Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/12/01
Update

映画『悪魔のいけにえ』ネタバレ感想と考察解説。レザーフェイス殺人鬼時代を作り出した名作を深掘り!|SF恐怖映画という名の観覧車130

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile130

ホラー映画とSF映画を題材とした当コラムで今までほとんど触れることの無かった「伝説的名作」と呼べる映画たち。

日々押し寄せる新作映画情報の濁流に飲まれ、そう言った映画に触れることの出来ず口惜しい思いすらありました。

今回は予定を変更し、いくら年月が経とうと決して輝きの衰えることのないスラッシャー映画における伝説的な1974年にアメリカ公開された作品『悪魔のいけにえ』をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『悪魔のいけにえ』の作品情報


(C)MCMLXXIV BY VORTEX, INC.

【原題】
The Texas Chain Saw Massacre

【配信】
1974年(アメリカ映画)

【監督】
トビー・フーパー

【キャスト】
マリリン・バーンズ、ガンナー・ハンセン、ジム・シードウ、ポール・A・パーテイン、アレン・ダンジガー、テリー・マクミン、ウィリアム・ヴェイル、エドウィン・ニール

【作品概要】
後にスティーヴン・スピルバーグが製作と脚本を務めたオカルトホラー映画『ポルターガイスト』(1982)で監督を務めることになるトビー・フーパーの代表作。

トビー・フーパーは本作での商業的成功を契機にハリウッドやイギリスへと映画製作の場を広げることになりました。

映画『悪魔のいけにえ』のあらすじとネタバレ

1973年、テキサスで墓荒らしが多発。

墓の中から掘り出された遺体の一部は持ち去られ、残りはモニュメントのように飾りつけられるなどその犯行は常軌を逸していましたが、各地で頻発する事件や事故の後始末に追われ、警察は犯人を捕まえることは出来ていませんでした。

8月18日、テキサスに一族の墓を持つサリーは車椅子に乗る兄のフランクリンや彼氏のジェリー、フランクリンの友人のカークとその恋人のパムを連れ車でテキサスを訪れていました。

