連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第102回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第102回は、ウォルフガング・ペーターゼン監督が演出を務めた、映画『ザ・シークレット・サービス』です。
かつてダラスでのジョン・F・ケネディアメリカ合衆国大統領暗殺を阻止できず、以来罪の意識に苛まれているベテラン警護官のフラック・ホリガン。
ある日突然、ホリガンのもとに謎の暗殺者から大統領暗殺の予告電話が届きます。今度こそ職務を全うしようと、冷酷な暗殺者に立ち向かうホリガンの姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
アメリカのアクションスター、クリント・イーストウッド主演で贈る、1993年製作のアメリカのサスペンス・アクション映画『ザ・シークレット・サービス』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『ザ・シークレット・サービス』の作品情報
【公開】
1993年(アメリカ映画)
【脚本】
ジェフ・マグワイア
【監督】
ウォルフガング・ペーターゼン
【キャスト】
クリント・イーストウッド、ジョン・マルコヴィッチ、レネ・ルッソ、ディラン・マクダーモット、ゲイリー・コール、フレッド・ダルトン・トンプソン、ジョン・マホーニー、クライド草津、ジョン・ハード、トビン・ベル
【作品概要】
『プラスティック・ナイトメア 仮面の情事』(1991)や『トロイ』(2004)のウォルフガング・ペーターゼンが製作総指揮・監督を務めた、アメリカのサスペンス・アクション作品です。
「ダーティハリー」シリーズのクリント・イーストウッドが主演を務めています。
映画『ザ・シークレット・サービス』のあらすじとネタバレ
長年シークレットサービス(主にアメリカ合衆国大統領の警護を行う執行機関)を務めるベテラン警護官フランク・ホリガンには、辛い過去がありました。
それは1963年11月22日にアメリカ・テキサス州ダラスで起きたジョン・F・ケネディアメリカ合衆国大統領暗殺事件でのこと。
フランクはケネディ大統領から認められていたほどの優秀な警護官で、大統領を警護するチームの一員として事件現場にも配属されていました。
しかし1発目の銃声の後、フランクは咄嗟にそばにいたケネディ大統領の盾となって守ることができず、「事件前夜に捜査官たちは夜遅くまで酒を飲んでいたという、警備に重大な欠陥があった」とメディアやウォーレン委員会からバッシングを受けました。
ウォーレン委員会とは、ケネディ大統領暗殺事件を検証するため、事件から1週間後にリンドン・ジョンソン第36代アメリカ大統領によって設置された調査委員会です。
悪夢を見るほどの後悔に苛まれたフランクは酒に溺れるようになり、妻と娘に逃げられてしまいました。
そんなフランクは老境に差し掛かり、警護職から離れているものの、相棒の新人警護官のアル・ダンドゥレアと共に、現場で捜査官として活動していました。
大統領の再選キャンペーンの最中、フランス大統領暗殺を計画している男がいると、その男が住むアパートの大家から警察に通報がありました。
その2日後。フランクは男が不在の間にアパートに行き、部屋の中を調べました。
部屋には模型雑誌の他に、ケネディ大統領暗殺事件に関する記事のスクラップと、現職のアメリカ大統領フランスの顔写真に赤い印をつけた雑誌がありました。
フランクはすぐさまシークレットサービスのオフィスに戻り、大家から聞いたその部屋の住人マクローリーについて調べました。
ですが、マクローリーは確かにアメリカ・コロラド州デンヴァー出身者であったものの、30年前に死んだ11歳の少年でした。
男はマクローリーの出生届を使って免許をとり、アパートを借りてフランス大統領暗殺を計画していたと確信したフランクは、今度は捜査令状を持ってアルと一緒に部屋に乗り込みます。
しかし部屋は既にもぬけの殻で、唯一あったのは、フランクの顔に赤丸をつけた、ケネディ大統領暗殺事件の現場写真でした。
その日の夜。帰宅したフランクのもとに、部屋の住人だというブースと名乗る男から電話が届きました。
ブースはフランクの過去を調べたことを伝えた上で、確かに自分はフランス大統領暗殺を計画していると宣言します。
翌日。フランクはシークレットサービスの長官サム・キャンパーナと、フランス大統領の警護チームの主任ビル・ワッツ、チームメンバーの若き美人捜査官リリー・レインズにこのことを報告し、大統領警護職に復帰したいと頼みました。
ワッツたちはフランクの年齢を心配するものの、渋々彼のチームへの編入を認めました。
フランクが高齢ながら精力的に警護に努めていく一方で、ブースは逆探知されていると知りつつも何度も電話をかけ、ケネディ大統領暗殺事件のことを持ち出してフランクを挑発しました。
ブースがいつになく長話をしてくれたおかげで、フランクたちはシークレットサービスのオフィスの向かいにある通りの公園「ラフィエット・パーク」の公衆電話にいることを突き止めます。
