連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第28回
大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。
今回は、2021年9月25日の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の地上波初放送の直後に公開された『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』をもとに、テレビアニメ版「無限列車編」において「完全新作エピソード」となる第1話の内容を予想・考察。
さらに、同動画にて解禁されたテレビアニメ版「無限列車編」のOPテーマであるLiSA『明け星』、「遊郭編」のOPテーマであるAimer『残響散歌』の歌詞から、各作品の内容を考察していきます。
CONTENTS
完全新作となるTVアニメ版「無限列車編」第1話の内容を予想!
『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』
『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』を通じて、映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に70もの新規カット・BGMを追加し再編集をした、テレビアニメ版「無限列車編」の2021年10月10日からの放送が発表。ファンの間では驚きの声が上がりました。
さらに、全7話で構成されるうちの第1話は、“炎柱”煉獄杏寿郎が鬼殺隊本部を発ち、無限列車へ乗り込むまでの道程を描いた完全新作となることも発表され、大きな衝撃を与えています。
その第1話がどのような内容になるのかを、『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』で公開された映像から予想・考察していきたいと思います。
映像内に登場する隊士たちは何者?
映像内では、食事処のようなところで煉獄と話す隊士と、無限列車が停まる車庫へと向かい駆けていく3人の隊士が登場します。この隊士たちは何者なのかをはじめに考察していきます。
まず食事処で煉獄と話していた一人の隊士は、煉獄と向かい合って座りながらも、声を潜めて「では明日、無限列車へ?」と尋ねています。
“柱”である煉獄と一対一で話しているにも拘らず、緊張している様子が見られないことから、階級がかなり上の隊士、あるいは煉獄の副官や補佐役を務める隊士であると捉えられます。それらをふまえると、映像内で描かれているのは「煉獄が隊士に、任務の内容を明かしている場面」であり、この隊士は煉獄にとって信頼の置ける人物であると考えられます。
また、この隊士が紺色の羽織を着ている点も気になります。
鬼殺隊隊士は、大正時代の警察官の制服のような黒一色のズボンとシャツ、「滅」の字の刺繍が背中に施された隊服を着用しています。そして炭治郎ら主要キャラクターや柱の多くは、この隊服の上に思い思いの羽織を着ています。
一般隊士である炭治郎や善逸が羽織を着用しているところを見ると、隊士の服装の規則はあまり厳密に決められておらず、羽織の着用も個人の自由であると受け取れます。しかし一般隊士の中では、「羽織を着たキャラクター」は原作コミックを含めてこれまで登場していなかったことからも、紺色の羽織を着たこの隊士は、テレビアニメ版「無限列車編」の第1話において重要なキャラクターである可能性は高いです。
また車庫に向かい走る3人の隊士たちは、「煉獄の指揮下にある隊士たち」と思われます。
テレビアニメ1期の24話、『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』内でも登場した煉獄のセリフ「向かわせた隊士が~」という言葉からも、煉獄が一般隊士を指揮する立場であることが察せられます。『鬼滅の刃』作中では、柱と一般隊士間での明確な指揮・命令系統の描写はあまり登場しませんでしたが、鬼殺隊の最上位である“柱”が一般隊士に命令を下すことはなんら不自然ではありません。
煉獄はなぜ、無限列車へ乗ることになったか?
煉獄に与えられた任務は、「無限列車で一般人が消失する事件の調査」「その原因と思われる鬼の討伐」であるため、走行する無限列車に必ずしも乗車する必要はありません。それを裏付けるかのように今回の映像内では、車庫に駐車されている無限列車の前に立つ煉獄が描かれています。
ここから考えられるのは、「煉獄が配下の隊士を伴って駐車中の無限列車へ調査へ向かったが、原因が究明できなかったことから、『標的』となる乗客がいる状態の無限列車へ乗り込む必要が出た」という可能性です。そしてそのような判断に至った理由として、恐らく調査の途中で、何らかの妨害を受けたのではないかと考えることができます。
劇場版「無限列車編」でも描かれた通り、無限列車は“下弦の壱”魘夢にとっては根城のようなもので、煉獄たちの到来に気が付かないはずがありません。
しかし慎重な魘夢は、自ら姿を見せ煉獄たちを迎え撃つことはまずあり得ないでしょう。その一方で、何もしなければ煉獄たちに自身の存在と、無限列車を利用した計画が明るみになってしまうことから、魘夢は他の鬼をけしかけて煉獄たちを襲わせ、調査の妨害を行ったのではないでしょうか。
もちろん、のちに“上弦の参”猗窩座と激闘を繰り広げた煉獄を、生半可な鬼では止められません。しかし厄介な血鬼術を用いる鬼を仕向け、一般隊士では手に余る相手を煉獄にさせることで、列車が出発するまでの時間稼ぎをする程度には十分でしょう。そして鬼の相手で足止めを食らった煉獄は、自身は乗り遅れると判断し、他の隊士たちへ「先に列車へ乗り、調査を続行せよ」と命じる可能性は大いにあります。
そうして煉獄と配下の隊士たちの動きを分断することに成功すれば、あとは無限列車を利用した魘夢の血鬼術によって、列車に乗り込んできた隊士たちの始末も容易に行えます。
また、以上の経緯から配下の隊士を失ってしまったからこそ、煉獄が身をもってその原因を探るために無限列車に乗り込むこととなり、応援として炭治郎たちが派遣されたのであれば、物語としても一貫性が出てくるのではないでしょうか。
魘夢と煉獄が事前に接触した可能性が?
