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【ネタバレ】スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ|結末あらすじと感想評価。サスペンススリラーでベテランスパイが陥る蜘蛛の巣のような罠を描く|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー97

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第97回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第97回は、エラン・リクリス監督が演出を務めた、映画『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』です。

シリアの化学兵器製造を巡る疑惑が見つかり、衝撃的な拉致事件が発生。

最後の任務を命じられたベテランスパイが、その任務のキーパーソンである女性との関係を深めていくにつれて、味方からの反感と常につきまとう疑わしい過去によって、疑惑の複雑な網の中に捕らわれていってしまう物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

ベン・キングズレーとモニカ・ベルッチが共演する、2019年製作のイギリス・ベルギー・イスラエル合作のスパイサスペンススリラー映画『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』の作品情報


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

【公開】
2019年(イギリス・ベルギー・イスラエル合作映画)

【脚本】
ギドン・マロン、エマヌエル・ナカシェ

【監督】
エラン・リクリス

【キャスト】
ベン・キングズレー、モニカ・ベルッチ、イタイ・ティラン、イツィク・コーエン、フィリップ・ペータース、ヒルデ・ファン・ミーゲン、マクラム・フーリー、マティース・シーパーズ、マルセル・ヘンセマ

【作品概要】
『ダブル・フェイス』(2017)のエラン・リクリスが監督を務めた、イギリス・ベルギー・イスラエル合作のスパイサスペンススリラー作品です。

本作はR15+指定作品のため、15歳未満の方は鑑賞することができません。

ガンジー』(1983)のベン・キングズレーが主演を務め、『007/スペクター』(2015)のモニカ・ベルッチと共演しています。

映画『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』のあらすじとネタバレ


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

シリアで化学兵器を製造・使用しているのではないかという疑惑が浮上。その情報源は、元シリア軍の武官ナーデル・カデール将軍でした。

イスラエル諜報特務庁「モサド」のベテランスパイ、コードネーム「アヴラム」ことサイモン・ベルは骨董店の店主として、ベルギーの首都ブリュッセルに異動になった彼に接触しました。

それからしばらくして、ナーデルはベルに、金のためなら何でもやる会社「ヴァイロ社」が、シリアの化学兵器製造に協力していることを明かします。

ベルギーやオランダにあるヴァイロ社の施設がそれに関与していましたが、未だ確固たる証拠を掴めていませんでした。

ナーデルはベルに、「この一件の鍵を握るのはヴァイロ社で働くアンジェラ・カローニ博士だ」、「彼女に接触し信用を得れば、”スパイダー・イン・ザ・ウェブ(巣の中のクモ)に導いてくれるはずだ」と言いました。

しかしベルがアンジェラに接触し関係を深めていこうとしたその時、ナーベルがシリアの首都ダマスカスへ拉致されるという事件が発生。

これを受け、モサドのボスであるサミュエルは激怒。ナーベルの情報は無価値で、ベルがネタをでっちあげて組織を欺いたのだと判断し、ベルを尋問するべく帰国命令を下します。

そもそもナーベルを情報屋として雇うことを、モサド本部は拒否していたのです。

ベルは「必ずアンジェラから必要な情報を聞き出すから、最後のチャンスをくれ」と頼み、彼女に会いにオランダの第2の都市ロッテルダムへ向かいました。

ですがサミュエルはベルを疑い、ユダの息子である新米スパイのダニエル・リヒターをブリュッセルに呼び出し、彼とアンジェラを監視するよう命じます。

ロッテルダムへの道中、ベルは同じ列車のボックス席に座った男が、主人公が最後に死ぬという結末になっている本『ナイロビの蜂』を持っていることに気づき、ダマスカスから送られてきた刺客だと思って始末しました。

ベルはダニエルと一緒に列車から飛び降り、その先の通りでヒッチハイクして「ウィンターホフ」というホテルへ向かいました。

ホテルで食事をした際、ベルはダニエルに、ユダが死ぬ前にあった話を語り始めました。

ベル曰く、ベルとユダは失踪した同僚を探していた時に、ナーベルがシリアでの化学兵器製造の疑惑の情報源として浮上したことを知ったといいます。

ユダは骨董店の顧客として、ベルと一緒にナーベルに接触し、「アハブ」という仲間の証であるコードネームをつけるほど3人は親しい関係になったことを。

亡き友人の息子であるダニエルを、ベルはずっと遠くから見守っていたこと。ダニエルとベルが食事しているこの姿をユダに見せてやりたかったと、ベルは語りました。

するとそこへ、ホテルのオーナーであるアンヌ=マリーが現れます。ベルはアンヌ=マリーと二、三言話した後、ここにいては危険だから急いでこの場所から離れるよう言いました。

