連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第36回
大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。
本記事で紹介する映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』は、「遊郭編」後の新たな“上弦”の鬼との戦い、そして最終章へとつながる物語を描く新たなテレビアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』の2023年4月からの放送に先駆けて公開されました。
前章にあたるテレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』第十話、第十一話の劇場初上映とともに、『刀鍛冶の里編』第一話を初公開した本作。
本記事では映画・原作漫画のネタバレ言及を交えつつ、“最終決戦の映像化”に期待が膨らむ映画オリジナル描写、原作でも明確には明かされなかった“玉壺が刀鍛冶の里の居所を見つけられた理由”などを考察・解説します。
CONTENTS
映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』の作品情報
【原作】
吾峠呼世晴
【監督】
外崎春雄
【「遊郭編」オープニングテーマ】
Aimer
【「刀鍛冶の里編」オープニングテーマ】
MAN WITH A MISSION milet
【キャスト】
花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、河西健吾、花澤香菜、関俊彦、置鮎龍太郎、宮野真守、石田彰、古川登志夫、鳥海浩輔、沢城みゆき、逢坂良太
【作品概要】
「週刊少年ジャンプ」で連載された吾峠呼世晴による大人気漫画を原作とするアニメシリーズにして、2023年4月からはテレビアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』が放送予定の『鬼滅の刃』。
『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』は、前章にあたるテレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』第十話、第十一話の劇場初上映とともに、『刀鍛冶の里編』第一話を初公開します。
本作は、80以上の国と地域でワールドツアー上映を実施。また上映に向けて映画館での鑑賞に最適化するべく、本編映像を全編4Kへとアップコンバートしたほか、全編の音楽も劇場環境に合わせて再ミックスされました。
【ネタバレ】映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』感想・解説
最終決戦に期待膨らむ“スクリーンの無限城”
アニメ『遊郭編』十話・十一話で描かれた「上弦の陸」妓夫太郎と堕姫兄妹との決着により、「上弦」の鬼から約100年ぶりの勝利を手にした鬼殺隊。そして映画は、そのまま残る上弦の鬼たちの無限城への集結、そしてアニメ『刀鍛冶の里編』一話への布石が描かれていきます。
そして、映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』を劇場のスクリーンで鑑賞した方の誰もが目を見張らせたのは、やはり“さらに美しくなった無限城”でしょう。
“パワハラ会議”の代名詞で知られる「下弦」の鬼たちの粛清の場面をはじめ、それまでのアニメ『鬼滅の刃』でも映像化されていた無限城。
しかしながら、「上弦の参」猗窩座が無限城に転移させられたのちその内部を探索する場面では、下弦粛清の場面で映像化された時よりもはるかに広大な空間が描かれ、もはや“城”というよりも“都市”と評すべき城内がスクリーンに映し出されます。
原作漫画においては、「鬼の始祖」鬼舞辻無惨らと鬼殺隊による最終決戦の舞台となる無限城。“さらに美しくなった無限城”を劇場のスクリーンで目の当たりにしたことで、多くの方が“これから映像化が控える最終決戦では、ここからさらに美しくなるのか”と思ったはずです。
玉壷が刀鍛冶の里を見つけた方法は?
上弦の鬼の集結時、刀鍛冶の里の居所の情報を掴んだことを嬉々として報告した「上弦の伍」玉壺。原作既読の方も含め、同場面で多くの方が“そもそも玉壺はどのようにして、刀鍛冶の里を見つけたのか?”という疑問を浮かべたはずです。
一般隊士が里に行くには「お館様」こと産屋敷耀哉が必須。里へ赴く際にも、目隠し・耳栓などを隊士にさせた上で、隊士を背負い運ぶ「隠」と案内役の鎹鴉が一定の距離ごとに交代し、いくつもの地点を経由し移動。隠も里に辿り着くルートの全容は知らない上、“担当地点”どころかルート自体も定期的に変更される……。
“自身が血鬼術で作り上げた壺を空間転移させ、その壺の中に自身も転移させられる”という索敵・情報収集に向いた能力を有しているものの、鬼殺隊の人間の知恵を生かした“秘匿”の徹底ぶりゆえに、長い間刀鍛冶の里の居所を掴めずにいたであろう玉壺。
しかしながら、隠一人一人は少なくとも里に辿り着くために使用されたルートの“一部”は知っていることも事実です。何より、玉壺は“水責め”や“針責め”など拷問に適した能力も有しているのがのちに明らかにされることからも、隠から“一部”の情報を入手するのは決して不可能ではなかったはずです。
そして、たとえ一人の隠から手に入れられるのがルートの“一部”だったとしても、何人もの隠を生け捕りにしては拷問し“一部”を集め続けていったら……。
玉壺が刀鍛冶の里の居所を見つけるまでに多くの時間を要したものの、それでも“特定”にまで至った経緯を想像した時、果たしてどれほどの隠が犠牲となったかは考えたくもありません。
アニメ『刀鍛冶の里編』一話は原作101話まで
映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』では上弦の鬼の集結、そして玉壺と「上弦の肆」半天狗による刀鍛冶の里襲撃の決定ののち、ついに2023年4月からの放送に先駆けて公開されたテレビアニメ『刀鍛冶の里編』一話が描かれていきます。
遊郭での死闘後のひと時の平穏、死闘により日輪刀を失ってしまった炭治郎の刀鍛冶の里への来訪、そこでの「恋柱」甘露寺蜜璃と「霞柱」時透無一郎、不死川玄弥との再会……。
何より、炭治郎が夢に見た“日輪の耳飾りの男”の面影との予想外な再会は、「刀鍛冶の里編」がのちの最終決戦の契機となる“終わりの始まり”の物語である証の一つであり、テレビアニメ『刀鍛冶の里編』一話の本編ラストを締めくくるのにふさわしい場面といえます。
まとめ/アニメ『刀鍛冶の里編』OPラストには……
このたび劇場公開された映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』の最後には、MAN WITH A MISSION、miletのコラボ楽曲『絆ノ奇跡』が彩るテレビアニメ『刀鍛冶の里編』のオープニング映像も先行公開されました。
なおオープニング映像のラストには、“地面に落ちている禰豆子の口枷”が映し出されます。口枷は陽の光に照らされ、肝心の口枷の持ち主である禰豆子の姿はないその映像には、原作既読の方であれば誰もが「いいオープニングだ……」と感嘆のため息を漏らしたでしょう。
里を襲撃せんとする玉壺・半天狗という2体の上弦の鬼との戦いはもちろん、映像化にあたってのファンの“気になるところ”は多く残されているテレビアニメ『刀鍛冶の里編』。今回公開された映画を通じて先行公開されたオープニングのおかげで、その期待はさらに膨らんだはずです。
次回の『鬼滅の刃全集中の考察』もお楽しみに!
ライター:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。
2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。