映画『翔んで埼玉』は、2019年2月22日(金)よりロードショー!
累計発行部数が62万部を突破した、埼玉ディスり漫画を映画化した『翔んで埼玉』。
原作売り上げの3割を埼玉県が占め、上田清司埼玉県知事からは「悪名は無名に勝る」と激励コメントも飛び出すなど、何かと話題になっている本作をご紹介します。
映画『翔んで埼玉』の作品情報
【公開】
2019年2月22日(日本映画)
【原作】
魔夜峰央
【監督】
武内英樹
【脚本】
徳永友一
【キャスト】
二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、中尾彬、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、京本政樹、JAGUAR
【作品概要】
『パタリロ!』で知られる魔夜峰央の原作を、『のだめカンタービレ』シリーズや『テルマエ・ロマエ』シリーズの、武内英樹監督が映画化。
アメリカ帰りの隠れ埼玉県民、麻実麗の、東京都民に迫害を受ける埼玉県民を救う為の戦いを描くコメディ映画。
メインキャラクターの麻実麗にGACKT、壇ノ浦百美を二階堂ふみが演じ、伊勢谷友介や中尾彬、京本政樹などの実力派キャストが顔を揃えました。
映画『翔んで埼玉』あらすじ
埼玉で生まれ育った菅原愛海は、何も無い埼玉を毛嫌いしており、恋人の春翔と結婚して東京に引っ越すことを楽しみにしていました。
愛海と春翔の結納の日、愛海は両親が運転するワンボックスカーで、春翔の元へ向かいます。
BGM代わりに聞いていたカーラジオ、そこからは、埼玉にまつわる都市伝説が流れます。
19XX年。
東京都民から、迫害を受けていた埼玉県民。
繁栄している東京都とは対象的に、埼玉県は荒廃した地域となっています。
東京へ渡るには通行手形が必要となり、通行手形を持てない身分の埼玉県民は、ヒッソリと暮らしていくしか道がありませんでした。
アメリカから帰国してきた麻実麗は、そんな東京にある超名門校、白鵬堂学院へ入学します。
白鵬堂学院では出身地でランク付けされており、親の転勤で東京へ移住した埼玉県民は、Zクラス。
Zクラスは掘っ建て小屋の中で毎日自習をするしかない、辛い環境に追いやられていました。
白鵬堂学院の酷い実態を目の当たりにした麗。
麗は、白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美に気に入られますが、埼玉県民を馬鹿にする百美に麗は挑戦的な態度を取ります。
激怒した百美は、麗を白鵬堂学院から追い出す為に、瓶に入れられた空気だけで東京の地名を当てる「東京テイスティング」を挑みますが惨敗。
これまで完璧を貫いてきた百美は、ショックで意識が朦朧とします。
麗に助けられ、百美は保健室へ運ばれます。
そして、麗から「挨拶代わり」のキスをされた百美は、麗に特別な感情を抱くようになりました。
百美に自宅へ招待された麗は、東京都知事で百美の父親である、壇ノ浦建造と対面します。
麗はトイレに行くふりをして、東京都知事室に入ろうとしますが、壇ノ浦家の執事、阿久津翔に止められます。
そして、阿久津は麗に「貴様、埼玉だな?」と探りを入れますが、麗は聞き流して立ち去ります。
麗と百美は、2人で買い物に出かけますが、そこで突然「埼玉警報」が発令。
麗の屋敷の家政婦、おかよが、強制送還部隊に追われていました。
おかよを助けようとした麗も埼玉出身疑惑をかけられ、その証明に草加せんべいを踏む事を強要されますが、麗は体が動きません。
おかよはその間に逃げようとしますが、強制送還部隊に捕まってしまいます。
麗は百美に助けられ、その場を立ち去りました。
実は、麗は埼玉出身であり、父親の意向で次の東京都知事になる為、一度アメリカへ渡り埼玉臭さを消し去って東京へ戻って来た、埼玉を救う事を託された者でした。
麗の正体に百美はショックを受けますが、麗と一緒に逃げる事を選択します。
2人は追われる立場となってしまいました。
映画『翔んで埼玉』の感想と評価
原作は1982年に刊行された漫画ですが、2015年に復刊された際に、埼玉県のディスり具合が話題になり、口コミで評判が広がった作品です。
ここでは、原作と映画を比較しながら、見どころを紹介していきます。
原作は未完結
『翔んで埼玉』の原作は完結しておらず、麗と百美が伝説の男、埼玉デュークを探しに行く場面で終了します。
なので、映画で京本政樹が演じた埼玉デュークは、原作では登場しません。
1982年に開始された『翔んで埼玉』は、何故未完結なのでしょうか?
