連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第16回
様々な事情で日本劇場公開が危ぶまれた、埋もれかけた映画を紹介する劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第16回で紹介するのは『THE LAW 刑事の掟』。
相棒を殺された刑事は、その仇を討とうと警察内部に巣食う悪を追求します。そして事件の鍵は、美しき目撃者にあると気付きました。
病院という閉ざされた空間で繰り広げられる、駆け引きを交えた犯人との攻防劇。まさに『ダイ・ハード』(1988)を思わせる設定で、ブルース・ウィリスが活躍する作品です。
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CONTENTS
映画『THE LAW 刑事の掟』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
Trauma Center
【監督】
マット・エスカンダリ
【キャスト】
ブルース・ウィリス、ニッキー・ウィーラン、スティーブ・グッテンバーグ、ララ・ケント、ティト・オーティズ、テキサス・バトル、キャサリン・デイビス、タイラー・ジョン・オルソン
【作品概要】
病院を舞台に悪徳刑事から逃れる女目撃者と、彼女を守ろうとする刑事の活躍を描くクライム・アクション映画。2007年に放送されたスティーブン・スピルバーグらが主催した、映像クリエイター発掘リアリティショー番組「On the Lot」の出場者に選ばれ、以降映画監督として活躍してるマット・エスカンダリの手掛けた作品です。
主演はお馴染みブルース・ウィリスと、『ダブル/フェイス』(2017)や清水崇監督作『7500』(2014)に出演しているニッキー・ウィーラン。『ポリスアカデミー』(1984)シリーズで人気となった、スティーブ・グッテンバーグも出演しています。
映画『THE LAW 刑事の掟』のあらすじとネタバレ
病院の廊下を、意識の無い血まみれの女性患者を、引きずって運ぶ男の姿がありました。男はその女性を激しく殴りつけます…。
とある狭い部屋に、2人の男が入ってきます。ピアース刑事(ティト・オーティズ)とタル刑事(テキサス・バトル)は、この部屋の住人を刺殺していました。
2人は何かを探している様子です。机の引き出しをこじ開けると、中の札束には手を付けず、携帯電話だけを持ち出します。
死体となった男に、紙幣を投げ捨てて立ち去った刑事たち。
ここはプエルトリコの首都、サンファン。マディソン(ニッキー・ウィーラン)は、とあるカフェでウェイトレスとして働いていました。
カフェには客として彼女の妹、エミリー(キャサリン・デイビス)がいました。エミリーは友人から、夜遊ばないかと誘われますが断ります。
2人でこの街で暮らしている姉妹。エミリーは保護者のように振る舞う、姉マディソンの存在を息苦しく感じているようでした。
マディソンも妹に嫌われていると実感していました。同僚のレニー(ララ・ケント)は、エミリーは多感な時期なだけで、あなたは良くやっていると慰めます。
カフェで勉強している妹に、マディソンはパイを持って行き話しかけます。しかし店で嫌な客の相手をする位なら、辞めるべきだと告げるエミリー。
生活のために、働かねばならないとマディソンは答えます。家に帰るという妹に勤務が終わるまで待つよう言いますが、エミリーはもう16歳だから、もっと自由にさせて欲しいと訴えます。
突然、エミリーの呼吸が乱れます。マディソンは吸入器を使うよう言いますが、妹はそれを家に忘れていました。エミリーに落ち着くよう声をかけるマディソン。
その頃タルとピアース両刑事は入手したメモリーカードと、携帯電話を確認していました。アプリを使い携帯のロックを解除します。
その結果殺害した男は、警察関係者に連絡している情報屋だと気付きました。
2人の刑事の不正行為は、男から警察内の人物に知らされていた可能性があります。しかし彼らは、誰がたれ込み屋と通じていたのか判りません。
自分たちで探す必要は無い。携帯を使い情報屋を装って、会いたいと連絡して現れた人物を始末すればいい。2人はそう企みました。
