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Entry 2021/01/25
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映画『さんかく窓の外側は夜』ネタバレ感想とラスト結末のあらすじ【岡田将生×志尊淳が挑むオカルトサスペンス】|SF恐怖映画という名の観覧車138

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile138

人と対面せずとも会話が可能となった現代では「言葉」の持つ重みが簡単に変容します。

他者へ「呪い」をかける行為が誰でも出来るようになった歪んだ現代に本当に大切なものは何か。

今回は同名漫画を実写化したオカルトサスペンス映画『さんかく窓の外側は夜』(2021)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『さんかく窓の外側は夜』の作品情報


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

【配信】
2021年(日本映画)

【監督】
森ガキ侑大

【キャスト】
岡田将生、志尊淳、平手友梨奈、滝藤賢一、マキタスポーツ、新納慎也、桜井ユキ、和久井映見、筒井道隆、北川景子

【作品概要】
2013年から連載が始まったヤマシタトモコによる漫画「さんかく窓の外側は夜」を実写化した作品。

主演を務めたのは『重力ピエロ』(2009)での演技で高い評価を受けた岡田将生と『HiGH&LOW THE WORST』(2019)で新境地を見せた志尊淳。

映画『さんかく窓の外側は夜』のあらすじとネタバレ


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

霊が視える三角は幼少期のトラウマから誰にもその能力のことを打ち明けることが出来ず、能力から目を逸らし生きていました。

ある日、書店で働く三角の前に霊が現れます。

三角は恐怖しその場を離れようとしますが、突如現れた冷川と名乗る男が三角に触れ、霊に手をかざすことで霊が消滅していきます。

三角には霊が見えるだけでなく過去を見通す能力があり、霊となった男の記憶の一部が流れ込んで来ました。

霊を祓い終えた冷川は、三角に除霊の助手として事務所で働いて欲しいと勧誘します。

書店の二倍の時給を出すと言う冷川の言葉に惹かれた三角は、冷川の事務所で働くことになります。

勤務初日、焼肉屋で冷川の専属契約書にサインした三角は、霊を恐れない冷川に親や友人、彼女の有無を聞きますが、冷川は自分には誰もいないと話すだけでした。

ある日、複数の女性への殺人容疑で逮捕された男が拘置中に自殺します。

殺害された全ての女性はバラバラに切断されていましたが、各女性の遺体の一部が未だに見つかっていませんでした。

発見できなかった各女性の部位を繋ぎ合わせると1人の人間の形になると言う気味の悪さから、刑事の半澤は昔馴染みの冷川に遺体の捜索を依頼。

警察に恩を売ることを目的とした打算から依頼を引き受けた冷川は、三角を連れ殺人犯の住んでいたアパートを訪問。

現れた霊を祓い、三角の持つ霊の過去を見通す力を使って犯人がアジトにしていた廃墟を発見した冷川と三角は半澤を連れ廃墟に踏み入ります。

廃墟内で繋ぎ合わされた遺体を発見した半澤は遺体の調査を始めますが、三角は今までに感じたのことない禍々しい気の存在に当てられ恐怖します。

邪気を纏った霊は「ヒウラエリカ」と名前を発し続けていました。

夜、焼肉を食べながら冷川は三角に、あの遺体は「穢れ」を集めておくことで遠隔的に人を呪うことを可能にする装置だと話します。

発見されたことでその効力は消えたものの、殺人犯を誘導し女性を殺害させ装置を作り出した「呪い師」こそが「ヒウラエリカ」であることは間違いないと冷川は確信していました。

冷川はその名前を何度も聞いたことがあると言い、三角は「ヒウラエリカ」を止めなければまた同じことが起きると危惧します。

しかし、冷川はSNSを通して簡単に殺意の「言霊」を飛ばせる時代に、呪いにまで手を伸ばし対応しても得にならないと興味を示しませんでした。

一方、女子高生の非浦英莉可は呪いをかけるために用意した装置が何者かに解かれてしまったことを感じ取っていました。

数日後、ある物件で僅かの期間に行方不明と不審死が立て続けに起きており、外的要因の少なさから警察では捜査に踏み込めない事案の調査依頼が半澤から舞い込みます。

冷川は半澤にはあらゆるものを「信じない力」があると言い、彼を結界として利用し三角と共に物件に入り込もうとしますが、前回を越える圧倒的な「穢れ」と住居への侵入を感知した非浦からの防衛に当てられ、三角が気を失ってしまいます。

