ハートフルでエキサイティングな密室コメディ。
夏休みのバカンスに出かけた家族が、停車不能の暴走車両に乗り込んだ事から起きる騒動を描いたコメディ映画『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』。
主人公の家族を軸に、個性豊かなキャラクターが多数登場する他、カーアクション要素も入った異色の作品となる、本作をご紹介します。
映画『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』の作品情報
【日本公開】
2017年(フランス映画)
【原題】
A fond
【監督・脚本】
ニコラ・ブナム
【協同脚本】
フレデリック・ジャルダン、ファブリス・ロジェ=ラカン
【キャスト】
ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ビニョ、ジョゼフィーヌ・キャリーズ、スティラノ・リカイエ
【作品概要】
監督は、フランスで大ヒットを記録した『世界の果てまでヒャッハー!』など、一風変わったコメディ作品に定評のあるニコラ・ブナム。
主演に、フランスで数々のコメディ作品に出演し、2000年の映画『Jet Set』でトップスターとなった、ジョゼ・ガルシア。
映画『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』のあらすじ
整形外科医で大儲けしているトムは、精神科医で妊娠中の妻ジュリアと、反抗期の娘リゾン、ヤンチャ盛りの息子ノエと4人で暮らしていました。
夏休みのある日、トムは家族と1週間の旅行に出かけますが、リゾンは完全に嫌がっています。当初はノリ気だったジュリアも、トムの父親ベンが一緒である事が分かり、あからさまに不機嫌に。
それでも、強引に家族旅行を決行しようとするトムは、新型のシステム「メドゥーサ」を搭載した新車に、家族を乗せて出発。
目的地のビーチに向かう途中、妊娠している子どもの名前にベンが口出ししてきた事で、ジュリアは更に機嫌が悪くなり、車内は険悪なムードになります。家族旅行を盛り上げようとする、ベンの明るさも完全に空回りしていました。
家族が立ち寄ったサービスエリアで、ベンはメロディという女性と出会います。母親とヌーディストビーチに向かう途中で置き去りにされたメロディを、ベンは勝手に車に乗せて荷台に隠しました。
サービスエリアから出発したトム一家ですが、ベンの無神経な発言の数々にジュリアの怒りが爆発、自宅に帰る事を望むようになります。
ベンはジュリアをなだめながら運転を続けますが、「メドゥーサ」が突如不具合を起こし、加速はできても減速ができなくなってしまいます。
トム一家の車は、停車が不可能な暴走車となりました。
映画『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』感想と評価
家族崩壊を起こしかけている一家が、暴走車両に乗り込んだ事から起きる、騒動を描いたコメディ映画『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』。
家族をテーマにした、ロードムービーと言えば、2006年の『リトル・ミス・サンシャイン』などがありますが『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』では、加速しまま停車不能となる、暴走車両を登場させる事で、アクション映画の要素を強くしている事が特徴です。
車の暴走シーンは、ニコラ・ブナム監督の「本物を撮りたい」という希望から、実際に130キロで車を走らせて撮影しています。
実際に130キロで走りながらの撮影の為、俳優たちも鬼気迫るリアルな演技となっており、主演のジョゼ・ガルシアは、撮影現場での事故の多さから「俺は今、アクション映画の撮影現場にいるのか?」と思った事を語っています。
そんな危険と隣り合わせの撮影で作られた本作ですが、車を停車できないトムの家族を襲うピンチの数々は、スズメバチやワイパーの破損、トムとジュリアの不倫騒動など、実に地味で身近なものになっています。
ロードムービーコメディだと、必ず話をややこしくするキャラクターがいますが、本作ではトムの父親、ベンがその存在です。
ベンは、10年で30人の女性に振られており、トムの車を勝手に使用したスピード違反の常習犯だったり、トムの整形外科のお金を私的に流用するなど、めちゃくちゃなキャラクターです。
このベンを、クロード・ルルーシュやジャン=ピエール・ジュネ、クリストフ・ガンズなど、フランスを代表する監督作品に数多く出演している、アンドレ・デュソリエが演じており、どこか憎めないベンを熱演しています。
本作のテーマは、家族の絆の再生で、特にトムとベンの親子の物語でもあります。
主人公のトムは、ベンの息子でありながら、2人の子供の父親でもあり、ジュリアの夫という、さまざまな立場を使い分けなければならず、どこか自分中心で空回りしている印象がありました。
ですがラストには、子供を守る父親であり、ジュリアを愛する夫となり、また、父親を尊敬する息子へと変わります。トムが家族の中心として立派になったからこそ、バラバラになりかけていた家族が1つになるのです。
本作は、トムの成長を通して、家族の形を問いかける作品でもあります。
まとめ
本作に登場するキャラクターは、トムの家族を始め、トムの苦情を全て受け流す自動車ディーラーや、能力は高いですが、口が悪く卓球好きの高速道路警備隊の隊長など、どれも個性豊かです。
特に、トムの車にBMWを破壊され、執拗に追跡してくるドライバーが強烈で、トムの車を追いかけて、料金所を突破したり、高速道路警備隊を振り切ったりと、めちゃくちゃな追跡を続けます。
執念の追跡を見せるBMWのドライバーと、それに気付いてないトムとの、全く噛み合わない関係も見どころとなっています。
コメディ作品に、アクション要素を入れた本作は、カーアクション部分も見応えがあり、最高級のエンターテイメント作品としておススメですよ。