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Entry 2020/12/22
Update

『メン・イン・ブラック3』ネタバレあらすじと感想。ラスト最後の結末も【キャスト変更を演技力で乗り越えた第3作目】SF恐怖映画という名の観覧車133

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile133

数多の作品が否定的な意見を受けたように、シリーズものにおける役者の世代交代は困難を極めます。

特に基となるキャラクターが魅力的であればあるほど役者を変更するリスクは高く、鑑賞中に違和感を覚えた時点で映画から心が離れてしまうことすらあります。

今回はシリーズものの同一キャラクターの俳優を2人が演じながらも高い評価を受けた映画『メン・イン・ブラック3』(2012)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『メン・イン・ブラック3』の作品情報


Photo by WILSON WEBB -(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

【原題】
Men in Black 3

【配信】
2012年(アメリカ映画)

【監督】
バリー・ソネンフェルド

【キャスト】
ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ、ジョシュ・ブローリン、エマ・トンプソン、アリス・イヴ、ジェマイン・クレメント、マイケル・スタールバーグ

【作品概要】
「メン・イン・ブラック」シリーズの誕生15周年記念作品として製作されたシリーズ3作目。

シリーズの監督と主演はそのままに、エージェントKの若年期を『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でサノスを演じたジョシュ・ブローリンが務め話題となりました。

映画『メン・イン・ブラック3』のあらすじとネタバレ


Photo by WILSON WEBB -(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

月にある銀河系刑務所から殺し屋のボリスが脱獄。

ボリスは自身の腕を撃ち落としたMIBのエージェントKに復讐するべく地球に降り立ちます。

2012年、MIBの地球支部を統括していたZが病気で死亡し新統括として女性エージェントのOが就任するなどMIBも変革を迎えていました。

エージェントJは相棒のKが感情を表に出さず、Zの弔辞すら無愛想であったことに友人として心配していましたが、Kは自身がそうなった事柄についての詮索を拒んでいました。

幼いころに父が死に、父の記憶がほとんどないと語るJに対しKは深く考え込みます。

ある日、中華料理屋が密輸した宇宙食材を無断で使用していると言う通報を受け中華料理屋へと捜査に行くJとK。

店主のウーは宇宙人であり、店内に出されている食事からボリスの脱獄を知ったKは屋上でボリスと再会します。

店内でボリスからの刺客を倒し屋上に駆け付けたJはKと共にボリスの手から発射される針に撃たれますが、ドアが盾となったことで助かります。

ボリスはKに対し「お前は過去で死ぬ」と言い残すとその場を去っていきました。

騒動の後始末の後にKにボリスとの関係を聞くJでしたが、Kはボリスを刑務所に入れるべきではなく殺すべきだったと後悔を語るだけでした。

さらに深く追求しようとするJに対しKは停職4週間を言い渡し、Jが取り付く島もなくKはその場を去ります。

怒りの収まらないJはMIBの本部に戻りボリスの事件について調べ始めます。

ボリスは好戦的かつ危険なボグロダイト星人の1人であり、1969年にボグロダイト星人が地球侵略を企んだ際に地球で複数名を殺害していました。

若き捜査官Kはボグロダイト星人を殲滅する兵器「アークネット」によってボグロダイト星人を滅ぼすと、ケープカナベラルでボリスを逮捕。

しかし、それ以上の詳しい情報は1級捜査官であるJにすら公開されておらず、本部の統括をするOも多くを語ろうとしませんでした。

その日の夜、JはKからの電話で、Kが何かに対し深い後悔をしていることを聞きます。

KはJへの電話を終えた後に立ち上がると何かに対し銃を構えますが、空間に吸い込まれるかの如く消えてなくなります。

翌日、Kの部屋を訪ねるJですがその部屋には見知らぬ親子が長年住んでいました。

混乱する頭のままMIBに出社すると自身に全く知らない相棒のAAがついており、Kの存在を知っている人がおらずJはさらに混乱します。

理解の出来ない状況にイラつくJはチョコミルクを頼むと、そこに取締役のOが現れ、Kは40年前にボリスによってケープカナベラルで死亡したと過去を語るかの如く話し始めます。