事務所で目を覚ました三角は冷川のいない場で「ヒウラエリカ」の調査を半澤に頼むと、承諾した半澤は三角のもとを去っていきます

三角は自身の背中に三角形のあざが出来ていることに気づき冷川に尋ねると、冷川は勤務初日に自分以外の人間が三角の精神内に入れないように「専属契約」をしたと淡々と答えます。

さらに冷川は先ほど訪ねた物件が、負のオーラを持つ人間を引き寄せ、その人間から「穢れ」を吸い取り殺害することを繰り返し出来上がった「穢れ」の「貯金箱」であると言うと、「貯金箱」を利用し他人に呪いをかけた上で解呪するビジネスを展開できると話し始めます。

「善」からかけ離れた様子を見せる冷川に幻滅した三角は仕事を辞めると告げ事務所を出ていきました。

警察署で半澤を訪ねた三角は、「ヒウラエリカ」という同姓同名の人物は全国に数多おり調査は困難と言われます。

三角は続けて半澤に事務所を辞めたことを話すと、冷川が幼少期にある新興宗教の教祖として祀られ、最終的に信者同士の殺し合いで母親を含む親しい人全てを失った過去とその影響で善悪の区別がつかなくなっていると聞かされます。

一方、霊を身体に受け入れ、母を刺殺した通り魔を呪いで殺害した過去をもつ非浦は、父が新興宗教に傾倒して以降「先生」のために自身の能力を使うことを強要されていました。

「貯金箱」の様子を見に行く非浦は、妻と共に付近を通りがかっていた半澤に呼び止められます。

「ヒウラエリカ」の調査の途上で非浦の顔を認識していた半澤は彼女から事情を聞こうとしますが、非浦は半澤に呪いをかけて逃走を目論みます。

しかし、霊的現象を「信じない」半澤には呪いは効かず、焦った非浦は半澤の妻に呪いをかけ半澤が動揺した隙に逃げ出しました。

半澤から連絡で駆け付けた三角は冷川と再会しますが、冷川は半澤の妻にかけられた呪いは強力すぎるため打つ手はないとだけ言います。

三角と冷川は言い合いになり、その様子を見ていられなくなった半澤は2人を帰らせました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『さんかく窓の外側は夜』のネタバレ・結末の記載がございます。『さんかく窓の外側は夜』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

三角と冷川は帰路の最中に非浦の付き人に拉致され、非浦を治すようにと懇願されます。

非浦は顔中から血を流し倒れ込んでおり、その様子を見た冷川は呪いの反作用を受けたと見捨てようとしますが、半澤の妻にかけた呪いの解呪に繋がるかもしれないと考える三角は冷川に解呪を求めます。

