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Entry 2017/07/13
Update

【米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー】感想レビューと考察

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

2017年8月12日(土)より沖縄・桜坂劇場先行公開、8月26日(土)より東京・ユーロスペースほか全国順次公開される、オススメのドキュメンタリー映画がある。

映画のタイトルは『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』。

沖縄の戦後史、そこで闘った男の生き様を知れば、地続きの歴史が見えてくるー。

1.映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』の作品情報

【公開】
2017年(日本映画)

【監督】
佐古忠彦

【キャスト】
瀬長亀次郎

【作品概要】
戦後、日本に変換されることなく、アメリカ占領下にあった沖縄で庶民たちの生活を脅かす米軍たちの卑劣な行為に屈することなく、那覇市民、沖縄県民とともに1人の闘いと生き様を描いたドキュメンタリー。

瀬長亀次郎の知られざる実像と、信念を貫き通した1人の人物の日記と県民の証言、また、貴重な映像によって描いた作品は、第54回ギャラクシー賞月間賞を受賞するなど高い評価を得ました。

2016年に放送したテレビドキュメンタリーに追加取材をおこない、再編集によって映画化。

監督はニュース番組「筑紫哲也NEWS23」でキャスターを務め、今作が初監督デビューの佐古忠彦。テーマ曲を坂本龍一、ナレーションの一部を大杉漣が担当しています。

2.監督を務めた佐古忠彦のプロフィール

佐古忠彦
1988年:TBS入社
1996〜2006年:筑紫哲也NEWS23
2006〜2010年:政治部
2010〜2011:Nスタ
2014〜2017年:報道LIVEあさチャン!サタデーNスタニューズアイ
2013〜現在:報道の魂(現・JNNドキュメンタリー・ザ・フォーカス)プロデューサー

また、『生きろ〜戦場に残した伝言』(2013)、『生きろ〜異色の司令官が伝えたこと』『茜雲の彼方へ〜最後の特攻隊長の決断』(ともに2014)『戦後70年 千の証言スペシャル 戦場写真が語る沖縄戦・隠された真実』(2015)などを制作。

佐古忠男監督は今作『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』の見どころについて、次のように語っています。

「住民が暮らす場所で唯一の地上戦が行なわれ、とてつもない犠牲を強いられた上に、
27年に及びアメリカに軍事占領させられた沖縄の戦後の歩みは、日本本土とは全く違う。
その沖縄戦後史を瀬長亀次郎の生きざまをとおしてみることで、いまの沖縄の闘いの意味が見えてくる。」

確かにこの作品を観た今、沖縄の魅力は海や島の豊かさは自然でだけではないことがわかります。

庶民、県民の人としての魅力のような気がしますね。

今作で観られたら不屈の沖縄の人たちの民主主義を獲得すべく団結する姿勢は、同じ戦後である日本の各地とは比べることができないことを実感させられます。

佐古監督が語る“いまの沖縄の闘い”を知らず知らず傍観していることに、あなたも気がつかされるかも知れません。

2.映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』のあらすじ

瀬長亀次郎はガジュマロをこよなく愛しました。

どんな嵐にも倒れない。沖縄の生き方そのもの」だと例えたのです。

かつて、那覇市長として市民を、たった11ヶ月だけ務めていた亀次郎が好んで使っていた言葉があります。

それは“不屈”。

しかし、それは自身を指した言葉ではなく、沖縄の人たちが不屈だと示したものです。

1945年の戦後、沖縄で民衆の先頭に立ち、演説会を開けば毎回何万もの聴衆を集め、指笛や笑顔の歓喜に沸かせた瀬長亀次郎。

彼を中心として団結して立ち向かったのは、戦後沖縄を占領したアメリカ軍の圧政です。

アメリカは亀次郎に共産主義者というレッテルを貼り、沖縄の民主主義を主張した亀次郎の活動場所を次々に奪っていきます。

しかし、怯むことなく祖国復帰へ向けて民衆を牽引する亀次郎は、マジムンという(魔物・悪霊)である基地(アメリカ)ですら、“ダイナミックで個性的な言語で聴衆を魅了する人物”と認めさせた男でもあった…。

