2013年、世界中を震撼させた、米国政府による個人情報の監視という大スクープ。
告発者は29歳の青年。CIAでアナリストとして働いていたエドワード・スノーデンでした。
その告発劇の内幕を描いた、社会派オリバー・ストーン監督による映画『スノーデン』が公開されますが、こちらはその元ネタとなった本人出演によるドキュメンタリー映画です。
スノーデン本人をはじめ、実際の関係者たちによる衝撃的な証言の数々。あなたの個人情報、政府は全てお見通し?!信じられない事実が次々と明かされます!
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』の作品情報
【公開】
2014年(アメリカ)
【原題】
CITIZENFOUR
【監督】
ローラ・ポイトラス
【キャスト】
エドワード・スノーデン、グレン・グリーンウォルト、ユエン・マッカスキル
【作品概要】
アメリカ国家安全保障局らをはじめとする政府当局が密かに行っていた、国家のスパイ行為ともいえるプライバシー侵害。
命の危険を冒して告発という手段に出た青年と共に、ドキュメンタリー映画監督とジャーナリストが社会の真実を暴きます。
第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞、全米映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞ほかに輝きました。
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』のあらすじとネタバレ
イラク戦争の映画製作がもとで、当局の監視下に置かれる立場の映画監督、ローラ・ポイトラス。2013年1月。彼女のもとに、匿名の情報提供者から暗号化されたメールが届きます。
「シチズンフォー」と名乗るその人物。最初はジャーナリストのグレン・グリーンウォルトに接触。安全な通信方法が確立できずに断念し、ローラを頼って連絡してきたのでした。
メールの内容は「買い物、電話の相手、メール、友人、閲覧サイトなど、米国民の膨大なデータは全て、NSA(国家安全保障局)に取集されている」という信じられないものでした。
世界ハッカー会議。NSAで、90年代大量のデータ分析方法を開発したというウィリアム・ビニーが語っていました。9.11後、NSAは国民の監視を開始。AT&T社に日々3億件以上もの記録を提供させた。CIAも関与したその事実を告発した後、私は銃で脅された、と。
2013年6月。香港。ローラとグレンは「シチズンフォー」と対面します。彼の名はエドワード・スノーデン、29歳。ブーズ・アレン社のアナリストでハワイ在住。肩書きはシステムエンジニアで、CIAシニア・アドバイザーを勤めているといいます。
彼によると、NSAは他国と協力して全ての通信を把握。電話、メルアド、クレジットカードを入力するだけで個人を確定、過去の記録も全てわかるシステムが確立されているとのこと。
グレンは、スノーデンの記事を発表。CNNで「米国民のプライバシー侵害」と放送されます。一方スノーデンは、告発したことをまだ知らせていないという、恋人の身を案じていました。
スノーデンに恋人から連絡が入ります。家賃を払っていないので家を追い出されると言うのです。家賃は自動引き落としなのにおかしいと言うスノーデン。おまけに、彼の家の前には謎の工事車両が何台もとまっています。不可解な状況にグレンも不安を隠せません。
ついにスノーデンはメディアに身元を明かします。2013年6月21日。米国政府はスノーデンを告訴。2日後、ウィキリークスがスノーデンの政治亡命を計画実行し、彼の飛行機はモスクワへ到着します。ところが米国政府がパスポートを無効にし、入国は不可能となります。
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』の感想と評価
なぜ、告発するという行動に踏み切ったのか。そう聞かれたスノーデンは答えます。
「国家権力は、国民の“反対する力”を潰そうとしている。世界中の子どもたちが、ネットで誰もが対等に、自由に意見を言える。しかし政府の監視が原因でそれが不可能になったら?それは知的探求心を制限するものだ。知的自由を奪うことはしてはいけない」。
ホテルの一室で取材を受けるスノーデン。ひたすら盗聴・盗撮されることを気にしています。IP電話なら受話器を置いた状態でも盗聴が可能だからと、電話の線をひっぱり抜きます。
そして、パソコンは新品でないと危ないと言い、SDカードを挿しっぱなしでいるのは危険だと抜き、パスワードがわかったらまずいからと、ブランケットを頭からかぶってカタカタとキーボードを打ち始めます。
事情を知らない人が見たらこれはもうノイローゼです。ジャーナリストのグレンも「被害妄想バグに侵されてるよ!」とジョークを言います。しかし、これが決して過剰反応ではないことが証明されるのです。
インタビュー中、絶妙なタイミングで火災報知器が鳴り出します。全員が一瞬、固まります。スノーデンは電話機を調べ、フロントに確認すると単なるテストだと言われますが、誰もがしばらく黙り込みます。
そして、スノーデンが世間に身元を明かす以前に、勤務先のNSAの人事部と警備員が彼の部屋に侵入するという事件が起こります。さらに、家賃が引き落としであるにも関わらず、なぜか不払いで追い出されそうになり、家の前には謎の工事車両が何台もとまっているというではありませんか。
フィクションではないので、ドラマチックな音楽も、命を狙われ危機一髪なシーンも、まさかの大オチも、何ひとつありません。超ド級の爆弾を落とした張本人スノーデンでさえ、つねに冷静で淡々として見えます。だからこそ恐ろしいのです。
新たな調査に挑む、グレンの決意で映画は終わります。スノーデンは、決しておおげさに反応しません。それでも何かを思案しているように黙ってグレンを見つめています。派手な演出も台詞もない、本物の恐怖が見えた思いでした。
まとめ
劇中、「デモ隊へのセキュリティ講習」というシーンがあり、ジャーナリストのジェイコブ・アッペルバウムが、リンカビリティというシステムについて語る内容が凄かったです。
例えば地下鉄のメトロカードとクレジットカードのデータを結びつける。それだけですでに買い物した場所、買った商品がわかり、カード使用の時間帯も調べれば、誰とどこで会ったかも簡単に判明する。
それを続ければその人物の人生まで読めてしまう。しかしそれが真実とは限らない。データ上で犯罪を犯したと判断されればそれで最後。その上、指紋や写真までとられればそれはもう大きなリスクになると。
全ては9.11以降、テロリストや犯罪者から全米の国民を守るという大義名分のもと、政府が機密下で行っていたことがどれほど凄まじいことなのか。そしてそれがアメリカだけの話ではないとは。まさに今そこにある危機です。
スノーデンは2015年9月からツイッターを開始していて、1時間もたたないうちにフォロワー数が15万人にもなったとか。現在の居場所は明かされていませんが、ネットの講演やスピーチで精力的に活動しているようです。