警察に現れたスティーブ・ウェイクス警部補(ブルース・ウィリス)の前に、相棒のトニー刑事(タイラー・ジョン・オルソン)が現れます。
トニーはウェイクスに、情報屋のジミー・ゴンザレスから会いたいとの連絡が入ったと告げました。それを聞いて不審に思うウェイクス刑事。
ウェイクスは今日ゴンザレスと話していましたが、彼は理由を言わず一方的に身を隠すと告げていたのです。その当人が、今度は直接会いたいと連絡を寄こしました。
神経質な性格のゴンザレスですが、今回は助けを求めてきたのかもしれません。トニーを指定された場所に向かわせ、自分は情報屋の隠れ家に向かうことにしたウェイクス。
妹を病院に連れていったマディソンは、担当のジョーンズ医師(スティーブ・グッテンバーグ)と話していました。また妹が吸入器を持たずに発作を起こした、と謝るマディソン。
まだ若いエミリーはストレスなどが原因で、過呼吸を起し喘息の発作を起こしやすい、と話すジョーンズ医師。しかし成長すれば、起きにくくなるだろうと説明します。
それまでは出来るだけ、エミリーを見守って欲しいと語った医師は、2人だけでのプエルトリコ暮らす姉妹を、何かと気にかけていました。
医師に礼を告げると、マディソンは入院した妹の様子を見に行きます。呼吸器を付けベットに横たわるエミリーに、吸入器を持ち歩かねば、と注意するマディソン。
吸入器を持ち歩くと、友人にからかわれて嫌だと言うエミリー。今夜は一緒にいて欲しいと訴えますが、マディソンはそれを断ります。
姉は病院を苦手にしていると、エミリーも知っていました。仕事に戻らねばならないマディソンは、妹を残して病院を後にしました。
車に戻り、ため息をついたマディソンは、今から店に戻るとレニーに連絡します。彼女に病院に残らなくて良いのか、と訊ねたレニー。
マディソンは母の事故以来、病院に来ると心落ち着けずにいました。レニーの配慮に感謝すると、彼女は店の夜のシフトに入ると告げます。
その夜、トニー刑事は情報屋のゴンザレスに指定された場所へ向かいます。一方ウェイクス刑事は、ゴンザレスの隠れ家に到着しました。
電話をかけても、ジミーと名を呼んで玄関の扉を叩いても、ゴンザレスは現れません。玄関の監視カメラの配線が切られていると気付き、ただ事ではないと判断します。
彼は玄関のドアノブを銃で撃ち、強引に中に入ります。そして中で刺殺されたゴンザレスを発見しました。呼び出しは罠だと気付き、トニー刑事に電話をかけるウェイクス。
車にスマホを置いたトニーと連絡がとれません。やむなくウェイクスは、相棒を救うべく指定された場所へと急ぎます。
その場所はマディソンが働くカフェの近くでした。ゴミを捨てに外に出た彼女は何かの物音に気付きます。そして彼女の前に、撃たれて傷付いたトニーがよろよろと現れました。
いきなり現れたトニーが出血していると気付き、悲鳴を上げるマディソン。遠くに2人の人影が現れると発砲し始め、彼女は身を隠します。
トニーを襲撃したのはタルとピアース両刑事でした。銃声を聞いた者が通報したのか、パトカーのサイレン音が迫ってきました。
銃声が止むとマディソンは、トニーの体を安全な場所に動かそうとします。しかし再度発砲が始まり、足を撃たれるマディソン。
警察が到着した、と判断したタルとピアースは引き上げます。そこに現れたウェイクス刑事が発砲しますが、逃げられてしまいます。
彼はトニーとマディソンの元に駆け寄ります。相棒が撃たれたと知り、座り込むウェイクス。
マディソンは妹が入院している病院に搬送されました。同じ病院でトニーの死を聞かされたウェイクスは、マディソンの元に向かいました。
同じ頃逃げのびたタルは先程の襲撃の際、警察から支給された拳銃を、目撃者に使ったピアースを責めていました。発見された銃弾が弾道検査されれば、彼の身元が判明します。
問題を解決するには、目撃者の体に撃ちこまれた銃弾を回収するしかありません。改めて足の付かない拳銃を用意するタルとピアース。
病院でマディソンは、ジョーンズ医師から説明を受けていました。太ももに命中した銃弾は、幸運にも大腿骨や動脈を切断することなく、体内に残っていました。