墓の無事を確認したサリーたちは車で牛の処理場を通り抜けた先でヒッチハイクをする男を見つけ車に乗せることにします。

代々処理場で働き、昔ながらのハンマーで殴る方法で牛にトドメを刺しているという男の様子は異様であり、ナイフで自身の手を切ったりと異常な行動を取り始めます。

男は持っていたポラロイドカメラでフランクリンを撮影し、出来上がった写真をフランクリンに2ドルで売ろうとします。

フランクリンが拒否すると男は車内で写真を燃やした後にフランクリンの手をナイフで切りつけ、カークたちに車から降ろされます。

フランクリンは彼の異常な行動の理由について考え始めますが、カークやジェリーは気にすることなく、ガス欠のためガソリンスタンドへと立ち寄ります。

しかし、スタンドのガソリンは枯渇しており、スタンドに給油車が来るまで立ち往生を余儀なくされてしまいます。

もう誰も住んでいないサリーの祖父の家へと入る5人。

暇を持て余したパムとカークはかつて家の裏手にあったとされる川に遊びに行きますが、既に川は干上がっていました。

川の近くに自家発電を行う家を見つけた2人は、ガソリンを分けてもらうために家を訪ねることにします。

玄関前に人間の物と思われる歯が落ちていたことでパムは不気味がり玄関から離れますが、カークは玄関を叩いても返事がなくドアが開いていたことから家に入っていきます。

玄関から見える奥の部屋にさまざまな動物の頭部のはく製が飾られていることに興味を持ったカークはその部屋に入ろうとします。

しかし、その場に人間の皮を被った大男(レザーフェイス)が現れ、屠殺用のハンマーでカークの頭をたたき割り殺害。

カークが戻らないことに不信感を覚えたパムは家の中に入り、人骨やその他の動物の骨で作られたインテリアの数々を目にします。

錯乱した状態でカークを探すため家の中を歩くパムはレザーフェイスに追われ、家を出る直前に捕まってしまいます。

レザーフェイスに捕まったパムは奥の部屋に連れて行かれ肉吊り用のフックに刺され吊るされてしまいます。

絶叫するパムの前でチェーンソーを取り出したレザーフェイスはカークの死体を切り刻み始めました。

夕方、ジェリーはカークとパムを呼びに川の方に歩き、家を見つけます。

家の前で2人の痕跡を見つけたジェリーは家の中へと入り冷凍庫に入れられたパムを発見したところでレザーフェイスのハンマーによって頭部を叩かれ殺害されてしまいます。

夜になり、ジェリーを探しに行くことにしたサリーはフランクリンの反対を押し切り2人で川の方へと歩きます。

暗闇の中に民家を見つけますが、突如闇の中から出てきたレザーフェイスによってフランクリンはチェーンソーで滅多切りにされ殺害されます。

サリーはチェーンソーを振り回しながら追いかけてくるレザーフェイスから必死に逃亡。

民家へと逃げ込み2階に上がるサリーでしたが、そこにはミイラ化した老夫婦の死体があるだけでした。

2階のガラスを突き破り外へ出たサリーはレザーフェイスに追われながらもガソリンスタンドに逃げ込みます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『悪魔のいけにえ』のネタバレ・結末の記載がございます。『悪魔のいけにえ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ガソリンスタンドの店員の男(コック)はサリーを保護し、近隣の町へと送り届けるためトラックを用意しますが、サリーは男の焼いている肉が人肉であることに気づきます。

ロープと麻袋を持ち現れたコックに反撃を試みるサリーでしたが、コックに箒で叩かれ気を失ってしまいます。

コックはサリーを車に乗せると民家へと向かいます。

道中、コックの家族であったヒッチハイカーを乗せ民家へ戻ると、レザーフェイスが家を壊したことを強く叱責します。

怒られ萎縮するレザーフェイスとヒッチハイカーは目を覚ましたサリーの前に2階でミイラ化していた老人を連れてくるとサリーの血を飲ませます。

実は老人はまだ生きており、そのことに恐怖を覚えたサリーは再び気を失ってしまいます。

目を覚ますと、サリーは食卓の席に縛られ、老人、コック、ヒッチハイカー、レザーフェイスは夕食をとっていました。

屠殺の名人だった老人にサリーを始末させようとするヒッチハイカーはサリーの拘束を解き押さえつけ、レザーフェイスが老人にハンマーを持たせサリーを殺害しようとします。

しかし、老人の殴打ではサリーは死なず、サリーは隙をついて窓を突き破り逃走。

サリーを追って家から出てきたヒッチハイカーでしたが、大通りに差し掛かったところで通りがかったトレイラーに轢かれて死亡します。

トレイラーの運転手は逃げるサリーを保護しようとしますが、その後ろにチェーンソーを持ったレザーフェイスが追いかけてくる姿を見るとサリーを逃し車内にあったレンチをレザーフェイスに投げつけます。

レンチにより転倒したレザーフェイスは足にチェーンソーが当たり負傷。

トレイラーの運転手はそのまま逃げ去り、サリーはその場に現れた通りがかりの車の荷台に乗せられ逃走します。

離れていくレザーフェイスを見て笑い出すサリー。

レザーフェイスは逃げていくサリーを見てその場でチェンソーを振り回しました。

映画『悪魔のいけにえ』の感想と評価


(C)MCMLXXIV BY VORTEX, INC.

40周年を記念し2014年に4Kリマスター版が収録された「40周年記念版」の販売とリマスター上映されるなど、未だ人気の衰えない名作『悪魔のいけにえ』。

1974年に公開された本作は、1978年から1984年に迎えたスラッシャー映画の「黄金時代」の引き金となっただけでなく、古臭さを一切感じさせない新鮮な恐怖感を与えてくれます。

そんな一時代を築く契機となった本作には数えきれないほどの秀逸な点が存在しますが、今回はその中から2つの要素に絞りご紹介させていただきます。

迫りくるチェーンソーの恐怖


(C)MCMLXXIV BY VORTEX, INC.

