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Entry 2020/04/24
Update

映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』感想レビューと評価。イタリア三大テノール歌手のドキュメンタリー作品とは

  • Writer :
  • 咲田真菜

映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』は2020年9月4日よりTOHOシネマズシャンテほかで公開。

『パヴァロッティ 太陽のテノール』は、アルバム売上総数1億枚以上、観客動員数1千万人超えという驚異の記録を残し、2007年に亡くなってからも世界中から愛され続けているオペラの天才テノール歌手・ルチアーノ・パヴァロッティに迫る作品。

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)『インフェルノ』(2016)などで知られる名匠ロン・ハワードが追ったドキュメンタリー映画です。

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映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』の作品情報

(C)2019 Polygram Entertainment, LLC – All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年(イギリス・アメリカ合作映画)

【監督】
ロン・ハワード

【録音】
クリストファー・ジェンキンズ

【インタビュー登場人物】
アンドレア・グリミネッリ〈フルート奏者〉、プラシド・ドミンゴ〈テノール歌手〉、アンジェラ・ゲオルギュー〈ソプラノ歌手〉、キャロル・ヴァネス〈ソプラノ歌手〉、ヴィットリオ・グリゴーロ〈テノール歌手〉、マデリン・レニー〈ソプラノ歌手〉、ズービン・メータ〈指揮者〉、アンヌ・ミジェット〈ワシントンポスト紙・オペラ批評家〉、ハーバート・ブレスリン〈マネージャー〉(1967年-2003年)、テリ・ロブソン〈マネージャー〉(2003年-2007年)、ユージン・コーン〈ピアニスト・指揮者〉、ジョゼフ・ヴォルピ〈MET〉(1966年-2006年)、ハーヴェイ・ゴールドスミス〈コンサート・プロモーター〉、マイケル・クーン〈ポリグラム〉(1978年-2006年)、ランラン〈ピアニスト〉、ホセ・カレーラス〈テノール歌手〉、ディコン・スタイナー〈デッカ・レコード、ボノ〈U2〉、ニコレッタ・マントヴァーニ〈妻〉、アドゥア・ヴェローニ〈前妻〉、ロレンツァ・パヴァロッティ〈娘〉、ジュリアーナ・パヴァロッティ〈娘、クリスティーナ・パヴァロッティ〈娘〉

映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』のあらすじ

監督のロン・ハワードが、本作品を3幕のオペラとして捉え、「パヴァロッティの人生とは何か?」という疑問をベースにすべてを構築していった作品です。

歌を愛し、人生を愛し、パスタを愛した偉大なテノール歌手・ルチアーノ・パヴァロッティがどのような人生を歩んだのか、彼に縁のある人たち23名のインタビューで綴られるドキュメンタリー。

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映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』の感想と評価

ルチアーノ・パヴァロッティといえば、オペラファンでなくても耳にしたことがある名前でしょう。テノール歌手として類まれな才能を持った彼は、奇跡の歌声で世界中のオペラファンを魅了しました。本作品は、そんな彼がどのような人生を歩んだのか、オペラ歌手としてのみならず、プライベートにまで迫る内容となっています。

奇跡の歌声と太陽のような笑顔に魅了される2時間

1995年のブラジルで、100年前にパヴァロッティが憧れていたテノール歌手、エンリコ・カルーソが歌ったオペラハウス「テアトロ・アマゾネス」にて、プライベートで歌う貴重な映像から物語は始まります。歌声が素晴らしいのはもちろんのこと、パヴァロッティの太陽のような笑顔が一気に私たちの心をつかみます

偉大なテノール歌手・パヴァロッティが誕生したのは、彼の母親が非凡な才能を見抜いたからだといいます。イタリアのモデナでパン屋を営みながらアマチュアの歌手として活動していた父親は、パヴァロッティに小学校の教師になるよう勧めました。

彼は父親の助言に従うのですが、母親の後押しでテノール歌手への道を歩み始めます。オペラファンは、パヴァロッティの母親に感謝すべきかもしれません。

そして1961年、オペラ『ラ・ボエーム』でデビュー、1963年、ロンドンのコヴェント・ガーデン公演で、ディ・ステファノの代役を演じ大成功を収めたことでスター街道を歩んでいきます。

パヴァロッティを、テノールの最高音である「ハイC」なしに語ることはできません。本作品でも「ハイC」を9回披露したとして語り継がれているオペラ『連隊の娘』から「友よ、今日は楽しい日」の歌唱シーンを観ることができます。

