韓国で190万人を動員!抱腹絶倒の入れ替わりコメディ映画!
韓国のアイドルグループ「B1A4」にて、リーダーを務めるジニョンの初主演作『僕の中のあいつ』。
韓国で大ヒットし、2019年初の損益分岐点を超えた映画『僕の中のあいつ』が2019年08月09日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋で絶賛公開中です。
映画『僕の中のあいつ』の作品情報
【公開】
2019年公開(韓国映画)
【監督】
カン・ヒョジン
【キャスト】
ジニョン、パク・ソンウン、ラ・ミラン、イ・ジュニヨク、イ・スミン、キム・グアンギュ、ユン・ギョンホ
【作品概要】
男性アイドルグループ「B1A4」のリーダーとして絶大な人気を博し、映画『怪しい彼女』やドラマ『雲が描いた月明かり』での演技も高く評価されたジニョンの初主演作。
高校生のキム・ドンヒョンは同級生たちからパシリにされるなど、毎日いじめの対象になっていました。ある日、屋上で危険な行為をさせられ、足を踏み外して転落。たまたま下にい財閥組織の社長であるチャン・パンスと激突します。その瞬間2人の人格は入れ替わってしまいます。
大人と子供が入れ替わったことから起こるてんやわんやを描いた抱腹絶倒のコメディー映画。
映画『僕の中のあいつ』あらすじとネタバレ
“一流財閥組織”の社長であるチャン・パンスは一見カタギに見えますが、背中に入れ墨を背負い、ヤクザまがいの暴力行為も辞さないやり手でした。
会長の娘と結婚していますが、2人の心はとっくに離れてしまっていました。
ある木工所が土地の明け渡しに応じないというので、チャンは部下を送り込み、所長を暴力で脅して判を押させます。そんな調子で欲しいものを手に入れてきたチャンには怖いものなどないように見えました。
しかし、そんなチャンを陥れようと企む男がいました。ヤン社長という別会社の男です。ヤン社長の会社も堅気でないのは言うまでもありません。
そんな中、パンスは“聖地”へと車を走らせます。そこは若い頃過ごした街でした。懐かしい食堂に入りますが、店主は変わっていて、味も全く違っていました。その上、財布を忘れたという大食いの高校生の分まで支払わされる始末です。
パンスが運転していると、道をゴミ収集車が塞いでおり、通行できません。「いまいましい街だ」と車を降りるパンス。
その時、上空から人が落ちてきてパンスに激突。ふたりは病院に運ばれます。
校舎の屋上から落下したのはキム・ドンヒョンという男子高校生で、さっきの食堂の大食い少年でした。
病室に入ってきた看護師はドンヒョンが目覚めたことに気が付き、あわてて医師を呼びに行きます。
ところが、ドンヒョンの体で目覚めたのはパンスでした。激突の衝撃によってか、2人の体と心が入れ替わってしまったらしいのです。
彼は別の部屋で未だ昏睡状態にある自分の姿を見て愕然とします。
ドンヒョン(実はパンス)は、パジャマ姿のまま、勝手に病院を出て自宅のマンションに戻りますが、妻は彼のことを心配するどころか、ネックレスを紛失したことを嘆いていました。
妻は見知らぬ若者が家に入ってきたのに驚き、部屋にあった日本刀を取ると、警察に連絡。彼は警察に保護され、連れ戻されてしまいます。
退院した彼はドンヒョンの父親に連れられて家に戻りました。父親はパンスに木工所を奪われたあの所長でした。
父親は退院祝いにごちそうを用意してくれていましたが、それは恐ろしい量でした。「これを全部食べろっていうのか!?」と驚くと「いつも食べてるじゃないか」と父親はいい、気がつけばドンヒョン(パンス)は全てをたいらげていました。
ドンヒョンは大食いの肥満気味の男子高校生でした。父親は彼を連れて教頭を尋ね、「一体何があったのでしょう。息子は自殺などしません」と訴えますが、教頭は大ごとにしたくない様子です。
