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『永遠の門 ゴッホの見た未来』映画監督ジュリアン・シュナーベルが語る【FILMINK「ジュリアン・シュナーベル : 息と光を捕らえる」】

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  • FILMINK

FILMINK-vol.2「Julian Schnabel: Catching the Breath and the Light」

オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。


©︎FILMINK

「FILMINK」から連載2弾としてピックアップしたのは、2019年に日本公開されるジュリアン・シュナーベル監督の『永遠の門 ゴッホの見た未来』

監督ジュリアン・シュナーベルの映画制作への思いと、主演ウィレム・デフォーの演技力についてをご紹介します。

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら

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ジュリアン・シュナーベル「息と光を捕らえる」

芸術界の成功者であり風雲児、ジュリアン・シュナーベル監督の最新作品『永遠の門 ゴッホの見た未来』。

ジュリアン・シュナーベルは、画家としてアンディ・ウォーホルとルー・リードの友人かつ共同制作者であり、50年にわたって世間の脚光を浴びながらアメリカのアートの最前線にいました。その彼は、映画監督なのかどうかという議論に巻き込まれたくないと語ります。

「私は画家です。幾つかの映画を撮った画家。私は6本の映画を撮り、4000枚以上の絵を描きました。私がすること全ては私の実践の一部です。私の中にはストーリーテラーとしての側面があります。

キャリアとしてアーティストではありません。私はただ作品を創っているのです。私自身が私の映画であるように、私の絵でもあるのです…」

これまでシュナーベルは幾つかの画家についての映画を製作しました。おそらくこのインタビューは、彼が画家だということがその映画制作に役立っていることを前提としています。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、作品の中でたくさんのゴッホの絵画を“ライブ”で製作する必要がありました。シュナーベルはそれに自身が取り組むと同時に、主演俳優のウィレム・デフォーに対し、絵の指導を行いました。

ゴッホを再現することはアーティストとして楽しかったですか?その質問に再びインタビュー会場は少し緊張した雰囲気に…。

「私は再現したとは思っていません。ウィレムに絵筆の持ち方や、対象物の捉え方を示しました。ウィレムはそれを会得し、全幅の信頼を寄せてくれました」

シュナーベルは、元来アーティストが自身の芸術をどう語るのかに興味を持っており、これまでも様々な情報源から定説とは異なる意見を展開してきました。そして、今回もシュナーベルはゴッホについて、創作過程や画家としての進化に関する独自の見解を持っています。

彼は本作で、ゴッホについて独自のアプローチをとったと語ります。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』は伝記映画ではない

その理由として、まず第一にフィンセント・ヴァン・ゴッホに関して、既にたくさんの映画が存在していること。最近では視覚的に実験的な映画『ゴッホ 最期の手紙』(映画全編がゴッホの絵のアニメーション)があります。

二つ目に、ゴッホは今やとても有名な画家で、ある意味では「公有財産」のような存在であり、既に皆が彼のことを“知っている”というように感じていることです。

シュナーベルは、ゴッホに対する独自の見解をもとに、従来とは異なる取り組みをしました。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』は伝記映画ではありません。

「芸術的な真実」と「歴史的な真実」は同じものではなく、互いがスパイラル状に絡み合う関係であることを理解しています。
本作品では、この2つの真実が互いに絡み合いひとつの核を作っているのです。

「私は絵画に対して、全く異なる方法をとりました。ゴッホの手紙を解釈することや人々が彼について書いたこと、歴史的な真実を土台とするよりも、私たち(シュナーベルと共同著者のジャン=クロード・カリエール)は新たに多くのことを作り上げていったのです、。

「作り上げたもの」とは、私たちが解釈した、真実だ信じるものです。

私たちはフィクションを作っています。
具体例をあげましょう。私は早く仕上げられた絵が好きなので、私はゴッホがベラスケスとゴヤの絵を眺めるシーンを含めましたが、実際オランダやフランスの美術館に彼らの絵はありませんでした。ですが、私は彼らの絵がゴッホに影響を与えたと確信しているので、この設定に満足しています」

もう一つ、世間の誰もが知っているゴッホについて、彼が精神的な病を抱えていたということ。彼は自傷行為を重ね、精神病院で過ごしていました。

シュナーベルはそれを描写することが重要だと考えたのでしょうか。苦しみこそが、ゴッホの創作の核心であると認識しています。

私たちはゴッホを「苦しみ続けた芸術家」と捉えています。しかしシュナーベルはこの見方が継承されることに抵抗します。

「おそらく何人かの芸術家たちは、苦しみからアートを作り出すでしょう。あるいはアートを作ることによって苦難への回答を見出すのかもしれません。しかしそれらから芸術家の人生を理解するのは大変難しいことです。

