連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第58回
日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅して、ピックアップする連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』。
第57回は、2026年5月29日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開の『シャオ・メイ/ローマ大決戦』です。
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2017)『フリークスアウト』(2023)のガブリエーレ・マイネッティ監督が香港カンフー映画にオマージュを捧げた本作は、姉を救うために凶悪犯罪組織に立ち向かう若き中国人女性の物語を驚愕アクション満載で描きます。
このたび、本作公開に向けて来日したマイネッティ監督にインタビューを敢行。アクション映画に対する思いや、作品の見どころを語ってもらいました。
【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『シャオ・メイ/ローマ大決戦』の作品情報

(C)2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
【日本公開】
2026年(イタリア映画)
【原題】
La città proibita(英題:The Forbidden City)
【監督・原案・脚本】
ガブリエーレ・マイネッティ
【製作】
マリオ・ジャナーニ、ロレンツォ・ガンガロッサ
【製作総指揮】
クリストフ・ダニエル、マルク・シュミットハイニー
【共同原案・脚本】
ステファノ・ビセス、ダビデ・セリーノ
【撮影】
パオロ・カルネラ
【編集】
フランチェスコ・ディ・ステファーノ、フランチェスカ・アドニツィオ
【美術】
アンドレア・カストリーナ
【衣装】
スザンナ・マストロヤンニ
【スタントコーディネーター】
ヤン・リャン
【キャスト】
リウ・ヤーシー、エンリコ・ボレッロ、マルコ・ジャリーニ、サブリナ・フェリッリ、ルカ・ジンガレッティ、チュンユー・シャンシャン
【作品概要】
長編デビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が大きな注目を集めたガブリエーレ・マイネッティ監督が、香港カンフー映画にオマージュを捧げたアクション。
実写版『ムーラン』(2020)での主演俳優のスタントダブルをはじめ、『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』(2019)『プロジェクトV』(2021)など数々のアクション作品でスタントを務めてきたリウ・ヤーシーが映画初主演。
共演に、Netflix映画『俺たちのファンタカルチョ 人生をダメにする最高のゲーム』(2025)のエンリコ・ボレッロ、『おとなの事情』(2017)のマルコ・ジャリーニ。
スタントコーディネーターを、『イコライザー THE FINAL』(2023)『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)などのハリウッド大作に参加してきたヤン・リャンが担当。名優マルチェロ・マストロヤンニの次女スザンナが衣装を手がけます。
2025年のイタリア・ゴールデングローブ賞監督賞、および同年シッチェス国際映画祭オルビタ賞長編作品賞、同年トーラス・ワールドスタントアワードでベストファイト賞を受賞しました。
映画『シャオ・メイ/ローマ大決戦』のあらすじ

(C)2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
行方不明になった姉を捜すためローマを訪れた若き中国人女性シャオ・メイは、売春や人身売買が横行する危険地帯となっている移民地区に足を踏み入れます。
そこで食堂を営むマルチェッロと偶然出会ったメイは彼の助けを借り、移民街を根城にする人身売買組織に戦いを挑みますが……。
イタリアン・ジャンル映画の名匠、ガブリエーレ・マイネッティ監督インタビュー

