連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第14回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第14回は、フレッド・オーレン・レイ(ニコラス・メディーナ)監督が演出を務めた、映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』です。
フレッド・オーレン・レイ(ニコラス・メディーナ)が監督を務め、2020年にアメリカで公開された、永遠の血縁を求める美しい花嫁の姿を描いたサスペンス・アクション映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』。
美しい花嫁は自分だけを愛してくれる恋人との結婚を強く望み、たとえそれが彼女の思い込みであろうと結婚を邪魔する奴は全て抹殺するといったサイコ・スリラー作品は、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
アメリカのサスペンス・アクション映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』をご紹介いたします。
【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら
映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』の作品情報
【公開】
2020年(アメリカ映画)
【脚本】
マーク・サンダーソン、ロルフ・カネフスキー
【監督】
フレッド・オーレン・レイ(ニコラス・メディーナ)
【キャスト】
ブリタニー・アンダーウッド、シャーリーン・アモイア、キャメロン・ジェボ、ジェラルド・ウェブ
【作品概要】
『キラー・エンジェル 復讐の天使』(1996)『マリン・クラッシュ』(2000)『沈黙のアフガン』(2016)などを手掛ける、アメリカの映画監督フレッド・オーレン・レイ(ニコラス・メディーナ)による、永遠の血縁を求める花嫁の姿を描いたサスペンス・アクション作品です。
『#フォロー・ミー』(1973)『新REC/レック デッド・ビギニング』(2016)など、アメリカのホラー映画に出演する女優ブリタニー・アンダーウッドと、『沈黙のアフガン』(2016)『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(2020)などに出演するシャーリーン・アモイアら豪華キャスト陣が出演しています。
映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』のあらすじとネタバレ
パティシエをしている黒髪の美女、ヘレナ・クラークは、アマーストで恋人のジョージと結婚式を挙げていました。
しかしジョージは、挙式中に突如倒れ、そのまま一酸化中毒で死んでしまいました。それはヘレナが挙式前、ジョージに手作りのカップケーキを食べさせたことが原因でした。
未亡人となったヘレナは、髪をブロンドに染め、「ヘレナ・リチャード」として生まれ変わり、ワシントンへ引っ越しました。
そこでヘレナは、工具店を営む家族の長男チャーリー・ディロンと恋に落ち、5ヶ月後に電撃婚約します。
チャーリーには、優しい母親のナンシーと父親のスチュアート、ディロン家の養女で義姉のレベッカがいました。
ディロン家は、「完璧な夫に、優しい両親、ずっと欲しかった姉」とヘレナがずっと夢見ていた通りの理想の家族でした。
バツイチとなったレベッカが実家に戻った日に、顔合わせを兼ねた夕食会が、ディロン家で開かれました。
全身真っ白で統一された服装をして現れたヘレナは、レベッカと仲良くなりたいと思い、終始笑顔で積極的に彼女に話しかけます。
しかしレベッカが、「料理上手なヘレナに対して、チャーリーの元カノはお湯も沸かせなかった」と言ったことで、ヘレナから笑顔が消えました。
わざと水を零して洗面所に向かったヘレナは、鏡に映ったもう一人の自分に、「あなたはレベッカに嫌われている。孤児のあなたには、ここは場違いなのよ」と嘲笑されます。
ヘレナは必死に、そんなことはないと自己暗示をかけました。ヘレナは気を取り直して、持ってきた手作りカップケーキを、皆で食べようとします。
そこへ、ナンシーの長年の友人である菓子店の店主、マズレクがウエディングケーキの試作品を持ってきました。
ヘレナは、自分が作るはずだと思っていたウエディングケーキを、他所の菓子店に頼んだことに腹を立てます。
それを知らないマズレクは、ヘレナに「髪色は違うみたいだけど、去年のトロントの菓子祭で会ったわよね?」と尋ねました。
