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おすすめSF映画『TOKYO TELEPATH 2020』感想評価と考察解説。東京オリンピックを控えた”今”を映し出す|SF恐怖映画という名の観覧車120

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile120

2018年10月6日に世界最大の魚市場であった築地市場が幕を降ろし、市場は豊洲へと移転。

古い町並みを長年残し続ける地方とは異なり、世界の都市部はその様相を時代によって目まぐるしく変化させています。

中でも日本の首都東京は世界の都市から見ても変化のスピードが早く、数年経てば全く違う景色になると言っても過言ではありません。

今回は東京の「今」を切り取った、映像作家の遠藤麻衣子による最新映画『TOKYO TELEPATH 2020』を紹介させていただきます。

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映画『TOKYO TELEPATH 2020』の作品情報


(C)A FOOL, the cup of tea

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
遠藤麻衣子

【キャスト】
夏子、琉花

『TOKYO TELEPATH 2020』のあらすじ


(C)A FOOL, the cup of tea

2018年、2年後に開催される東京オリンピック・パラリンピックを控え、首都東京にやってきた少女(夏子)。

彼女には崩壊しかけた東京の「結界」を正す任務が与えられていて…。

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遠藤麻衣子から見た「東京」


(C)A FOOL, the cup of tea

フィンランドで生まれ、東京で育ち、ニューヨークでバイオリニストとして活躍し、2011年に監督としてデビューしたと言う異色の経歴を持つ映像作家の遠藤麻衣子。

最新映画『TOKYO TELEPATH 2020』では、東京の「過去」も「現在」も見て生きてきた遠藤麻衣子監督だからこそ描くことの出来る東京の「今」が映し出されています。

約1400万人もの人口を抱える東京都、その人口密度は1キロ平方メートル辺り6000人を越える計算となります。

しかし、過密とも言える人間の多さに反比例するように「都市部の人間は他人に興味がない」と言うイメージも存在します。

本作では従来のイメージとは違う「人間味の強い東京」をそこに生きる人間たちと共に映し出しており、独特な映像と合わせ「非凡な東京」を味わうことが出来る作品です。

「東京」と「テレパシー」


(C)A FOOL, the cup of tea

人口過密地域であるにも関わらず、他者との関係が疎遠になりがちな「東京」。

一方で、本作のメインでもある「テレパシー」は電話やメールよりも直接的に他者と連絡を取ることの出来る、究極のコミュニケーション手段と言えます。

相反する特性を持った2つの要素は、東京と言う街や現代のいびつさを暗喩しながら、距離を苦にしない現代社会の希望も描写していました。

「東京」と「結界」

「結界」と聞くとスピリチュアルな存在であり、興味の無い方には縁遠い話しに聞こえてしまうかもしれません。

しかし、京都の街並みが風水によって「結界」を張るように設計されていることが有名であるように、皆さんの身近にも風水の概念を取り入れた「結界」は存在します。

現在の首都東京も実は徳川家康により、皇居を守るように設計されたと言われています。

数百年の月日が流れ、街並みも大きく変わった現代ですが、現在も新たな「結界」が作り出されています。

東京の中心を取り囲むように敷かれたJR山手線とその中心を通るJR中央本線、「太極図」にも見えるとされるこの「結界」は日本を支える労働者を運ぶだけでなく、日夜人々の暮らしを守っているのかもしれません。

レンズ越しに透明度を増す女優


(C)A FOOL, the cup of tea

オリンピックを守る任務を帯びた少女と、未来のテクノロジー「FUSION」によって目覚めたテレパシーの能力を使い彼女に連絡を取る少女。

主要人物となる2人の少女はそれぞれモデルとして活躍する夏子と琉花によって演じられました。

22時台の放送ドラマでありながら最高視聴率19.6%を記録した連続ドラマ「私の家政夫ナギサさん」に居酒屋「万薬の長」の店員である吉川かりん役としてレギュラー出演するなど、俳優としても大注目の夏子。

彼女の持つ「透明度」はレンズ越しに映されることによってさらに高まり、吹けば消えてしまいそうな存在を「東京」の街並みが引き留めていると言う錯覚すら覚えるほど。

一方、サンバイザーのような被り物をした姿が印象的なテレパシー能力を使う少女を演じた琉花はモデルとして活躍するだけでなく、映画『GONINサーガ』(2015)で土屋アンナ演じる麻美の幼少期役として出演したり、LiSAやDAOKOと言った大ヒットアーティストのミュージックビデオへの出演など活躍の場を広げています。

本作から感じることの出来る「独特さ」の大部分を彼女の雰囲気が担っており、異能力を持つ少女の非凡さを存在だけで体現していました。

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まとめ


(C)A FOOL, the cup of tea

東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウイルスの影響によって開催を2021年に延期。

本作における少女たちの「結界」を守る戦いは残念ながら失敗に終わってしまったのかもしれません。

しかし、きたる2021年のための新たな戦いは既に始まっており、また「2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催する予定だった東京」を切り取った映画として、その価値はさらに高まったとさえ言えます。

遠藤麻衣子監督による『TOKYO TELEPATH 2020』は2020年10月10日(土)から10月30日(金)まで、東京都渋谷区のシアター・イメージフォーラムにて連日21時より限定上映。期間中には、遠藤監督の過去作『KUICHISAN』(2011年)、『TECHNOLOGY』(2016)も上映されます。

斬新すぎる物語と映像、そしていつも見る「東京」の別の側面を「SF」的に描いた本作をぜひ劇場でご覧になってください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile121では、映像配信サービス「Netflix」にて独占配信されているホラーコメディ映画『ザ・ベビーシッター』(2017)をネタバレあらすじを含めてその魅力をご紹介させていただきます。

9月23日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら


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