そもそも『翔んで埼玉』が生まれたキッカケは、原作者の魔夜峰央が、当時お世話になっていた編集長の勧めで所沢に住んだ事にあります。
その後、編集長による監視体制に置かれた魔夜峰央は、埼玉に閉じ込められたことへのリベンジとして、『翔んで埼玉』を執筆しました。
ですが、4年後に埼玉から脱出した魔夜峰央。
横浜へ引っ越した事で、横浜から所沢をバカにしたら、本当のいじめになると感じ、あえて続きを描きませんでした。
映画『翔んで埼玉』が、原作の続きとなっており、魔夜峰央も「これで漫画も完結」と作品に対する賛辞を送っています。
漫画原作の映画として、この形はなかなか珍しいのではないでしょうか。
武内監督の郷土愛が炸裂
原作の『翔んで埼玉』には、映画版で重要な役割を担う組織、千葉解放戦線は登場しません。
これは、コメディ映画の原作を探していて『翔んで埼玉』の原作を読んだ、千葉県出身の武内英樹監督が「埼玉だけこんなにいじられて、悔しい!」と感じた事から生まれた、オリジナルのアイデアです。
また、東京都と神奈川県の癒着関係や、秘境である群馬県での展開も映画オリジナルとなっています。
これらのオリジナル要素により、『翔んで埼玉』の世界観は間違いなく広がりましたね。
豪華俳優による怪演
独特の世界観が展開する『翔んで埼玉』、この世界が成立したのは、主演のGACKTの存在が大きいです。
武内監督は、GACKTを「人間と言うよりCG」と表現しており、GACKTが麗を演じる事で「虚構の世界である」と、観客に伝える事を狙いました。
作品内では、GACKTが無敗を誇る番組の企画「格付けチェック」を連想させる場面や、2007年に放送された大河ドラマ『風林火山』で、GACKTが演じた上杉謙信の出陣シーンを連想させるような、セルフパロディー的な場面もあり、武内監督がGACKTという虚構の存在を楽しんでいる事が伝わりますね。
また、俳優や映画監督として幅広い活躍を見せる伊勢谷友介が、千葉解放戦線を率いる阿久津を喜々として演じ、麿赤兒も本業である舞踏家のメイクで出演するなど、どうやって出演交渉したのかが気になるぐらいの、豪華俳優による怪演も見どころです。
しっかりと語られるテーマ
コメディ映画として、かなり振り切っている本作ですが、作品にしっかりとテーマも盛り込まれており、それは百美の作品内での成長と、語られるセリフに込められています。
ここで感動する人もいるかもしれませんが、その後の展開で全て帳消しにしてくる為、本作はとにかく、最初から最後まで笑って楽しめる、エンターテインメント作品と言えるでしょう。
まとめ
武内英樹監督の漫画原作コメディと言えば、阿部寛主演で映画化した「テルマエ・ロマエ」シリーズが有名ですね。
ただ、「テルマエ・ロマエ」シリーズは、後半がいきなりシリアスな展開となり、作品全体として若干のアンバランスさを感じていました。
ですが『翔んで埼玉』は、終始コメディに徹底しており、その中で感動的なシーンを隠し味のように入れています。
現在の日本映画で、コメディ映画を成立させる監督は少ない印象なので、貴重な才能だと思います。
武内監督は、コメディだけでなく、2018年には『今夜、ロマンス劇場で』という恋愛ファンタジー映画も製作しているので、次はどんなジャンルで何を題材にするかが、非常に楽しみですね。