連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile017
このコラムで取り上げたSF映画の多くは、「社会とのリンク」や「人類の進化の先」など、深いメッセージ性を汲み取ることで、より楽しみが増える作品が多く、映画ジャンルとしての「SF」がどのような立ち位置にあるのかを垣間見る部分もあったと思います。
しかし、今回ご紹介する、2018年10月13日(土)公開の映画『スカイライン -奪還-』は、今までご紹介したどの映画とも違う、過ぎ去った夏を惜しむような「ド派手」で「熱い」映画となっています。
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CONTENTS
映画『スカイライン -奪還-』のあらすじ
ロサンゼルス市警のマーク(フランク・グリロ)は、問題ばかりを起こし拘置所に入れられた1人息子トレント(ジョニー・ウェストン)を拘置所から連れ戻します。
しかし、地下鉄に乗り帰路につく途中、突如宇宙から襲来した、特殊な光を放って人間を「回収」する宇宙生物からの襲撃を受け、ロサンゼルスは崩壊。
騒然となる街の中で逃げ場所を探す2人は、生き残りの女性オードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)と合流し、街からの脱出を試みますが…。
前作のモヤモヤにケリをつける、完璧な完結篇
本作は、エリック・バルフォー主演で作られた映画『スカイライン -征服-』(2010)の続編です。
前作はロサンゼルスに遊びに来ていた主人公のジャロッドを中心に、宇宙人そのものへの「恐怖」と、宇宙人が人を集める「目的」に焦点が当てられている作品でした。
一般人であるジャロッドには、ハイテクな宇宙生物に対抗する術は無く、人類がただただ「征服」されていく様子が描かれています。
参考映像:スカイライン -征服-』(2010)
しかし、本作『スカイライン -奪還-』は同じ時系列を描いた作品でありながら、主人公のマークや、中盤から登場するスアに至るまで、登場人物は皆、宇宙人や敵に対してとても好戦的かつ戦闘能力が高いのです。
また、逃げるだけではなく、誰かを守るために「立ち向かう」ことを選択肢に入れ、「存亡」と「奪還」をかけた宇宙人との戦いに挑んでいきます。
どのような結末を迎えるのかは、この場でお伝えするわけにはいきませんが、お茶を濁すような中途半端なオチではなく、しっかりと物語を収束させる壮大な「完結篇」です。
「前作はあまり自分には合わなかったな」と感じた人こそ、本作を一番楽しめる人であると断言できます。
前作を鑑賞済みだと更に熱くなる「クロスオーバー」
前作から登場人物が変更となった続編映画の作中で、最も熱くなるのは「過去作人物の登場」ではないでしょうか。
本作では、『スカイライン -征服-』の登場人物がマークたちの前に姿を現し、短時間ではありますが熱い「クロスオーバー」を展開させます。
その後の展開で前作の登場人物の存在が非常に重要な鍵となり、『スカイライン -征服-』の物語が『スカイライン -奪還-』に受け継がれていきます。
クロスオーバーによって、1つの映画シリーズ「スカイライン」が、同じ時間軸を複数の視点から描いた「群像劇」であるという面白さを生み、物語の中に「視点」と言う深みも加わっています。
一般人を含んだ「人類」全体と、侵略を目論む「宇宙人」との壮大な戦いの行方は、前作が未鑑賞でも面白く、鑑賞済みだと更に「熱い」、究極のSF映画最新作と言えます。
「漢気」と「バトル」に溢れた地球奪還の戦記(クロニクル)
本作の最大の見どころは、「熱さ」の一言に尽きます。
主人公のマークを演じたフランク・グリロは、以前紹介した「パージ」シリーズの2作目『パージ:アナーキー』(2013)以降で主演を務めたワイルドな俳優です。
今作でも持ち前のハードボイルドな魅力で全編を引っ張っています。
そして、この映画を語る上で避けて通ることの出来ない俳優が、物語の中盤から登場するスアを演じたイコ・ウワイスと、警察でありながら略奪を繰り返す悪徳警官を演じたヤヤン・ルヒアンと言う2人の「アクションスター」です。
イコとヤヤンは、ギャングの巣窟とされるビルの中で奮闘するSWAT隊員を描いた『ザ・レイド』(2012)で、キレのある圧倒的なアクションシーンを見せつけ、世界的に有名になりました。
その後も『ザ・レイド GOKUDO』(2014)や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)に2人揃って出演するなど、ハリウッドでも活躍の場を広げており、本作でもまた相まみえることとなります。
宇宙人とガチンコで戦え!
そんな対「地球外生命体用のフルキャスト」と言った面々が揃う終盤では、宇宙人との壮絶な戦いが繰り広げられます。
フランクが宇宙人の武器を使い、イコとヤヤンがナイフや剣でスーパーテクノロジーを駆使する敵に立ち向かい、あるものは巨大な宇宙人の兵器を利用する、決戦と言うにふさわしいド派手なバトル。
『インデペンデンス・デイ』(1996)や『バトルシップ』(2012)のように人類が存続のために戦う「熱い」宇宙人侵略映画でありながら、その2作とは違い、対抗する手段がまさかの「近接武器」と言う「男」のロマンに満ち溢れた作品です。
まとめ
アクション映画ファンにも、SF映画ファンにも自信を持ってオススメ出来る映画『スカイライン -奪還-』。
「熱い」だけではなく、「家族愛」や人間同士が争った「戦争の爪後」など、様々なメッセージが込められた本作。
そのメッセージを読み解こうとするも良し、純粋なエンターテイメントとして楽しむも良し、と楽しみ方は様々です。
連続して日本の各所を襲った台風の影響もあって、涼しくなったり暑くなったりと気温のはっきりしない今日この頃。
完全に寒くなる前に、今年最後の「熱い」思い出として、10月13日(土)公開のこの作品に足を運んでみてはいかがでしょうか。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile018では、『ゾンビ』や『28日後…』などのゾンビ映画から探って観ることの出来る、怪物を越える恐ろしさを秘めた「人の狂気」に迫ります。
10月10日(水)の掲載をお楽しみに!
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