連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile096
誰でも自身の作成したショートムービーを投稿し応募できる、オーストラリアで毎年開催されるショートムービー・フェスティバル「TROPFEST」。
2013年のTROPFESTで公開された作品が話題となり、ハリウッドでも活躍する大人気俳優を主演に据える形で長編映画されることが決定し一躍話題となりました。
そんな訳で今回は、7分間のショートムービーを掘り下げ長編としたオーストラリア産ゾンビ映画『カーゴ』(2018)を、ネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『カーゴ』の作品情報
【日本公開】
2018年(NETFLIX独占配信映画)
【原題】
Cargo
【監督】
ヨランダ・ラムケ、ベン・ハウリング
【キャスト】
マーティン・フリーマン、アンソニー・ヘイズ、スージー・ポーター、カレン・ピストリアス、クリス・マッケイド
【作品概要】
ヨランダ・ラムケとベン・ハウリングによって製作されたオーストラリアを舞台としたゾンビ映画。
主演を務めたのはドラマ「SHERLOCK」シリーズのワトソン役や、「ホビット」シリーズで主人公ビルボ・バギンズを演じたことでも有名なマーティン・フリーマン。
映画『カーゴ』のあらすじとネタバレ
妻と娘と共に小屋付きの船で川を下るアンディ。世間にはウイルスが蔓延し、安全のためアンディたちは川沿いにある軍事施設を目指していました。
食糧難に喘ぐ中、転覆したヨットを見つけたアンディは単身で乗り込み、3ヶ月分の食料とワインを手に入れます。
妻のケイはアンディが寝ているうちにヨットへと入りカミソリを探しますが、実は奥には感染者が潜んでおり、ケイは噛まれてしまいました。
目を覚ましたアンディは、ケイが噛まれた状態で船に戻り、感染者となるまでの時間である48時間のタイマーを起動しているところを発見。
ケイの傷は深いものであり、感染していなくても長くは持たないと感じるアンディは、接岸して近くの病院を目指すことを決めます。
車を入手したアンディは、まだオムツが取れない歳である娘のロージーを連れて車を走らせます。が、ケイの具合は悪くなる一方でした。
感染していることを確信したケイは、アンディとロージーを襲ってしまうことを恐怖し、自身を置いて川に戻ってほしいと言いますが、アンディはそれを断りなおも車を走らせます。
道中、突然道に飛び出してきた感染者を避けようとし、車は木にぶつかり大破してしまいます。
アンディが目を覚ますと「彼女を守って」と書き残したケイが発症し、アンディの腕に噛みつきます。
やっとの思いで車から出たアンディはケイの惨状に雄たけびをあげると、自身の発症までの時間である48時間のタイマーを動かし、ロージーを安全な場所に連れていくことを考えます。
地図に載っていた町に到着しても人は殆どいません。アンディは、学校の中に残っていた女性に気休め程度の治療をしてもらい、ロージーと共に一夜をこの場所で過ごすことに決めます。
翌日、アンディはロージーと共に街を離れ、軍事施設へと向かいます。
道中、ヴィックという男がプロパンガスのタンクに足を挟まれているのを見つけ、車に乗せてもらうことと引き換えに彼を救います。
ヴィックは鉄柵で囲まれた小屋に女性と共に住んでおり、アンディとロージーはその小屋に居住することを許可されます。
しかし、ヴィックはウイルスの終息後に大金持ちになるべく、感染者を殺害し金品を奪うだけでなく、感染していない少女や現地部族の老人などを檻に閉じ込め、感染者をおびき寄せる囮にしている卑劣な人間でした。
一緒に住んでいた女性はヴィックに夫を見殺しにされたことを恨んでおり、アンディの容態に気が付きながらも共に逃げることを望んでいました。
しかし、そのことをヴィックに感づかれ、アンディは殴られた後、少女トゥミが閉じ込められたいた檻に入れられてしまいます。
感染者の「血に集まる習性」と檻の仕組みを利用し、檻から脱出した2人はヴィックに気づかれないように女性と接触し、ロージーを含めた4人でヴィックのもとから逃走します。
しかし、ヴィックはその動きに気づきアンディを射殺しようとしますが、ロージーを庇おうとした女性が身代わりとなり撃たれてしまいます。
彼女の犠牲の上で逃走するアンディたちでしたが、ヴィックは車でアンディを追いかけ、ロージーの命の保証と引き換えにトゥミを求めますが、アンディは無視し続け、アンディを見失ったヴィックは車で去っていきます。
道中、トゥミは治療法があると信じ木に縛り付けておいた感染者である父が、部族の人間に殺害され埋葬されているのを見て絶望するのでした。
映画『カーゴ』の感想と評価
参考映像:2013年TROPFEST応募作「CARGO」
7分間のショートムービーを長編映画化した映画『カーゴ』。
本作はショートムービー版との違いを明確につけるためか、とにかく映像にこだわられて作られています。
「命を懸けて子供のために行動する父親の物語」という原作の重要かつ切ない物語をそのままに、本作は雄大なオーストラリアの風景を楽しむことが出来ます。
理性を失うまでのリミットが生まれてもなお、どこまでも続くような荒野をひたすらに進むアンディとロージー。
その道が絶望なのか希望なのか、激しいアクションもパニックも発生しない静寂さが風景と馴染むような映画『カーゴ』は、ただただ純粋に「親子の絆」を考え直すことの出来るゾンビ映画です。
まとめ
自身の中に埋め込まれた恐怖と絶望という名のウイルスに子供のために立ち向かうアンディ。
彼を演じるマーティン・フリーマンの繊細な演技はファンのみならず、俳優好きにも必見です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile097では、2020年6月12日公開の、バルタザール・コルマウクル監督が実話を映画化した『アドリフト 41日間の漂流』をご紹介させていただきます。
4月7日(火)の掲載をお楽しみに!