「俺が調べるから帰ってもいいぞ」とドンヒョン(パンス)は言うと、父親を家に帰らせました。
先生はドンヒョンが事故のせいで記憶が曖昧であるとクラスメートに告げました。
休み時間になるとクラスメイトが彼に近づいてきて、毎日、パシリをすることも忘れたのかと絡んできました。
どうやらこのドンヒョンという高校生はパシリをさせられたり、いじめを受けていたようです。
ドンヒョン(パンス)はいじめっ子を殴りつけるとスマホを奪い、「ちょっと借りるぞ。必ず返すから」と去っていきました。呆然とするいじめっ子たち。
スマホにはあの日、ドンヒョンが校舎の屋上から落ちる際の一部始終を映した動画が残されていました。
非常に危険な位置に置かれた女子生徒ヒョンジョンの靴を取りに行くよう強要されたドンヒョンは、それを取りに行く際、バランスを崩したのです。
いじめっこたちはリーダー格の生徒から「なんで動画を消さなかったんだ!」と怒鳴られていました。
「警察に持ち込まれたらどうする」と怒鳴る生徒の前にドンヒョンがやって来ました。「俺も警察は嫌いだ。約束通り返すぞ。念の為コピーしておいたがな」
スマホを返された生徒たちはまったく違うドンヒョンの様子に唖然とするしかありません。
ドンヒョン(パンス)が歩いているとヒョンジョンという女子高生がぶつかってきました。クマのぬいぐるみを落としたので、呼び止めると彼女は振り返り、「恨んでるの?」と言うのでした。
「私にかかわるからよ」と言うと彼女は行ってしまいました。ヒョンジョンもクラスの一部の女子にひどいいじめを受けているのでした。
その頃、パンスの妻は不倫相手の男と車に乗り込もうとしていました。そこにヤン社長が仲間を連れてやってきました。
「あんたが不倫をしているのをハン会長にばらすぞ。彼はそういうのをもっとも嫌う男だからな」彼は証拠写真の入った封筒を彼女に手渡しました。
「何が望みなの?」と妻が尋ねると、ヤン社長は不敵な笑みを浮かべました。
一方、ヒョンジョンの家は食堂を営んでおり、そこで彼女の母親の姿を見たドンヒョン(パンス)は思わず「ミソン!」と声を上げていました。「お前がなぜここに!?」 ヒョンジョンの母親は自分の名前を呼び捨てにする高校生に不審そうな目をむけます。
ヒョンジョンの母親はパンスの元恋人のミソンだったのです。
彼は信頼できる部下のパン・マンチョルに命じ、入院中のパンス(中身はドンヒョン)の神の毛を採取させました。そして自分はヒョンジョンの髪の毛を抜き、大ひんしゅくを買いますが、DNA鑑定の結果、99.9%、2人は親子であることが判明します。
ミソンが妊娠していただなんて・・・。別れる時、彼女はそんな話をしていませんでした。
ヒョンジョンが娘であるとなると、彼女がクラスでいじめられているのを見逃すわけにはいきません。パン・マンチョルにいじめっ子たちを痛めつけてやれと命じますが、「未成年に手を出すのはちょっと・・・」と断られてしまいます。
「こういうことはあの方と相談されたほうがいいのでは?」とマンチョルに言われ、彼はヒョンジョンの母親のところに出向きました。
自分の娘がいじめにあっているのを知り、母親は自分のせいだ、こんな環境で育てたからと自分を責め始めました。そして「チャン・パンスのやつ、人間のクズよ」と呟きました。
「どうすれば娘と仲良くなれる?」とドンヒョン(パンス)に尋ねられたマンチョルは、「なんといってもスキンシップが大事でしょう」と答えました。
「元の体になんとかして戻るぞ」というドンヒョン(パンス)にマンチョルは言います。「その前にその体では糖尿病や高血圧で倒れそうです」
そこでドンヒョン(パンス)は、減量のため、ジムに通い始め、ヒョンジョンを呼びつけ、うまい具合に2人で特訓を受ける環境を整えます。