しかし今夜は外科医が残っていません。明日か明後日に手術を行うまで、この状態で安静にしておくしかないと、ジョーンズは彼女に説明します。
彼女の元にウェイクス刑事が現れます。見た事を聞かせてくれ、と言う刑事に、何も覚えていないと侘びるマディソン。
それでも襲撃者が2人だったと話します。1人しか目撃していなかったウェイクスには貴重な情報でした。彼女の聞いた、鋭く小さい銃声も彼女の体に残る40口径弾と一致するものです。
彼女を信用できる目撃者だと信じたウェイクス。しかし犯人の名など、解決に結びつく証言は得られずに終わります。マディソンは撃たれた人物について訊ねました。
撃たれたのは自分の相棒だ、と彼は告げました。犯人は警官を躊躇なく殺す危険な連中で、君はそれを目撃したと説明するウェイクス刑事。
マディソンの運び込まれた病院に、タルとピアースが現れます。刑事の立場を利用して、撃たれた人物がどこに搬送されたかスタッフに尋ねます。
しかしスタッフは、安全上の理由からどこかに連れて行かれたらしく、どの病室か判らないと伝えます。病院の警備室への案内を頼むタル刑事。
証人である彼女を守ろうと、ウェイクスは病院と相談して、今は誰もいない7階の感染症用の、隔離病棟の病室に連れて行きました。
人目につかず訪問者もいない、この場所が一番安全だと説明するウェイクス。さらに念のため病室の前には、このジェイコブス巡査がいると護衛の警官を紹介します。
病室にいれば安全で、外には武装した警官もいると説明するウェイクスに、同じ病院に入院した妹は安全かと訊ねるマディソン。彼女は自分はダメな目撃者だと侘びました。
役に立っていると慰める刑事に、なぜサンファンに来たのと訊ねたマディソン。
ウェイクスは皆、この島には何かから逃れるために来る、と告げました。その言葉の意味はマディソンにも理解出来るものでした。
必要があればボタンを押せば看護師が来ると説明し、万一の場合は連絡するように、とウェイクスは自分の電話番号を教え、直接かけるよう指示します。
911ではなく、ウェイクス刑事に連絡する。そう口にした彼女に完璧だと告げ、自分の名は今後スティーブと呼んで欲しい、と語りかけたウェイクス。
警備室に現れたタルとピアース両刑事は、責任者から情報を聞き出します。連れて来られた人物はマディソン・テイラーで、妹のエミリー・テイラーも小児病棟にいると知らされます。
そして保安上の理由から閉鎖中の7階隔離病棟の、707号室に連れて行ったと説明されました。タルは彼女を移動させた人物が、ウェイクス刑事だと聞き出しました。
タルは新たな情報の結果、マディソンは事件の容疑者と判明したと嘘の説明をして、7階の病棟を閉鎖するよう依頼します。
警備責任者は7階病棟を閉鎖し、エレベーターはカードキー無しでは動かない設定にしました。
警備員など病院のスタッフは、安全にため7階には近づかず、不審なことは全て自分たちに報告しろと告げるタルとピアース。
2人はウェイクスが重大犯罪班の刑事で、不正行為に手を染めない男だと知っていました。
彼が自分たちの犯罪行為を捜査していると睨んだ2人は、息のかかった犯罪者のマルコスとウィリアムズに、彼を始末させることにします。
7階の隔離病棟にタルとピアースが現れました。ジェイコブス巡査が立ち入り禁止だと告げると、ウェイクス刑事に言われ交代に来たと説明する2人。
交代して良いか、ウェイクスに確認する必要があると答えた巡査を刺殺するピアース。
病院が苦手で、眠れずにいたマディソンは、ドアの外で人が動く気配に気付きます。
タルは配電盤を操作し、7階から階段に出れないように細工し、ピアースは外部と連絡できないように電話線を引き抜きました。
不安を覚えたマディソンは内線電話を取りますが、電話は切れていました。彼女が点滴を引き抜いてドアの外の様子を伺うと、いるはずの巡査の姿がありません。
彼女が廊下の血痕に気付いた時、天井の照明が消えました。慌てて部屋に戻るマディソン。
扉に鍵をかけ、部屋の電気を消し息を潜めるマディソン。707号室に現れたタルとピアースは、入手した鍵で扉を開け中に入ります。
部屋には誰の姿もありません。タルは置かれた私物を調べ、間違いなくここがマディソンの部屋だと確認しました。ピアースは隣室に通じるドアがあると気付きました。