「テキサスチェーンソー大虐殺」と言う原題が意味するように、本作では人の皮を被った大男「レザーフェイス」が凶器として「チェーンソー」を利用します。

『13日の金曜日』(1980)に登場する殺人鬼「ジェイソン」と混同されやすい要素として有名な「チェーンソー」ですが、使う凶器によって全く別物の恐怖感を与えられることになります。

ジェイソンは隠密性に優れており、突如現れ鉈や槍などその場にあるもので串刺しにすると言う「静から動の恐怖」があるのに対し、レザーフェイスは「チェーンソー」のエンジンをふかした状態で延々と追いかけてきます。

常にエンジンの音が聞こえる逃走シーンは全力で追いかけてくるレザーフェイスと合わせ、ハラハラとした恐怖感が途切れることがなく、凶器を「チェーンソー」とした着眼点の良さに驚かされることになります。

独特な演出とリアリティ


(C)MCMLXXIV BY VORTEX, INC.

本作は「リアリティ」を引き立てるためさまざまな演出を行っています。

冒頭に表示される「実際の事件」であるかのようなテロップから始まり、作中では効果音以外のBGMを一切加えていません。

制作予算が少なく低画質の16mmフィルムしか利用できなかったことが、逆に「リアリティ」を引き出す演出と見事にマッチし、個人のビデオカメラで撮影されたかのような「ドキュメンタリー風」の映像になっています。

画質は落としてはあるものの、暗く見にくくすることで小道具のクオリティを下げ予算を削減する手法は使わず、レザーフェイスが人体で作ったインテリアの数々は映るだけで心を動かされるほどの強烈なクオリティとなっている作品でした。

まとめ


(C)MCMLXXIV BY VORTEX, INC.

視覚や聴覚から恐怖を煽る演出がすべてのシーンで成功している伝説的スラッシャー映画『悪魔のいけにえ』。

本作はチェーンソーでの切断シーンは映像として映されることはなく、また過度なグロテスクシーンも存在しないため、「怖い映画を観たいけど、グロテスクなシーンは苦手」と言う方にも実はオススメできる作品。

「レザーフェイス」や「ヒッチハイカー」に「コック」など殺人鬼一家も人間的かつ狂気的に描かれており、鑑賞していただくことで長年の人気の秘訣が分かること間違いなし。

もちろん本作の恐怖度はとことん高いので、「グロテスクなシーンが苦手な人」は問題ありませんが「恐怖の感受性」が高い人は覚悟を持っての鑑賞を推奨いたします。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile131では、都市伝説を題材とした大ヒットSF映画『メン・イン・ブラック』(1997)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

次回の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『Two』ネタバレあらすじ感想と結末評価。Netflix版江戸川乱歩の恐怖奇形人間かよ!?スペイン発の男女縫合サスペンス|増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!1

連載コラム『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』第1回 この世には見るべき映画が無数にある。あなたが見なければ、誰がこの映画を見るのか。そんな映画が存在するという信念に従い、独断と偏見で様々な映画を紹 …

連載コラム

『マーメイドNYMPH』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。人魚ホラーのリベンジには皆殺しジャンゴの復讐がお似合いだ|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー10

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第10回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEX …

連載コラム

『仮面ライダーW』感想と考察。登場人物や設定で石ノ森章太郎と東映作品へのリスペクト満載|邦画特撮大全62

連載コラム「邦画特撮大全」第62章 先日放送から10周年をむかえた『仮面ライダーW』(2009~2010)。仮面ライダーシリーズの中でもいまだに高い人気を誇る作品で、現在は続編である漫画『風都探偵』が …

連載コラム

映画『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』あらすじ感想と評価解説。結末は想像を絶する異世界バトルアクション爆誕|すべての映画はアクションから始まる28

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第28回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画 …

連載コラム

映画『ドラッグ・チェイサー』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ニコラスケイジが麻薬戦争に挑むクライム・アクション!|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー69

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第69回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学