領官邸に、645年間君臨したハプスブルク家の皇帝が蒐集した、貴重な絵画を貸し出すのでします。

国家権力の象徴には、価値ある美術品は必要だと印象を付けるのです。しかし、パウルの狙いは今後の編成予算の確保なのでしょう。

また、新生の改装後の美術館の派手な式典には、多くの要人が訪れます。

オープニングパーティでは、美術品に理解のないような軍人たちに、高価な美術品の素晴らしさを伝えなくてはなりません。

しかし、軍人たちは、そんなことは分かるそぶりもありません…。

ラストシーンは、壁に掛けられていた、ブリューゲルコレクションの「バベルの塔」を運搬係が外して行く場面で終わります。

映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』の感想と評価

グレート・ミュージアム2
(C)Navigator Film 2014

ヨハネス・ホルツハウゼン監督は、この作品で、第64回ベルリン映画祭カリガリ賞、オーストリアDiagonale編集&撮影賞を受賞。

彼は、映画製作を行う以前に、大学では6年美術を専攻していたようです。

収集品を扱う修復スタッフたちの様子を捉えた映像には、彼ら専門スタッフへの愛情を感じます。

これは、ヨハネス監督は美術好きで、今なお、撮影以外にも様々な美術館を訪れ、ボランティア活動をしているからでしょう。

そのような監督が、テレビ番組のような有り触れた美術館紹介ではなく、無駄な雰囲気作りを排した、「ダイレクトシネマ」という手法で構成しているされたドキュメンタリーしているです。

まさに、美術館の裏側をこっそり覗き見しているような作品です。

まとめ

グレート・ミュージアム3
(C)Navigator Film 2014

これからは美術館でさえも、グローバル化を余儀なくされて行くのが現状のようです。

どのように収集品と、国からの助成金と活かしつつ、生き残るのかを決めて行かなくてはならないようです。

ヨハネス監督が選んだラスト・ショットは、ブリューゲルコレクションの「バベルの塔」を運搬係が外す場面。

その意味するものは、「ウィーン美術史美術館」を、愛して一緒に作り上げいくスタッフのすべての人たちの姿勢なのでしょう。

“オーストラリア帝国の伝統と継承”と、それとは相反するものである“グローバル化の革新”という正反対の選択を同時に迫られながら、自らの職務に日々取り組んでいく精進する姿。

「永遠と終わることのないプロセス」こそが、「バベルの塔」なのです。

現在2016年11月26日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかで順次全国ロードショー中‼︎

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