2人が隣の706号室に入ると、誰もおらず扉が開いていました。逃げたマディソンを追って、2人は廊下へ飛び出して行きます。
彼女は部屋の中のドアの影に隠れていました。廊下に男がいると確認すると、部屋に戻り不自由な体で、自分のスマホを手に入れようとしたマディソン。
しかし彼女は点滴スタンドを倒しました。その音を聞き戻って来るタルとピアース。
2人が病室に入った時、彼女は廊下に逃れていました。しかしエレベーターのボタンを押しても反応せず、スマホは電波が通じません。彼女はとっさに火災報知器を鳴らします。
彼女はナースセンターの机の下に隠れました。そこに現れた2人は、設備を操作して火災警報を止めます。2人はマディソンに気付かず去って行きました。
7階病棟以外の病院はいつも通り慌ただしい様子で、不安な一夜を過ごしているエミリー。
彼女は作業室に逃げ込み、扉を施錠しました。彼女に気付いたピアースはドアを開けろと叫び、椅子で扉を壊そうとします。
インターフォンのボタンを押し、誰か助けてと訴えるマディソン。それは廊下の外のインターフォンに通じており、ピアースは誰も来ないと彼女に告げました。
彼女が警察に通報したと告げると、自分が警察だと告げ、扉の窓からバッチを見せるピアース。ドアを開けろと叫ぶ声に、彼女はただ耐えるしかありません。
そこに現れたタルはピアースを下がらせると、マディソンにインターフォンで呼びかけます。自分たちは警官で悪人ではないと説明し、誤解があったと説得するタル。
自分たちが来た時、警護の警官は殺されており、その犯人を捜していたと説明します。彼女を銃を持って追ったのも、それによる誤解だと話します。
巡査を殺したと訴える彼女に、自分の名を名乗り、別に犯人がいると説得するタル。ピアース刑事は彼女を犯人と誤解して追ってしまい、驚かせてしまったと謝りました。
マディソンは少し考えてから、自分を守ってくれていたデビッドソン巡査を、どこで見つけたかを訊ねました。デビッドソンの遺体は、空いた病室で見つけたと語るタル。
警護の警官の名は、ジェイコブスだと教えるマディソン。
彼女はさらにタルにバッチを見せろと要求し、彼がサイレンサー付きの拳銃を持っていると気付きます。警官の持つ銃では無く、外の2人は自分を狙っていると確信します。
それでもタルは、マディソンにいつまでも閉じこもっていられないと告げ、出て来るよう説得します。しかし彼女はドアを開けません。
良い警官役の出番は終わりだと告げ、ピアースが扉の窓に銃弾を撃ちこみます。彼はタルが止めるのも聞かず扉のハンドルを撃ち、跳弾がかすめて怪我をします。
自分は何も見ていない、と訴えるマディソンに、欲しい物は君の体の中にあると告げるタル。
彼女は自分に撃ちこまれた銃弾が、彼らの狙いだと知らされました。このまま出血すれば死ぬだけだと言い、タルは扉を開けろと要求します。
非常用の斧を持ち出すと、ピアースは扉のハンドルを壊し始めます。部屋にあったAED(自動体外式除細動器)を操作し、電気ショックを与えるパッドをドアノブに貼るマディソン。
ピアースがハンドルを掴んだ時に、彼女はボタンを押し電気ショックを与えます。
その隙に台を動かしたマディソン。ようやくタルとピアースが部屋に入った時には、彼女の姿は無く天井のダクトの蓋が開いていました…。
映画『THE LAW 刑事の掟』の感想と評価
参考映像:『ハード・ナイト』(2019)
ブルース・ウィリスが出演した、ビルの中での追跡劇を描くアクション映画、といえば誰もが『ダイ・ハード』(1988)を思い浮かべるでしょう。
本作をご覧になった方はニッキー・ウィーランこそ、実質的主役だと気付くでしょう。事実クレジットでも彼女の方が、ブルース・ウィリスより先に表記されています。
ブルース・ウィリスもお歳ですし、逃げ回る役は女性の方が美しいです。そしてダクトを使って逃げるシーンなど、『ダイ・ハード』を意識した場面が多数ありました。
面白いのは『ダイ・ハード2』(1990)の監督、レニー・ハーリンが香港を舞台にして撮った映画、「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品『ハード・ナイト』もまた、『ダイ・ハード』的設定を持つ作品です。
