数々の名シーンが詰まった傑作チャップリン映画
“喜劇王”チャールズ・チャップリン監督・主演の、1925年製作の映画『黄金狂時代』
一攫千金を求めて山を目指す男たち描いたコメディ映画のクラシックを、ネタバレ有でレビューします。
映画『黄金狂時代』の作品情報
【日本公開】
1925年(アメリカ映画)
【原題】
The Gold Rush
【製作・監督・脚本・音楽(サウンド版)】
チャールズ・チャップリン
【撮影】
ローランド・トザロー、ジャック・ウィルソン
【キャスト】
チャールズ・チャップリン、ジョージア・ヘイル、マック・スウェイン、トム・マレイ、ヘンリー・バーグマン、マルコム・ウエイト、スタンリー・J・サンフォード
【作品概要】
“喜劇王”チャールズ・チャップリンが監督・主演を務めた、1925年のコメディ映画。雪深い山に金鉱を捜し求める男たちの騒動を描きます。飢えをしのぐために靴を食べたり、フォークを刺したロールパンでダンスするシーンが有名となりました。
1926年のキネマ旬報ベスト・テン外国映画1位に加え、イギリスBBCが2015年に発表した「史上最高のアメリカ映画100本(The 100 Greatest American Films)」では17位に選出。1942年には、チャップリン自身がナレーションをつけて再編集したサウンド版も製作されました。
映画『黄金狂時代』のあらすじとネタバレ
参考:『黄金狂時代』の1シーン
アラスカ山脈で金鉱が発見されたことにより、一攫千金を求める者が相次いで山を目指していた1920年代。
その中の一人、チャーリーは、吹雪を逃れるために小屋に駆け込みますが、中にはお尋ね者となっていたラーセンが潜んでいました。
小屋から出ていくよう脅すラーセンと、それを拒むチャーリーが揉めていると、そこへやはり金脈を求める大男のジム・マッケイが現れたことで、仕方なく3人で避難生活を送ることに。
次第に飢餓状態となった3人は、外へ食料を探す者を決めることにし、ラーセンが行くことになります。
外に出たラーセンは、彼を追う警察と遭遇してしまいますが、彼らを殺害し、荷物を奪って逃走。
その頃、チャーリーとジムは、空腹を満たすためにチャーリーの靴を食べることに。
靴底をステーキに、紐をスパゲッティに見立てて食べるチャーリー。
しかしその後、飢餓と寒さが頂点に達したジムから、鳥と錯覚されて襲われたりも…。
そうした危機を乗り越え、小屋に入ってきた熊を仕留めて、2人はなんとか飢えをしのぐのでした。
吹雪が止み、体力を回復させた2人は、一旦分かれて金脈探しに。
そこでジムは、ついに金鉱を見つけるも、先に見つけていたラーセンに襲われて気絶させられてしまいます。
だがラーセンは、逃亡中に崖が崩れてしまい、奈落の底に落ちてしまうのでした。
一方チャーリーは、麓にある町の酒場で出会ったジョージアに一目ぼれ。
女たらしのジャックに言い寄られる彼女は、いつかこの町を出ようと思っていました。
ジョージアの気を惹こうと、チャーリーはとりあえず鉱山技師ハンクの小屋の留守番をする仕事に就きます。
そこへ、友人たちと雪遊びをしていたジョージアと再会し、大晦日の晩に小屋でパーティをする約束を取り付けます。
大晦日当日、パーティの準備をして待つチャーリーは、いつの間にか眠りに。
夢の中では、チャーリーがフォークを刺したロールパンを使ってダンスを披露し、ジョージアたちを楽しませていました。
その頃、ジョージアはパーティのことなど忘れて、ジャックたちと酒場で騒いでいました。
その様子を店の外で見かけ、気落ちするチャーリー。
年が明けた直後、約束を思い出して小屋に向かうジョージアでしたが、中には誰もおらず、プレゼントにご馳走が用意された状態のテーブルが。
彼の気持ちを弄んでしまったと後悔したジョージアは、謝罪の手紙を書いて酒場に託します。
映画『黄金狂時代』の感想と評価
参考:『黄金狂時代』の靴を食べるシーン
本作『黄金狂時代』は、チャップリンが、友人にして映画会社ユナイテッド・アーティスツの共同経営者のダグラス・フェアバンクス&メアリー・ピックフォード夫妻から、アラスカの金鉱発見のスライド写真を見せてもらったことが、制作のアイデアにつながりました。
加えて、1846年のシエラ・ネバダで発生した開拓団のドナー隊の悲劇から、靴を食べるシーンを思いついたとされています。
撮影で食べる靴は、革部分は海藻、釘は飴細工、靴紐はイカ墨スパゲッティで造ったものを使用。
しかし、60回以上も撮り直しをしたために、チャップリンとジム役のマック・スウェインは食あたりを起こしています。
映画評論家の淀川長治は、このシーンについて、これまでのチャップリン映画の代名詞である衣装のドタ靴を食べる=彼が新たなステップに進むという意思表示であると考察しています。
ちなみに本作は1942年に、チャップリン自身がナレーションをつけて再編集したサウンド版も製作されています。
現在テレビで放映されるのは、このサウンド版が主となっていますが、実はこちらにはオリジナル版にあったラストのキスシーンがありません。
理由として、撮影時はチャップリンとジョージア役のジョージア・ヘイルが恋愛関係にあったものの、再編集を施した42年には、すでにその関係が終わっていたためにカットされたとも云われています。
まとめ
参考:『黄金狂時代』のロールパンのダンスシーン
靴を食べるシーン以外にも、ロールパンのダンスシーンは『ピックポケット!』(1983)や、『ジョジョ・ラビット』(2020)にオマージュされたり、クライマックスの山小屋シーソーは、『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』(2015)での山小屋での攻防シーンを彷彿とさせるなど、古今東西の映画に影響を与えた本作『黄金狂時代』。
単純明快で楽しい本作を、ぜひチェックしてみてください。