フランクたちはすぐさまラフィエット・パークに向かい、公衆電話から少し離れた場所でにやにや笑いながらこちらを見ている男を発見。
その男こそブースだと思って追いかけるも、あと一歩のところで取り逃がしてしまいます。ですがブースは逃亡した際、轢かれそうになった車に指紋を残していってしまったのです。
フランクはすぐさまアルに頼んで指紋を採取し、FBIのデータベースに照会依頼します。
しかしヒットした情報はCIAの機密情報だったため、FBIは該当者はいなかったとフランクに嘘の報告を行いました。
大統領選挙まであと1ヶ月。フランス大統領は他の候補者との差を縮めるべく、6日間でコロラド州やミシガン州など12の州を回るキャンペーンに出かけました。
そのキャンペーンでは特に中西部で地盤を固め、シカゴを最後にワシントンに戻る予定となっています。
当然、フランクは大統領の警護チームの一員として、ワッツたちと共にキャンペーンに赴くフランス大統領に同行しました。
大統領警護職を全うする一方で、フランクは初めて会った時から気になっていたリリーとの仲を深めていきました。
風邪による体調不良にもかかわらず、フランクはシカゴでの選挙イベントの任務に就きます。
そのせいか、フランクはブースがフランス大統領の演説中に割った風船の音を銃声だと誤認し、銃撃されているとワッツたちに指示してしまいました。
これにより、暗殺に怯える大統領の姿を民衆に見せてしまったと、ワッツと大統領首席補佐官のハリー・サージェントは激怒し、フランクは大統領の警護チームから外されてしまいます。
映画『ザ・シークレット・サービス』の感想と評価
辛い過去を乗り越えた先にフランクが手にしたもの
かつてケネディ大統領を守ることができなかったシークレットサービスのベテラン警護官のフランク。
彼はダラスで起きたケネディ大統領暗殺事件のことを、老境に差し掛かった今でも後悔していました。
ですがリアリーが言うように、フランクには「大統領を守って死ぬ根性がない」のではなく、ただいざ自分が死ぬことを考えたら恐怖で体が思うように動かなくなってしまっただけだと考察できます。
その証拠に、フランクはホテルを後にする前、リリーに胸の内を明かした時に「あの時ケネディ大統領に弾が当たると分かっていたのに、俺は動かなかった、まさかと思った」と震えながら告白していました。
世間からバッシングを受ける中で家族にも見放されてしまったフランク、警護官を辞めて酒浸りの生活を送っていてももおかしくありません。
にもかかわらず、フランクは辛い過去を抱えながらも最後まで警護官であり続け、今度こそ大統領の盾となりました。
そんなフランクの姿に感服するとともに、ようやくリリーという最大の理解者でありパートナーを得たことに感涙します。
怪物と化した冷酷な暗殺者のリアリー
リアリーが大統領暗殺を計画した理由は、CIAの暗殺要員として今まで国のために汚れ仕事を担ってきたのに、手に負えなくなったことと人員削減を理由に自分を殺そうとする政府を強く恨んでいるからでした。
でもリアリーが大統領暗殺を計画するほど、政府を恨む気持ちは分からなくはないです。
だって政府とCIAの都合で、リアリーは特殊訓練によって暗殺要員として鍛えられたのに、利用するだけ利用していらなくなったら切り捨てるなんて、本人からしたらたまったものじゃありません。
それにリアリーにはもう、暗殺要員になる前の自分を忘れてしまうほど染まってしまったのです。
しかもよりによって刺客として差し向けられたのが、リアリーの同僚である親友となると、これ以上ないほどの苦痛と悲しみと怒りをリアリーは感じたのではないかと考察できます。
だからといってリアリーが作中、計画とは無関係の女性行員のパムとそのルームメイト、ジップ・ガンの試し撃ちとして、それを売ってくれないかと言ってきた一般男性2人を殺したことは許されることではありません。
まとめ
かつてケネディ大統領を守れなかったシークレットサービスのベテラン警護官vs政府への恨みを晴らすために大統領暗殺を目論む元CIAの暗殺要員の戦いを描いた、アメリカのサスペンスアクション作品でした。
本作の見どころは、似ているようで似ていない境遇を持つフランクとリアリーの腹の探り合い、大統領暗殺を予告してから実行するまでの激闘の数々です。
物語のラストで、フランクがリリーと一緒にリアリーが残した別れのメッセージを聞く場面。
フランクが最後まで聞かなかったのは、リアリーが言わんとしていることが分かっていたからか、それとももう終わったことだからと聞かないようにしたのか。
そのメッセージを残したのは、リアリーなりに自分の復讐に巻き込んだことへの謝罪なのか、観る人によって色々考察できて最後まで楽しむことができます。
クリント・イーストウッドのアクションスターとしての健在ぶりと、ジョン・マルコヴィッチの怪演が見られるサスペンスアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。