ボクシングなどの格闘技にも挑戦し、せっせと走り込み、トレーニングをこなしたドンヒョン(パンス)はすっかり痩せて、見違えるほどの美男子に生まれ変わりました。
それにはクラスメイトたちもびっくりです。ヒョンジョンもいじめっこたちに毅然と立ち向かうようになりました。
そんな中、スーパーで働くドンヒョンの父は仕事の帰りに闇金融の連中に囲まれていました。木工所を失った結果、彼には借金が残ったのです。
家に戻ってきたドンヒョン(パンス)は道端で父親が男たちに殴られているのに出くわします。「一週間だけ待ってやろう」と行って男たちは去っていきました。
ドンヒョン(パンス)はマンチョルを彼らに派遣します。マンチョルは彼らを懲らしめて「債務者キム・ジョンギの債務を帳消しにするように」と命じるのでした。
ヒョンジョンの母親はヒョンジョンがいじめを克服したことを喜び、ドンヒョン(パンス)に、ラーメンをごちそうしてくれました。
それは昔食べた懐かしいあのサンマラーメンでした。昔ある人と食べたものを作ってみたのよという彼女に「メニューに加えたら?」と言うと彼女は怒ったように「いやよ」と言いました。「チャン・パンスを思い出す」
彼のことを後悔しているというので、どんなふうにと尋ねると「彼を殺せなかったことよ」と彼女は憤然と答えました。
そこに既にべろんべろんに酔っ払った客が入ってきて、彼女のお尻を触りました。ドンヒョン(パンス)は怒って、男たちと乱闘騒ぎに。彼の一連の行動に疑問を持ったミソンは「誰なの? あんたは誰? なんで私を呼び捨てにするの!?」と怒って叫びました。
ドンヒョン(パンス)からことの真相を聞かされたミソンは信じられないようでした。「妊娠したことをなぜ言わなかった」とドンヒョン(パンス)が尋ねると、彼女は「なぜ今更現れたの? 行っておくけどあなたの子供じゃないわ」と言うのでした。
既に鑑定結果が出ていると応えると「そういう周到なところはチャン・パンスそのものだわ」と彼女は苦々しく答えました。
あの時、パンスはミソンを一方的に捨てたのです。「犯罪者の彼氏なんていやだろう? 俺たちは世界が違う。 俺は会長の娘と結婚することに決めたんだ」
心から後悔していると謝る彼を見て、ミソンは言うのでした。「こんな不思議なことが起きなかったら、私を探したかしら」
拒絶され、思わず彼女を抱きしめキスした彼にミソンは「キスするなんて! 私をなめてるわね」と激怒します。
その時、ドンヒョン(パンス)のもとに連絡がはいります。クラスの女子のパシリをさせられていた友人からでした。
ヒョンジョンは今、学園の人気者の男子の誕生パーティーに招待され出かけているのですが、実はそれが罠であることを女子たちが話していたというのです。
ドンヒョン(パンス)は、マンチョルに連絡し「車を用意しろ!」と命じました。
「高校生が車を運転するだなんて」と怖がるいじめっこの女子生徒を助手席に乗せ、案内をさせるドンヒョン(パンス)。その頃、ヒョンジョンは、憧れの男子生徒から酒を飲むことを強要されていました。
断ると、男子生徒は豹変し、仲間たちが彼女を小突き始めました。そこへドンヒョン(パンス)が乗り込んできます。
彼は男子生徒たちを叩きのめして次々とプールに突き落とし、ヒョンジョンを救出しました。
自分を助けてくれたドンヒョン(パンス)にヒョンジョンはすっかり心を奪われたようでした。それを見た母親は「あの男は絶対駄目!」と娘を厳しく叱りつけました。
映画『僕の中のあいつ』の感想と評価
なにかの拍子に体が入れ替わる物語というのは、ループものと同じくらい見慣れた設定で、それ自体にはあまり新味はありません。
ですが、『僕の中のあいつ』の、裏社会にも通じる財閥社長といじめられっこの高校生が入れ替わる物語は理屈抜きに面白く、大いに笑わせられ、見終えた時、すこぶる気持ちの良い後味が残ります。
