あなたは、”ホームレス”にどのようなイメージを持っていますか?
あなたは、今の暮らしの中で、”見栄え良く”生きようとしてませんか?
あなたには、”叶えたい夢”がありますか?
『ホームレス ニューヨークと寝た男』の主人公マーク・レイの暮らしぶりは、一見の私たちとは異なるように感じてしまう。しかし、誰もが自分と似た影を見つけてしまうような気がしてならない。
喧騒の街ニューヨークと独りの男を見つめた作品をご紹介します!
映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【製作・監督・撮影・編集】
トーマス・ビルテンゾーン
【キャスト】
マーク・レイ
【作品概要】
ニューヨークに住むファッションフォトグラファーのマーク・レイ。元モデルのイケメン男は家を持たないホームレス生活者、そんな彼に3年間にわたり密着したドキュメンタリー。
ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭2014にてメトロポリス・コンペティション審査員賞受賞、キッツビュール・フィルムフェスティバル2014にてベスト・ドキュメンタリー受賞ほか。
「ピエール・カルダン」「ニューヨーク・シティ・バレエ」「Facebook」などの企業プロモーション映像やスチール画像などを手がける、トーマス・ビルテンゾーン監督の初長編ドキュメンタリー作品。
音楽はクリント・イーストウッドの息子で、パリ在住のジャズミュージシャンのカイル・イーストウッドが担当。
映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』のあらすじとネタバレ
アメリカのニューヨークに住む、マーク・レイは元ファッションモデル。
かつて、マークはファッションブランドの「ヴェルサーチ」や「ミッソーニ」のランナウェイを歩いたほどの一流モデル。フランス版「ヴォーグ誌」にも掲載されたほどの活躍ぶりでした。
しかし、現在の彼の仕事は、「model’s.com」や「デイズド&コンフィーズド」など、若くて美しいモデルたちのストリートスナップの撮影や、ファッション・ショーの取材をするフォトグラファー。
とはいえ流石に元モデルだけあって、マークもブランドスーツを着こなし、スマートな身のこなしは現役モデルに劣らず、ファッションも板についています。
もちろん、現役モデル時代より歳を重ね彼も52歳。全盛期のような体型を維持するためにスポーツジムに通ようことも欠かせません。そのジムの更衣室のロッカーを個人的4つも使用で荷物を詰め込む?
ところがある日、豪勢なパーティーに出席した後に、マークが帰ったのは雑居ビル街のアパートの屋上でした。
彼は特定の家を賃貸して住んではおらず、無断で友人が住んでいるアパートの屋上で宿泊している日常生活。実はマークは、俗にいう”ホームレス”だったのです。
しかし、自身をホームレスとは呼びません。だから、似たような境遇にある路上生活者に施しをすることも決してないのです。
マークは自身を、“アーバン・キャンパー”と呼び、賃貸した家はないが、人生をギブ・アップをしている訳ではありません。
深夜遅くまでカフェを事務所代わりにフォトグラファーの編集作業を続けたり、俳優活動のエージェントの電話には、エキストラから台詞のある端役まで、常にベストを尽くしてます…。
映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』の感想と評価
トーマス・ヴィルテンゾーン監督は、マーク・レイとの友人関係は長いようです。最初にマークに会ったのはウィーンで20年以上前に、お互いモデルとしてファッションの世界で働いていた時からの友人。
2010年に、ニューヨークで久しぶりにマークと再会したトーマス監督は、彼の日常生活を聞かされた時に大変ショックを受けました。全く理解しがたいありえない真実を、すぐにマークののニューヨーク生活についてのドキュメンタリー映画を撮りたいと考えたそうです。
それから3年間にわたり、トーマス監督は「キャノンEOS 5D MarkⅡ」と音声レコーダーを持って、2人だけでマークの人生をのべで200時間記録し続けたそうです。
3年間の取材を受け続けたマークは、「今までの人生というのは沢山の冒険はあったけれど達成したものは少ないという風に感じていたのですが、トムと作り上げたこの作品は間違いなく何かを達成したと呼べるもの」と語っていて、「自分のレガシーになっている」とも述べているのです。
一方で、トーマス監督も、「マークは我々を素晴らしい冒険の旅へといざない、自らの人生を通して我々を導いてくてた。そしてこの作品で彼は、自分の最も私的な秘密まで見せてくれている」と彼について語っています。
ここで、『ホームレス ニューヨークと寝た男』と似たような映画を1本ご紹介します。
この両作品を比較するとことで、映画をより楽しめますし、ニューヨークやファッションについても深く知れる作品ではないでしょうか。
リチャード・プレス監督の「ニューヨーク・タイムズ紙」の人気ファッションコラムなどを担当したフォトグラファーのビル・カニンガムを追ったドキュメンタリーです。
【『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010)】
マークは実際にビルにも会ったことがあるそうです。
このビルを2年間密着した映画について、バックステージにいたビルに自身が出演している映画について聞いたところ、「その話はしないでくれ!自分のプライベートに踏み込んだ映画だから」と言われたそうです。
マークも自分の映画が完成した現在、その気持ちがよくわかるようになったそうです。
ぜひ、こちらもご覧いただくことをお薦めいたします!
まとめ
『ホームレス ニューヨークと寝た男』の中で、好きな人間描写を挙げるとすれば、どこになるでしょう?
マークがニュージャージー州に住む母親に会いに行く様子や、トーマス監督がマークに語りかける友情あふれる場面も捨てがたいものがあります。
でも、1つだけ選ぶとしたら、毎年クリスマスにマークがボランティア活動している場面です。
チャリティー団体が何がしかの訳があるだろう女性と子どもたちにシェルターを提供しているシーンがあります。
サンタクロースの格好をしたマークが、廊下でとても緊張した様子で子どもたちに会う心待ちがあふれた描写の数々。このボランティアをマークは7年間続けているそうです。
そのシーンの中でも、1人の少女がサンタさんに会ったことを、「どうしても忘れたくない」と抱きしめて離れようとしません。
そんな彼女の心にマークが呪文をかけてあげる姿に、彼の真実の在処が垣間見れた気がしてなりません。
ぜひ、そこだけは見落として欲しくない場面です!
7年の間、マークはホームレスのような日常を過ごしてきましたが、きっとそれは修行僧、あるいは願掛けのように、弱い自分から視線を逸らさずに向き合っていた時間なのではないでしょうか。
マーク・レイは、「どんな時でも人との関係を断ち切っちゃいけない(中略)自分への評価をどうしても上げられない時は、自分に時間を与えて、人との関係をもう1度構築して立ち直るんだ。」彼の強さのある言葉ですね。
マークはニューヨークで家は持たなかったですが、人との繋がりは持ち続けるために800万人の栄光と孤独の中に佇んでいたのでしょう。
ぜひ、現在公開中の『ホームレス ニューヨークと寝た男』を劇場にてご覧ください!