連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第47回
「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第47回で紹介するのは、ネット配信時代の、悪魔祓いを描いたホラー映画『バトル・インフェルノ』。
ネット配信で様々な番組が見られる現代。ホラー、オカルト系の番組は人気だし、世界の視聴者を相手にして、一山当てればサイドビジネスでも大儲けは確実。
だったらヤラセでも何でもして、盛り上がる番組を配信しよう! という悪魔祓いの番組に本物の悪魔が現れました。
世界の視聴者相手にガチンコ生配信の、エクソシストバトルが展開されます。果たして悪魔の狙いは何なのか。ダミアン・レヴェック監督が手掛ける新時代のエクソシスト映画の登場です。
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CONTENTS
映画『バトル・インフェルノ』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
The Cleansing Hour
【監督・脚本・編集・製作】
ダミアン・レヴェック
【キャスト】
ライアン・グスマン、カイル・ガルナー、アリックス・アンジェリス、エマ・ホルツァー、ダニエル・ホフマン・ギル
【作品概要】
全世界に生配信される、悪魔との対決を描くエクソシスト系オカルト映画。アトランタホラー映画祭、ルスカファンタスティク映画祭、シュリークフェスタ・ホラー映画祭で、最優秀短編ホラー映画賞を獲得した、ダミアン・レヴェック監督の短編映画『The Cleansing Hour』(2016)を、長編映画化した作品です。
『ステップ・アップ4 レボリューション』(2012)『ステップ・アップ5 アルティメット』(2014)や、TVドラマ「9-1-1: LA救命最前線」のライアン・グスマンに、リメイク版『エルム街の悪夢』(2010)のカイル・ガルナーが出演している作品です。
映画『バトル・インフェルノ』のあらすじとネタバレ
ストレッチャーに縛り付けられた男に、悪魔祓いを行うマックス神父(ライアン・グスマン)。
彼が男に聖水をかけると煙が立ち上り、ロウソクの炎が大きくなります。
十字架をかざし、男に憑りついた悪魔の名を聞き出す神父。悪魔の正体を知った彼は、聖なる呪文を唱えようとしますが、ストレッチャーは独りでに動き、彼の前で直立しました。
掴まれても呪文を唱え続ける神父。男の頭から血が噴き出しますが、神父の力強い言葉により悪魔は去り、男から悪魔は去りました。喜んで神父に感謝する男の家族たち。
今日も悪魔から迷える魂を無事解放した。来週もご覧下さい、とカメラ目線で語るマックス神父。
番組のフォローとオフィシャルグッズの購入を呼びかけ、ネット配信エクソシスト番組、「除霊の時間」は終了しました。
撮影現場にカットの声がかかります。番組のプロデューサー、ドリュー(カイル・ガルナー)は演じた役者をねぎらいます。これはヤラセで作られた番組でした。
マックス神父は、自分のフォロワーの伸び悩みが気に入らず、ドリューに横柄な態度で注文をつけます。
フォロワー500万獲得のためなら何でもすると、あれこれ意見します。
マックスは番組の特殊効果スタッフ、トミー(ダニエル・ホフマン・ギル)の仕事ぶりを褒めます。
トミーは新たに加わる番組アシスタント、ライリー(エマ・ホルツァー)を紹介しました。
ドリューや、彼の婚約者でアシスタントのレーン(アリックス・アンジェリス)らスタッフ一同に、これから飲みに行こうと告げるマックス。
酒場でカラオケを歌うマックス。その姿をトミーがネットにあげ、「いいね」獲得に協力します。
その姿にドリューと録音スタッフのクリスは呆れますが、酒場には彼が「除霊の時間」のマックス神父だと気付く、ファンの女性2人組もいました。
ドリューを誘って2人で熱唱し、最後は神父らしい言葉で締めるマックス。いい加減な態度ですが、先程のファン2人組は彼に言い寄ってきます。