実はアンヌ=マリーは、ナーデルの愛人でした。彼女は「何かが起こって私が帰らなくても、ここで待っていてくれ。必ず君の元へ帰るから」とナーデルが約束してくれたからと、頑としてホテルから離れようとしません。

翌朝。アンヌ=マリーに車を借りてホテルから立ち去り、ベルギー国境付近に差し掛かった時、ベルたちは謎の男たちに襲われました。

ベルギーアントウェルペンの都市アントワープにあるモサド本部に連れて行かれたベルたちを待ち構えていたのは、サミュエルでした。

実は少し前に、サミュエルのもとにベルギー国家安全保障局のマンテンスから連絡が入り、「君のところの年寄りと若造を送り届ける」と言われ、「ベルギーで勝手な行動はしないと君を信頼しているが、誤解を招くような行為は避けてくれ」と釘を刺されました。

サミュエルは「列車の男はマンテンスの部下だ、幸い彼は生きている」とベルに言いました。

そしてサミュエルはダニエルを別室に連れていき、「簡単な任務のはずなのになんてザマだ」と叱責します。

実はダニエルは、ベルの監視とは別に、重要な任務を命じられていました。

イスラエル首相の政治生命の危機を回避するべく、ベルギーの企業(ヴァイロ社)とシリアの関係を暴く決定的な証拠を手に入れるという任務を。

さらにサミュエルは彼に、「君は立派なスパイであった父上の後を継いだ」、「言いにくいことだが、やつは父上を騙した。今度は君を騙す気だ。やつが道を外すようなら君が始末しろ」と言いました。

サミュエルはベルに「ナーデルの虚偽の調査の報告はまもなく終わる。君が教え育ててきたここのスパイたちと私に、君が長年嘘をついていなかったことを願う」と忠告した上で、本題に入りました。

サミュエルによると、中東の国バーレーンのアル・サフィールにある化学プラントを、人工衛星を使って調べましたが何もでなかったといいます。

そこでサミュエルは、「シリアへの化学物質提供の決定的な証拠を入手しろ」とベルに命じました。

以下、『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』ネタバレ・結末の記載がございます。『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

その後、アントワープのダイヤモンド地区にあるホテルに潜伏し、ベルはアンジェラから情報を聞き出すべく、慎重に関係を深めていこうとします。

しかしアンジェラは、エネルギーと大気汚染について研究している博士という仕事柄、産業スパイに接触されることが多く、ベルのこともそうではないかと疑っていました。

レストランで情報を聞き出すことはできなかったものの、外に車をとめて控えていたダニエルが、アンジェラが乗り込んだ車のナンバーを調べてくれたおかげで、ベルは新たな手掛かりを掴むことが出来ました。

アンジェラが乗り込んだ車の持ち主の名はヨハン・スレガーズ、ファン・ブレダー通り41という住所に法律事務所を構えている弁護士です。

ベルたちは、スレガーズがアンジェラとどういう関係があるのか調べるべく、早速スレガーズの法律事務所を訪ねてみることに。

ベルは警戒心が強い守衛が元軍人であることを一目で見抜き、彼の懐に入り込んで警備を緩めさせます。

そして酒で酔って眠ってしまった間に、ダニエルが法律事務所に入り、中を調べました。

その結果、スレガーズに怪しい点は見当たらず、環境問題が専門の弁護士であることが判明。さらにアンジェラは、環境汚染訴訟の証人だったということが分かりました。

しかしナーデルからの情報によれば、アンジェラはヴァイロ社の重役で、有機廃棄物や危険物の管理をしている最高責任者です。

つまり環境保護に人生をかけているアンジェラがいるから、ヴァイロ社はクリーンな企業を装うことができ、政府からの認可も簡単に下りたのだと、ベルは推測しました。

その後、ベルはユダとの思い出のレストランにダニエルを連れていき、彼との思い出話を語りました。

ベルとユダが探していた例の失踪した同僚は、シリア側で殺されていました。

辞職する前に名物料理と酒を楽しもうとレストランを訪れた際、ユダは「後悔はあるか?」とベルに尋ねます。ベルは「ないね、君は?」と答えました。

そう話した後、ベルは顔なじみのレストランの店主ジョージをダニエルに紹介しようとしましたが、彼が5年前に亡くなっており、今は息子が彼の後を継いだと聞いてショックで言葉に詰まってしまいました。

