連載コラム「邦画特撮大全」第17章
実は2018年はさまざまな特撮作品がアニバーサリーをむかえていました。
今回から4回に亘ってそうした作品をそれぞれ特集していきます。
2008年の4月から1年間、テレビ東京系列で放映されていた『ケータイ捜査官7』。本作は“たまごっち”などで知られる玩具企画開発メーカー・WiZとアニメーション制作会社ProductionI.Gが手掛けた特撮ドラマです。
今回は放映から10周年をむかえた本作を特集します。
ドラマ『ケータイ捜査官7』のあらすじ
高校1年生の網島ケイタはある日、工場の機械が暴走する事件に巻き込まれてしまいます。
そこでケイタは、サイバー犯罪を取り締まる秘密機関“アンダーアンカー”のエージェント・滝本壮介と彼の相棒である歩く携帯電話・セブンと出会うのでした。
滝本は暴れる機械からケイタを庇って負傷してしまいます。
責任を感じたケイタは滝本の代りに犯人の元へ走り、セブンとともに事件を解決。
しかし滝本は傷がもとで死亡。ケイタは滝本の意志を継いでセブンの相棒となり、アンダーアンカーのエージェントとして活動することになります。
ケータイ&高校生の凸凹バディ
『ケータイ捜査官7』は無気力な高校生・網島ケイタと、口喧しいフォンブレイバー(携帯電話型のロボット)・セブンの凸凹コンビによるやり取りが魅力のひとつです。
主人公の網島ケイタを演じたのは窪田正孝。デビュー間もないこともあり初々しい雰囲気ですが、確かな演技力がこの頃から既に発揮されていました。
窪田正孝は本作の前年『時空警察ヴェッカーシグナ』(2007)に敵役、本作の翌年に井口昇がメイン監督をつとめた特撮ドラマ『古代少女ドグちゃん』(2009)には主人公の相手役で出演しており、特撮ファンからの知名度はこの時点で高かったのです。
ケイタは親の都合で転校を繰り返していたことから周囲に馴染めず、自身も周囲と距離を置くようにあり「何でもいい」「どっちでもいい」が口癖になっていました。
しかしセブンとともに活動する事で、主体性を持って行動していくようになります。一方でセブンも当初はケイタを未熟と評価していましたが、徐々にケイタを認めていきます。
セブンとケイタの関係と対比になる存在が、黒いフォンブレイバー・ゼロワンです。
ゼロワンはアンダーアンカーが製造したフォンブレイバー第1号。しかしゼロワンの相棒になった人間が3人とも爆死、射殺、自殺と非業の死を遂げてしまった影響からかひねくれた性格となりました。
アンダーアンカーから離脱し、自分たちフォンブレイバーと人間との関係に答え「解」を求めて、サイバー犯罪者たちに手を貸すのです。
ケイタとセブンが少しずつ絆を深めていくのに対し、ゼロワンは「お前は圏外だ」と組んだ人間に見切りをつけて捨てていく様は対照的です。
多彩な実力派スタッフによる本格ドラマ
本作のシリーズ監督をつとめたのは三池崇史。近年は漫画やアニメの実写化作品が多い印象ですが、『オーディション』(2000)や『十三人の刺客』(2010)など海外でも好評価を得た作品も監督しています。
しかし三池は多忙のため第1話、シリーズ中盤の第23話、最終回の計3本の演出にとどまりました。
そのため辻裕之をはじめ、渡辺武、丹野雅仁、西海謙一郎ら三池崇史監督作品で助監督経験がある監督たちが主にローテーションを回しました。
以上のメンバーに加えて平成ガメラ3部作の金子修介、『ウルトラマンダイナ』(1997)のメイン監督・小中和哉、『リング0 バースデイ』(2000)の鶴田法男、ドラマ『スカイハイ』シリーズの麻生学といった実力派監督たちが顔を並べました。
鶴田は第18話「URL」(脚本:高木登)というホラー回、金子はコメディ色の強い第26話「ニャンたる忍者!」(脚本:佐藤善木)などを演出。基本的に1話完結ということもあり、監督・脚本家がそれぞれの持ち味を生かしています。
また辻裕之はヤクザの抗争を扱ったVシネマで有名ですが、本作では第22話「こころのひかり」(福嶋幸典)や第44話「ゼロワンの解」(脚本:山口宏)などの回を監督しています。
前者はゼロワが出会った交通事故被害者と加害者の償いを描いた感動編。後者はネタバレとなりますがゼロワンの死を描いた回です。
本作の制作プロダクションはアニメ『ポケットモンスター』シリーズで知られるOLMとProductionI.Gです。
その縁もあってOLMからは『ポケモン』シリーズの総監督である湯山邦彦、I.Gからは『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)で知られる押井守が本作に監督として参加しています。
押井は19話・20話「圏外の女」の監督の他、第35話「ケイタのはつゆめ」(監督:渡辺武)を担当しています。
この第35話は押井が脚本を執筆したTVアニメ『機動警察パトレイバー』第29話のセルフパロディとなっています。
本作の源流?アニメ『ゴールドタイタン』
本作の源流ともいえるのがタツノコプロダクション制作のTVアニメ『ゴールドライタン』(1981)です。
このアニメは大海ヒロシ少年とライターが変形するロボット・ゴールドライタンの活躍を描いたアニメです。
少年と日常の道具が変形する意志を持ったロボットのバディものという基本設定は両作に共通しています。
設定だけでなくセブンもゴールドライタンも、元になった機器から直接四肢が生えているとデザインラインも共通しています。
『ケータイ捜査官7』を制作したProductionI.Gはタツノコプロダクションから独立した会社です。
本作の「企画」担当したI.Gの代表取締役社長・石川光久が初めて参加したアニメーション作品が、なんとこの『ゴールドライタン』でした。また押井守も『ゴールドライタン』の演出スタッフのひとりだったのです。
設定や一部スタッフが共通していることなどから、『ケータイ捜査官7』の企画・制作時、この『ゴールドライタン』を意識したのではないでしょうか。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は、放映から20周年をむかえた『ウルトラマンガイア』(1998)を特集します。
お楽しみに。