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Entry 2020/02/26
Update

NETFLIX映画『流転の地球』ネタバレ感想と評価。原作のエンジンを地球につけるという設定を映像化|SF恐怖映画という名の観覧車91

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile091

前回のコラムでは、SF映画の中のジャンルの1つとも言える「惑星移住」を題材とした映画『タイタン』(2018)をご紹介させていただきました。

『タイタン』は「惑星移住」を題材とした作品の中でも、惑星移住の「準備過程」に焦点を当てた異質な映画でしたが、2019年には中国からさらに衝撃的な作品が登場します。

そんなわけで今回は、中国国内で大ヒットを記録したSF映画『流転の地球』(2019)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『流転の地球』の作品情報

映画『流転の地球』

【日本公開】
2019年(NETFLIX独占配信映画)

【原題】
流浪地球

【監督】
グオ・ファン

【キャスト】
ジャッキー・ウー、ウー・ジン、チュ・チューシャオ、チャオ・ジンマイ、リー・グアンジエ

【作品概要】
中国国内で600億円もの興行収入を記録し話題となったグオ・ファンによるSF映画。

同じく中国で興行収入1000億円以上もの大ヒットを叩き出した『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』 (2018)で監督及び主演を務めたウー・ジンが出演していることでも話題となりました。

原作は、中国の人気SF作家・劉慈欣の2000年の小説『流浪地球』。原作は数々のアワードを獲得し、日本でも『さまよえる地球』というタイトルで、2008年に早川書房の『S-Fマガジン』で日本語訳が掲載されました。

映画『流転の地球』のあらすじとネタバレ

近未来、徐々に肥大化し始めた太陽によって、地球はさまざまな災害に見舞われます。

100年後には存続すらも危うい人類を守るため団結した各国は、世界各国に巨大なエンジンを取り付け、地球を安全な場所へと移動させる「流転地球計画」を始動させます。

しかし、地球の移動を始めたことによって環境が変わり、地球上は人が住めないほどの低温になっていました。

人類は地球の地下に住処を移し、移動が完了するまでの長い期間を過ごすことになります。

17年後、地球の進行ルートをナビゲートする宇宙ステーションから任務を終えたエンジニアが帰還する日が近づきます。

地上の生活に憧れる若者リウ・チーは義理の妹であるハンと共に身分証を偽造し、エンジニアとして地上へと上がります。

エレベーターに乗り地上の北京市へと出た2人、外気温はマイナス80度を下回り、防護服が無ければ歩き回ることもできません。

ハンの祖父ズーアンの免許証を使いトラックを動かした2人は地上で多くの人間が働いている様子を目にします。

一方、宇宙ステーションで働くリウの父ペイチアン中佐は任期の最終日を迎え、地球へと戻る準備をしていました。

地球は木星に近づき、木星の引力を使い移動する予定でしたが、計算と違い木星の引力が強く衝突の可能性があると危険視されていました。

リウとハンは地上で検問にあったことで身柄を拘束後、同じく勾留されていたティムと出会います。

その後、大規模な地震が地球で発生し、地上も地下も大損害を受けます。

地球上の4000基を超えるエンジンが停止し、地球は木星の引力に勝てず、木星へと引き寄せられていきます。

拘置場が地震によって崩壊しますが、ハンとリウ、助けに来たハンの祖父ズーアン、そしてティムはズーアンの運転で落盤に巻き込まれず脱出することに成功します。

36時間以内に世界中のエンジンを再稼働させる必要があり、世界中のエンジニアが総出動を開始。

リウたち4人は杭州の救援のためワン隊長の率いる救援隊に緊急徴用され、エンジンの再稼働させるために必要な着火石の輸送を手伝うことになります。

凍り付き崩壊した上海へとたどり着いたリウたち。

一方、宇宙ステーションは崩壊に備えエネルギーを最小限に抑えるべく、ステーションの人間に休眠状態に入るよう指示します。

休眠状態に入る前、ペイチアンはリウたちが避難していないことを知りコンタクトをとりますが、かつて難病の母を見捨てる選択をしたペイチアンをリウは許しておらず、父の提案を退け、着火石の輸送任務を続行。

しかし、救援隊は谷を抜ける途中、地震の影響で落盤が発生し車が使えなくなります。

倒壊仕掛けのビルのエレベーターホールを抜ける最中、ズーアンを救うため隊員の1名が死亡。

その際に防護服を傷つけてしまったズーアンは酸素を失い、14年前災害の最中に拾った誰の子かも分からない少女のハンを自分の孫として育てたことを思い出しながら死亡します。

リウとハンは完全に心が折れ、部隊から離れ地下へ戻ることを決意します。

一方、ペイチアンは宇宙ステーションを司るAIの「モス」が、宇宙ステーションの危機により職務を放棄したことを悟り、休眠状態を抜け強制的に宇宙ステーションを止めるべくロシア人のマカロフと船外へと移動します。

救援隊から離れたリウとハン、そしてティムは墜落した飛行機と搭載された車両を見つけ、別任務を負った救援隊の隊員1人を救います。

この飛行機はエンジンの中でも重要なトルクエンジンを起動させるための着火石を積んでおり、スラウェシへと向かう途中だったことを知ります。

リウは車を失い立ち往生するワンの救援隊を救いに戻りますが、杭州は既にエンジンの喪失により地下住居が崩壊し35万もの犠牲が出ており、救援隊は完全に心が折れていました。

リウは救援隊にスラウェシのトルクエンジン再起動の助力を求め、再び共に行動することになります。

各地のトルクエンジンの再稼働に成功し、残るトルクエンジンがスラウェシのみになります。

木星が間近に迫るなか、スラウェシのトルクエンジンを稼働したことで全てのトルクエンジンの再稼働に成功。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『流転の地球』のネタバレ・結末の記載がございます。『流転の地球』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

一方、マカロフを失いつつも宇宙ステーションの基幹部分にたどり着いたペイチアン。

しかし、基幹部分にたどり着いたペイチアンはモスから地球は既に木星へと近づきすぎたため、地球の崩壊は不可避であり、流転地球計画は失敗に終わったと告げられます。

モスは地球上へ通信を行い、流転地球計画の失敗と、今からヘリオス計画へと移行することを全人類に告知します。

ヘリオス計画は、宇宙ステーションの凍結受精卵とデータバンク、そして食料と休眠中のエンジニアのみを生かし地球財産を守る計画であり、地球上の人間は救えないと言うことでした。

絶望するリウたちでしたが、リウはかつて父と話した木星の特徴を思い出し、木星上の水素を爆破させその衝撃波で地球を動かす策を思いつきます。

全てのトルクエンジンを停止させ、1つのエンジンに集中させることで木星の水素に着火する新たな計画。

ワンとリウはこの計画を実施するためトルクエンジンのオペレーションセンターへと向かいます。

各自がそれぞれの作業を進めますが、落盤によって作業が進まず限界を迎え始めます。

ハンは宇宙ステーションのペイチアンと連絡を取ることに成功し、ペイチアンはモスと連合政府を説得しハンの音声を世界に発信する許可を得ます。

ハンは全救援隊にスラウェシの救援隊を助けて欲しいとメッセージを伝えます。

各地の救援隊の応援によってトルクエンジンの起動と放出に成功しますが、木星の水素には届きません。

その状況を見たペイチアンは休眠所を切り離した宇宙ステーションを地球から放出されるトルクエンジンのエネルギーにぶつけ、木星を爆破しようと考えます。

消化システムを止め、宇宙ステーション内に火をつけたペイチアンは休眠所を地球へと避難させ、宇宙ステーションごとエネルギーへと突撃。

最期の通信をリウと行い、エネルギーに飲み込まれていく宇宙ステーションによって木星に火がつきます。

7分後に地球に衝撃波が来ることが予想した隊員たちは地下へと避難を開始しますが、ハンとワンの乗るエレペーターが崩壊し、ワンは落盤に巻き込まれ死亡します。

ワンからの最期の命令で生き残ることを決めたリウは、ハンを救い衝撃波の影響が少ないとされるトルクエンジンの下へと急ぎます。

しかし、エンジンの下に向かうまでの間に衝撃波に巻き込まれ、リウとハンは崖下へと落下しますが、何とか生き残ることに成功。

そして、木星の爆破の衝撃波により、地球は木星の引力から脱出することに成功しました。

3年後、英雄となりつつも地上エンジニアとして活動するリウとハンたち。

太陽系を離れ、新たな銀河系の惑星となるため2500年もかかる流転地球計画は始まったばかりでした。

映画『流転の地球』の感想と評価

参考:Netflix Japanのツイッター

地球の資源や環境に限界を感じ、地球以外の場所を目指したり、新エネルギーの開発または過酷な状況であれど地球で暮らすと言う物語のSF映画は数多くあります。

しかし、中国で大ヒットを記録した本作の内容は「地球にエンジンをつけ移動させる」と言う力強すぎるプロットであり、その部分に作中では疑問を挟まず物語が進展していきます。

この作品の後に作られる『上海要塞』(2019)も「上海キャノン」と呼ばれるパワーワードが存在したように、「中国映画」に「SF」が加わるとプロットのインパクトで全てを持っていくような映画になるように感じてしまうほど。

内容は、技術力を最大限に活かしたCGに見ごたえがあり、基盤となる父と子をメインとした物語と次から次へと起こる天変地異の恐怖感、そして地球ごと宇宙の旅をすると言う壮大なスケールのSF感に感動できるエンターテイメントが詰まった良作でした。

まとめ

作中の全VFXが完全に中国国内で製作された初のケースとされる『流転の地球』。

そのクオリティはハリウッド映画にも決して劣らない高い完成度であり、今後の中国産SF映画に期待が高まります。

一方で本作は、世界的危機を前に全世界が国境を越え1つになることの大事さも描いており、コロナウイルスが世界に蔓延する危機的状況である今だからこそ大切にしたいメッセージ性が含まれた映画でもありました。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile092では、「SF映画おすすめ5選!80年代の名作傑作選【糸魚川悟セレクション】」と銘打ち、1980年代に公開されたSF映画の傑作をランキング形式で振り返りたいと思います。

3月4日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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