メンタンピンツモドラドラ、ハネマン!
命をかけて人生をツメ!
1984年に一度映画化された阿佐田哲也のベストセラー小説『麻雀放浪記』が、35年の時を経て再びスクリーンに還ってきました。
さらに主人公・坊や哲も1945年から2020年にタイムスリップ!?戦後の荒れた賭場から、東京オリンピック開催年にやってきた哲が目にした日本とは?
何の運命か、時空を越えて引き寄せられた最強雀士たち。命を賭けたヒリヒリする戦いが幕をあげます。
映画『麻雀放浪記2020』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本)
【原作】
阿佐田哲也
【監督】
白石和彌
【キャスト】
斎藤工、もも、ベッキー、的場浩司、岡崎体育、ピエール瀧、音尾琢真、村杉蝉之介、伊武雅刀、矢島健一、吉澤健、堀内正美、小松政夫、竹中直人、ヴァニラ
【作品概要】
1984年に和田誠監督で映画化された、阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』を、白石和彌監督が再映画化した『麻雀放浪記2020』。
前作では真田広之が演じた主人公・坊や哲を、斎藤工が演じるほか、強靭雀士としてベッキー、的場浩次、小松政夫らが集結。
また、ミュージシャンとして活躍中のチャラン・ポ・ランタンのもも、そして岡崎体育と、異色の配役に注目です。
映画『麻雀放浪記2020』のあらすじとネタバレ
1945年、戦後日本。ここは、騙し騙され、奪い奪われ、金が飛び交う賭場「雀荘オックス・クラブ」。坊や哲にとって、すべてを賭けた戦いの最中でした。
目覚めると、麻雀牌ウーピンを握りしめ道に倒れていました。
東京浅草、雷門の前には憲法改正を訴える市民団体の姿がありました。それを弾圧しにやってきた警察官。市民を容赦なく叩きのめします。なにやら天高くそびえ立つ建物が見えます。
壁には東京オリンピックのポスターが張ってありました。1940年、東京にて開催予定だったにも関わらず、支那事変の影響から日本政府が開催権を返上し、実現には至らなかった幻のオリンピックのことでしょうか。
いや、ポスターには確かに東京オリンピック2020と書かれています。通りすがりのおじさんに寄ると、「今は2020年。開催予定だった東京オリンピックは第三次世界大戦であっけなく負けた日本では開催されないよ」。さらっと凄い情報を漏らします。
哲は1945年の戦後日本から、2020年の戦後日本へタイムスリップしたのです。
状況が把握できずうろつく哲に声を掛けたのが、コスプレ麻雀喫茶で働く地下アイドル・ドテ子でした。
世は麻雀ブーム。ドテ子に誘われ入った店にはコスプレ姿で麻雀を楽しむ人々の姿がありました。哲のギャンブラーの血が騒ぎます。
しかし、全自動の麻雀卓に驚き、安い手ばかりでアガる生温い勝負と、お金を賭けない賭場に怒り暴れるうちに警察に捕まります。
警察は、哲の頭に機械をかざし人物を特定しようと試みますが、何も情報が得られません。怪しまれる所を救ったのは、またしてもドテ子でした。
2020年、日本国民は額に埋め込まれたマイナンバーのチップで過剰に管理されていました。また、AI導入で起こった労働環境破壊によって職を失った人間はスラム街に住み、闇賭博をする荒んだ生活をしています。賭博取り締まりの弾圧はエスカレートしていました。
1945年の戦後の日本よりもさらに壊れた日本が未来に待っていたのです。
ドテ子の所に世話になる哲。部屋には、クソ丸という芸能事務所の社長が同居していました。
クソ丸は、ドテ子を売り出そうと麻雀番組に出演させますが、結果を出せないドテ子に平気で枕営業をさせます。
ドテ子は、人に嫌われたくないあまり、頼まれると何でもしちゃう女の子。「笑いたくない時は笑うな」と哲に言われ、好きになっていきます。
学生服に手ぬぐい姿、今の日本を全く知らない哲のことを、コスプレを極め、キャラを徹底的に作り上げている人と思っていたドテ子とクソ丸。
しかし、哲のタイムスリップの話を聞くうちに信じるようになります。
1945年、哲がすべてを賭けて挑んだあの夜。雀荘オックス・クラブで対局していたメンバーは、哲、ドサ健、出目徳、そしてママでした。