ファンの1人と一夜を共にしたマックス。翌朝目覚めた彼は、彼女に神父になった理由を訊ねられ、幼い頃から悪と戦いたくて、聖職者になったと説明しました。
しかし教会に認められず、独学で悪魔祓いを身に付けたと説明します。そしてもう一度女に迫ると、彼女の顔は左目が傷付いた老婆のものに変わります。
もう一度見れば女は元のままでした。動揺を取り繕ったマックス。
一方ドリューと暮らす恋人のレーンは、彼が「除霊の時間」の仕事で、マックスに都合よく利用されている、と不満を抱いていました。
他に仕事の話もあるのに、キャリアにならないヤラセ番組を続けるドリューに疑問をぶつけます。
ドリューにとってマックスは幼馴染で、苦楽を共にした仲でした。企業に使われるよりマシ、と答えた彼に、父から荷物が届きます。それは視線でタッチパネルの様に操作できる、スマート機能を持つ眼鏡でした。
眼鏡を試して喜ぶドリュー。そんな恋人に、現実もビジネスもマックスに支配されてはダメだ、と釘を刺したレーン。
ロサンゼルスのダウンタウンの一室が、今日の「除霊の時間」の舞台です。
トミーたちが仕掛けを準備する中、新入りアシスタントのライリーはセットで自撮りに夢中で、ドリューは写真を表に出すなと注意します。
遅れて現れたクリスはドラックでもやったのか、彼の言動に不安を覚えたドリュー。その頃今日の出演者の、ドラァグクイーン風の男は撮影現場が判らず、道に迷っていました。
スマホのナビも使えない状況の男の背後に、怪しげな人影が現れます。逃れようと先を急いだ男に、別の何者かが襲いかかります。
まもなく本番というのに、マックスも今日の出演者も現れません。マックスの遅刻はいつものことですが、悪魔祓いの相手が無ければ番組にならないと焦るドリュー。
困ったドリューは代役に、恋人のレーンを指名します。他に人もおらず、彼女はハネムーン旅行の行き先をパリに変更する条件で、代役を引き受けました。
ワシントンDCではアメリカ大統領の幼い息子が、酒場では昨晩のファンの女2人組が、「除霊の時間」の生配信開始を待っています。
開始直前に現れたマックス。ドリューから出演者が来ず、代役はレーンと聞かされ声を荒げます。
しかし彼は自分の人気さえ守れれば、番組の内容は二の次といった態度でした。
彼が指示を受けるイヤホンとマイクを、録音のクリスが取り付けます。その最中にクリスが吐きました。
体調は悪そうですが、マックスは気にしない様子でした。
悪魔に憑かれた人物を演じるレーンを、椅子に拘束したドリューは席に着いて、パソコン画面に向かいます。
悪魔のデータベースを開き、これをネタにセリフをマックスに指示すると、新人のライリーに説明するドリュー。
自慢げに舞台裏を教えても、番組は4Kでは無いの、とライリーに指摘されます。気を取り直しドリューは本番に備えました。
マックスはレーンと最後の打ち合わせを行い、現在全世界で25万人以上が見ている、生配信エクソシスト番組「除霊の時間」のオープニングが流れます。
もっともらしい顔で、視聴者に語り掛けるマックス神父。今日は問題のある家庭に育った、哀れな女性に憑いた悪魔を払うと告げます。
苦しんで弱った魂を悪魔は狙う、とのセリフはドリューが用意し読ませているものでした。
番組は韓国・ソウルの警官も見ていました。神父に助けを乞うレーンの芝居は上々で、思わず笑みをこぼすドリュー。
苦しむ演技のレーンに、聖なる布をかけて清めるマックス神父。画面上ではバチカンで清められた、聖なるオフィシャルグッズと宣伝し、購入を視聴者に呼びかけます。
神父が呪文を唱えると、ドリューの指示でトミーがスイッチを操作し、部屋の電気を点滅させます。
この現象を引き起こすのは、ステージ4の悪魔憑きだとマックス神父は解説します。
レーンに憑りついた悪魔に対し、名を告げよと迫る神父。すると集音マイクを持ったクリスが倒れます。
クリスはトイレに駆け込み顔を洗い、悪いクスリを飲んだだけと自分に言い聞かせますが、洗面台に流れる水は血の色をしていました。
