連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第3回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第3回は、2019年10月25日(金)~31日(木)にヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「ワールド・エクストリーム・シネマ2019」にて公開される、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『ザ・バウンサー』です。
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CONTENTS
映画『ザ・バウンサー』の作品情報
【日本公開】
2019年(フランス・ベルギー・イギリス領バージン諸島合作映画)
【原題】
Lukas
【監督・脚本】
ジュリアン・ルクレルク
【キャスト】
ジャン=クロード・ヴァン・ダム、スヴェヴァ・アルヴィティ、サミ・ブアジラ、サム・ルーウィック、ケビン・ヤンセンス
【作品概要】
「キックボクサー」、「ユニバーサル・ソルジャー」両シリーズなどのヒット作を持つアクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のクライムドラマ。
ヴァン・ダムの故郷ベルギーを舞台に、彼扮する謎多きバウンサー(用心棒)が、愛する娘のために犯罪組織への潜入に挑んでいきます。
監督・脚本は『ザ・クルー』(2016)、『フランス特殊部隊GIGN(ジェイジェン)~エールフランス8969便ハイジャック事件~』(2011)などのフランス製アクション映画を手がけるジュリアン・ルクレルク。
本作は、2019年10月25日(金)~31日(木)にヒューマントラストシネマ渋谷で開催される「ワールド・エクストリーム・シネマ2019」にて、日本初公開となります。
映画『ザ・バウンサー』のあらすじ
故郷ベルギーのナイトクラブでバウンサーをしているルカスは、娘のサラを一人で育てています。
しかし、ルカスはある日の勤務時に、店員に絡む男をつまみ出そうとして、誤ってケガをさせてしまいます。
男が政府高官の息子だったことで職を失ったルカスは、新たな職としてストリップクラブのバウンサーに就くことに。
そんなルカスの元に、警察が接触を図ります。
警察は、紙幣偽造に手を染めるストリップクラブのオーナー、ヤンの動向を探るべく、腕っぷしが強く身元不明なルカスにその任務を与えたのです。
最初は拒否するも、断れば逮捕してサラと離ればなれにすると脅され、仕方なく引き受けることにしたルカス。
バウンサー以外に、紙幣偽造に関する仕事もこなしていくルカスは、次第にヤンからの信用を得ていきます。
そんな折、紙幣偽造のプロであるリサの護衛に就いていた際、取引相手との予期せぬトラブルに巻き込まれてしまい…。
低迷期を経ても現役のジャン=クロード・ヴァン・ダム
本作主演のジャン=クロード・ヴァン・ダムは、マーシャル・アーツのチャンピオンを経て、1980年代後半から映画界で活躍。
1987年の『ブラッド・スポーツ』でアクション映画初主演をはたして以降は、『キックボクサー』、『サイボーグ』とステップアップに注目を集め、90年代に入ると『ユニバーサル・ソルジャー』、『タイムコップ』(1994)のハリウッド大作に活動を移していきます。
彼の持ち味といえば、空手とキックボクシングを主体とする、“魅せる”ことに特化した派手なアクション。
特に主演作で必ず披露していた180度開脚ポーズは、彼のトレードマークとなりました。
テレビ東京の昼の映画番組「午後のロードショー」では、そんなヴァン・ダムのアクションを「ヴァンダミング・アクション」と命名し、彼の作品が放映される際は、決まってこのフレーズをCMの宣伝文句にしていたものです。
しかし2000年代に入ると主演作が軒並み不発となり、それとともに私生活も結婚・離婚を繰り返し、低迷期を迎えることに…。
それでもヴァン・ダムは、自らの低迷ぶりを自虐的に盛り込んだコメディ『その男ヴァン・ダム』(2008)に「ジャン=クロード・ヴァン・ダム」役で主演し、話題となります。
参考動画:『その男ヴァン・ダム』予告
さらに2012年の『エクスペンダブルズ2』では、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーといった伝説的アクションスターたちと対峙する悪役を演じ、再評価されました。
近年は実子であるクリス・ヴァン・ダム、ビアンカ・ブリーとの共演もはたしています。
派手さを封印したヴァン・ダムがシブい!
本作でヴァン・ダムが演じる男ルカスは、故郷ベルギーのブリュッセルで、娘のサラを男手一つで育てています。
彼の過去は、南アフリカで要人警護の職に就いていたらしい、とある理由で妻を亡くしたらしい、といった不明瞭な経歴があるのみ。
それでいて、文盲なのに状況に応じてフランス語(ベルギーは地域によってフランス語、オランダ語、ドイツ語の三つの公用語がある)と英語を使い分けるという、いかにもワケありな人物です。
笑顔らしい笑顔も見せず、黙々と用心棒の仕事をするルカスというキャラクターが、映画界での浮き沈みを経験し、円熟味を増した今のヴァン・ダムにハマっています。
アクションシーンも、これまでのヴァン・ダム映画とは趣が違います。
本作では、180度開脚キックのようなヴァンダミング・アクションは鳴りを潜め、単純に殴る蹴るといった無骨なアクションに終始しており、バウンサーという役柄上、派手さよりもリアルさを追求しています。
ガンアクションでも、一人称視点のPOV(Point of View Shot)による長回しショットを多用。
こうした演出は、『ザ・クルー』や『フランス特殊部隊GIGN(ジェイジェン)~エールフランス8969便ハイジャック事件~』でも同じ手法を用いていた、ジュリアン・ルクレルク監督の采配が光ります。
『サドン・デス』(1996)などの過去作でも子どもを護る男を演じたヴァン・ダムですが、本作では愛娘のために裏稼業に手を染める、“子連れ狼”ヴァン・ダムのシブい魅力があふれています。
新たなヴァンダミング・アクションに括目せよ!
スタローンが『ランボー5(Rambo: Last Blood)』を、シュワルツェネッガーも『ターミネーター:ニューフェイト』と、年齢が70代にさしかかりながらも、それぞれ自身の代表シリーズの最新作を発表。
65歳(2019年時点)のジャッキー・チェンも、新作『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』が2020年1月に日本公開予定です。
ライバルにして盟友のアクションスターが現役である以上、2020年に60の大台に乗るジャン=クロード・ヴァン・ダムも、まだまだ老け込むわけにはいきません。
『We Die Young(原題)』(2019)では、地元のギャング闘争に巻き込まれた近隣少年のピンチを救おうとする元米軍兵士を演じています。
近年ではメンター(指導者)的なポジションの役柄が増えつつあるヴァン・ダムによる、新たなヴァンダミング・アクション満載の、『ザ・バウンサー』をお見逃しなく!
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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