自然に軽々とハイCで歌うパヴァロッティの歌声に驚き、「才能がある人は違う」と感じる人もいることでしょう。しかし私たちの想像を超えるパヴァロッティの努力が、魅惑の「ハイC」を生み出したという真実が本作品で明かされています。

もう一つパヴァロッティで印象的だったのは、ハンカチを手にして歌うスタイル。アメリカへ進出したことをきっかけに思いついたというエピソードも披露されます。

本作品でパヴァロッティが披露する楽曲は、彼の十八番である「誰も寝てはならぬ」(オペラ『トゥーランドットより』)のほか、「見たこともない美人」(オペラ『マノン・レスコー』より)や彼自身が最も気に入っていた役・百姓を演じたオペラ『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」など、10曲にも及びます。これだけでも本作品がいかに贅沢な2時間を提供してくれるかを物語っています。

最初の妻や3人の娘たちが、パヴァロッティの素顔を語る

本作品のもう一つの見どころは、プライベートのパヴァロッティに迫っているところです。2番目の妻、かつ最後の妻であったニコレッタ・マントヴァーニはもちろんのこと、最初の妻、アドゥア・ヴェローニ、彼女との間に誕生した3人の娘、ロレンツァ、ジュリアーナ、クリスティーナに初めてインタビューを試みています。

「幼い頃、パパの職業は泥棒だと思っていた」と語る娘のユニークなコメント、そして前妻のアドゥア・ヴェローニは、パヴァロッティと出会った時のことを「あの声に恋をしない人なんている?」と懐かしそうに語っています。

パヴァロッティは、次女のジュリアーナが難病にかかった時に、付き添うためにコンサートやオペラ、すべてをキャンセルしました。世間からかなりバッシングを受けましたが、自身の方針を変えなかったといいます。

そんな家族想いの一面がありましたが、2番目の妻ニコレッタと出会い、その後離婚したことで娘たちと確執があった時期もあったようです。最終的には前妻も娘たちもパヴァロッティのもとに戻りましたが、明るく社交的なパヴァロッティの陰の部分も、本作品では丁寧に描いています。

パヴァロッティに生きがいを与えたダイアナ妃やU2のボノとの出会い

パヴァロッティは、人間力の高さでオペラ界にとどまらず、さまざまな人たちと交流を深めてきました。中でも印象的なのは、英国元皇太子妃であったダイアナ妃との交流です。

ロンドンで開催された、パヴァロッティのデビュー30周年記念コンサートに出席したダイアナ妃と出会ったことで、二人は意気投合し友情で結ばれたといいます。

ダイアナ妃との出会いをきっかけにしてパヴァロッティは慈善事業に目覚めていき、1992年にモデナで開催され、定期的に行われるようになった『パヴァロッティ&フレンズ』につながっています。

もう一人パヴァロッティと深い絆で結ばれたのは、U2のボノです。オペラとポップスという、一見接点がないように見える二人ですが、パヴァロッティが『パヴァロッティ&フレンズ』で歌う曲を作ってほしいとボノに依頼したことをきっかけに交流が始まりました。

ボノは、明るく気さくで、時に突飛な行動をとるパヴァロッティの人柄を笑顔で語ります。そしてパヴァロッティが晩年、才能が枯れたと揶揄された時のことを回顧して語る言葉がずっしりと胸に響きます。ボノの言葉から、二人の友情が確かなものだったと実感することでしょう。

まとめ

パヴァロッティは思いつくまま行動をして、いつもご機嫌だったと妻のニコレッタは語っています。本作でパヴァロッティのことを語るオペラやクラシック界で活躍する23名の豪華な顔ぶれを見ると、いかに彼が人を引きつける魅力に満ちていたのかが分かるような気がします。

本作は、パヴァロッティがどのように生きたのかを知ることができる貴重な作品ですが、やはり一番の魅力は彼が残した音楽を存分に堪能できるところです。

出演したオペラ作品、パヴァロッティとともに三大テノールとして活動したプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスとともに行ったコンサートで歌う「誰も寝てはならぬ」、そして批判をする人たちはいたものの、『パヴァロッティ&フレンズ』で魅せたオペラとポップスの融合。

音楽を愛し、家族を愛し、仲間を愛したパヴァロッティの魅力がスクリーンいっぱいに満ちている作品なのです。

映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』は2020年9月4日よりTOHOシネマズシャンテほかで公開されます。

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