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Entry 2020/04/29
Update

NETFLIX『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』ネタバレ感想と考察。キャラの魅力を引き出したアニメシリーズとは|SF恐怖映画という名の観覧車100

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile100

遂に当コラムも今回で100回目を迎えます。

新型コロナウイルスという新たなる人類に対する脅威の発生が映画やドラマ、アニメ界に大打撃を与える中、「映像配信サービス」が真価を発揮しています。

今回は未来の世界を描いた大人気SFアニメシリーズの最新シリーズであり、NETFLIX独占配信となった『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』ネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

アニメ『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』の作品情報


(C) 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

【日本公開】
2020年(NETFLIX独占配信映画)

【監督】
神山健治、荒牧伸志

【キャスト】
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、阪脩、喜山茂雄、曽世海司、玉川砂記子

【作品概要】
2002年に放映され大人気となったアニメシリーズ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を手掛けた神山健治が、シリーズのオリジナルキャストを終結させた完全新作アニメ。

新たに『APPLESEED』(2004)など、士郎正宗原作の3DCGアニメを手掛けた荒牧伸志が監督として参加しました。

アニメ『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』のあらすじとネタバレ

(C) 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

2045年、戦争特需を生むため大国が始めた利益のためのサスティナブルウォー(持続可能な戦争)は、全世界同時デフォルトを引き起こし戦争従事者以外の人間は莫大な損害を被り、暴動や略奪、内乱が絶えずサスティナブルウォーは文字通り長く続くことになります。

バトー、イシカワ、サイトーに新たなメンバーであるスタンダード(以下スタン)を加えた草薙素子率いる傭兵集団「GHOST」は、レイド(略奪行為)を行う武装集団の拘束依頼を受け紛争と内乱の絶えない米国に集結していました。

一方、公安9課の解体後、「GHOST」へ参加しなかったことで日本の警備会社に勤めることになったトグサは、治安の悪くなった日本で腑に落ちない想いを抱え生きていました。

ある事件の犯人を拘束した日、内務省に勤める元公安9課のリーダー荒巻からの連絡を受けたトグサは、数年ぶりに荒巻と会うことを決めます。

内務省を訪れたトグサは荒巻より、帝都総理が公安9課を再始動させようとしていることを知ります。

妻と離婚したことで危険な任務への参加を躊躇わなくなったトグサは再始動の話を快諾し、草薙素子を含むオリジナルメンバーの収集を荒巻に命じられます。

武装集団との交戦中、素人丸出しの武装集団の武装が豪華なことに違和感を覚えた草薙は、内通者から「親切な金持ち」と呼ばれるパトロンが武装集団に大量の武器を提供したと聞きます。

激戦の末、武装集団の使う最新鋭の戦闘ドローンを停止に追い込み武装集団を拘束することに成功した草薙たちでしたが、ドローンは搭載していたミサイルを裕福層の住む民家へと発射しており、それを待っていたかのようなタイミングで現れた米国の特殊部隊に投降を指示されます。

ジョン・スミスと名乗る男の指示に従い草薙たちは自立型AI戦車タチコマを付近に隠し投降しました。

草薙たちを探すトグサはダークウェブに侵入し傭兵部隊「GHOST」の情報を集め、彼女たちがロサンゼルスを拠点としたPMC(民間軍事会社)である「オブシディアン」に所属していることを知ります。

オブシディアンはPMCの中でも信頼度の高い企業であり、所属している傭兵への攻撃を躊躇う兵士もいるほどでした。

荒巻にそのことを報告し実際にオブシディアンを訪ねるべくロサンゼルスへ向かったトグサは、オブシディアンの社長から「GHOST」のメンバーが行方不明となったことを聞きます。

ロサンゼルスの街を見て回るトグサは、戦闘があったとされる場所が綺麗に後片付けをされていたことから「GHOST」を拉致した人間たちは想像以上に大きな存在であると確信し、戦闘現場で草薙たちが残していったタチコマと再会。

