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Entry 2019/02/26
Update

【ネタバレ】翔んで埼玉|映画は原作漫画ラストの続編⁈魔夜峰央も絶賛のコメディを詳細に解説!

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『翔んで埼玉』は、2019年2月22日(金)よりロードショー!

累計発行部数が62万部を突破した、埼玉ディスり漫画を映画化した『翔んで埼玉』

原作売り上げの3割を埼玉県が占め、上田清司埼玉県知事からは「悪名は無名に勝る」と激励コメントも飛び出すなど、何かと話題になっている本作をご紹介します。

映画『翔んで埼玉』の作品情報


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

【公開】
2019年2月22日(日本映画)

【原作】
魔夜峰央

【監督】
武内英樹

【脚本】
徳永友一

【キャスト】
二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、中尾彬、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、京本政樹、JAGUAR

【作品概要】
『パタリロ!』で知られる魔夜峰央の原作を、『のだめカンタービレ』シリーズや『テルマエ・ロマエ』シリーズの、武内英樹監督が映画化。

アメリカ帰りの隠れ埼玉県民、麻実麗の、東京都民に迫害を受ける埼玉県民を救う為の戦いを描くコメディ映画。

メインキャラクターの麻実麗にGACKT、壇ノ浦百美を二階堂ふみが演じ、伊勢谷友介や中尾彬、京本政樹などの実力派キャストが顔を揃えました。

映画『翔んで埼玉』あらすじ


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
埼玉で生まれ育った菅原愛海は、何も無い埼玉を毛嫌いしており、恋人の春翔と結婚して東京に引っ越すことを楽しみにしていました。

愛海と春翔の結納の日、愛海は両親が運転するワンボックスカーで、春翔の元へ向かいます。

BGM代わりに聞いていたカーラジオ、そこからは、埼玉にまつわる都市伝説が流れます。

19XX年。

東京都民から、迫害を受けていた埼玉県民。

繁栄している東京都とは対象的に、埼玉県は荒廃した地域となっています。

東京へ渡るには通行手形が必要となり、通行手形を持てない身分の埼玉県民は、ヒッソリと暮らしていくしか道がありませんでした。

アメリカから帰国してきた麻実麗は、そんな東京にある超名門校、白鵬堂学院へ入学します。

白鵬堂学院では出身地でランク付けされており、親の転勤で東京へ移住した埼玉県民は、Zクラス。

Zクラスは掘っ建て小屋の中で毎日自習をするしかない、辛い環境に追いやられていました。

白鵬堂学院の酷い実態を目の当たりにした麗。

麗は、白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美に気に入られますが、埼玉県民を馬鹿にする百美に麗は挑戦的な態度を取ります。

激怒した百美は、麗を白鵬堂学院から追い出す為に、瓶に入れられた空気だけで東京の地名を当てる「東京テイスティング」を挑みますが惨敗。

これまで完璧を貫いてきた百美は、ショックで意識が朦朧とします。

麗に助けられ、百美は保健室へ運ばれます。

そして、麗から「挨拶代わり」のキスをされた百美は、麗に特別な感情を抱くようになりました。

百美に自宅へ招待された麗は、東京都知事で百美の父親である、壇ノ浦建造と対面します。

麗はトイレに行くふりをして、東京都知事室に入ろうとしますが、壇ノ浦家の執事、阿久津翔に止められます。

そして、阿久津は麗に「貴様、埼玉だな?」と探りを入れますが、麗は聞き流して立ち去ります。

麗と百美は、2人で買い物に出かけますが、そこで突然「埼玉警報」が発令。

麗の屋敷の家政婦、おかよが、強制送還部隊に追われていました。

おかよを助けようとした麗も埼玉出身疑惑をかけられ、その証明に草加せんべいを踏む事を強要されますが、麗は体が動きません。

おかよはその間に逃げようとしますが、強制送還部隊に捕まってしまいます。

麗は百美に助けられ、その場を立ち去りました。

実は、麗は埼玉出身であり、父親の意向で次の東京都知事になる為、一度アメリカへ渡り埼玉臭さを消し去って東京へ戻って来た、埼玉を救う事を託された者でした。

麗の正体に百美はショックを受けますが、麗と一緒に逃げる事を選択します。

2人は追われる立場となってしまいました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『翔んで埼玉』ネタバレ・結末の記載がございます。『翔んで埼玉』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

