連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第116回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第116回は、ヤツェク・ブワヴト監督が演出を務めた映画『バトル・オブ・サブマリン』です。
1940年5月。連合国軍がダンケルクでの戦いに向け備えている頃、ポーランド軍の潜水艦「オジェウ」は、キールを出港したドイツ戦艦「シャルホルスト」「グナイゼナウ」を含む艦隊への攻撃命令を受けます。
「オジェウ」に乗る総勢65名の若き乗組員たちは、魚雷の恐怖や続発するトラブルにさらされ、心身ともに限界まで追い詰められ疲弊していきます。やがて、彼らは「たった1隻で敵艦3隻を迎え撃つ」という絶望的な任務に身を投じていくのでした。
2022年製作のポーランドの潜水艦バトル・アクション映画『バトル・オブ・サブマリン』のネタバレあらすじと作品の魅力をご紹介いたします。
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映画『バトル・オブ・サブマリン』の作品情報
【日本公開】
2023年(ポーランド映画)
【監督・脚本】
ヤツェク・ブワヴト
【キャスト】
トマシュ・ジェンテク、アントニ・パヴリツキ、トマシュ・シューハルト、マテウシュ・コシチュキェヴィチ、ラファウ・ザヴィエルチャ、アダム・ヴォロノヴィチ
【作品概要】
実話をもとに、映画大国ポーランドにおけるアカデミー賞と称される「ポーランド映画賞」で最高賞を受賞した巨匠ヤツェク・ブワヴトが脚本・監督を務めた、ポーランドの潜水艦バトル・アクション作品。
『聖なる犯罪者』(2021)のトマシュ・ジェンテクが主演を務めています。
第二次世界大戦を舞台に、ポーランド軍の潜水艦「オジェウ」の戦いを活写した本作は、「未体験ゾーンの映画たち2023」にて上映されました。
映画『バトル・オブ・サブマリン』のあらすじとネタバレ
1940年5月23日。ポーランド海軍の潜水艦「オジェウ(鷲)」の艦長ヤン・グラジンスキー少佐は「キール(バルト海に面したドイツ北部の都市)を出港したドイツ国防軍の艦隊を攻撃せよ」との命令を受けます。そして23時30分、「オジェウ」は総勢65名の若き乗組員たちを乗せて出港しました。
哨戒1日目、スコットランド・フォース湾。グラジンスキーに、「オランダの都市デン・ヘルダーまで行って待機せよ」との指令が下りました。
これはドイツ海軍の戦艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」の2隻を攻撃する絶好のチャンスだと考えたグラジンスキーは、向かうはずだったスカゲラク海峡ではなく、デン・ヘルダーに針路を変更するよう命じます。
一方、ドイツ国防軍の艦隊はイギリス海峡に到達。イギリス軍とフランス軍の行く手を阻んでいました。
イギリスへの唯一の退路は、フランス北端の町ダンケルクを経由することです。連合国軍の駆逐艦はポーランド海軍の駆逐艦「ブルザ」を含め2隻が、ドイツ国防軍の空爆により破壊されました。
哨戒7日目、「オジェウ」はデン・ヘルダーに到達。海辺で開かれている結婚式の様子を潜望鏡から眺める乗組員たちの傍らで、第2艦隊指揮官よりグラジンスキーに「日没後にセクターA1に向かえ」と通達されました。
グラジンスキーたちはその言葉に従い、深度25mまで「オジェウ」を潜航させてセクターA1に向かいます。しかしその道中、突如海上から何かに襲撃されかと思うと、泣き叫ぶ人々の声が聞こえ出します。
グラジンスキーたちは海上の状況を把握するため、潜望鏡深度(船体を海上に出さずに、潜望鏡の先だけを海上に出し、身を隠したまま周りを見られる深度)まで浮上。そこで、船が機雷に接触し破壊されたために、海に放り出されたであろう人々の姿を確認しました。
潜望鏡に気づいた生存者たちは、藁にもすがる思いで潜望鏡へ近づきます。その姿を見た乗組員のアンドリュー・ピアスキー中尉が浮上して救助しようと進言するも、グラジンスキーに「ダメだ、許可できない」と一刀両断されてしまいました。
その直後、30度の方向に敵船のスクリュー音を確認。敵船は潜望鏡に気づき、約1200mの距離からじわじわと近づいてきました。
グラジンスキーはすぐさま乗組員たちに、潜望鏡を下げて水深35mまで急速潜航するよう命じます。しかし方位90度に1隻、60度にもう1隻の敵船が接近し「オジェウ」をほぼ真上から攻撃してきたのです。