オックス・クラブのママは哲の憧れの女性でした。ママの所で世話になりながら、麻雀を教わりました。
「イカサマとインチキは違う。技を使って勝たなければならない時がある」。麻雀はただのギャンブルではなく、技を競い合う競技でもあります。
勝負は出目徳の技が冴えていました。「九蓮宝燈」の大技が続きます。しかし、ヤクで弱っていた心臓が激闘に耐えられず途中で動かなくなってしまいます。
儲けを分け、さらに勝負を続ける3人。外では雷が鳴り響きます。哲の手元に運命のウーピンがやってきます。「九蓮宝燈」です。
ツモる寸前、麻雀牌が光り出します。次の瞬間、雷に打たれたような電流が駆け抜けました。こうして哲は2020年にタイムスリップしたのです。
哲が2020年の町を歩いていると、AI人形の広告が目に飛び込んできました。そのAIはなんとママにそっくりでした。
AIの輸出国へと成長した日本では、政府が中止になった五輪を東京で再び開催しようともくろんでいました。現代に流行っている麻雀に目を付けた政府は、AIと人間を戦わせるマージャン五輪の開催を決定します。
AIは勝って当然。むしろ互角に戦える人間を探す方が大変です。
その頃、哲はクソ丸によってイケメン雀士として売り出されていました。
映画『麻雀放浪記2020』の感想と評価
「ボーッと生きてんじゃねえよ、ニッポン」。チコちゃんさながらの常套文句が飛び出した映画『麻雀放浪記2020』は、昭和の大小説家、阿佐田哲也の魂と共に、令和のニッポンに問うセンセーショナルな映画となっています。
本当の自由とは何か。魂を燃やして生きているのか。溢れる欲望をどこにぶつければいいのか。麻雀を通し、ブラックユーモアを交え、私たちに問いかけてきます。
そしてこの熱き映画は、キャストの演技によりさらにヒートアップ。
主人公「坊や哲」を演じた斎藤工は、10年の歳月をかけ、猛烈な熱量でこのプロジェクトを配信し続けました。
お笑いも出来るセクシー俳優、斎藤工が身体を張って挑んだ役「坊や哲」の、学ランにふんどしを締め打つ麻雀姿は必見です。笑いと本気の狭間の演技が妙にハマります。
また、斎藤工に負けず劣らずの奇抜な役に挑むキャスト陣のすごさ。特に女性陣のキャラ崩壊演技は度肝を抜かれます。
ヒロインのドテ子には、アコーディオン姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンのヴォーカル、ももが大抜擢されています。
ももの可愛らしい声が、ドテ子のキャラを一層盛り上げます。ゴリゴリのコスプレにバーチャルSEX。人間の男とキスをするとゲロを吐く。斎藤工との肉弾戦にここまでしていいの?と心配になります。
また、ママとAI・ユキの二役を演じたベッキー。彼女の無表情は、もはやロボットを越えたロボット。はまり過ぎて怖いです。ママの妖艶な演技と無機質のロボット演技、見比べて下さい。
そして、クソ丸役の竹中直人。どこまでも最低人間クソ丸を怪演しています。なんでこんなに憎たらしいのでしょうか。
憎たらしい演技はもう一人。ミュージシャンの岡崎体育です。ドテ子のファンでオタクのテロリスト・ドクを演じています。絶妙なキモさに、ドテ子を思う健気な演技がいじらしい。
白石監督作品ではお馴染みの、チーム・ナックスのメンバー音尾琢真と、ピエール瀧が、これまた規格外な演技で楽しませてくれます。
登場人物すべてが曲者揃いの映画『麻雀放浪記2020』。個性豊かな俳優たちの演技バトルがみどころです。
まとめ
1984年に和田誠監督で映画化された、阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』を、白石和彌監督が再映画化した『麻雀放浪記2020』を紹介しました。
『凶悪』『彼女がその名を知らない鳥たち』、そして『凪待ち』と人間の深層心理のグロさをみごとに描き出す白石和彌監督が、人生の賭けにでる男女のヒリヒリを、ギリギリに攻めます。
あなたには、人生を賭けて熱くなれるものがありますか?すべてを賭けてでも、手に入れたいものがありますか?人生を熱くするのは、あなた次第です。
斎藤工の熱量に見ているこちらも熱くなる映画『麻雀放浪記2020』。ヒリヒリする瞬間をお楽しみ下さい。