連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第22回
映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。
傑作・珍作に怪作、斬新な設定のホラー映画など、さまざまな映画を上映する「未体験ゾーンの映画たち2022」。今年も全27作品を見破して紹介して、古今東西から集結した映画を応援させていただきます。
第22回で紹介するのは、最新技術を用いて描いたSFスリラー映画『デモニック』。
脚本を書き自ら監督した『第9地区』(2009)がアカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされたニール・ブロムカンプ。
SF色の強い映画を手掛け続ける彼の最新作を紹介します。本作も一筋縄ではいかない作品、どうかご期待下さい。
【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『デモニック』の作品情報
【日本公開】
2022年(カナダ映画)
【原題】
Demonic
【監督・脚本・製作総指揮】
ニール・ブロムカンプ
【キャスト】
カーリー・ポープ、クリス・ウィリアム・マーティン、マイケル・J・ロジャーズ、ナタリー・ボルト、キャンディス・マクルーア、テリー・チェン
【作品概要】
過去に大量殺人を犯した母親と絶縁した娘。彼女は昏睡状態になった母の意識に、最新VR技術で入ります。そして彼女は、恐るべきものに遭遇しました…。SF的な設定で描かれた最新オカルト・ホラー映画。
『エリジウム』(2013)、『チャッピー』(2015)を手がけたニール・ブロムカンプ監督の、待望の最新映画を紹介します。
『エリジウム』に出演し、『SUITS/スーツ』(2011~)や『ARROW/アロー』(2012~)などドラマでも幅広く活躍しているカーリー・ポープが主演。
『ワールド・オブ・テロ 破滅へのカウントダウン』(2008)のクリス・ウィリアム・マーティン、ドラマ『Siren サイレン』(2018~)のマイケル・J・ロジャーズ、ドラマ『リバーデイル』(2017~)のナタリー・ボルトらが共演しています。
映画『デモニック』のあらすじとネタバレ
太陽が明るく輝く中、カーリー(カーリー・ポープ)は母を呼びつつ荒れ果てた建物に近づいていました。その中から、助けを求める母の声がします。
暗い建物の中に入るカーリー。そこはかつて療養施設だった建物の廃墟でしょうか。その部屋のベットの上に、彼女の母アンジェラ(ナタリー・ボルト)が座っていました。
アンジェラが火の付いたライターを投げると、床に撒かれた油が激しく燃え上がります……。
それはカーリーが見た夢でした。目覚めた彼女は家を出ようと身支度をしますが、夢で見た母の表情が忘れられません。
車に乗り込んだカーリーは、スマホに送られたマーティン(クリス・ウィリアム・マーティン)のメッセージに気付きます。どのように彼に返事したものか戸惑うカーリー。
そこに親しい友人サム(キャンディス・マクルーア)から電話が入ります。カーリーは明るい調子でサムに、そちらに向かうと答えました。
サムは久々に故郷に帰ってきたカーリーを歓迎し、家に招待したのです。2人はワインを飲んで再会を喜びますが、もう6~7年も会っていないマーティンから連絡があった、と告げるカーリー。
2人にとってマーティン、そしてカーリーの母の話題は触れたくないものでした。家に帰ったカーリーは、迷った末に明日、マーティンに会うと約束します。
翌日、待ち合わせた店で彼女はマーティンと会いました。なぜ連絡をしたかと問うカーリーに、ある医学研究所が接触してきた、と語るマーティン。
研究所は君を探している、彼らはアンジェラの治療の件で、君と会う必要があるようだ、とマーティンは説明します。
母が治療中とは、カーリーは全く知らずにいました。マーティンから母は昏睡状態で、担当医師は彼女と母の面会を望んでいると聞かされました。
突然の話に動揺する彼女を見て、マーティンは謝ります。これは自分にとって、簡単に受け入れられる話でないだけだ、と説明するカーリー。