偶然にも『THE LAW 刑事の掟』と『ハード・ナイト』は、「犯人が被害者の体に残した銃弾」が、ストーリーの鍵になっている点でも共通しています。
ともかく現在のアクション映画には、『ダイ・ハード』の遺伝子が脈々と受け継がれている事を、再確認させてもらいました。
微妙な予算規模映画ならではの工夫
マット・エスカンダリは短編映画『The Taking 』(2004)を監督後、映像クリエイター発掘リアリティショー番組「On the Lot」の出演者に選ばれ、キャリアをスタートさせました。
この番組のファイナリストとなり、現在活躍中のクリエーターが発表した映画が「未体験ゾーンの映画たち2020」で上映された『FREAKSフリークス 能力者たち』(2018)です。
現在インディーズ映画以上大作映画未満の、中規模スケールの映画作りは大変難しくなっています。
低予算での映画作りを余儀なくされてきた、マット・エスカンダリ。彼は映画の予算は、基本的には画面に映し出される、表面的な商品価値に反映されると考えています。
しかし説得力あるストーリーこそが、映画の本質的価値を高めると考える監督。彼にとって今回手に取った本作の脚本は、満足のいく出来栄えでした。
しかし製作には予算的制約がありました。LAやマイアミを設定していた舞台はプエルトリコに変更され、撮影期間は12日しかなく、妥協しながら撮影するしかありません。
そこで脚本は、ストーリーの核となる部分を生かす内容へと、変更が加えられました。
ブルース・ウィリスお気に入りの監督に
その結果丁寧な登場人物の心理描写に比べると、ミステリー・サスペンスの展開はやや強引、ご都合主義要素もちらほら、といった感があります。
ブルース・ウィリスと初めて仕事をした監督は、彼は”badass”なアクションスターで、喜んでアクションシーンを演じる人物だ、と評しました。
また彼は、映画の登場人物主導で展開するシーンや、そういったタイプの演技を好むとも語っています。そこで彼の演じる人物に合わせ、監督は脚本の手直しを加えます。
ブルース演じる登場人物の存在を膨らませるのは、映画の価値を向上させることになる、と考えた監督。人物描写に重きを置く演出は、ブルースにも高く評価されたのでしょう。
本作の後マット・エスカンダリは、『Survive the Night』 (2020)、『Hard Kill』(2020米公開予定)と、立て続けにブルース・ウィリス主演作を監督しています。
まとめ
『ダイ・ハード』的な作品『THE LAW 刑事の掟』、お手軽に楽しめるアクション映画を好む人におすすめです。ふと見た人に、きっと掘り出し物感を与える作品です。
ブルース・ウィリスが満足するほど、自由に演じさせた結果でしょうか。妙に彼にセリフ、中には独り言もありますが。それが妙に長く感じられるのは、私だけでしょうか。
これは監督がブルースに忖度した結果でしょうか、それとも彼に物申せなかった結果でしょうか、と追求するのは意地悪かもしれません。
とはいえおかげで、お馴染みブルース・ウィリス節全開の演技が炸裂し、これが大いに楽しめるものですから、彼のファンなら必見です。
ありがちな映画の嘘に、ドアノブを拳銃で撃って鍵を破壊するシーンがあります。本作には犯人がそれを行った結果、鍵は壊せず跳弾が起き、傷付いてしまう現実的なシーンがあります。
良い子はマネをしてはいけません。やるならショットガンを使いましょう。
しかし同じことをブルースが行うと、なぜか鍵は見事に破壊されます。これも忖度シーンでしょうか。きっと映画スターのオーラが成せる、常人には無い特殊能力に違いありません。
ストーリーをしっかり楽しみつつ、製作事情から生まれた(?)ちょっとしたアラを楽しむのも、本作の正しい鑑賞法です。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」は…
次回の第17回は、ホテルの受付で働くアスペルガー障害の青年が、殺人事件に巻き込まれる。斬新な設定のサスペンス・スリラー映画『ナイト・ウォッチャー』を紹介いたします。お楽しみに。
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