前述の通り、慎重な魘夢はあからさまに煉獄の前に姿を現すことはありません。しかし、何らかの形で接触した可能性については否定できません。
劇場版「無限列車編」及び原作コミックにて、魘夢は「幸せな夢を見せた後に悪夢を見させるのが好きなんだ」と語っています。事実、魘夢に眠らされた炭治郎・善逸・伊之助は「現実から逃れられる場所」としての幸せな夢や楽しい夢をそれぞれにを見ることになりました。
しかし煉獄は、過去の出来事を夢の中で回想し、その内容は父・槇寿郎に認めてもらえない苦い想いを味わい、活気にあふれた頃の槇寿郎や厳しくも優しい母・瑠火を知らない弟・千寿郎を励ました時にまつわる記憶という、決して幸せと呼べるものではありませんでした。
そのような夢の内容になった原因の一つとして、煉獄が魘夢と何らかの形で接触したことにより、魘夢の血鬼術が正しく発動しなかった可能性が考えられます。
例えば、魘夢は煉獄に対してすでに一度血鬼術を使用しており、二度目となった無限列車内での術の発動は効果が薄くなってしまった結果、煉獄は幸せな夢を見られなかったのではないか。あるいは前述の予想でも登場した、魘夢が妨害のために鬼を煉獄へ仕向けた際に、自身の血を与えてその鬼を強し、同系統の「夢」にまつわる血鬼術を手に入れさせた結果、その鬼と対峙した際に煉獄が術を受け「耐性」がついてしまったなどが考えられます。
そう考えれば、“精神の核”を破壊されそうになった煉獄が動くことができたのも、これらの理由で催眠が完全ではなかったためだと説明できます。
各主題歌から『鬼滅の刃』新作アニメを紐解く!
『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』内では、テレビアニメ版「無限列車編」のLiSAによるOPテーマ『明け星』、「遊郭編」のAimerによるOPテーマ『残響散歌』の楽曲の一部もそれぞれ使用されていました。
両アーティストとも、タイアップしたアニメ作品の世界観を見事に表現した楽曲を送り出してきただけに、今回のテーマ曲にも様々な想いが込められています。これらの歌詞を読み解き、楽曲に込められた想いを探っていきます。
絶望に暮れる炭治郎に射す、希望の『明け星』
テレビアニメ版「無限列車編」OPテーマのタイトルとなっている『明け星』は、いわゆる夜明け前に東の空に輝く金星=「明けの明星」を意味しています。古くは船乗りが夜明けが近いことを知らせる星として親しまれ、転じて吉兆の象徴としても扱われたそうです。
公開されている『明け星』の歌詞を読み解いていくと、そこからは絶望の中、希望を抱き、再び進み出すというメッセージが読み取れます。
まず「暗い空」というワードは、“絶望”を表現しています。この“絶望”は、言うまでもなく煉獄杏寿郎の死を意味し、炭治郎にとってはまさに明けない夜のように感じるほど、その心に深くのしかかる出来事でした。
しかし続く「明け星」というワードは、前述の通り“希望”を意味しています。
また「明け星」の別称である「明星(みょうじょう・あかほし・めいせい)」には、その業界のスターや輝いている人物という意味があり、まさに煉獄は鬼殺隊にとっての明星だったことからも、そのような意味も含まれているといえます。
注目すべきは「明け星」に続く、「明星が未来を どうしても射して 動かないから」というフレーズです。こちらも前述の通り、明け星=「明けの明星」は夜明け前の東の空に見ることができます。つまり、いずれ東には太陽が昇り始め、夜明けが訪れるのです。
“夜明け”もまた、“未来”を象徴する言葉としてよく用いられます。これらのことから、このフレーズには東の空に輝く明け星に煉獄を重ねており、炭治郎たちに未来へと進むよう促しているといえます。死に瀕した煉獄が炭治郎らに残した「鬼殺隊を支える柱になれ」という言葉からも、その想いが感じとれます。
続く「優しく誘う昨日に手を振って」というフレーズは、決して戻ることのできない幸せだった過去を指しており、奇しくも炭治郎が見た家族と幸せに暮らす夢ともリンクします。そして「僕らは泣いた また走り出すため」と続くフレーズは、まさに煉獄の死後、涙を流しながらも決意を固めた炭治郎たちを表しています。
今ある絶望を振り払い、希望を胸に未来へと突き進む想いを込めた『明け星』。果たしてその全貌はどのようなものなのか、テレビアニメ版「無限列車編」を盛り上げてくれるのか、またLiSAがどのようなパフォーマンスを見せてくれるのかが楽しみです。
“音柱”宇髄天元の生き様を『残響散歌』にみる!
