映画『愛と法』は9月22日(土)よりシネ・リーブル梅田、9月29日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。
2017年の第30回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」作品賞、第42回香港国際映画祭、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した、映画の隅々に優しさとユーモアが溢れるドキュメンタリー映画です。
カズとフミは大阪の下町で法律事務所を営む弁護士夫夫(ふうふ)。そんなふたりの一見幸せな日常から、今の日本が抱えている矛盾が垣間見えます。
映画『愛と法』の作品情報
【公開】
2018年(日本・イギリス・フランス映画)
【脚本・監督】
戸田ひかる
【キャスト】
南和行、吉田昌史、南ヤヱ、ろくでなし子、辻谷博子、井戸まさえ、山本なつお
【作品概要】
第30回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」に唯一のドキュメントとして選ばれた本作は、作品賞を受賞し、第42回香港国際映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞に輝きました。
監督は10歳からオランダで育ち、ロンドンを拠点としてディレクター・編集者として映像を制作してきた戸田ひかる。
現在本作の撮影で22年ぶりに大阪で暮らしています。
主人公である二人、カズとフミは、大阪の下町で法律事務所を営む弁護士夫夫(ふうふ)。
現在も全国から“困っている人たち”の相談にのり、「普通」と「当たり前」の見えない壁と日々格闘しています。
映画『愛と法』のあらすじとネタバレ
青空の下、大きな広場に虹の小旗を持った人があちこちに集まっています。
その広場の中央にある舞台に、自分の順番を待つカズと、カズを見守るフミ。
カズの順番になって舞台へ上がります。
「僕たちは、男同士でつまりゲイと言われていますが結婚しています」
周りの人の声援と拍手に送られ、そのまま二人は街の中を行進していきます。
訝しげに見る人や目配せする人、そして無関心に去っていく人が映ります。
彼らは大阪の下町で「なんもり法律事務所」を営む弁護士夫夫(ふうふ)。
仕事では一緒に現場を周り、一緒に家庭に帰ります。
家には、可愛い猫が待地、フミが主に料理を担当しカズが片づけています。
二人で家で過ごしている棚には、結婚式の写真が飾っています。
2011年二人はみんなに祝福を受け結婚しました。
カズは毎日のように講演会や勉強会に出かけています。
ある日の講演会で、カズがいつものように家族のエピソードを語っています。
「お母さんに初めてゲイだと打ち明けたときね、お母さんこんなふうに言うたんですわ。『だって知らんやん、誰も教えてくれへん…』そうか、知らん人のことは責められへんって気がついたんです」
その母親ヤヱも今は「なんもり法律事務所」で働き、カズとフミを支えています。
因みに二人はヤヱのことをメアリと呼んでいます。
フミに仕事の電話が入ります。
少年事件を取り扱っている被害者の母親からのクレームでした。
「シングルマザーで苦労されていて、生活に困っている人が多いですね。加害者側もおんなじような生活環境で」
とカズは頭を下げながら優しく応じるも、電話を切った後にブツブツ文句を言っています。
「子どもの事件は未来があるじゃないですか。しんどいけど、お金にもならんと思いますけど、やってて良かったなって思います」と少し落ち着いてフミは語りました。
一方カズは「わいせつ陳列罪」等の疑いで逮捕されたアーティスト、ろくでなし子の弁護団の一人として仕事に向かっていました。
ある日講師を務める「憲法カフェ」で受講者に、カズは「血縁関係か法律的な根拠がなければ“家族”ではない」と言われ、ショックを受けて外に出ます。
疲れて帰ってくるカズを車でフミが待っていました。
車の中で、二人は家族について話しています。
家族というイメージが持てないと話すフミに、カズはこれからの生活はフミとの二人の生活が家族の核になると話しました。
「君が代不起立裁判」で処分を受けた辻谷裕子さんの弁護を引き受けた二人。
裁判官の態度があまりにひどかったらしく、裁判を終えた二人は、呆れて物が言えない様子でした。
「社会で虐げられた人々が守られる最後の砦という裁判の機能が、無くなったどころかその機能を果たそうとする態度すら見えなかった」とフミは愕然として話します。
更に法律を信頼できないけどまだ期待をしていると話しながら、目に涙を浮かべています。
ある日二人の家にカズマという青年がやってきます。
彼は、カズの少年事件の担当で後見人になっている青年でした。
居場所が無くなったカズマはカズが声を掛けてくれたのでやってきました。
ここから3人の新しい生活が始まります。
映画『愛と法』の感想と評価
本作では、本音のままの姿、素の自分を見せる人ばかり登場し、知らない間に心が魅かれていきます。
カズは講演会で同性愛者は家族ではないと言われ、必死に相手にわかってもらおうと返答しますが、その後の尋常ではない落ち込んだ姿。
フミは電話で差別的なことを言われ、電話を切った後に声にならない声で文句を叫んで塞ぎ込んでいる様。
家庭的に重いものを背負って二人の家に居候するカズマの驚くほどの純粋無垢な笑顔。
カズの告白に衝撃を受け、「知らんから分からん」と言い放すカズの母ヤヱ、しかも受け止めた後は二人の幸せを見守っています。
女性器のキャラクターのアートを見せて、「可愛いでしょ」とご満悦なろくでなし子さん。
その娘を尊敬するお父さん。
きっとそれまでに多くの葛藤を越えてきたことが想像できます。
「(国家を)歌わないことが少し前は大半だったのに、今少数派になるとこんなに変わるなんて」と憤りを隠せない先生達。
また二人を見る通りすがりの人の目も様々です。
笑顔で手を振る人もあれば、耳打ちして去っていく人もいて、敢えて無視していく人も映画では捉えています。
怒ったり、笑ったり、泣いたり、落ちこんだり。
言葉を交わし、相手を見て感情的になって、また言葉を交わす。
人はそうやってありのままの自分で分からないことを理解し、相手と繋がろうとすることが映画の中で感じることができます。
だから『愛と法』なのだと、理屈無しで感じ取れるでしょう。
まとめ
自分にとって「普通」と「当たり前」って?
そんなことを考えることがどうでも良くなって、自分をさらけ出せる人と繋がりたい。
愛を考え法を感じる本作を観終えた後、きっとクッサい台詞を敢えて言いたくなります。
「最後に愛は勝つ!」
映画『愛と法』は9月22日(土)よりシネ・リーブル梅田、9月29日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショーです。
家族や大切な人と「場所」を確かめに、映画『愛と法』を見に行きませんか。