草薙たちが拉致される現場の映像を確認し、どの組織の所属員とも顔の一致しないジョン・スミスの存在を知ります。

敵の正体を知るため覚悟を決めたトグサはタチコマに自身の位置情報をリンクさせた上で、インターネット上にジョン・スミスの動画をアップロードするように命じます。

アップロードされたジョン・スミスの映像は恐るべき速度で削除され、トグサは何者かの追跡を受け始めます。

追手のエージェント2人を倒したトグサは現れたスミスから情報を聞き出します。

彼らがNSA(アメリカ国家安全保障局)の人間であることや、「GHOST」のメンバーが極秘の任務中であることをスミスから聞かされたトグサがスミスからこの件から手を引くようにと念を押されます。

荒巻にスミスから聞いた情報を共有すると荒巻は直ちに共に働いた経験があるNSAのエイダと連絡を取り、草薙たちの解放を求めますが強力な権限を持つエイダですらこの任務に手出しをすることが出来ず、恐らく上層部はこの任務の終了後に任務と草薙たちごと消すはずだと荒巻に伝えます。

この任務の中止を命じることが出来るのが大統領のみであると理解した荒巻は帝都総理と会談し大統領へ直訴するように懇願。

草薙素子の重要性を理解した帝都総理は承諾し、荒巻は大統領からの委任状を持ちアメリカへと向かいます。

そのころ、草薙たちはスミスの命じた救出作戦を実行に移し始めていました。

救出対象とは名ばかりでこの作戦は戦闘ドローンによりミサイルが撃ち込まれた邸宅に住むパトリック・ヒュージと言う兵器開発会社のCEOの拉致任務であり、ヒュージは武装集団に最新鋭の兵器を渡していた「親切な金持ち」であると疑われる人物でした。

ヒュージを生け捕りにし、自身たちの命の担保としようとする草薙たちは念のためタチコマに自身の位置情報のみを共有します。

タチコマから草薙の位置情報を取得したと聞いたトグサはタチコマに乗り込みすぐに草薙たちのもとへと出発。

イシカワの解析によりヒュージは自身の会社の資産を売却するために、武装集団を使いミサイルを撃ち込ませ死を偽装しようとしていたことが分かります。

草薙たちに捕捉され投降を促されたヒュージは従わずに反抗を試みます。

銃の弾が発射される前にその軌道を読み避けているような動きをするヒュージは近接戦闘を得意とする草薙とバトーですら捕らえることが出来ず、さらに自身の部屋に隠していた戦闘用アームドスーツにより草薙たちは窮地に陥ります。

しかし、駆け付けたタチコマとトグサによりヒュージは動きを封じられます。

その隙に草薙は電脳へと侵入しヒュージを完全に掌握しようとしますが、侵入中に異常を感じ即座にイシカワにヒュージを射殺させました。

ヒュージの射殺を確認し駆け付けたスミスは任務を失敗とし草薙たちを始末しようとしますが、現場に現れた荒巻が大統領の委任状をスミスに見せると始末を中止。

荒巻の奮闘によって公安9課として、大統領の要請のもとに任務へと参加できることになった草薙たち。

草薙は公安9課のオリジナルメンバーではないスタンに疑似記憶を植え付けた上で別れを告げると、スタンはその場を去っていきました。

公安9課のメンバーはこの場に至り、初めてスミスから今回の任務の裏側の話を聞くことになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』のネタバレ・結末の記載がございます。『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スミスは、パトリック・ヒュージはスーパーコンピューターでも太刀打ちのできない超高性能の処理速度を持った謎の生命体の1人であり、アメリカはその正体を知り対策を立てるべく彼を捕獲しようとしていたのだと話し始めます。

アメリカが唯一捕獲に成功しているのはゲイリー・ハーツと言う元海軍の軍人であり、もともとは良心的な心を持った仲間想いの軍人であったのにも関わらず、高熱を1週間出してから数日後突如妻を殺害し、核ミサイルの発射施設を襲ったとされています。

