映画『ダンスウィズミー』は2019年8月16日(金)より全国ロードショー公開!
「突然歌って踊り出すなんてヤバくない!?」と、ミュージカル映画における暗黙の了解にツッコミを入れた日本発ミュージカル・コメディ。
それが矢口史靖監督の映画『ダンスウィズミー』です。
『スウィングガールズ』『ハッピー・フライト』と数々の名作コメディ映画を手がけてきた矢口監督の最新作にして、監督の記念すべき長編第10作にあたります。
映画『ダンスウィズミー』をご紹介します。
映画『ダンスウィズミーの作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【原作・脚本・監督】
矢口史靖
【キャスト】
三吉彩花・やしろ優・Chay・三浦貴大・ムロツヨシ・宝田明
【作品概要】
『スウィングガールズ』『ハッピー・フライト』など、その軽妙なストーリーテリングとコメディセンスが光る手腕によって数々のヒット作を打ち出してきた矢口史靖監督の最新作にして、監督の長編第10作目にあたる作品。
記念すべき長編第10作目に矢口監督が挑んだのは、日本製ミュージカル・コメディ。
抜群の歌唱力と特技であるダンスによって見事主演を勝ち取った三吉彩花を筆頭に、メインキャスト陣が歌って踊ります。
共演にはお笑い芸人のやしろ優、人気歌手のChay、現在の国内ドラマ・映画にとって欠かせない俳優となったムロツヨシ、そして日本ミュージカル界の重鎮・宝田明が揃いました。
映画『ダンスウィズミー』のあらすじとネタバレ
鈴木静香(三吉彩花)は、いわゆる勝ち組のOL。大手企業で勤め、タワーマンションに住み、ブランド品で身を包み、ランチはおしゃれなレストランだけ。
しかもわざと「食べきれない」と言って残すなど、“キラキラOL”であるために徹底した生活を送っていました。
面倒な仕事を押し付けられても、それが人気のあるエリート社員の村上涼介(三浦貴大)と近づけると分かると、自宅に仕事を持ち帰ってでもやって見せたりします。
そんなある日、休日に姪っ子の面倒を見ることを押し付けられます。嫌々ながらに引き受けた子守を何とかやり過ごすため、静香は姪っ子を連れてとある遊園地に出かけます。
何気なく二人が行ったのが、催眠術のコーナー。
そこにはいかにも怪しげな催眠術師・マーチン上田(宝田明)がいました。かつてはテレビ番組の人気者だったマーチンも、今は場末の会場で胡散臭い仕事をしています。
催眠術のことを全く信じていない静香の目の前には、玉ねぎを果物のようにかぶりつく女性・斎藤千絵(やしろ優)の姿がありました。
にわかには信じがたいマーチン上田の催眠術ですが、なぜか姪っ子はそれを見て前のめりになります。
姪っ子の願いは、学校の出し物でやるミュージカルで失敗しないことでした。
静香にとってミュージカルには、小学校の時にクラスの投票でヒロインに選ばれたにもかかわらず、舞台で大失敗してしまったという苦い思い出がありました。
姪っ子の本気を見て、それに付き合う静香。マーチンは「これから音楽を聞いたら踊らずにいられなくなる」という催眠術をかけます。ところが、姪っ子には今一つピンときません。
翌日、出社した静香は村上に声をかけられ、同じ会議に出席することになります。周りのOLからは、妬みにも似た視線を向けられます。
村上の助手役として会議を進める静香。そんな中、プレゼンの材料としてとある音楽が鳴り始めます。その瞬間、静香は会議室を飛び出して、オフィス内で歌い踊り出してしまいます。
音楽が止んだ瞬間、我に返った静香は会社を飛び出します。
あの怪しげなマーチンの催眠術が自分に効いてしまったことを知った静香はマーチンの元へ向かいますが、マーチンは既に借金取りから逃げてしまった後でした。
そこに、あの玉ねぎをかじっていた千絵が現れます。彼女はフリーターであり、マーチンに雇われた仕込みのサクラとして働いていました。
彼女しかツテがない静香は千絵から離れないまま、二人はとある興信所に向かうことに。二人を出迎えた興信所の所長・渡辺義雄(ムロツヨシ)は、マーチンの捜索調査をひき受けてくれることになります。
