連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第12回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画の数々を紹介する連載コラム第12回は、韓国のミステリー映画『真犯人』。
突然妻を殺されてしまい、あろうことか犯人は親友で2人は不倫関係だった…。そんな衝撃の事実を突きつけられた主人公が、あることをきっかけに真犯人の存在を確信し、真実を追求していく物語です。
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映画『真犯人』の作品情報
【配信】
2019年韓国
【監督】
コ・ジョンウク
【キャスト】
ソン・セビョク、ユソン、オ・ミンソク、ハン・スヨン、キム・ジヨン
【作品概要】
不可解な殺人事件をきっかけに運命を狂わされていく男女の姿を描いたミステリー。登場人物全員が疑わしく先の読めない展開が好評を博し、プチョン国際ファンタスティック映画祭で観客賞を受賞しました。
監督はコ・ジョンウク、主演は『花、香る歌』『七年の夜』のソン・セビョクと『幼い依頼人』のユソンが務めました。
映画『真犯人』のあらすじとネタバレ
ヨンフン(ソン・セビョク)の妻ユジュン(ハン・スヨン)が殺害される事件が起こり、不倫関係にあったヨンフンの親友ジュンソン(オ・ミンソク)が逮捕されます。
それから半年、廃人同然の生活を送っていたヨンフンのもとをジュンソンの妻・ダヨン(ユソン)が訪れ、夫の無実を証明したいから助けてほしいと懇願します。
ジュンソンは不倫をするような男ではなく、そのことはヨンフンもよく分かっているはずだと訴える彼女を、最初は疎ましく思ったヨンフンですが、やがて真実を明らかにすることを決意します。
映画『真犯人』の感想と評価
犯人は誰? 巧みな心理戦で翻弄される
本作の登場人物は、冒頭で殺害されてしまうユジュンを除くと4人です。これだけの少人数であれば真犯人を特定するのは簡単に思えたのですが、最後の最後まで観ている側は翻弄されていく展開となります。
ヨンフンは、妻のユジュンが殺され、しかも親友のジュンソンが犯人として捕まり、妻と不倫をしていたことが明るみになります。
二重のショックを与えられ廃人のようになってしまい、そのせいか真実を追求するヨンフンの姿はどこか狂気じみています。
すぐに我を忘れて激高する、残忍な暴力をふるう姿を見ていると、もしかしたら妻の不倫を知って逆上したのでは…と考えてしまいます。
そしてジュンソンの妻・ダヨンは、夫の無実を信じて奔走する健気な妻と思いきや、夫とは殺されたユジョンを巡り、諍いが絶えなかったことが分かります。
ダヨンは一見おとなしそうに見えるのですが、感情が高ぶるとエキセントリックになるところもあり、思い詰めたら何をするか分からないところが垣間見えます。
ジュンソンは、絶対にユジョンを殺していないと真剣に訴えるのですが、ダヨンに詰められて隠していた事実が明るみになっていきます。
誠実そうに見えて、実は女性にだらしないのかもしれない、実は本当に犯人なのではないか……。そんな思いが駆け巡ります。
そしてヨンフンが見つけてきた事件の目撃者の男は、人を小馬鹿にしたような態度を取り、うさん臭さがにじみ出ています。
ヨンフンから拷問を受け、怯えながらも自分が知っていることをどのタイミングで告白するのが得策なのか、見極めているような様子がうかがえます。
誰を信じていいのか、誰も信じてはいけないのか。観ている私たちも次第にヨンフンと同じ気持ちになっていくのが分かります。
事件を捜査した警察官が、ヨンフンに向けて放つ「これがどん底だと思うなよ」という言葉が、物語の最後で突き刺さります。
真実を追求しようとしただけなのに、まさかこんなエンディングはないでしょう……となんともやりきれない思いが、ずっしりとのしかかります。
まとめ
本作では、冤罪の恐ろしさを改めて感じる人も多いと思います。「証拠があるから」「動機があるから」と犯人に仕立て上げられてしまうという事実をまざまざと見せつけられました。
最初に逮捕されたジュンソン、そして最終的に、犯人ではないのに犯人にされてしまったヨンフン。こんなことがまかり通っていいのだろうかと、やりきれない思いを抱く人も多いことでしょう。
ジュンソンが犯人ではないと信じ、真実を追求したヨンフンですが、真犯人・ダヨンが仕掛けた落とし穴に落ちてしまいました。
妻のダヨンが犯人だと知り、物語は茫然とするジュンソンの様子が描かれて終わってしまいますが、その後彼がどういう行動をとるのか、見届けたい気持ちにさせる作品でした。