声を出さず、敵艦の探知から逃れるためにファンを止め、必死に耐えるグラジンスキーたち。しばらくすると攻撃は止み、ドイツ海軍の高速戦闘艇「Sボート」は去ったものの、まだ敵の小型船舶「カッター」が2隻留まっていました。
乗組員たちから、浮上して「カッター」2隻を撃沈させるか、戦わずに窒息死するかという究極の選択を迫られるグラジンスキー。葛藤の末、彼は「カッター」2隻から逃げ切るという危険な賭けに出ることにしました。
グラジンスキーは乗組員たちに、「浮上したら、敵のサーチライトを撃て」「煙幕を張り、その隙に艦に吸気させる。射撃手の援護も必要だ」と命じました。
「オジェウ」が浮上し、両舵電動機を始動。配置についた乗組員たちがグラジンスキーからの発砲の合図を待ちます。すると、20〜30m先にいる「カッター」2隻から先制攻撃を仕掛けられてしまいます。
乗組員たちは煙幕を張り、グラジンスキーの合図をもって敵のサーチライト目がけて一斉射撃を行います。そして同時に、両舵電動機を停止させて両舵ディーゼルを起動しました。
「カッター」1隻のサーチライトを破壊した瞬間、立ち去ったはずのSボートが「オジェウ」に急速接近。グラジンスキーたちは目の前の「カッター」2隻の間に突っ込むべく、両舵ディーゼルを停止させ急速潜航を開始、艦上にいる者全員は艦内へ退避しました。
ところが、グラジンスキーとエンジンルーム担当のフロリアン・ローザク中尉(愛称ジャネク)が退避中に銃撃を受け、頭部を負傷してしまいました。
映画『バトル・オブ・サブマリン』の感想と評価
キールを出航したドイツ国防軍の艦隊を攻撃せよと命じられた、グラジンスキーが艦長を務めるポーランド海軍の潜水艦「オジェウ」。
しかし標的のドイツ海軍の戦艦「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」と遭遇する前に、彼らは何度も窮地に立たされてしまいます。
物語の前半では、乗組員たちが食卓を囲みながら一緒に歌を歌う姿や、クロップスとソズノウスキが1人の女性を巡ってバチバチと火花を散らしたり同時に失恋したりする姿が描かれており、観ていてとても微笑ましいです。
そこからドイツ海軍の高速戦闘艇「Sボート」と、小型の船舶「カッター」2隻が現れ襲われたことで事態は一変し、艦内の空気は緊迫したものへと変化しました。
カッター2隻との激しいバトルに、続発するトラブル発生には終始ハラハラドキドキさせられ、グラジンスキーたちの一挙手一投足に目が離せません。
やっとの思いで危機を脱したグラジンスキーたちに命じられた絶望的なミッションは、まだ彼らに過酷な試練を与えるつもりなのかという絶望感で愕然とします。
心身ともに疲弊していくなか、グラジンスキーたちは決して仲間割れすることなく、最後まで生きることを諦めませんでした。
そんな彼らの姿勢に敬意を表する一方、相対したドイツの艦隊とのバトルを制して帰還できなかった彼らの最期が悲しすぎて涙が止まりません。
まとめ
第二次世界大戦を舞台に、ヤン・グラジンスキー少佐をはじめとする総勢65名の若き乗組員たちが乗るポーランド海軍の潜水艦「オジェウ」と、ドイツの艦隊が死闘を繰り広げていく、ポーランドの潜水艦バトル・アクション作品でした。
本作の見どころは、国防省の全面協力と、第3艦隊戦隊と第8沿岸防衛戦隊の参加によって撮影された、閉塞感に満ち迫力あふれるアクション場面です。
エンドロール前、「情報の欠如と長期延着から、ポーランド海軍の潜水艦”オジェウ”は失われたと推察される。1940年6月11日、ポーランド海事裁判所」、「ヤン・グラジンスキーをはじめ、帰還できなかった兵士に捧ぐ」というテロップが流れました。
歴史によれば、出撃以降「オジェウ」からは何の連絡もなく、1940年6月5日に「オジェウ」は帰還を命じられていました。
ですが作中で描かれているように、「オジェウ」が帰還することはありませんでした。
1940年5月23日以降に「オジェウ」が行方不明となった理由はいろいろ考えられていますが、最も一般的なのはグラジンスキーたちが哨戒11日目に到達したスカゲラク海峡で触雷したというもの。
グラジンスキーをはじめとする65名の乗組員の命が、「オジェウ」と共に失われたのです。
ドイツの戦艦2隻と小型護衛艦1隻をたった1隻で迎え撃つという、絶望的なミッションに身を投じていく若きポーランド海軍の兵士たちの戦いを描いた、スリルと閉塞感に満ちた潜水艦バトル・アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品となります。