核ミサイル発射施設では多数の兵士を同時に電脳ハックし、銃弾の軌道を先読みし避ける動作で数多くの兵士を殺害。

核ミサイル発射一歩手前と言う段階で、跳弾による弾に当たり大脳を損傷したことで確保に成功したとのことでした。

超高性能の処理速度を持った人間たちをアメリカ政府は「ポスト・ヒューマン」と呼び、彼らの行動原理は揃って既存体制の転覆にあると確信していました。

大国の始めたサスティナブルウォーは「コントロール可能である」と言うことを絶対条件としており、戦争従事者以外に影響を及ぼさないよう行われていました。

しかし、「ポスト・ヒューマン」の存在が民間の武装集団や内乱を煽ったことによって、世界同時デフォルトが起きると言う「コントロール不能」な状態へと傾いてしまったと語るスミス。

大脳を負傷したことで意思の疎通すらできないゲイリー・ハーツはコードのようなものを定期的に送信し意思の疎通を図ろうとしているようでした。

隔離施設の職員はそのコードを解析するためにファイルに格納していましたが、実はそのコードはゲイリーによるウイルスプログラムであり、起動条件が整ったことによって施設はゲイリーの手に落ちます。

施設内の人型警備ドローンが暴走を始め、施設職員たちを襲い始めます。

状況に興味を持った1体のタチコマがネットワークにアクセスしたことによって意識を乗っ取られそうになりますが、線を他のタチコマが引き離したことによって難を逃れました。

大量のドローンを捌く公安9課のメンバーでしたが、押し寄せるドローンを止めるためスミスの了承のもと、バトーはゲイリーを殺害。

ゲイリーの死によってドローンは停止しましたが、同時に草薙はこの任務の難しさを悟りました。

パズやボーマなど、オリジナルメンバーの公安9課が日本の首相官邸に集まります。

草薙は帝都総理に対し公安9課としてもう一度再編するためには相応の予算が必要であると話します。

しかし、その話にアメリカから派遣されたスミスが割り込み、「ポスト・ヒューマン」はアメリカの主導で全人類が取り組むべき共通の敵であると語ります。

ゲイリーの例から見る「ポスト・ヒューマン」への覚醒過程の例から、既にアメリカではパシフィックリムにおいて14人のポストヒューマンの存在を確認しており、そのうちの3人が日本にいるとスミスは語ります。

スミスは草薙たちにその3人の捕獲を命じますが、アメリカの独善的な態度と自分たちの参加意義の方向性からノリ気になれず、2日後にメンバーの自由意志で集まると言うことになりました。

公安には新たな整備士プリンが加わっておりバトーはタチコマの扱いに長けた彼女を信頼。

一方、トグサは草薙と共に行動することを望んでおり草薙に任務への参加の可否を聞きます。

自由意志を尊重したい草薙でしたがトグサの強い意志から、総理官邸を盗聴していた相手の特定をトグサの合否のテストとすることにします。

官邸内のスパイドローンを発見したトグサは敢えて自身のもとに置くことで盗聴していた男たちを誘き出すことに成功します。

さらにその男たちに擬似記憶を噛ませることに成功し、彼らの所属が日本からアメリカの立場を優位に保持したい日米安保条約の対策班であることが分かり、トグサは同時にスミスの自身に対する記憶の削除にも成功します。

トグサはアメリカの支持の下ではなくあくまで日本所属の組織として、日本のためにまた暴れる公安9課が見たいとアプローチするのでした。

参加する意思のあるもののみが首相官邸に集まる日、トグサの熱意と行動に惹かれたオリジナルメンバーは全員首相官邸に集まり、新生公安9課が始動。

もとプロボクサーでありポスト・ヒューマン疑惑のある矢口が白昼に在留管理局の事務次官である田所を殺害する事件が発生します。

頭部の撲殺による即死と言う死因とプリンが警視庁から盗み出したデータをもとに矢口はこれまでに90件を超える殺人をしている可能性が浮上。

その全員がサスティナブルウォーの余波として廃れた東京を復興させると言う名目で秘密裏に日本に来た移民でありながら不正に生活保護を受給していた不法移民であることが分かり、矢口は東京復興を名目に不正を行っている人間を殺害しているのでは、と草薙は考え始めます。

帝都総理の義父である大友の企業が東京復興の仕事を天下りを条件に引き受けていると知った公安9課は次の標的が大友である危険性を察知し護衛に向かいますが、一足遅く矢口は大友を殺害。