OはJが精神を錯乱していると考えますが、JがKの細かな癖を知っていることを疑問に思い、さらに彼が好きでもないチョコミルクを飲んでいることに注目。

イラつきや糖分を欲する症状は「時空破壊」を経験した人間に起きる症状であり、OはJがタイムスリップに干渉したと気づきます。

Jはタイムスリップなど存在しないはずだと言いますが、オバダイアと言う犯罪者が月の刑務所にいると聞き、脱獄したボリスが過去に戻りKを殺害したのだと理解します。

その時、地球に対しボグロダイト星人の攻撃が始まります。

Kの殉死によって変わった世界ではボグロダイト星人は絶滅しておらず、遂に侵略の時を迎えてしまいます。

OはJに望みを託し、オバダイアの息子ジェフリーに協力を仰ぐようにJに伝えます。

電気店を営むジェフリーは気軽にボリスに協力してしまったことをJに打ち明けると、テレビでも緊急報道されている宇宙人による攻撃が自分のせいであることを知りJに協力。

Jはボリスの戻った1969年7月16日の前日に戻り、ボリスの第1の犯行であるコニーアイランドでの殺人の前にボリスを殺害することを決意します。

ジェフリーのタイムマシンを使い1969年に戻ったJはコニーアイランドへ向かいますが、一足遅く既に宇宙人のローマンはボリスにより殺害されていました。

ボリスを追うJは若きエージェントKに拘束されMIBの本部へ連行されます。

秘書を務めるOとも会うJですが、明らかな嘘でごまかすJに対し不信感を募らせたKはニューラライザーを使い記憶を抹消しようとします。

記憶を消される寸前でボリスが関わる一連の真実を話したことによりKはJのことを一時的に信用します。

Jが未来で見た資料から「ザ・ファクトリー」と言う宇宙人のクラブで事件が起きると知りJとKはクラブに潜入。

クラブ内でMIBの捜査官からボリスの次なる標的がグリフィンと言う5次元空間を生き未来を予言できる宇宙人であると聞いた2人は、クラブ内にいるグリフィンを発見します。

グリフィンはボリスが数分間後に襲いくることを予知し、ボリスはその通りのタイミングで襲撃を仕掛けてきました。

ボリスを取り逃しただけでなく、グリフィンを失った2人はKの誘いでダイナーに食事に行くことにしました。

ダイナーでOとの関係を陽気に話すKを見て、Jは未来のKとの違いに愕然すると共に何がきっかけで変わってしまったのかと疑問に思います。

他の客の会話とクラブでのグリフィンの発言からグリフィンが野球場にいることに気づいた2人は、野球場にいたグリフィンに地球を守護するバリアー装置「アークネット」を貰います。

地球の侵略に失敗すればボグロダイト星人は餓死し絶滅すると話すグリフィンですが、その装置を正しく機能させるためには大気圏外に構築する必要があり、2人は人類初の月ロケットであるアポロにアークネットを装着することにします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『メン・イン・ブラック3』のネタバレ・結末の記載がございます。『メン・イン・ブラック3』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

日付が変わり、未来のボリスが過去に現れます。

未来のボリスは過去のボリスと会い、地球侵略の計画阻止を企む2人を殺害することにします。

JはKが未来から来たボリスによってケープカナベラルで死ぬことを知っており彼を止めようとしますが、ボリスを止められる人間が自分しかいないことを確信するKは引こうとしません。

未来の見えるグリフィンもK以外にアークネットを張れる人間がいないと言い、JはグリフィンにKを救える未来について聞きますが、そのためには別の人間の命を捧げる必要があると言われます。