鏡に映った異様な自分の顔に気付いたクリスは、鏡から突き出た手に驚いて倒れ、頭を打って意識を失います。
それでも番組は進行します。しかし神父が聖水をかけても、レーンは反応を示しません。スタッフは何事かと怪しみ、ドリューはマイクで彼女に呼びかけますが、彼女はうつむいたままでした。
マックスの呼びかけに、彼女は何かささやきます。聞き取ろうと彼が顔を寄せると、レーンは”プスウスタイ”と呟き、突然頭を起こします。頭突きを浴びて倒れるマックス神父。
怒りに我を忘れかけたマックスを、ドリューがなだめて落ち着かせます。十字架を突きつけ名を告げよ、とマックスは迫りますが、レーンはあざ笑って彼を”マキシー”と呼びます。
ドリューは彼女がアドリブで、不満があったマックスに嫌がらせをしているのかと訊ねます。
すると彼女は突然、スタッフのトミーの、両腕に施した炎の刺青を指摘しました。
レーンが見つめると、トミーの腕から炎が立ち上り、瞬く間に全身を包み込みます。炎に焼かれ苦しむ彼の姿を、カメラが捉え全世界に配信していました。
ライリーが消火器を使いますが、トミーの焼けただれた皮膚は剥がれて落ちます。いつにない残虐なシーンに、視聴者からの驚きコメントの書き込みが殺到します。
ドリューが消防に電話してもつながらず、視聴者数は30万を越えていました。
マックスはカメラに助けを求めますが、照明が落ちて来て制止されます。レーンに憑りついた何者かはマックス神父に対し、お前は彼女の魂を救うと言ったな、と挑発します。
ドリューに番組を中断するとレーンを殺すと脅し、マックスに残る49分の放送時間で、真実を告白し彼女を救ってみせろと、レーンに憑りついた何者かは告げます。
突然彼女は我に返り、助けてと叫びます。何者かが、間違いなく悪魔が彼女に憑依していました。
ドリューが彼女に駆け寄ろうとすると、机が独りでに動いて阻止されます。悪魔はレーンを支配し来るなと彼に命じます。ライトを浴びるのは神父だけだ、と告げる悪魔。
マックスは彼女を解放しろ、俺に憑りつけと叫びます。しかしレーンは、本気かマイキー、と挑発し彼に悔い改めるよう要求します。
聖書をつかみ、悪魔祓いの呪文を唱え始めるマックス神父。しかしレーンに憑りついた悪魔は、呆れた顔を見せます。
ドリューは彼女に本物の悪魔が憑りついたなら、正しい名を知って呼びかけねば、悪魔祓いの効果はないと告げました。
マックスが聖書を突きつけ、名を名乗れと叫んでも、ドリューに憑りついた悪魔はすました顔です。悪魔は視聴者に、神父が何をすれば彼女を救える?、と意見を求めます。
ユーザーから面白半分の、無責任な意見が寄せられる中、悪魔の言葉の中からヒントを掴み正体を暴こうと、キーワードを悪魔のデータベースに入力するドリュー。
しかし情報不足で正体は掴めません。悪魔に時間切れを宣告され、ドリューは視聴者のコメントから出来そうなものを選択します。それはストリップでした。
拒否すればレーンを殺すと脅され、服を脱ぎ始めるマックス神父。視聴者は40万を越えていました。全裸になったマックスの映像を切ろうと、ドリューが操作しても反応しません。その姿は全世界に中継されました。
天井から照明機材とシーリングファン(扇風機)が落ち、マックスを逃げられなくすると、悪魔は彼にファンに手を伸ばすよう要求します。
視聴者は50万を越え、さらに伸びていきます。ファンに手を伸ばし、羽根で傷付けられるマックス。
ドリューは彼を救おうとブレイカーを切りますが、効果は無く彼は電撃で弾き飛ばされます。照明ライトが砕けて床にガラス片が落ち、マックスはその上を歩くよう強要されます。
苦痛に歪む彼の表情に、面白半分に見ていた視聴者も悲鳴を上げました。
苦痛に耐えるマックスに、少年時代の記憶が甦ります。神学校に通っていたマックスとドリューは、鉛筆で描いた落書きをシスターに見とがめられます。
罰としてシスターは、床に敷いた体罰具の上にひざまずかせ、さらに足を踏んで神に許しを乞わせます。
ドリューが終わると、次はマキシーと呼びかけ、彼に体罰を与えるシスター。