入れ替わりものというのは役者の力が試される作品でもあります。その点、映画初主演というジニョンの演技力には大いに感心させられました。高校生の顔をしたヤクザなおっさんに見事になりきっているのです。
冒頭、パク・ソンウン扮するやり手の財閥社長パンスの日常が描かれ、彼が車を降りて一服しているところにジニョン扮する高校生が屋上から落ちてきて2人は激突します。
ジニョン扮する高校生ドンヒョン(入れ替わっていて実はパンス)が先に目覚め、彼の行動を映画は追っていくのですが、もうこれが、高校生の顔をしたパンスそのものなのです。
冒頭のパンスが地続きで現れたような感覚を覚えるくらい自然なのです。まずここがクリアできていなければ映画の成功はなかったでしょう。
高校生のふりをせず、中年男そのままの言動や行動を取る姿が笑いを誘い、また、いじめられっ子だったドンヒョンと、いじめっ子たちの関係が、逆転していくさまにはスカっとした爽快感さえ感じられます。
物語の構成の巧さも、作品の成功の一つとして挙げられるでしょう。多くの入れ替わりものは、入れ替わったもの同士の状況を交互に描いていくものですが、本作では、一方だけが先に回復し、もう一方はしばらく寝たきりが続きます。
一方が寝ている間、パンスのかつての恋人やその娘という存在が浮上してきます。それによってパンスにこれまでの人生に対する悔恨が目覚めるのですが、ここを丁寧に描くためにパンス(実はドンヒョン)が寝たきりという設定が効果を上げています。
元恋人には芸達者なラ・ミランが扮し、ジニョンと元恋人同士を演じている様子が実に愉快なのですが、それを見ていて誤解する回りの人々の振る舞いがまた笑いを誘うのです。
終盤、満を持して昏睡状態だったパンスが目覚めるのですが、ここがまた最高に面白い見せ場の一つとなっています。気弱な高校生であるパク・ソンウンの演技はさすがと言わずにはいられません。
笑ったあとは何も残らないというのではなく、ほんのり温かく、キュンとした気持ちになれる良質のコメディー映画に仕上がっています。
まとめ
2018~2019年のクリスマスシーズン、韓国では大作映画が次々に封切られましたが、いずれも思った以上の興行を上げることができずにいました。その中で出てきたのがコメディ映画『僕の中のあいつ』です。
封切られるや、いきなり一位を獲得。最終的に190万人を動員し、2019年に初めて損益分岐点を超えた作品となりました。
主演のジニョンは、男性アイドルグループ「B1A4」のリーダー。パク・ソンウン、ラ・ミラン、キム・グァンギュ、イ・ジュニョクら、韓国映画には欠かせない名優に囲まれ、堂々とした演技を見せています。
パク・ソンウンは最近でも『安市城 グレート・バトル』(キム・グァンシク)で敵役の唐の皇帝を演じるなど、悪役の演技には定評があります。そんな彼がこれまで見せたこともない表情を見せていて、そのギャップに驚くことでしょう。
また、ラ・ミランは、名バイプレーヤーとして存在感たっぷりの女優ですが、2019年5月には主演映画『ガールズコップス』(チョン・ドゥオン)が封切られ、大ヒットとなりました。
韓国を代表するコメディエンヌとしての実力を本作でもいかんなく発揮しています。
ラ・ミランの娘役を演じたイ・スミンや、高校のクラスメイト、いじめっ子たちさえも皆、類型的なキャラクターではなく生き生きとしているところも本作の魅力の一つとなっています。
『ミス・ワイフ』(2015)などの作品で知られるカン・ヒョジン監督は、映画のすみずみにまで目を配り、キャラクター、ひとりひとりに生命を吹き込んでいます。
そうした点も、この映画が人々から支持される大きな要因となっているのでしょう。