帰宅した彼女は母の写真を眺め思い悩みます。そこにセラポール・メディカルという医療機関から電話がかかってきました。
マイケル(マイケル・J・ロジャーズ)と名乗った相手は、マーティンが話した医学研究所の一員です。母の容態や治療方針について、電話では詳しく話せないと説明するマイケル。
カーリーは明日、母が収容されている研究所を訪れると彼に約束しました。
翌日、近代的な外観を持つ研究所を訪れたカーリーをマイケルが出迎えます。セラポールは公的な支援を得て、患者の苦痛緩和など新たな医療技術を研究する新興企業だ、とマイケルは説明します。
マイケルは彼女に、生物医学の画像処理技術と神経医学の分野で博士号を持つ、首席研究員のダニエル(テリー・チェン)を紹介します。今だ状況が呑み込めず戸惑うカーリー。
彼女の母アンジェラは昏睡状態で、意識はあるが体が動かせない、閉じ込め症候群(LIS)と呼ばれる状態に陥っていました。
しかし彼女の意識は、現在も活発に活動しています。セラポールは被験者となった彼女を、”シミュレーション”と呼ばれる装置につなぎます。
それは人間の意識を仮想現実の世界で再現する装置でした。”シミュレーション”でアンジェラの意識を再現し、その仮想空間にカーリーが入って母に呼びかけ、彼女の意識を現実に連れ戻して欲しいと告げるダニエル。
この行為は被験者の近親者にしかできません。そこでセラポールはカーリーに接触してきたのです。
簡単に説明すれば、母親の夢の中に入るようなものだと告げられるカーリー。マイケルからアンジェラの心に入り、母と話したいかと問われた彼女は、あまり乗り気ではないが承諾しました。
まず仮想現実空間で、彼女のアバターを作るためのデータが取り込まれます。”シミュレーション”につながれる前に、仮想空間の中で出会う母親の反応に、ショックを受けるかもしれないと警告するマイケル。
昏睡状態で生命維持装置につながれた母の痛々しい姿を見て、戸惑いを覚えるカーリー。アンジェラは昏睡状態になる前は、幻覚を見て自傷行為を繰り返していた、とダニエルは説明します。
カーリーは母の隣にあるベットに横たわり、”シミュレーション”につながれます。状況はモニターしているから、不測の事態が起きれば現実世界に引き戻す、と約束したマイケル。
こうして彼女の意識は、母親の意識を再現した仮想空間へとドロップしました。”シミュレーション”の中の世界に入った自分の周囲に、リアルな世界が再現され始めているとカーリーは感じます。
再現されたアバターや、仮想現実の中の風景は徐々に安定しました。現れた少女時代の自宅に入るカーリーの姿を、モニターで確認するマイケルとダニエル。
カーリーが寝室に入ると、ベットに母アンジェラが座っていました。カーリーは母に呼びかけ、母が犯した罪に苦しめられた過去を訴えます。
それでも呼びかける娘に対し、出ていけ、2度とここには戻るなと告げたアンジェラ。母が見せた態度にカーリーは怒りました。
現実世界に戻った彼女は、母の態度に深いショックを受けていました。動揺したまま彼女は、”シミュレーション”での体験の説明を求められます。
かつて看護師だった母は錯乱状態で事件を起こし、逮捕され収監された。それ以来会っていない母には、20年前に棄てられたようなものだと語るカーリー。
マイケルとダニエルは、彼女が再度”シミュレーション”で母と会うことを望んでいました。帰路についたカーリーは、今日の出来事を思い悩んでいました。
その夜彼女は夢を見ます。夢の中では廃墟の中から、彼女に助けを求める母の声が響いていました。廃墟の中に入ると、そこでカラスの骨で組まれた、何か儀式じみたシンボルを目撃したカーリー。
目ざめた彼女はセラポール社の研究所を訪れ、今日も”シミュレーション”につながれると、仮想現実の世界にドロップします。
前回と同じく再現された自宅に入りましたが、今回は母がいた部屋には奇妙なトンネルがあります。そのトンネルをくぐり抜けた先に、療養施設がありました。
施設の庭にはアンジェラが座っていました。若い頃の姿の母に、なぜ夢の中で助けを求めるのか問います。
しかし今回もアンジェラは、すぐに立ち去れと激しい調子で言いました。彼女のアバターは不安定な状態になり、何が起きているのかと動揺するカーリー。