アントワープ、シント・アンネケ。ベルはアンジェラと散歩をし、さり気なく海岸へと誘導します。そこには、農業用殺虫剤の有機リン酸エステルによって死んだ大量の魚がいました。

それを見てベルは、「何者かが川に大量の毒物を流した。金儲けのために環境を汚染するなんて」と非難しました。

アンジェラはベルの意見に賛同し、彼に心を許し始めます。海岸で見た大量の魚の死骸は、ベルたちがアンジェラの警戒心を解くために仕込んだものだとは知らずに………。

さらにベルは、アンジェラが恋しいと言っていたお菓子を匿名でプレゼントします。

その後、ベルたちはスレガーズの法律事務所の守衛が、マルテンスの下で長年働いたことがある元外人部隊のアレグザンダーであることを突き止めました。

翌日。ベルはサミュエルから、アンヌ=マリーにシリア側の手が及んでいることを知らされます。

その日の夜。ベルはダニエルと共にバーに行き、彼にユダが死ぬ前に遺したメモを渡しました。

ベル曰く、それは病気を患い死期が近いと悟ったユダが自分に見せてくれた、「人は息に等しく、人生は過ぎゆく影だ」と書かれた詩編144編4節だといいます。

アンジェラに呼び出され一夜を共にしたベルは、朝のニュースで拉致されたナーデルが車のトランクから遺体で発見されたことを知りました。

そして、ナーデルは昨年引退したもののシリアの現政権に近い存在であり、シリアのアサド現大統領の友人でもあったことも………。

シリア側が強硬手段に出たことを受け、さすがのサミュエルも静観しているわけにもいかず、マルテンスに自分たちも動くことを伝えます。

これに対しマルテンスは、「これまで君を助け、必要なら君たちがやることに目をつぶってきた」、「だが私はもうすぐ早期退職する。そうすれば私の恩恵を受けられなくなるから急げ」と言いました。

その頃ベルは、相次ぐ知人友人の死に心を痛めていました。アンジェラはそれを察してか、黙って彼のそばに寄り添いました。

そんな彼女を見て、ベルは「獲物が網にかかった」と確信しました。ベルのもとにも、シリア側の魔の手が伸びます。

ベルたちがいる店の出入り口付近に不審な車がとまったのを見たダニエルは、独断で彼らとカーチェイスと銃撃戦を繰り広げ、始末しました。

翌日。ベルたちモサドはさらにアンジェラへの接触を図るべく、架空の化学工業会社を作り上げました。

作業現場を見に行った後、ベルは「予想より早くアンジェラに近づけた。私のためなら何でもする心情に追い込みをかければ、数日後には完落ちだ」と、ダニエルに言いました。

これに対しダニエルは、「彼女にあんたへの愛はない。あんたを哀れんでいるだけだ」と答えましたが、ベルは自分の直感を信じているため聞く耳を持ちません。

そんなベルに追い打ちをかけるかのように、突如体調が悪化。実はベルは、数年前に心臓発作を起こして以来、薬を常時持ち歩き大量に服用していました。

ベッドに横になったベルは、ダニエルにレストランでの話の続きを聞かせました。

ユダは「危険を冒すのは、友を救うためだと自分で選んだ道だったから」と言いました。

これに対しベルは、「私が指揮する立場だ。だから君が危険を冒すのは、私が命じたからだということにする」、「ナーデルの取り込みは私が強行したと言え」と答えました。

するとユダは酒をあおり、自分ががんに侵されていることを打ち明けます。そのことを知って泣いたベルに、ユダは「泣くことはない。俺の心は平穏だ、俺は幸せだ」と言いました。

その話をした後、ベルはダニエルに「1つ約束して欲しい。私と同じ過ちを犯さないと」、「時の流れは早い。少し目を離した隙に皆逝ってしまう。私は独り残された」と言いました。


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

ベンへの認識を改め始めたその時、ダニエルはベルのベッドの下から、ベルが身に着けているベルトのポケットに、「アハブ」と記されたメモが挟んである札束が2つあるのを見つけます。

「アハブ」とは、ベルとユダがナーデルを仲間に入れた時につけた、彼のコードネームでした。

ダニエルはベルに銃を向け、自分に下された命令が本当はなんであるか打ち明けます。

そして「将軍に(情報提供料として)支払うはずの金を盗んだのか」と尋ねるも、ベルは否定も肯定もしません。

その代わり、ベルはこれまでの人生を語り始めます。ベルはこの40年間、仮面をかぶり別人を演じ続けました。

彼が人々を欺いた行為は手柄とされました。ですがある日突然、ベルはずっと被ってきた仮面を返すよう言われたのです。

しかもこれまで組織に貢献してきたにもかかわらず、辞めた人間は忘れ去られ、ある日突然、何の痕跡もなく死んでいきます。

ですが組織の役に立ち続けることができれば、存在を必要とされ生き長らえることができると考えたベルは、ナーデルがよこす無価値な情報を重要な情報だと偽り粉飾したのです。