ケープカナベラルに着いたJとKとグリフィンはアポロの打ち上げを警備する軍人に不審者として確保されてしまいます。

しかし、警備担当のリーダーである大佐にグリフィンが未来を見せると大佐は不自然なほどに協力的になり、JとKをアポロまで案内します。

グリフィンはその場で3人を見送ると「この先は見たくない」と呟きました。

大佐に案内され発射台の屋上に続くエレベーターに乗るJとK。

グリフィンからのアドバイスで任務完了後にすぐ未来に戻ることにしたJはKに別れを告げますが、その後すぐに未来のボリスに襲われます。

発射台の屋上に急ぐKも過去のボリスに襲われます。

タイムマシンを使った未来の先読みでボリスの攻撃を避けたJは未来のボリスを突き落とし、Kも現在のボリスを突き落としアークネットをロケットにつけることに成功します。

ロケットが発射され、噴射熱により地上に落とされた未来のボリスは死亡。

一方、発射台から降りたKは大佐によって回収されますが、大佐は生きていた過去のボリスの攻撃からKを庇い死んでしまいます。

Kはボリスに銃を向け逮捕しようと考えますが、「殺さなければ後悔する」と言うJの言葉を思い出しボリスを射殺。

その様子を遠くで見ていたJはグリフィンの言った代わりの犠牲について思い出していました。

大佐の近くに居たアポロの発射を見に来ていた大佐の息子が大佐に駆け寄る姿を見たKは子供に名前を聞きます。

ジェームズと名乗った少年にKは父は英雄であったと話すと、Kは彼の記憶を消した上で彼を保護しました。

Jはジェームズこそが過去の自分であることや大佐が父であることを理解し、Kと再開せずに未来に戻ります。

未来に戻りダイナーで現代でも生きているKと再会したJは、父が死んだ日に自身を励ましてくれたことに感謝を告げると2人は次なる仕事に出かけていきます。

そのダイナーでは2人の再会を楽しみに40年間待ち続けていたグリフィンがその様子を眺めていました。

映画『メン・イン・ブラック3』の感想と評価


Photo by WILSON WEBB -(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

シリーズを通し本作までメインキャストと監督を変更せずに製作され続けた「メン・イン・ブラック」シリーズ。

『メン・イン・ブラック2』(2002)からおよそ10年ぶりに製作された『メン・イン・ブラック3』では、特に人気の高い主人公の1人エージェントKの若年期が物語のメインとなり再び地球の存亡をかけた戦いが始まります。

しかし、若年期のKをトミー・リー・ジョーンズ以外の俳優が演じることに映画の公開以前は心配の声も多く上がっていました。

俳優の変更を乗り越えた良作

『グーニーズ』(1985)出俳優デビューし『ノーカントリー』(2008)で主演を務め高い評価を受けた俳優ジョシュ・ブローリン。

近年では「アベンジャーズ」シリーズで節目となる大敵サノスを演じたことでも知られています。

そんな彼が若年期のKを演じた本作は、驚くほど「シリーズで積み上げてきたKと言うキャラクターの造形」をリスペクトした作品となっていました。

物語の序盤にはトミー・リー・ジョーンズ演じるKが登場し、彼の過去の後悔と死を救うためにエージェントJが過去に戻り奮闘する本作。

トミー・リー・ジョーンズによるKが登場するがゆえに、若年期とはいえ俳優の変更はその登場人物の年齢が高ければ高いほど混乱の引き金となってしまいます。

しかし、「自身が演じるK」ではなく「自然と物語に存在するK」を演じるために昼夜問わずシリーズと向き合ったジョシュ・ブローリンの演じるKは、まさにファンの知る「K」として違和感のないものでした。

近年では同俳優がCGや特殊メイクを駆使し若年期を演じることも多い中、本作は俳優の変更を行いながらも見事にキャラの魅力を引き継いでいたと言えます。

丁寧な脚本が作り出す鑑賞後感の良さ

『メン・イン・ブラック3』はシリーズ初のタイムトラベル作であり、より丁寧な脚本作りを求められました。

前作の製作中にウィル・スミスからプロットの提案を受けてからおよそ10年の製作期間を経て完成した本作は、丁寧に物語の説明しながらも考察の余地を残すような見事な脚本に仕上がっていました。

Jの父親、Kの後悔、Kの性格の変化の理由、序盤に散りばめられた伏線の全てがケープカナベラルでの戦いに繋がる終盤と、様々な過去を乗り越えそれでも生きていくことを教わるようなラストに胸を打たれる脚本でした。

まとめ


Photo by WILSON WEBB -(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

前作『メン・イン・ブラック2』はマイケル・ジャクソンのカメオ出演で話題となりましたが、今作にも「大物」多く登場しています。

レディ・ガガやジャスティン・ビーバーなど現在も活躍するミュージシャンの出演を始め、プロバスケットボール選手のヤオ・ミンなど様々な分野から著名人が登場するします。

タイムトラベルを題材としたSF映画としても、そして「メン・イン・ブラック」と言う人気シリーズとしても大満足間違いなしの映画『メン・イン・ブラック3』をぜひ鑑賞してみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile134では、台湾で製作され大人気となったホラーゲームを題材としたNETFLIX独占配信ドラマ『返校 -Detention-』(2020)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

次回の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら



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