ダニエルは彼女を現実世界に戻そうとしますが、マイケルはもう少し様子を見ろと指示します。逃げようしたカーリーは、トンネルが無くなったと気付きます。
呼びかける男の声が聞こえます。彼女は目の前の施設の中に、友人のサムが倒れている姿を目撃しました。
施設内に入りサムに駆け寄ったカーリーの前に、暗闇から不気味な何者かが現れました。その怪物が自分の腕を自らの爪で傷付けると、同じ傷が”シミュレーション”につながれた、現実のカーリーの腕に現れます。悲鳴を上げたカーリーのアバター。
現実世界で目覚めたカーリーは、母が自傷行為で付けたような傷を右腕に負っていました。自分が仮想空間から脱出の望んだ時になぜ出さなかった、何があったとマイケルとダニエルを問い詰めるカーリー。
全てはアンジェラの過去に原因がある、詳しく教えて欲しいと訊ねるマイケルに、彼女は母の過去について語りました。
アンジェラは明るく仕事熱心な看護師で、カーリーと仲の良い母親でした。しかし1998年のある日、彼女は突然倒れます。
勤務先の療養所で倒れた母を、カーリーは父と共に助けます。その時アンジェラの腕には、今のカーリーのような傷が付いていました。
その後母は回復したものの、口数は少なくなりました。うつろな表情を見せ始め、それはどんどん悪化していきます。母はまるで別人になったと語るカーリー。
ある日彼女は、キッチンでカラスの死骸を解体する母を目撃します。そしてアンジェラは、勤務していた高齢者療養施設に放火しました。
警察に連行される時に、母は笑っていたと当時を振り返るカーリー。油を撒いてから火を放たれた老人ホームで、21人が犠牲となります。
他にもアンジェラには毒物を使って、教会で5人殺害した容疑もありました。祖母も犠牲者になったと語るカーリー。
“シミュレーション”に登場した母以外の女性は誰か、と尋ねるマイケルに、彼女は友人のサムだと答え、セラポール社の研究所を後にします。
不安にかられたカーリーはサムに電話しますが、彼女は何事もなかったかのように話して来ます。なぜ電話したかとサムに問われて、彼女は説明に困りました。
しかし腕には原因不明の傷が残っています。カーリーは仕事も手に付かず、そしてマーティンの家を訪ねます。
カーリーは彼にセラポール社で受けた”シミュレーション”の体験を語ります。その話に関心を示したマーティン。
彼はカーリーの腕に付いた傷に関心を示します。奇妙な体験に戸惑った彼女は、マーティンに何か知ってる事実は無いかと尋ねました。
マーティンは彼女をガレージに案内します。彼はそこで何かを調べていたのです。壁に貼られた挿絵の怪物が、”シミュレーション”で自分が目撃したものに似ている、と気付いたカーリー。
それは悪魔の化身だと説明したマーティン。悪魔は実在すると語った彼は、アンジェラの働いていた老人ホームは、かつて殺人があり悪魔信奉者が集ったいわく付きの場所だと教えます。
彼はアンジェラの事件とその背景を調べていました。壁に貼られた絵に描かれた、カラスの骨で作ったた悪魔のシンボルを見たカーリーは、夢で見たものと同じだと気付きました。
マーティンの語る突飛な話に彼女は戸惑います。カトリック教会は悪霊の存在を認めている、悪魔は実在して様々なものに潜んでおり、家族や友人に化けて狙った人間に近づき、その者を乗っ取るのだと説明するマーティン。
教会は実際に悪魔祓いを行っており、民間企業にすぎないセラポール社のバックに教会がいる。研究対象の昏睡状態患者は、宗教的には悪魔憑きと呼ばれる人間ではないか、と彼は主張しました。
セラポールの従業員には教会関係者もいる。彼らは昔から聖なる武器で悪魔と闘ってきたが、新たな技術”シミュレーション”を使用して、悪魔祓いを試みているのではないか、とマーティンは力説します。
彼の信じられない話に嫌気がさし、彼女はかつてマーティンと連絡を絶っていました。今回聞かされた説明も信じがたく、彼の家から出て行ったカーリー。
マーティンは必死に、君の身に悪魔が迫り危険だと訴えます。その声に耳を貸さず、カーリーは車を走らせました……。
映画『デモニック』の感想と評価