麗と百美は埼玉県へ逃げようとしますが、途中で通った千葉県で、阿久津に捕まってしまいます。

阿久津の正体は千葉解放戦線の構成員で、麗が所属する埼玉解放戦線とは東京都への手形を撤廃する為の争いをしており、敵対関係にありました。

阿久津は警察に麗と百美を引き渡そうとしますが、そこへ白馬に乗った男が現れ、麗と百美を救出します。

その男は埼玉解放戦線の伝説、埼玉デュークでした。

埼玉デュークは、阿久津の父親で千葉解放戦線のトップだった男、エンペラー千葉との戦いで片目を負傷。

姿を消しながらも、埼玉開放の為に影で動いていました。

麗と百美は埼玉デュークから、東京都知事が裏通行手形を発行させ賄賂を得ており、その金塊を何処かに隠している事を教えられます。

その賄賂がある限り、手形制度は永遠に無くなりません。

麗と百美は真相を暴き出す事を決意しますが、百美が突然、高熱を出して倒れます。

百美は埼玉県特有の病気「サイタマラリア」に感染し、治療が遅れると重症化してしまう危険な状況となっていました。

一刻を争う事態ですが、埼玉県に医者がいるはずもなく、祈祷師しかいません。

埼玉デュークが百美を東京に連れて行き、病院で治療をさせる事になります。

山道を馬で疾走する埼玉デュークですが、何者かの銃弾に倒れます。

百美は悪夢にうなされ目を覚ますと、自宅のベッドで寝ていました。

埼玉デュークからの情報を元に、屋敷内に隠されている賄賂の金塊を探す百美は、隠し扉を探し出し、ある地図を見つけます。

地図に示された場所は、謎の巨大生物が生息する、関東の秘境である群馬県赤城山でした。

一方、麗は百美が無事に自宅へ送り届けられた事と、埼玉デュークが狙撃され倒れたという情報を聞かされます。

更に、このタイミングで千葉解放戦線が埼玉に攻め込んで来るという情報も得ます。

絶対絶命の事態ですが、麗は父親からビデオメッセージで、自身が埼玉デュークの子どもである事を聞かされます。

父である埼玉デュークの後継者として、千葉解放戦線との全面戦争に向け、麗はバラバラの埼玉県民をまとめ上げます。

阿久津もまた、埼玉解放戦線を殲滅させようと気合をいれますが、阿久津の前にある男が現れます。

翌日、千葉解放戦線と埼玉解放戦線は全面戦争を開始、壇ノ浦建造は神奈川県知事とその様子を笑いながら見ていました。

東京都と癒着関係にある神奈川県は、埼玉デュークの動きを察知し、銃撃していました。

そこへ、群馬県から戻って来た百美が現れます。

群馬県は、東京都から金を受け取り、県民総出で秘境を演出、都知事が隠していた金塊を守っていました。

この事実を世間に公表としようとする百美。

ですが建造は、百美個人の力ではどうする事もできないと鼻で笑います。

しかし、建造の予想を超えた事態が起きます。

争っていたはずの千葉解放戦線と埼玉解放戦線が同盟を組み、都庁に押しかけて来ました。

実は、埼玉デュークは生きており、阿久津にも裏通行手形の情報を流し、麗と阿久津は休戦協定を結ぼうとしていました。

そこへ群馬県に眠る金塊の謎を解いた百美が現れ、都知事である自分の父親の不正を公表する為に、一連の計画を考えたのです。

都庁に押しかける、千葉と埼玉同盟軍。

マスコミや民衆が押しかけ、大騒ぎになっている所に、百美は都知事の一連の不正を告発する文書をばらまきます。

不正が暴かれ、連行される建造。

そして、騒動の首謀者である麗と阿久津、埼玉デュークも連行されます。

埼玉デュークは、百美に新たな計画の文書を渡します。

そこには「日本全国埼玉化」計画の詳細が記されていました。

カーラジオで都市伝説を聞いていた愛海の両親は号泣。

呆れた愛海は春翔に会いますが、春翔も同じカーラジオを聞いて感動しており、東京ではなく春日部に住む事を決断。

愛海の東京への夢は儚く消え去ってしまいました。

映画『翔んで埼玉』の感想と評価


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
原作は1982年に刊行された漫画ですが、2015年に復刊された際に、埼玉県のディスり具合が話題になり、口コミで評判が広がった作品です。