3.映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』の感想と評価

今作『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』は、テレビ制作のドキュメンタリー番組が制作の出発ということもあり、どなたにも観やすい作品になっています。

しかも、恥ずかしながら勉強不足で瀬長亀次郎という人物を知らないこともあり、とても興味深く観て、沖縄基地問題や民主主義を獲得する闘いを学ぶことができました。

少し話は脱線します…。

一昨年とある劇映画が沖縄を舞台にして、米兵の暴行事件をモチーフに扱った邦画がありました。

そのなかで沖縄の少年の怒りがある相手の命を奪い、また、被害者の女性のやるせない怒りを海に叫ぶという陳腐な作品を観て、とても驚きました。

“沖縄の怒り”を映画というお決まりの感動の型にはめ込んだだけの駄作でした。とても気分が悪くなったことを今でも覚えています。

なぜ、このような“沖縄の怒り”を美しい青い海に呑み込ませるのか、個人的にはその陳腐さに全く理解できなかったのです。

しかし、今作『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』に瀬長亀次郎は怒りの矛先は明確でした。

この作品で、“怒り”とは真にどのようにあるものなのか知ることができます。

だからこそ、亀次郎は多くの沖縄の人を団結させ魅了したのでしょう。

その、“怒り”とは単純に“恨み”にのみ変化しないことも気がつかされることでしょう。

例えば、この作品の中で、時の内閣総理大臣である佐藤栄作にも決して怯むことない亀次郎の質疑応答は、魅せてくれますし、笑わせてもくれます

そんなところからも聴衆の心をつかんだ“怒り”が単純な“恨み”だけでは牽引できない様子の一端は見えてくるのではないでしょうか。

また、アメリカ公文書に、亀次郎という人物を“ダイナミック”と人柄や演説を分析し評しています。

仮に映画というものが、多くの観客を1度に魅了するものだとしたら、瀬長亀次郎という人物はあまりに映画的な人物とも言えるかも知れません。

最近の洋画を観ていると、毎度のようにいくつかの作品で、闘って民主主義を得るという外国らしい作品を目にしました。

日本にないことだとショボンとしてしまっていたのですが、日本にも闘って民主主義を手に入れようとしている瀬長亀次郎や沖縄の人に勇気づけられる思いでした。

さらには、この作品で昭和天皇、日米安保、ポツダム宣言、テロ、“日本人でなく沖縄人byマッカーサー”など、注目のワードもたくさん出てきますよ。

それにも増して、“不屈”という沖縄県民を合わした団結の言葉は、あなたの胸を打つかも知れません。

政治不信が叫ばれる昨今ですが、瀬長亀次郎を知ると政治家も捨てたもんじゃないと感じるかも知れません。

この作品は沖縄のことのみを描いた作品ではありません。

私たち日本人が“沖縄”を捨て石にして戦後発展を遂げたなかに生きてきながらも、戦前戦後ではなく、戦時中として米軍に苦しめられてきた沖縄の歴史を知ることでしょう。

まとめ

1972年の沖縄が日本返還されてからも、沖縄県にある米軍基地は拡大しているのが現状です。

そこに31の米軍基地があり、総面積は1万8,609ヘクタール、沖縄の総面積の約8パーセント。

しかし、これは決して少ない数値ではありません。東京23区の13区を覆ってしまうほどの面積だそうです。

千代田区、中央区、港区、品川区、渋谷区、目黒区、新宿区、中野区、豊島区、文京区、台東区、墨田区、荒川区を合わせた面積です。

また、日本国内で米軍専用施設面積の割合は、断トツので沖縄県が70.6パーセントなのです!

文豪ヴィクトル・ユーゴーの書いた『レ・ミゼラブル』のジャン・ヴァルジャンのような瀬長亀次郎に、ぜひ、要注目です!

今夏8月12日(土)より沖縄・桜坂劇場先行公開!

8月26日(土)より東京・ユーロスペースほか全国順次公開!

佐古忠彦監督のお薦めのドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』。

亀次郎の“怒りは希望”です!ぜひ、お見逃しなく!

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