ヘレナはマズレクに、嫌味を込めて「いいえ、あなたとは初対面よ。ウェディングケーキは自分が作るから必要ない」と答えます。
突然豹変したヘレナの態度に、ナンシーたちは唖然とし、マズレクは怒って店へ帰ってしまいました。
ヘレナは怒りのあまり、思わずカップケーキを1つ、片手で握り潰してしまいます。
しかし、ヘレナはチャーリーたちの前では、「マズレクに失礼な事をしてしまった」と反省する自分を演じ、帰路につきました。
ナンシーの長年の友人マズレクは、店のパソコンでネット販売をしているヘレナの店を調べました。
すると、ヘレナの髪色や名前は違うものの、トロントの菓子祭のパンフレットに載っている店名と商品が全く一緒でした。
やっぱりヘレナに会ったことがあると確信したマズレクは、ナンシーにこの事を伝えようと電話します。
ナンシーの代わりに出たレベッカが、マズレクの話を聞こうとしましたが、マズレクは話の途中で電話を切ってしまいました。
その原因は、夜遅くに来店したヘレナです。全身黒ずくめの衣装を身に纏うヘレナは、マズレクにお詫びの印として、自作の真っ黒なカップケーキを渡します。
これに気を良くして許したマズレクは、ヘレナがカウンターの上に置いたPC画面を覗いたことに、全く気づきませんでした。
マズレクは、店の棚にコレクションとして飾った、ウエディングケーキの上にのせる新郎新婦の人形の事をヘレナに話します。
するとヘレナは、マズレクが自分そっくりだという新婦と、その隣に立つ新郎の人形をもっと近くで見たいと、マズレクにお願いしました。
脚立を使って人形を取り出したマズレクは、ヘレナに見せようと後ろを振り返った瞬間、カウンターの上に置いた大きめのめん棒で、頭を殴られて殺されてしまいます。
ヘレナは「私の幸せの邪魔をしないで」と言い残して、黒いカップケーキと人形を持ってその場から立ち去っていきました。
一方レベッカは、出会って数ヶ月のヘレナと結婚するチャーリーの事が心配でした。
チャーリーは、レベッカにヘレナの家の合鍵を見せ、「ヘレナの過去は知らないが、彼女はとても良い人だ」と伝えます。
映画『デッドリー・ブライド 殺人レシピ』の感想と評価
ヘレナの狙いは、完璧な夫と優しい義両親と姉と家族になることだと、これを観た人は誰もが思ったことでしょう。
だからチャーリーの元カノであるモニカや、ウエディングケーキを任されたマズレクに嫉妬し、殺してしまったのだなと思いました。
確かにヘレナは、ジョージや他の男性と結婚したのは、幸せな家族を作るためでした。
しかし、ヘレナの本当の狙いは、唯一の肉親であり姉妹である、レベッカと永遠に血で結ばれることだったのです。
物語の終盤でこのことが明かされた時、観客は皆、度肝を抜かされます。レベッカとやたら親しくなりたがったのは、これが理由だったのかと納得しました。
「永遠に離れることがない血縁者」と家族になることを望んでいたヘレナ、その為に髪色や名前まで変えて夫となる男性を探し、男性が不誠実だと思い込んだだけで殺すなんて怖すぎですよね。
まさにグレンが劇中で言ったように、ヘレナはサイコパスです。しかも度々、悪魔のようなことを囁くもう1人のヘレナも登場するので、彼女は二重人格者でもあります。
レベッカのおかげで、家族とグレンが助かって本当に良かったと安堵します。一瞬、レベッカも皆も死んでしまうバットエンドを想像してしまうほど、怖いラストシーンが描かれていました。
ヘレナが殺すときの冷淡さ、笑顔を消して真顔になった時、思い込みから逆上して襲い掛かってくる時、どの彼女もゾッとするほど恐ろしいです。
まとめ
ブロンド美女のヘレナは、「唯一の肉親であるレベッカと、永遠に離れることがない血の契りを結ぶ」という目的のためならば、殺人を犯すことも躊躇わないといった、サイコ・スリラー作品でした。
美味しそうに作ったカップケーキですら、ヘレナにかかれば殺人兵器となってしまいます。ヘレナの表も裏の顔も見事演じきった、ブリタニー・アンダーウッドの怪演っぷりに誰もが恐怖するでしょう。
彼女の思い込みによる邪魔者を排除する場面は、観ているこちらが殺されるのではないかと錯覚するほど、怖くてスリル満点です。
レベッカがグレンという協力者を得て、ヘレナの本性を露わにし、隠された真実を明らかにしていくところは、一緒に謎解きしている探偵気分を味わえます。
おまけに、事件が解決に向かっているはずなのに、ヘレナの怖さは増すばかりなので、ドキドキハラハラする気持ちが終わることはありません。
永遠の血縁者を求めて、思い込みであろうと邪魔する者は排除する花嫁に、事件解決後も恐怖する体験を味わいたい人に、このサスペンス・アクション映画はオススメです。