ナーデルが「シリア軍が厳戒態勢だ」と言った時、ベルはその話を盛って組織に報告。すると軍は5万の予備役を動員し、国境に送りましたが空騒ぎでした。

この騒動のせいで、ベルの報告は嘘なのではないかと監視の目が厳しくなりました。

そんな時、ベルはナーデルからアンジェラの情報を得ました。それは本物の重要な情報でしたが、先の件で信用を失ったベルの言葉を誰も信じてくれません。

そしてベルはユダを裏切ってはおらず、逆に自分が悪者になって彼を庇うつもりでした。

ですがユダはベルの嘘に話を合わせません。ダニエルの母親は、子供を持ちたがっていたユダと出会ってすぐ妊娠し、2人は結婚しました。

ベルの話を静かに聞いていたダニエルは、「あんたの計画に協力し、あんたを守ってやる」、「終わったら、あんたの身柄を引き渡す」と言いました。

しかしその後、思わぬ問題が発生。アンジェラに偽造パスポートを見られ、ベルがスパイであることがバレてしまったのです。

ベルは「チェルノブイリ原発事故の後、過激な環境保護活動家になって当局に追われる身になったから素性を隠している」と嘘に嘘を重ね、アンジェラとの関係修復に努めます。

ベルの努力の甲斐あって、アンジェラを抱き込むことに成功。ベルは『巣の中のクモ』という名のファイルを手に入れるよう指示します。

ですが予想以上にファイルへのアクセスが困難であると聞き、ベルは彼女の身を案じて中止を決断。

それをダニエルを介して知ったサミュエルに叱責され、「24時間以内にファイルを入手できなければ、刑務所に送り忘れられた存在にしてやる」と脅迫されます。

その後、ベルたちはファイルの閲覧権限があるヴァイロ社の守衛に薬を盛って動けなくし、その隙にアンジェラが彼のPCからファイルをUSBにダウンロード。

彼女からそのUSBを受け取り、ベルはサミュエルに渡しました。しかしファイルにはサミュエルが求める決定的な証拠は入っていなかったのです。

サミュエルはこの結果に激怒し、この2年間虚偽の報告をして組織を欺いてきたベルの身柄を拘束しようとします。

それはイスラエルに帰国後、拷問を受けた末にベルが抹殺されることを意味していました。

それを悟っていたダニエルは、サミュエルに銃を向け、「俺はイスラエルには帰国せず、彼と残って任務を全うします」と反抗。ベルを連れてその場から逃走します。

ベルはダニエルの身を案じて、大人しく自分の身柄をサミュエルたちに引き渡し、サミュエルから渡された航空券を使って今夜の便で帰国するよう言いました。

ダニエルは「俺はバカなんだ、でも強い」と言って酒を煽りました。ベルは「自分の残りの用事を済ませたら、素直に出頭するよ」と言い、ダニエルに骨董店の鍵と、ユダと幼いダニエルのツーショット写真を渡しました。