『第9地区』に『エリジウム』、『チャッピー』のニール・ブロムカンプ監督待望の最新作です。彼の作品のファンの方は、本作を見てどう感じたでしょうか。
色々ご意見はあると思いますか、テクノロジーにこだわるストーリーの軸や映像の表現手法として……、そんな彼らしい作品とファンなら認めるでしょう。
人の意識を仮想現実で再現し、その空間に再現した別人格を送り込む…”シミュレーション”は、SF作家ウィリアム・ギブスンが1984年に『ニューロマンサー』を発表して以降広まった、「サイバーパンク」な設定の新機軸と言えるでしょう。
「テクノロジーに連結した人間の心、これは常に誕生してくるテーマと思います」、とインタビューに答えているブロムカンプ監督。
「その多くは、潜在意識に基づき、直感的な感覚から生まれます。知的で科学的な設定を与えれるほどに、映画に相応しい物語から遠ざかる気がしますが、お判りいただけますか?」と言葉を続けています。
そして本作の”シミュレーション”の表現には、“ボリュームキャプチャ”(ボリュームメトリックキャプチャ)という最新技術が利用されています。
SFX映画の撮影に多用される”モーションキャプチャ”は、被写体にマーカーを付け動きをデータ情報として記録し、それを元にCGでキャラクターを描く手法です。この技術で様々な映画に登場するモンスターが誕生しているのはご存じでしょう。
一方”ボリュームキャプチャ”は、人物などの被写体をそのまま3D情報として記録し、動きも含めて3D映像として再現する技術です。バーチャルリアリティを表現する、新たな技術として注目されています。
俳優の3次元化が可能になったが、現在の技術では解像度はかなり低い。髪の毛を再現がより鮮明になれば、様々な分野で利用されるだろうと説明する監督。
この開発されたばかりの技術を映像に、映画のストーリーに早速取り込んだニール・ブロムカンプ。彼のテクノロジーへの関心は、今も変わらず高いようです。
主演女優を意識して書かれた脚本
本作は”ボリュームキャプチャ”技術を使用したくて企画した映画だ、それを『パラノーマル・アクティビティ』(2007)のような、悪魔憑き(悪霊憑き)物語と組み合わせたと監督は説明しています。
昏睡状態の患者は活発に精神活動をしている、ならば仮想空間を動き回れるのではないか。誰かがその空間に入り、患者の心の中に閉じ込められた何かに遭遇する状況は、興味深いと彼は考えました。
本作では人の心に潜んだ悪魔が登場します。悪魔の姿はカラスをイメージしたが、これは中世ペスト流行時の疫病マスクがモチーフだ。これを思いついたのはパンデミックの影響かもしれない、と語っています。
本作は2020年、コロナパンデミックの影響が大きかった時期にカナダで撮影されました。厳しい環境で撮影されて完成し、公開を果たした映画としても注目を集めました。
本作の主人公カーリーは、カーリー・ポープが演じます。名前が同じですが、監督は脚本段階から『エリジウム』に起用した、彼女をイメージして脚本を書いたと話しています。
共に仕事をした彼女の才能を信じていたし、同時に彼女の人柄は低予算映画の製作現場で、共にチームを組む人物としても素晴らしい個性の持ち主だ、と紹介しています。
彼女はこの役を演じ切ってくれたと語る監督。唯一迷ったのは彼女が憑依されたシーンでした。彼女は自身の演技に納得できず、何度も監督と話し合いました。
こうして映画のシーンが誕生しましたが、映画に使用したシーンはお気に入りで、上出来だと思うとブロムカンプ監督は語っています。
生身の肉体でも奇怪なモンスターを表現
参考映像:トロイ・ジェームスのパフォーマンス『アメリカズ・ゴット・タレント』より
カーリー・ポープには2020年の、新年を迎えまだ数日しか経っていない時に、監督から「低予算ホラー映画を作るが、どう思いますか?」とのメールが送られてきます。
この出演オファーを承諾したカーリー・ポープ。これは監督が抱えている多くのプロジェクトの1つだと理解していましたが、3月にカナダもパンデミックの影響が大きくなり、全ての映画製作はストップしました。
制作困難な状況に遭遇して、ブロムカンプ監督の映画作りへの情熱はむしろ倍増した、と彼女は証言しています。状況が落ち着くと、監督と製作チームは迅速に行動します。