仕方なく三角の力を使い解呪を行う冷川は、非浦の過去を見る中で彼女の所属する新興宗教の「先生」と呼ばれる存在がかつて自身の宗教団体に居た人物であることを知り動揺。

解呪には成功し三角は目を覚ました非浦に半澤の妻の解呪を求めますが、非浦は「貯金箱」を使ってかけてしまった呪いのため制御が出来ないと言われます。

「貯金箱」を管理していたのは自分だが制作したのは「先生」であると非浦が話すと、冷川は出来る限りのことはしたとこの件から手を引いてしまいます。

幼少期、危険な霊を見ていながらも、変人扱いされることへの恐怖から友人を救わなかった過去に苛まれていた三角は今度こそ逃げずに立ち向かうことを決意。

非浦は今までわざと呪いに自身の名前を埋め込み誰かに見つけて欲しかったと話すと、三角が行おうとしている「貯金箱」の破壊を自身も手伝うと言います。

2人は「貯金箱」の部屋の前で先に進めないほどの「穢れ」に阻まれますが、非浦が「穢れ」を引き受け道を開くと三角は部屋の奥へと進んでいきます。

「穢れ」は三角の精神内に侵入し、過去のトラウマを引きずり出され三角はその場に倒れ込んでしまいます。

「穢れ」が外へと洩れ、街で事件が多発すると半澤は中心地となる「貯金箱」の建物の前で冷川に会います。

その場に「貯金箱」の異常を感じた「先生」たちも現れ、冷川は三角を助けるまで「先生」たちを半澤に任せ、「貯金箱」へと入っていきます。

冷川はトラウマに飲み込まれそうになる三角を助けると2人で戻ろうと言いますが、三角はなおも「貯金箱」を破壊するため奥に進もうとします。

最奥地で「穢れ」の基となった「カレイドスコープ」を見つけると、冷川は失われていた幼少期の記憶を取り戻してしまいます。

除霊の能力を持つ冷川は幼少期に宗教団体の教祖として祀られ、肉も食べれず、母の愛情を受けれない牢屋のような部屋で日々を過ごしていました。

ある日、後に「先生」と呼ばれるようになった男が冷川に呪いのかけ方を教えると、今までの怒りを宗教団体の人間に向け、互いに殺し合うように呪いをかけてしまいます。

信者たちが互いに殺し合う殺戮の最中、最愛の母が目の前で信者に殺される姿を見た冷川はショックからその記憶を失ってしまい、「先生」は冷川が所持していた母からの贈り物「カレイドスコープ」を殺戮の「穢れ」を集めた装置として持ち去りました。

三角は自身のせいで母親が死んだと絶望する冷川の精神の中へと入り、自身の能力と向き合えるようになったのは冷川のお陰と感謝を告げ、精神内の冷川の手を取り歩きだします。

「貯金箱」の「穢れ」が消え去り、「穢れ」に飲まれかけていた非浦も解放され、非浦は自身に大きな非のある今回の騒動の解決に感謝を述べ涙を流します。

外に出ると半澤が「先生」たちを鎮圧しており事件は終結を迎えます。

「穢れ」が解き放たれたことで半澤の妻は回復、自身の能力を恐れなくなった三角は母に能力のことを打ち明けます。

一方で非浦は普通の女子高生としての日常を過ごしていましたが、自身の身体から腕におぞましい何かが上がってくる様子を目撃するのでした。

映画『さんかく窓の外側は夜』の感想と評価


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

幽霊が視える三角と除霊師の冷川による除霊譚を描いた映画『さんかく窓の外側は夜』。

本作は「除霊」や「呪い」を題材とした「オカルト」要素が物語の見所ではありますが、同時に美しく彩られた映像にもその魅力が詰まっていました。

バディムービーとしての面白さ


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

物語の語り手であり主人公である三角は「幽霊が視える」という自身の能力を気味悪く思い、周囲にその能力を隠して生きています。

三角は除霊の能力をビジネスに利用して生きる冷川に才能を見抜かれ、「呪い」が渦巻く事件の調査を共に行っていくことになります。

原作は性的描写の伴わない友情の延長でのボーイズラブである「ブロマンス」に分類されることもある作品ですが、本作でもその色合いはしっかりと反映されており、2人の「友情」や「信頼関係」に重点を置き物語が進みます。

自身の能力に怯え生きる三角と、「友情」や「善悪」などおよそ人間的な心情を知らない冷川。

ぶつかり合いながらも信頼を深めていく2人の関係性に注目して欲しい作品です。

映像と演技で彩られる独特の世界


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

本作はCMや短編作品など分野で活躍する森ガキ侑大が監督を務めたこともあり、「映像」にとことん拘られ製作されています。

映画のオープニングからミュージックビデオのような映像美に引き込まれますが、全編を通し独特な映像表現をさらに引き立てているのが「俳優」の存在です。

本作では岡田将生と志尊淳だけでなく、元欅坂46のメンバーとして有名な平手友梨奈を「女優」として起用しています。

人を呪う「呪い師」としての悪の表情と、戸惑いや女子高生としての一般的な表情のオンオフを切り分ける演技の多彩さとその顔立ちから「オカルト」映画としての本作の世界観にマッチしており、独特の映像をさらに引き立てていました。

まとめ


(C)2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 (C)Tomoko Yamashita/libre

主演陣だけでなく刑事の半澤を演じた滝藤賢一など、助演俳優たちの魅力がどこまでも「映像」として映し出される映画『さんかく窓の外側は夜』。

能力を得た代償として多くを失ってしまった登場人物たちが織り成す贖罪と払拭の物語である本作。

残虐な表現を厭わないオカルト映画でありながら、自分自身にとって本当に大切なものを見つけ出し取り戻す心温まる映画でもある本作を、ぜひ劇場でご覧になってください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile139では、台湾で製作され大人気となったホラーゲームを題材としたNETFLIX独占配信ドラマ『スカイライン 逆襲』(2021)の魅力をたっぷりとご紹介させていただきます。

次回の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら



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