調査費用を工面するために、家中の品物を全て売り払う静香。勝ち組OLだったはずの静香は、いつの間にかTシャツ一枚の姿になってました。
渡辺からの連絡でマーチンが東北で怪しげな巡業をしていることを知った静香は千絵に車を出させ、マーチンの後を追います。
しかし、途中でヤンキーまがいの男たちに絡まれたり、手持ちのお金が尽きたりとトラブルが続いてしまいます。
一方で、道中にて偶然出会ったストリートミュージシャンの山本洋子(chay)と即席の路上ライブをして軍資金を稼ぎ、窮地を脱します。
そして青森に着いた時、洋子に頼まれてとある結婚パーティーでも歌声を披露することになります。
映画『ダンスウィズミー』の感想と評価
劇中のセリフで静香がツッコんでいる通り、「ミュージカル映画では作品に“没入”することができない」という方にとっての、ミュージカル映画の最大の障害。それが、「唐突に入る歌唱とダンスシーン」です。
なぜ普通に会話をしていたのに、突然歌い踊り始めるのか。不自然といえば、あまりにも不自然です。
そこに矢口監督が持ち込んだ力業というべきエクスキューズが、“音楽が鳴ると歌い踊りだしてしまう催眠術”という設定。この設定により、半ば強引に主人公は歌い踊らされてしまいます。
また「楽曲を既存の歌謡曲にする」という工夫も効果的です。
山本リンダ『ねらいうち』、キャンディーズ『年下の男の子』、サディスティック・ミカ・バンド『タイムマシンにおねがい』など、いわゆるJPOP以前の歌謡曲を敢えて選曲しています。
「懐メロ」とも呼ばれがちなこのような楽曲は、「歌えないけど知っている」「サビだけならなんとなく分かる」という方が沢山いる楽曲でもあります。
このチョイスによって、ミュージカル場面における歌唱部分の不自然さを上手い具合にごまかすことができています。
もう一つの見どころが、「ゴジラと同期」の日本ミュージカル界の重鎮・宝田明の歌唱シーンがスクリーンに焼き付けられている点でしょう。
多くの舞台で歌い踊り、アニメーション作品の吹替(『アラジン』ジャファー役が特に有名です)などでも知られるこの大ベテランは、意外にも映画で歌い踊るのは55年ぶりとのこと。
その55年前に歌い踊った映画とは、1964年の『ひばり チエミ いづみ 三人よれば』。
主演が美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみという昭和・戦後の大スター三人(いわゆる“三人娘”)であることからも、時代の流れを切に感じてしまいます。
女性ダンサーとのおちゃめな絡みなどを見ると、軽妙な彼の持ち味はいまだ健在だということを感じることができます。
まとめ
“催眠術”という二度目はない力業を使ったとはいえ、その制作が困難になりがちな“日本製ミュージカル映画”を矢口監督はやり切りました。
これには、やはり主演を務めた三吉彩花の歌と踊りに対する努力の成果が大きいといえます。
オーディションを通過したのち、三吉彩花のスケジュールは3か月間びっしりと歌と踊りのレッスンで埋まったという話です。
これは妻夫木聡たち若手俳優にシンクロを本気でやらせた『ウォーターボーイズ』、上野樹里たちにビッグバンドジャズのスタンダードをフルで演奏させた『スウィングガールズ』と同じ手法です。
特技がダンスとバレエである三吉彩花でしたが、この三カ月の猛特訓を経て「今まで初めてといっていいほど極限に追い込まれた」と語っています。
その甲斐もあり、劇中ではポールダンスやヒップホップダンス、変則的な空中ブランコ、更にはテーブルクロス引きまでやって見せます。
過去に若手を鍛えた作品に比べて主演一人にかかる部分が大きく、プレッシャーも並大抵のものではなかったでしょうが、結果として観た者が決して忘れることのできない輝きを、1時間43分の上映時間中めいっぱいに放ち続けています。
それだけでも、この映画を見る価値はあると思います。
映画『ダンスウィズミー』は2019年8月16日(金)より全国ロードショー公開!