おそらく映画を見た人々は、私の映画が、芸術家たちがアートをどう理解していたかという内容だと見当をつけるでしょう。

芸術は何を生み出していたか。私たちは芸術家が行ったことや、彼らがあえてしなかったことについて、いくらでも話すことができますよ」

信頼のおける演技力を持った俳優ウィレム・デフォー


©︎FILMINKウィレム・デフォー(左)ジュリアン・シュナーベル(右)

『永遠の門 ゴッホの見た未来』は素晴らしい俳優陣(オスカー・アイザック、マチュー・アルマリック、マッツ・ミケルセンなど)に恵まれました。シュナーベルは助演俳優たちにも大変満足していますが、特に主演のウィレム・デフォーのパフォーマンスは素晴らしいものだったと言います。

「ギレルモ・デル・トロはウィレムの演技はかつてないほど最も純粋でかつ、自然なものでした。彼は繊細さをもち、彼の信念を表現していました。本当に。

俳優はそれぞれが異なる多様な可能性を持っています。それは通り一遍のものではありません。
そして私たち皆、あらゆる人と状況と関係づけられています。

ウィレムは、これらを非常に良く成し遂げているのです。他のゴッホに関する映画にはない、私たちの映画に特徴的なものです」

監督が望んでいることに理解し、演技を成し遂げたデフォー。またシュナーベルは映画全体への取り組みにおいて、いかにしてそれぞれの要素が全体的な効果を作り出したのか語ります。

「ウィレムは演技をしているのではなく、その役を生きているのです。私たちは何かを説明しようとすることはありませんでした。

私たちは鮮明で生き生きとして、何かが目覚めているという感覚が欲しかったのです。それはこの映画が一人称のスタイルをとった理由でもあります。

撮影監督のブノワ・ドゥローム、編集者のルイーズ・クゲルバーグ、皆で共同作業をしてきたのです。私たちは風に吹かれる葉のようなもので、息や光を捕らえる。それが、この映画の中に存在しているのです」

FILMINK【Julian Schnabel: Catching the Breath and the Light
written by Julian Wood

映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』の作品情報

【公開】
2018年 (日本公開予定 : 2019年) アメリカ・フランス合作映画

【原題】
At Eternity’s Gate

【監督】
ジュリアン・シュナーベル

【キャスト】
ウィレム・デフォー、ルパート・フレンド、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、オスカー・アイザック、ニエル・アレストリュプ

【作品概要】
ファン・ゴッホを演じるのは『プラトーン』(1986)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート、『アメリカン・サイコ』(2000)や『スパイダーマン』(2002)『ニンフォマニアック』(2014)など幅広い作品に出演、2018年に日本公開された『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で全米映画批評家協会賞始め数々の映画祭で助演男優賞受賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされたウィレム・デフォー。

演出は新表現主義の画家であり、過去には『バスキア』(1996)やカンヌ国際映画祭監督賞、ゴールデングローブ賞監督賞を受賞した『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)を手がけるジュリアン・シュナーベル監督。

共演は『偽りなき者』(2012)や『ドクター・ストレンジ』(2016)に出演する“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン。

その他に『潜水服は蝶の夢を見る』で主演を務めたフランスを代表する俳優マチュー・アマルリックやエマニュエル・セニエ、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013)『エクス・マキナ』(2015)に出演するオスカー・アイザックなど個性豊かな実力派俳優たちが顔を揃えます。

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映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』のあらすじ

南フランスの地にて、内に広がる深い葛藤とまっとうに築くことのできない人間関係に悩まされながらも筆をとり続けたフィンセント・ファン・ゴッホ。

心を許しあった画家ゴーギャンとのアルルでの共同生活や彼との関係の破綻。弟テオとの深い絆。

名画“アルルの女”誕生の瞬間などを捉えながら、自然の中で芸術に向き合い、自らが目にする美しさを描き続けたゴッホの生涯が圧倒的な映像で描かれていきます…。

本作品『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、彼がなぜ耳を切り落とすに至ったか、なぜ謎の多い死を遂げたかと言う事象よりも、彼はその人生を通して何を見つめたか、何を描こうとしたかという芸術についての哲学に焦点を当てた映画となっています。

英文記事/Julian Wood
翻訳・作品データ/Moeka Kotaki
監修/Mitsunori Demachi(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au

本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です

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