監督はパンデミック下で何かを撮りたい欲求以上に、映像の表面下に緊張感や陰鬱な恐怖を持つ作品を作れないか、と強く望んでいたとインタビューで語りました。
パンデミック下の撮影は困難だが楽しかった、と振り返るカーリー・ポープ。自分はこの映画をホラーではなく母娘の物語であり、トラウマの物語としてとらえたと話しています。
そして映画には「許し」という大きなテーマがある。自分自身を許し、自分を不当に扱ったと感じた人々を許し、理解と思いやりを示す。これは人のつながりの物語で演者にこれらの人間的要素は、全て大きな魅力だったと語りました。
彼女は”ボリュームキャプチャ”の撮影体験を語っていますが、同時に実際にカメラの前で行われたショッキングシーンについても、詳細に語っています。それは主人公の友人、サムが魔物に変身するシーンです。
このモンスターはCGではありません。曲芸師・パフォーマーとして活躍するトロイ・ジェームスが、実際にカメラの前で演じたものです。
トロイ・ジェームスに会った監督は、「何としても彼と共に仕事をしなければならない」と強く望んだと語っています。本作をご覧の方なら、その理由はお判りでしょう。
カーリー・ポープも本作は、実は監督が彼のために脚本を書いた作品にも思える、本当かどうか判りませんが……と語りました。本作は最新CG技術を使用する一方で、生身のアクションの見せ場も提供しているのです。
トロイ・ジェームスは「未体験ゾーンの映画たち2018」上映作品の『ザ・ヴォイド』(2016)や『ヘルボーイ』(2019)、『ナイトメア・アリー』(2021)など、その身体能力を生かしホラー・SF映画などで活躍しています。ぜひご注目下さい。
まとめ
パンデミックの影響下で、テクノロジーにこだわったホラー映画、『デモニック』を完成させたニール・ブロムカンプ。
私はいつも奇抜さや風刺に魅かれてしまう、それは過去の映画に現れていたと語る監督は今回は自制心を働かせ、大真面目にホラー映画に挑み抑制したカメラワークで撮影したと説明しています。
この作品には彼が手がけたSF・ホラー短編ドラマシリーズ「Oats Studios」(2017~)の経験が生かされたと振り返る監督。
『デモニック』をご覧の方は、『第9地区』や『エリジウム』、『チャッピー』のようなブラックな要素、過激なバイオレンスシーンが存在しないことに、不満を覚えたかもしれません。
ブロムカンプ監督は『チャッピー』の後、『Oats Studios』で手がけた短編作品を通じ、進化していたのです。『Oats Studios』は執筆時点ではNetflixで配信され鑑賞可能です。
ニール・ブロムカンプ監督の従来から変わった部分、今も変わらぬ部分に注目して彼が久々に手掛けた映画、『デモニック』に注目して下さい。
しかし、人体破壊シーンが大好きだった監督。『チャッピー』の日本劇場公開の際、それらのシーンが監督に断りなくカットされ、ちょっとしたトラブルになりました。
本作は悪魔が暴れて死屍累々というシーンがありますが、以前のブロムカンプ監督ならここで、絶対トンデモない描写をしたはず、と思うのは私だけでしょうか。
そんなシーンが無いのは予算都合ではなく、監督が進化した結果かもしれません。ホラー・バイオレンス映画を愛するあなたは、どう思われますか?
次回の「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」は…
次回第23回は、地球を捨てた移住者たちが、過酷な環境に耐えて暮らす火星。ある日辺境で暮らす一家が、何者かに襲われる…。SFサバイバルアクション映画『マーズ』を紹介いたします。お楽しみに。
【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら
増田健(映画屋のジョン)プロフィール
1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。
今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn)