連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile028
ゲーム好きなら一度は行ってみたい「ゲームの中の世界」。
2012年に公開されたゲームの中の世界を題材としたディズニー映画『シュガーラッシュ』が、今度は広大なインターネットを舞台に帰ってきます。
今回は「インターネット」を題材とした2018年12月21日(金)公開の最新作、『シュガー・ラッシュ:オンライン』(2018)を題材にゲームの中の世界を描いた「SF」映画たちを紹介していきます。
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CONTENTS
映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』の作品情報
【原題】
Ralph Breaks the Internet
【製作】
2018年(アメリカ映画)
【監督】
リッチ・ムーア
【キャスト】
ジョン・C・ライリー、サラ・シルバーマン、ジャック・マクブレイヤー、ジェーン・リンチ、ガル・ガドット、タラジ・P・ヘンソン、アラン・テュディック
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映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』のあらすじ
あるゲームセンターの「ゲームの中の世界」。
レースゲーム「シュガーラッシュ」の筐体が不具合を起こし、廃棄が間近になってしまいます。
「シュガーラッシュ」のプレイヤーキャラクターであるヴァネロペ(サラ・シルバーマン)は、別ゲームの心優しい悪役であり親友でもあるラルフ(ジョン・C・ライリー)と共に打開策を探すためインターネットの世界に飛び出しますが…。
映画で描かれた「ゲームの中の世界」の推移
国や性別を問わず、幅広い年代層から愛されるゲームの数々。
前作の『シュガーラッシュ』では、世界の様々なゲームの登場キャラクターがゲームキャラクターとしての理解と意志を持って登場し、ゲームならではの「あるあるネタ」や伏線の効いたオチで楽しませてくれました。
このように、ゲーム好きであればあるほど楽しめる「ゲームの中の世界」を描いた作品には、実は2つのジャンルがあります。
ゲームの中の世界に入る
「ゲームの中の世界」を描いたジャンルの1つ目は、ゲームの中の世界に人が直接入る作品です。
このジャンルではゲームの中の世界に直接「人の生身」が入るため、「ゲームオーバー」=「死」と言うスリリングな設定が活きてきます。
しかし、それでいて映画そのものが重い雰囲気ではなく、あくまでもゲームが題材であるため、親子で軽く楽しめる作品が多くありました。
『トロン』(1982)
1982年に製作されたスティーブン・リズバーガーによる映画『トロン』。
2010年には28年ぶりに続編『トロン:レガシー』が製作され話題になったこの作品では「コンピューターの中の世界」に入り、その中で命懸けの「ゲーム」を行います。
「ゲームの中の世界」とは少し違うニュアンスの作品ではありますが、『シュガーラッシュ』と同様に「コンピューターの中の世界」で生きる「プログラム」たちが描かれていました。
本作の世界観や独特な映像表現は後の作品群に大きな影響を与え、「ゲームの中の世界」の基盤になったとすら言えます。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2018)
2018年には、死のボードゲームを題材にしたパニックムービー『ジュマンジ』(1995)の続編となる『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』が公開されました。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』では、時代の変化によりボードゲームに興味を示さなくなった子供を引き寄せるために「ジュマンジ」が「テレビゲーム」へと変形します。
ジュマンジの中では「特定の事しか喋らないキャラクター」を始め「残機」や「キャラクター別の能力」など、どちらかと言えば「レトロゲーム」にありがちな「あるあるネタ」が多く散りばめられていました。
レトロゲームを題材にすることによって、子供から大人まで楽しみを共有出来るという点で、前作『シュガーラッシュ』と本作は、現代を反映している映画です。
インターネットに繋がったゲームの中の世界
時代が移り変わり、今のゲームは「インターネット」に接続されていることが一般的となっています。
そんなインターネットの進化の代表である「オンラインゲーム」を題材とした作品は、実は日本が大きな影響を与えていました。
『アヴァロン』(2001)
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)で世界的知名度を誇る押井守が手掛けた実写ミリタリー映画『アヴァロン』。
ゲームから戻れなくなってしまう「未帰還者」となる可能性を秘めた危険な「オンラインゲーム」を題材に、オンラインゲームと現実との曖昧な「境目」を描いていました。
オンラインゲームの普及によって、全世界の人間と気軽にコミュニケーションを取れる一方で、ゲームの中の世界に現実を求めるがあまり、「現実」と「ゲーム」を混同してしまう問題をいち早く題材とした奇作としても知られています。
『レディ・プレイヤー1』(2018)
『アヴァロン』の後に、オンラインゲームを舞台としたテレビゲーム「.hack//」シリーズが世界で人気を集めるなど、「オンラインゲーム」を題材とした作品は多く製作されます。
そして2018年、SF映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグが「オンラインゲーム」を題材として製作した映画『レディ・プレイヤー1』が公開されました。
「ゲーム」と「現実」での戦いを対比的に展開させることによって、1人の人間の「表」と「裏」両方からの成長と戦いが迫力のCGで描かれていました。
ゲームの中の世界だからこそ、「突飛な演出」や「遊び心満載の舞台装置」が登場可能であり、その強みを活かした作品と言えます。
映画『シュガーラッシュ:オンライン』のまとめ
様々な「ゲームの中の世界」を題材とした作品をご紹介させていただきました。
『シュガーラッシュ』の主人公ラルフは、劇中に登場する「レトロゲーム」の悪役です。
そのため「レトロゲーム」としての「あるあるネタ」や、「インターネット」と言う概念、そして「ゲームの中の世界」だからこそ楽しめる「突飛な演出」や「遊び心満載の舞台設定」。
「ゲームの中の世界」を題材とした映画として全てを兼ね揃えた『シュガーラッシュ:オンライン』はまさに大人から子供まで楽しめる作品。
ゲーム好きの方や、ゲーム好きが家族や友達にいる方は12月21日の公開日に劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile029では、2018年の「SF」・「ホラー」映画を振り返り、この1年で各ジャンルにどのような影響を与えたのかを考察し、新年のprofile30では2019年における2つのジャンルの注目作をピックアップしたいと思います。
12月26日(水)の掲載をお楽しみに!