これを受け意を決した帝都総理は東京復興委員会の責任者に就任するニュースを流すことで、矢口に自身を狙われせます。

矢口が帝都総理の前に現れ、帝都総理に行動の目的を聞くと帝都は日本を立て直すために命をかけると熱弁。

矢口の動きが止まったところに草薙とバトーが駆けつけ矢口を捕獲すると、スミスが矢口を連行するのでした。

空港内で300万人のハッカーによるクラッキングを受け電脳を焼かれた男の事件が発生。

事件の捜査を行うと「シンクポル」と言う不特定多数の人間による投票で他者を裁くシステムによる殺人であることがわかり、そのシステムを運用していた高校生から草薙は事情を聞きます。

その少年は製作者ではなく、あくまでも製作されていたプログラムを世にはなっただけの存在であり、ピープホールを活動停止に追い込むことは可能だったものの、シンクポルの製作者であるとされる第2のポスト・ヒューマンの手口は脅威といえるものでした。

第2のポストヒューマン、シマムラは中学生でありポストヒューマンとして覚醒後、学内で性的暴力を振るっていた教師をシンクポルで殺害後行方不明となっていました。

ジョージ・オーウェルの小説「1984」を読み込んでいたとされるシマムラが覚醒後に残したとされるコードを1人で解析しようとしたトグサはそのコードの引き起こす作用により一時昏倒してしまいます。

しかし、トグサの調べでシマムラが幼少期に京都の片田舎に預けられていたことがわかり、トグサとバトーはその村を捜査することにします。

既に廃村となり何の証拠も残っていませんでしたが、何故かトグサだけが過去の映像を見ることができ、かつてその村でシマムラが体験した壮絶な過去を追体験することになります。

不利益な人間を射殺し山に埋めていた警察官たちに従姉妹を殺され、その場を「1984」を暮れた元空挺部隊の男に助けられたシマムラの過去。

しかし、その追体験はいつしか現在のものとなり、トグサは元空挺部隊の男とトラックに乗り込む今の姿のシマムラに「一緒に乗りますか」と声をかけられます。

何も見えず、トグサが何をやっているかもわからないバトーはトグサを呆れた様子で見ていました。

しかし、ほんの一瞬目を離した隙に、トグサは目の前から消えているのでした。

アニメ『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』の感想と評価

(C) 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

本作は数ある「攻殻機動隊」を原作としたアニメ作品の中でも、2002年に放映された「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(以下SAC)」シリーズの正統続編という形になっています。

ですが、本作は「SAC」特有の設定は殆ど登場しないため、原作を含む「攻殻機動隊」作品を1つでも鑑賞したことがある人は物語に入りやすい作品でした。

大国が始めた戦争特需を得続けるためのサスティナブルウォー(持続可能な戦争)が続く2045年を舞台に起こる、新たなるテロとの戦いを描いた『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』。

「攻殻機動隊」のメインとなる公安9課のメンバーはリーダーの草薙素子を始め、軍人や傭兵などの戦闘のエキスパートが殆どです。

しかし、そんなあらゆる分野のエキスパートたちが揃う中で元刑事であり子供もいる異質なメンバーのトグサと言う人気キャラは、戦闘も電脳戦(サイバー攻撃や防御を行うハッキングのようなもの)もプロ中のプロには一歩及ばないと言う登場人物であり、人気の高いキャラでありながらも作品として非常に扱いにくいキャラといえます。

本作はそんなトグサが「なぜ重宝されるのか」を精神面や能力面において充分に描いており、「攻殻機動隊」のアニメ作品の中で彼の魅力が一番に描かれているとすら感じるほどでした。

まとめ

ジョージ・オーウェルの小説『1984』をベースに描かれた『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』。

物語はまだ未完であり、結末はシーズン2へと続く……という終わり方をする本作ですが、終盤の展開はシリーズ最新作としての期待に答える出来でありシーズン2が今から楽しみで仕方なくなる作品でした。

NETFLIX独占配信となる『攻殻機動隊SAC_2045 シーズン1』をこのゴールデンウィークに一気見してみてはいかがでしょうか。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile101では、地球に襲い来る怪獣を食べるという異色の特撮映画『三大怪獣グルメ』(2020)の魅力をご紹介させていただきます。

5月6日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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