ここでは、原作と映画を比較しながら、見どころを紹介していきます。

原作は未完結


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
『翔んで埼玉』の原作は完結しておらず、麗と百美が伝説の男、埼玉デュークを探しに行く場面で終了します。

なので、映画で京本政樹が演じた埼玉デュークは、原作では登場しません。

1982年に開始された『翔んで埼玉』は、何故未完結なのでしょうか?

そもそも『翔んで埼玉』が生まれたキッカケは、原作者の魔夜峰央が、当時お世話になっていた編集長の勧めで所沢に住んだ事にあります。

その後、編集長による監視体制に置かれた魔夜峰央は、埼玉に閉じ込められたことへのリベンジとして、『翔んで埼玉』を執筆しました。

ですが、4年後に埼玉から脱出した魔夜峰央。

横浜へ引っ越した事で、横浜から所沢をバカにしたら、本当のいじめになると感じ、あえて続きを描きませんでした。

映画『翔んで埼玉』が、原作の続きとなっており、魔夜峰央も「これで漫画も完結」と作品に対する賛辞を送っています。

漫画原作の映画として、この形はなかなか珍しいのではないでしょうか。

武内監督の郷土愛が炸裂


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
原作の『翔んで埼玉』には、映画版で重要な役割を担う組織、千葉解放戦線は登場しません。

これは、コメディ映画の原作を探していて『翔んで埼玉』の原作を読んだ、千葉県出身の武内英樹監督が「埼玉だけこんなにいじられて、悔しい!」と感じた事から生まれた、オリジナルのアイデアです。

また、東京都と神奈川県の癒着関係や、秘境である群馬県での展開も映画オリジナルとなっています。

これらのオリジナル要素により、『翔んで埼玉』の世界観は間違いなく広がりましたね。

豪華俳優による怪演


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
独特の世界観が展開する『翔んで埼玉』、この世界が成立したのは、主演のGACKTの存在が大きいです。

武内監督は、GACKTを「人間と言うよりCG」と表現しており、GACKTが麗を演じる事で「虚構の世界である」と、観客に伝える事を狙いました。

作品内では、GACKTが無敗を誇る番組の企画「格付けチェック」を連想させる場面や、2007年に放送された大河ドラマ『風林火山』で、GACKTが演じた上杉謙信の出陣シーンを連想させるような、セルフパロディー的な場面もあり、武内監督がGACKTという虚構の存在を楽しんでいる事が伝わりますね。

また、俳優や映画監督として幅広い活躍を見せる伊勢谷友介が、千葉解放戦線を率いる阿久津を喜々として演じ、麿赤兒も本業である舞踏家のメイクで出演するなど、どうやって出演交渉したのかが気になるぐらいの、豪華俳優による怪演も見どころです。

しっかりと語られるテーマ


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
コメディ映画として、かなり振り切っている本作ですが、作品にしっかりとテーマも盛り込まれており、それは百美の作品内での成長と、語られるセリフに込められています。

ここで感動する人もいるかもしれませんが、その後の展開で全て帳消しにしてくる為、本作はとにかく、最初から最後まで笑って楽しめる、エンターテインメント作品と言えるでしょう。

まとめ


(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
武内英樹監督の漫画原作コメディと言えば、阿部寛主演で映画化した「テルマエ・ロマエ」シリーズが有名ですね。

ただ、「テルマエ・ロマエ」シリーズは、後半がいきなりシリアスな展開となり、作品全体として若干のアンバランスさを感じていました。

ですが『翔んで埼玉』は、終始コメディに徹底しており、その中で感動的なシーンを隠し味のように入れています。

現在の日本映画で、コメディ映画を成立させる監督は少ない印象なので、貴重な才能だと思います。

武内監督は、コメディだけでなく、2018年には『今夜、ロマンス劇場で』という恋愛ファンタジー映画も製作しているので、次はどんなジャンルで何を題材にするかが、非常に楽しみですね。


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