連載コラム「邦画特撮大全」第14章
前々回の第12章では仮面ライダーを演じたイケメン俳優の出自、次の第13章は彼らイケメン俳優の具体的な魅力にについて紹介してきました。
今回も仮面ライダーを演じたイケメン俳優を紹介しますが、さらに“2度変身した”をテーマに設定します。
2018年8月に放映が終了した『仮面ライダービルド』(2017)。猿渡一海/仮面ライダーグリスを演じた武田航平は、かつて『仮面ライダーキバ』(2008)に紅音也/仮面ライダーイクサで出演していました。
武田の出演は『キバ』のファンを興奮させただけでなく、『ビルド』を視聴していた子どもたちやファンにも受け入れられました。
ここでいう“2度変身した”は複数の特撮作品にそれぞれ別の役で出演し、なおかつ変身する役だった俳優のことを指します。
今回は「ライダー以前にヒーローを演じていた俳優」、「ライダー出演後にまたヒーローを演じた俳優」、「ライダーを演じた後に怪人役を演じた俳優」の3つに分けて、仮面ライダーを演じた俳優を紹介していきます。
他のヒーローから仮面ライダーに『仮面ライダー龍騎』
仮面ライダー龍騎 第01話
13人の仮面ライダーが登場する『仮面ライダー龍騎』(2003)。斬新なデザインの仮面ライダー、ライダー同士による壮絶なバトルロワイヤルが描かれ、放映当時話題になりました。登場する13人の仮面ライダーもそれぞれ魅力的です。
その中で最も強烈なのが浅倉威/仮面ライダー王蛇です。傷害事件を重ね東京拘置所に収監されていましたが脱獄。自身のイライラを解消するためだけに闘う衝動的な性格、金髪に蛇革の見た目と内面・外面ともに非常に強烈なキャラクターでした。
浅倉を演じたのは萩野崇。『超光戦士シャンゼリオン』(1996)で主人公・涼村暁/シャンゼリオンを演じていた俳優です。
凶暴な浅倉と、陽気で女性とお金にだらしない涼村暁は真逆な方向性の人物ですが、どちらも萩野のはまり役となりました。
王蛇のスーツアクターはシャンゼリオンと同じく岡元次郎。浅倉が初登場した第18話の演出は、『シャンゼリオン』のメイン監督・長石多可男でした。
そのため萩野崇の魅力を最大限に生かすことが出来たのだと思われます。ちなみに長石が監督を務めた劇場版『仮面ライダー電王 俺、誕生!』(2007)に登場する怪人・コブライマジンの声も萩野が担当しています。王蛇と同じくヘビがモチーフという、遊び心あるキャスティングでしょう。
東條悟/仮面ライダータイガを演じたのは高槻純。高槻はVシネマ『ウルトラマンネオス』(2000)で主人公カグラ・ゲンキを好演していました。しかし東條は“英雄”というものに執着する、言ってしまえば中二病的なキャラクターでした。
手塚海之/仮面ライダーライアを演じたのは高野八誠。高野は『ウルトラマンガイア』(1998)でもう一人のウルトラマン、藤宮博也/ウルトラマンアグルを演じた俳優です。上記の高槻同様にウルトラマンから仮面ライダーになった俳優です。
高野はその後、『仮面ライダーTHE FIRST』(2006)と続篇『仮面ライダーTHE NEXT』で一文字勇人/仮面ライダー2号を好演。なんと3度もヒーローに変身しました。
その他、窪田正孝が主演の特撮ドラマ『ケータイ捜査官セブン』(2008)では敵となる間明蔵人役。『仮面ライダードライブ』(2015)最終回にゲスト出演した際は、竹内涼真演じる主人公・泊進之介と因縁のある犯罪グループの人物というように、近年は悪役・敵役を演じることも多いです。
出演後、再び変身したヒーローたち『仮面ライダーカブト』
仮面ライダーカブト 第01話
『龍騎』同様にイケメン俳優が多数出演した、水嶋ヒロ主演の『仮面ライダーカブト』(2006)。メタリックなデザインではあるものの昆虫が再びモチーフに選ばれた作品です。
『龍騎』はヒーローに変身した経験のある俳優たちが仮面ライダーを演じましたが、『カブト』の場合は出演後に再びヒーローを演じた俳優が多かったです。
まず風間大介/仮面ライダードレイク役の加藤和樹。加藤は翌年公開された映画『仮面ライダーTHE NEXT』(2007)で風見志郎/仮面ライダーV3を演じました。ちなみにドレイクもV3もトンボがモチーフの仮面ライダーです。
矢車想/仮面ライダーザビー、仮面ライダーキックホッパーを演じたのは徳山秀典。徳山は『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)で須塔大翔/ゴーオンゴールドを演じました。
ともにクールな印象を受ける加藤と徳山ですが、加藤が甘い声なのに対し徳山はハスキーな声。そのため同じクールでも受ける印象が全く違います。2人はその後『インディゴの夜』(2010)で共演しますが、そちらでもそれぞれ違うクールさを魅せます。
ヒーローが怪人役に『仮面ライダー剣』
仮面ライダー剣(ブレイド) 第01話
トランプがモチーフの仮面ライダーが4人登場する『仮面ライダー剣(ブレイド)』(2004)。
この作品で橘朔也/仮面ライダーギャレンを演じたのが天野浩成。主人公の剣崎一真/仮面ライダー剣の先輩で正義感が強い人物の橘ですが、精神的に弱い部分もあり伊坂/ピーコックアンデッドに利用されてしまいます。
天野はその後、『仮面ライダーフォーゼ』(2011)に出演。しかし演じた役はヒーローではなく敵の怪人役です。
天野が扮した速水公平/リブラゾディアーツは、福士蒼汰演じる如月弦太朗/仮面ライダーフォーゼたちが通う天ノ川学園高校の校長。イケメンで保護者からの人気もある校長ですが、裏の顔は生徒たちにスイッチを渡し怪人にしていたのです。
ヒーロー役から怪人役となった天野ですが、『剣』で怪人を演じた俳優たちの多くはかつてヒーローを演じた方々なのです。
まず物語の鍵となる広瀬義人/トライアルBを演じる春田純一。現在は一般ドラマなどで活躍する春田ですが、ジャパンアクションクラブ(現:ジャパンアクションエンタープライズ)の出身。
『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982)で黒田官平、『科学戦隊ダイナマン』(1983)で星川竜と2年連続ブラックを担当しました。
そして影で全てを操っていた黒幕的存在、天王寺博史を演じるのは森次晃嗣。
『ウルトラセブン』で主人公モロボシダンを演じた名優です。仮面ライダーたちの前に立ちはだかるのがウルトラセブンというのは、 多くの視聴者に衝撃を与えました。
天野が怪人役で仮面ライダーシリーズに再び登場したのはスタッフの遊び心だったのかもしれません。
次回の邦画特撮大全は
次回の邦画特撮大全は“イケメン俳優”とうってかわって、仮面ライダーシリーズに出演した“ベテラン俳優”について紹介します。
お楽しみ。