ガブリエーレ・マイネッティ監督/撮影:松平光冬
ブルース・リーは僕の師匠です
長編デビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』で永井豪原作のロボットアニメ、2作目『フリークスアウト』では超能力ヒーローと、自身が幼少時に慣れ親しんできたサブカルチャーにインスパイアされた作品を次々発表し、世界中の映画ファンを虜にしたガブリエーレ・マイネッティ監督。
今やジャンル映画におけるイタリアの巨匠としての地位を確立したともいえるマイネッティ監督の新作『シャオ・メイ ローマ大決戦』は、やはり彼が愛してやまない香港カンフー映画へのオマージュが込められています。
「キン・フー監督(香港武侠アクション映画の巨匠)の作品なども好きですが、僕にとってのメンター(師匠)はブルース・リー。子どもの頃にいじめられていた時、テレビで彼の映画を観て、『こういうヒーローがいじめっ子を倒してくれたらいいのに…』と思っていました」
「前作の『フリークスアウト』には『グリーン・デスティニー』(2000)の影響も入っている」と明かしつつ、「ジャッキー・チェンはリーの次に好き。チャック・ノリスやジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画も観ていたし、『ザ・レイド』(2011)のイコ・ウワイスや『イップ・マン』シリーズ(2008~2020)のドニー・イェンのアクションも良かった」と、香港のみならず世界のアクション映画の薫陶を受けてきたことを隠しません。
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』で主人公シャオ・メイを演じるリウ・ヤーシーは、長らくスタントウーマンとしてジャッキーのアクション・スタントチームに所属し、ドニー・イェンの主演作にも参加していたとか。つまり本作は、彼女にとって初の役付き俳優としての参加にして、初主演作となります。
リウ・ヤーシーを主演に選んだのは間違いじゃなかった

(C)2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
「当初はアクションができる有名俳優をキャスティングするつもりでした。でも知り合いのプロデューサーからヤーシーを薦められ、彼女がスタントウーマンをしている作品を観て興味が沸き、中国から4回ほどイタリアに来てもらいオーディションを行いました」
1979年から2014年の中国で実施された、一組の夫婦につき子供は原則一人までとする、いわゆる「一人っ子政策」がストーリーの根幹にある『シャオ・メイ ローマ大決戦』。実はヤーシーを主演に決めたのも、この政策が遠因となっています。
「ヤーシー本人が一人っ子政策時代に三人目の子どもとして生まれていたのと、なおかつ中国における女性の立ち位置を描いたストーリーに共鳴してくれたことが決め手となりました。彼女を選んだのは間違いじゃなかった。俳優としても素晴らしかったし、あそこまで美しい動きをしてくれる人は今までいませんでした」
行方不明の姉を捜しにローマを訪れるシャオ・メイを筆頭に、蒸発した父の代わりに母のロレーナを支えるマルチェッロ、さらには移民街の顔役アンニバレ、中国人犯罪組織を仕切るワンといった敵対者たちを含む主要の登場人物は皆、家族としてのつながりを欲しています。
「文化は家族を“体現”するものだと思います。イタリアでは『家族が人を強くする』という考えが強く、その考えは『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』でも描きました。ただあまりにもそれを押し付けると、家族関係が壊れる危険性もあります。
閉ざされた一人っ子政策時代に生まれたシャオ・メイと、鳥かごの中で暮らすような生活をしてきたマルチェッロ、異なる文化で育った二人の魂の結びつきを軸に、イタリア国内にまだあるファシズム視点への批判も盛り込みました」
(C)2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
映画は監督が“カメラ”で書くもの

(C)2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
本作の要となる、アクションシークエンスでこだわった点とは。
「脚本を完成させる前にプロダクションデザイナーにお願いして、ローマ・テルミニ駅の地下階層といったアクションシーンが映えるロケ地を提案してもらい、スタントコーディネーターのヤン・リャンが素晴らしいコレオグラフィを考えてくれました」
「ジャッキー映画の特徴である小道具を使ったアクションや、終盤のアクションでは重みを出すために『ドラゴン危機一発』(1971)も参考にした」と、レジェンドたちのカンフー映画リスペクトを盛り込んだというマイネッティ監督。インタビュー終盤では、映画製作への熱き姿勢も覗かせました。
「映画というのは、すべてのスタッフのコラボレーションが重要。脚本はストーリーの背骨ではあるけど、そこから監督が“カメラ”で書き加えたり、スタッフからのいろんなアイデアが派生して生まれるものだと思います」
中国とイタリアという異文化のコラボレーションを、カンフーアクションとしてエキサイティングに昇華したガブリエーレ・マイネッティ監督の野心作に、ご期待ください!
次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら
松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)


