一方のAimerによる「遊郭編」OPテーマ『残響散歌』は、そのタイトルからすでに“音柱”宇髄天元の「らしさ」が感じられます。たった一瞬の鮮やかな「音」が消えた後にも、その音の「残響」は世界へと「散」ってゆく様は、派手好きでありながら様々な覚悟とともに生き続ける宇髄の心意気そのものといえます。
歌詞の中でも、「遊郭編」での宇髄の葛藤と生き様が描かれています。「声を枯らして燃える花のように」というフレーズは、限りある命を懸命に生きる様、あるいは派手好きな宇髄にピッタリな「花火」を表しているように感じられます。また「燃える」という言葉からは、炭治郎らが死別した“炎柱”煉獄杏寿郎の姿を思い出す方も多いはずです。
その後の「曖昧すぎる世界を寄る辺にして」というフレーズからは、忍びの一族に生まれた宇髄の出自にまつわる過去とその葛藤を表現しているといえます。命の価値を軽んじられた半生を過ごし、のちに鬼殺隊として人の命を守る日々を送ることになった宇髄の矛盾と葛藤を「曖昧過ぎる世界」、それでも宇髄を受け入れてくれた産屋敷輝哉や鬼殺隊の人々を「寄る辺」と表現しているのではないでしょうか。
また公開された歌詞の中でもっとも宇髄らしいのが、「鮮やかな音を鳴らす」というフレーズ。まさに“音柱”宇髄天元の象徴ともいえる表現ですが、続く歌詞に「どんなに深い後悔も どんなに高い限界も 搔き消して 残響」というのが非常に感慨深い表現になっています。
「深い後悔」は忍びとして暗い道を歩んできた“後悔”、「高い限界」は遊郭に潜む“上弦”の鬼とのかつてない激闘を指しているのでしょう。そしてそれらを「掻き消して」、「残響」が残るほどの「音を鳴らす」という様は、まさしく宇髄の“ド派手”な生き様が凝縮されているといえます。
公開された一部でさえ、胸が熱くなる楽曲となっている『残響散歌』。この曲が「遊郭編」を華やかに彩ってくれることはもはや自明の理といえます。
まとめ/次回の『鬼滅の刃全集中の考察』は……
テレビアニメ版「無限列車編」第1話の内容予想、そしてテレビアニメ版「無限列車編」と「遊郭編」の各OPテーマの考察、いかがだったでしょうか。
わずか5分余りの映像であった『アニメ「鬼滅の刃」プロモーションリール 2021』でしたが、そこには多くの情報量が含まれ、様々な予想・考察ができました。
また、煉獄さんが無限列車で食べていた大量の弁当を、どこで調達していたのかが描かれるか気になるところです(笑)。いずれにせよ新たな「無限列車編」の10月からの放送、そして待望の「遊郭編」の12月からの放送が楽しみでなりません。
次回記事からは、一時中断となっていた「無限城決戦編」の名言/名シーン紹介を再開。
炭治郎の窮地に再び駆け付ける仲間たちと共に決着を迎える最終決戦。しかし、炭治郎に起きる異変に仲間たちは何を想うのでしょうか。感動の大団円を彩る名言・名シーンの数々をご紹介します。