ガラス片の上を歩き終え、マックス神父の体が床に崩れると、悪魔は満足したのか試練から彼を解放します。無論ストリップを終えても、レーンは解放されませんでした。
マックスはドリューとライリーの助けを借り、靴と衣服を身に着けます。何とか相手の正体を掴もうと話し合い、ライリーは悪魔が”プスウスタイ”という言葉を呟いたと指摘します。
それは古語で彼女がスマホで検索すると、嘘を意味する言葉でした。これが何かのヒントかと彼女は2人に訊ねます。
マックス神父はレーンの前に立ち、悪魔の目的は何かと尋ねます。悪魔に抵抗し、何かを告げようとするレーンですが、悪魔は彼女の口を塞ぎます。
苦しむ彼女の喉に、何か詰まっていると気付き口に手を入れ、それを掴み出したマックス。
それは番組がオフィシャルグッズとして販売している、聖なる布でした。この嘘について語れということでしょうか。
真実を語り名声を失いたくない、とマックスは抵抗します。しかしレーンの命には変えられません。
ドリューに説得され、マックスは番組のオフィシャルグッズは、効果の無い偽物で、バチカンで清めたどころか聖なる布は中国製、聖なる水は水道水だと、真実を視聴者に告白します。
まだレーンは苦しんでいます。彼女を救おうと口に手を入れるマックスですが、再び悪魔に支配されたレーンは彼の指を喰いちぎり、ドリューの目の前に古いコインを吐きました。
ドリューも金にまつわる真実を語れ、との悪魔からのメッセージでしょうか。彼はマックスに内緒で分け前の6割、いや7割を手に入れたと告白します。
番組は自分が支えている、マックスは何もせず、配信直前に現れるだけだと考え、この様な行為に及んだと語ります。
痛み耐えながらも、ドリューの告白を許すマックス。しかし金は返せと付け加えます。
状況に耐えらず逃亡を試み、悪魔が飛ばした置物が頭に突き刺さり、絶命するライリー。
イスラエルのネゲブ砂漠で、立ち往生した車に乗っていた女がスマホを眺めると、「除霊の時間」の生配信中に起きている騒動がトレンド入りしています。
彼女も番組にアクセス。全世界の視聴者は90万を越えていました。
番組の残り少ない放送時間で、告白するべき罪がまだある、とマックスとドリューに告げる悪魔。ドリューはマックスを治療しますが、放送信号が途切れようとしていると気付きます。
放送が中断すると、レーンの命が失われます。ドリューはクリスが意識を失っているトイレに駆け込み、壁に伸びるケーブルをつなぎ直し放送を維持しました。
ドリューがクリスを目覚めさせた時、レーンに憑りついた悪魔は、マックスに更なる真実を語るよう要求します。
そして悪魔は、彼に過去の出来事を見せつけます。
それは少年時代、神学校でシスターにマキシーと呼ばれて指名されても、聖書の文句を唱えられずにいる彼の姿でした。
窮地の彼を救おうと教えようとしたドリューは、見つかってシスターから体罰を受ける光景が現れます。
悪魔はマックスたちに何を語らせ、その結果何を得ようと望んでいるのでしょうか。
映画『バトル・インフェルノ』の感想と評価
参考映像:短編映画『The Cleansing Hour』(2016)※監督のコメントに続き上映
冒頭で紹介した通り、この映画は高い評価を得た短編映画『The Cleansing Hour』を、長編映画化した作品です。
設定とラストは短編映画と同じで、ご覧頂くと長編化するにあたり、何を膨らませたかが良く理解でます。
面白いのが短編も長編も、韓国・ソウルの警官シーンは、同じフッテージを使用しています。
しかも出演している警官の1人は、なんと韓国映画界のベテラン、『シルミド』(2003) や『人狼』(2018)、『国家が破産する日』(2018)のホ・ジュノです。
この場面を目撃した韓国映画ファンは、自慢したくなること間違いありません。
プロットの積み重ねが長編化の鍵
高評価を得た短編映画を長編化する際、登場人物の追加や状況のスケールアップ、そして新たなエピソードの追加などの、様々な方法がとられます。