その写真の裏には、「アヴラムへ、息子を頼む。ユダより」と記されていました。

空港へ向かうダニエルと別れた後、ベルはアンジェラの身の安全を保障してもらおうと、マルテンスに頼みに行きました。

その際、マルテンスの妻が着けていた指輪に目が留まります。その指輪は、ナーデルがベルから無償でもらい、アンヌ=マリーに贈るはずだったものでした。

ベルはアンジェラに危険が迫っていることを知らせようとしますが、いくら電話をかけても応答はなく、家にもいませんでした。

そこでベルは、机にあるペンと便箋を借りて、ダニエルに宛てた手紙を書くことに。しかし途中でインクが切れ、書けなくなってしまいます。

代わりのペンを見つけて続きを書こうとしたその時、ベルは「ダマスカス アル・クズ・ホテル」とペンに刻まれていることに気づくのです。

不審に思ったベルは、アンジェラの机の上にある書類や手紙を調べました。その結果、アンジェラたちヴァイロ社は、本当にシリアの化学兵器製造に協力していたことが判明。

製造場所は、アン・サフィールの化学プラントでした。ベルはその決定的な証拠写真をスマホで撮影し、どこかへ送ります。

そこへ本当の家主であるマルテンスが現れ、「真の情報源は将軍ではなく私だ」と言ってきたのです。

マルテンスはモサドがヴァイロ社を疑い始めたと知って、「愛人を殺す」とナーデルを脅し、情報操作しました。

その後は全てマルテンスの思惑通りに事が運び、ベルの活躍によってヴァイロ社がシロであると見なされました。

そしてマルテンスは保身のために、シリア側にナーデルとアンヌ=マリーの名前を漏らし、自らの手を汚すことなく始末したのです。

その話をした直後、アンジェラがベルの前に現れ、必死に弁明しようとしました。

マルテンスはその口を封じるべく、ベルの目の前でアンジェラを射殺。「彼女は私が持ちうる有能な駒であり、君に対抗しうる逸材だった」と語ります。

アンジェラの本名はアマール・ハリミ、シリア人の父をユダヤ人に殺された過去があったことがマルテンスの口から明かされました。

実はアンジェラは、ベルが見つけた写真を使ってマルテンスを脅迫するつもりでした。そう明かした後、マルテンスはベルを射殺し、この家につけられた監視カメラのレンズを手で覆いました。

その頃、サミュエルたちと共に帰国の一途をたどっていたダニエルのもとに、1通のメールが届きます。

ベルが「愛を逃がすな、すまなかった」というメッセージと共に、サミュエルが求めていた決定的な証拠写真を添付したものでした。

ダニエルはそれを隣に座るサミュエルに見せました。後日、日課であるプールから上がったマルテンスは、ダニエルによって射殺されました。

そしてモサドは軍に協力を仰ぎ、アン・サフィールの化学プラントを空爆し消滅させました。

映画『スパイダー・イン・ザ・ウェブ/巣の中のクモ』の感想と評価


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

シリアの化学兵器製造疑惑を調査する任務に挑むことになったモサドのベテランスパイである「アヴラム」ことベル。

しかし物語の序盤から、誰一人彼の味方はいませんでした。というのも、ベルが情報源のナーデルから聞いた情報を盛り、噓の報告をしていたことが原因でした。

でもそれは、これまでモサドを辞めた人間がどんな末路を辿るのか知っているが故に、ベルが自分の存在を忘れられたくない一心でついた嘘だったことが、物語の後半で明かされます。

苦楽を共にしてきた友を病気で喪い、探していた同僚も、情報源として利用したものの最終的にはユダと同じくらい大事な存在となったナーデルも、彼の愛人も相次いで殺され、独りぼっちになってしまったベルの心情を考えると胸が痛いです。

誰が敵か味方かもわからなくても、偽りの仮面を被り続け身を粉にして尽くしてきた組織に追放される寸前に陥ってもなお、ベンは与えられた任務を最後までやり遂げました。

最初こそ父を騙したと思い込んでベルを疑っていたダニエルも、彼の身の上話や、彼がナーデルから聞いた情報を粉飾した本当の理由を知り、物語の最後で彼を思って怒り、諸悪の根源たるマルテンスに復讐を果たしました。

なんだかんだ言いつつ、最終的に良き相棒となったベルとダニエルの関係性の変化も、本作の見どころの一つです。

まとめ


Film (C) 2019 TOPIA COMMUNICATIONS (2003) LTD., UNITED KING FILMS LTD., ERAN RIKLIS PRODUCTIONS (1997) LTD., Ciné Cri de Coeur, NL Film & TV B.V. Dragocom – Imp.Exp. All Rights Reserved.

誰が敵か味方か分からない状況に置かれたイスラエル諜報特務庁「モサド」のベテランスパイが、亡き友の息子と共に最後の任務に挑む、イギリス・ベルギー・イスラエル合作のスパイサスペンススリラー作品でした。

ベルが任務のキーパーソンであるアンジェラと関係を深め、真相に近づけば近づくほど、真の黒幕であるマルテンスは保身に走り、関係者を次々と始末していきます。

マルテンスが保身のためについた嘘と謀略に囲まれてしまったベルは、まさに本作のタイトルである「巣の中のクモ」そのものです。

それに本作のストーリー展開は思った以上に複雑なものであるため、ベルとマルテンスが真実を語っていくまでの間、何がどうなっているのか分からないのもまた本作を楽しむ醍醐味となっています。

そんな本作は、実際にあった話に着想をえて描かれた作品です。

ベン・キングズレーが孤軍奮闘するベテランスパイを演じる、何度観てもハラハラドキドキさせられるスパイサスペンススリラー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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