本作、そして元となる短編映画の脚本はアーロン・ホーウィッツ、長編版にはダミアン・レヴェック監督も参加しています。
2人は作品の長編化にあたり、出発点と結末は変えず、登場人物にとって因果関係のあるエピソードを追加する方法をとりました。
この結果、短編には無かった状況がいくつも登場しますが、それはキャラクターの掘り下げや行動の動機付けとなっています。
だから、余計なシーンの挿入や冗長な展開の無い、ソリッド・シチュエーション形式を基盤とするホラー映画となりました。
またレヴェック監督はニュースショーやドキュメンタリー番組、リアリティTVショーなどの編集として活躍した人物。本作でも編集を担当しており、ホラー映画としての緊張感を最後まで維持させています。
生中継番組を舞台にしたホラー映画と聞くと、POV形式やモキュメンタリー形式の映画をイメージする方もいるでしょうが、本作は間違いなく完成度の高い、劇映画形式のホラー映画なのです。
悪魔憑き演技が生まれるまで
ヤラセ番組に本物の悪魔が現れ、憑依された女性を救おうとする2人の男が、己の罪に向き合い、同時に悪魔の正体を探る物語です。
しかし本作の真の主役で、同時に一番の難役でもあるのが、悪魔に憑依された女です。
この役を演じたアリックス・アンジェリスは、女優業の傍ら短編映画を製作・監督するなど、幅広く活躍している、演劇ジャンルの1つ、”フィジカルシアター”の経験を積んだ人物です。
“フィジカルシアター”とは、日本の”暗黒舞踏(舞踏)”とは別の流れのイギリスで生まれた舞踏的な演劇形式。
セリフ以外にも演者は肉体の動きを通じ、感情の動きなどを表現する、現代演劇の1つの潮流となっています。
彼女はそれを学んだだけでなく、国際的に有名な”フィジカルシアター”劇団、”Not Man Apart”の創設メンバーの1人です。監督が何を期待して彼女をこの役に起用したかは明白です。
この役が決まった後、アリックス・アンジェリスは監督に、何か役作りに参考にすべきものがあるかと尋ねました。
すると、逆に何も与えないので、自分自身で悪魔に憑かれた人物を創造して下さい、と頼まれたそうです。 監督は彼女の、独創的な表現を望んでいたのです。
椅子に縛られた制約のある状況でしたが、彼女の悪魔憑き演技は、それらしいメイクはしても、プロップなどの特殊効果に頼らないものです。
肉体や表情の動きを駆使した、文字通り悪魔的演技に注目して下さい。
そんな彼女が、最も苦労したのは口の中から布を取り出すシーン。危険ではなかったそうですが、当然ながら吐き気を伴うものでした。2テイクで済んで良かった、と本音を語っています。
編集者出身の監督との仕事は、実に頼りになるものだった、と語るアリックス・アンジェリス。
撮影前に監督の頭の中で映画は編集済みで、それに必要なシーンを的確に撮ってゆく、スムーズに進行していく撮影だったと、振り返っています。
まとめ
悪魔がネット配信番組を使って人類に挑戦する、新時代のエクソシストホラー映画『バトル・インフェルノ』。
ホラー映画ファンを満足させる完成度です。
最初見た時は、悪魔に翻弄される側に視点が集中します。2度目は翻弄する側、アリックス・アンジェリスの悪魔憑き演技に注目すると、良いでしょう。
その昔、同じ手法で世界を悪に染めた、ジョン・カーペンター監督のクトゥルフ神話的ホラー映画『マウス・オブ・マッドネス』(1994)。
当時ネット配信番組などは無く、地道に小説と映画を使用しました。時代は実に進歩したものです。
ところで本作で、”悪魔アモン”の名を聞いて、それは永井豪の『デビルマン』じゃないか、と思った方。
これこそ将に悪魔の罠、口にするのは止めましょう。歳がバレます。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…
次回の第48回は16歳の少女が体験する、刺激的な夏を描いた映画『わがままなヴァカンス』を紹介いたします。お楽しみに。
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