Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/10/28
Update

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』感想評価。坂本龍一や松任谷由実、矢野顕子などが愛したスタジオとは⁈|映画という星空を知るひとよ34

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第34回

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』は、「シティ・ポップ」の総本山として近年再注目を集める東京・銀座のレコーディングスタジオ・音響ハウスにスポットを当てたドキュメンタリーです。

1974年に設立された音響ハウスはこれまでに数々の名曲を生み出し、昨年創立45周年を迎えました。

坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など、日本を代表するアーティストたちも音響ハウスをこよなく愛し、その関わりをアツく語ります。

なぜ、音響ハウスが長きにわたってアーティストたちに愛されて来たのでしょう。名曲を生むレコーディングスタジオの秘密に迫ります。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』は、2020年11月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』の作品情報


(c)2019 株式会社 音響ハウス

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
相原裕美

【撮影】
北島元朗

【出演】
佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子、吉江一男、渡辺秀文、沖祐市、川上つよし、佐野元春、David・Lee・Roth、綾戸智恵、下河辺晴三、松任谷正隆、松任谷由実、山崎聖次、葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、西村浩二、山本拓夫、牧村憲一、田中信一、オノセイゲン、鈴木慶一、大貫妙子、HANA、笹路正徳、遠藤誠、河野恵実、須田淳也、尾崎紀身、石井亘〈登場順〉

【主題歌】
Melody-Go-Round / HANA with 銀音堂
作詞:大貫妙子 作曲:佐橋佳幸
編曲:佐橋佳幸、飯尾芳史 プラス編曲:村田陽一

【作品概要】
東京・銀座のレコーディングスタジオ・音響ハウスは、昨年創立45周年を迎えました。本作では、坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など、日本を代表するアーティストたちがこのレコーディングスタジオ・音響ハウスへのこよなく愛する想いを語ります。

レコーディングエンジニア出身の相原裕美が本作の企画・監督を務め、長い歴史を持つスタジオだからこそ起こせたマジックと奇跡も披露。相原裕美監督は、写真家の鋤田正義の偉業を追ったドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』(2018)を手掛けています。


映画『音響ハウス Melody-Go-Round』のあらすじ


(c)2019 株式会社 音響ハウス

上映開始とともに、スクリーンにはレコーディングスタジオが映し出されます。

1974年東京・銀座に設立された音響ハウス。国内外の著名ミュージシャンたちに愛され、数々の名曲・名盤を生み出しながら、昨年創立45周年を迎えたといいます。

映画では、YMO時代からこのスタジオで試行錯誤を繰り返してきた坂本龍一をはじめ、松任谷由実、松任谷正隆、佐野元春、綾戸智恵、矢野顕子、鈴木慶一、デイビッド・リー・ロスら多彩な顔触れがスタジオへの思い入れと思い出を語りました。

さらに当時のプロデューサーやエンジニアにもカメラが向けられ、近年再び国内外で人気を集めるシティ・ポップがどのように形作られたのかにも迫ります。

なかでも、制作秘話とともに紹介される忌野清志郎と坂本龍一がコラボした「い・け・な・いルージュマジック」は必聴。

また、ギタリストの佐橋佳幸とレコーディングエンジニアの飯尾芳史が発起人となり、大貫妙子、バイオリニスト・葉加瀬太郎、井上鑑、高橋幸宏らゆかりのミュージシャンによるコラボ新曲「Melody-Go-Round」のレコーディングにも密着しました。

若干13歳の期待の女性シンガー・HANAが楽曲に歌声を吹き込む様子もつぶさに映し出されます。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』感想と評価

(c)2019 株式会社 音響ハウス

昭和を彩る「シティ・ポップ」。その筆頭ともいえるミュージシャンの矢野顕子や佐野元春、松任谷由実、坂本龍一などが生出演で、レコーディングスタジオの音響ハウスについて自分の思い出を語ります。

45年の歴史を持つ音響ハウスから生まれたヒット曲の数々は、作る人も歌う人も聞く人も、心から楽しめる名曲ばかり。

チラリとサビの部分だけ紹介される曲は、題名はわからなくても、どこかで聴いたことがあるとか、聴いていてなんだか懐かしい気持ちになるというものがほとんど。知らず知らずのうちに、その曲が流行った当時の思い出に浸れました。

このような、音楽界を一世風靡したアーティストたちの生誕の地ともいえる音響ハウスでのレコーディングの様子や、彼らの思い出を収録しているのが、映画『音響ハウス Melody-Go-Round』なのです。

企画・監督は、レコーディングエンジニア出身の相原裕美。写真家の鋤田正義氏の偉業を追ったドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』(2018)を手掛けた監督です。

相原監督は、その経歴も生かし、ミュージシャンだけではなく、スタジオを維持する機材修理のベテランスタッフにも目を向けて、映画を製作しました。

『音響ハウス Melody-Go-Round』の舞台となっているのは、言わずと知れたレコーディングスタジオです。

映画が始まってすぐにその内部の様子が映し出されます。レコーディングの機材に埋め尽くされたスタジオは圧巻の光景。

そこは、バンド編成のレコーディングに適している2スタジオをはじめ、8型ストリングス同録ができる1スタジオや、5.1chサラウンドミックス対応の3スタジオ、Mix-Down用6スタジオなど、多彩な構成です。

加えて、全てのスタジオに共通するコンデションの良さや、「原音を忠実に録音できる環境を常に提供する」ことを念頭に置いた徹底したメンテナンス。

また、最新のレコーディング機材をいち早く導入し、日本のレコーディング技術の発展に貢献してきた実績もあるのが、音響ハウスなのです。

音響ハウスについて聞かれると、アーティストたちは口を揃えて、「音響ハウスに住んでいる」とか「気持ちの良い音楽を作れるのは、ここよ、ここ、ここ」と、その居心地の良さを絶賛します。

まるで本当に癒される我が家のように、音響ハウスがアーティストたちから愛されているのがよくわかりました。

本作は、アーティストばかりでなく、レコーディングスタッフが音楽を生み出すことに喜びを感じている様子が、次々と途切れることなく映し出され、音楽とスタジオへの愛が伝わって来る作品となっています。

まとめ

(c)2019 株式会社 音響ハウス

1974年12月に東京・銀座に設立され、昨年創立45年を迎えたレコーディングスタジオの音響ハウス。

本作で音響ハウスとの出会いや思い入れ、楽曲の誕生秘話を語るのは、YMO時代からこのスタジオで試行錯誤を繰り返してきた坂本龍一をはじめとする、松任谷由実、松任谷正隆、佐野元春、綾戸智恵、矢野顕子、鈴木慶一、デイヴィッド・リー・ロス(ヴァン・ヘイレン)ら多彩な顔触れです。

ミュージシャンとレコーディグスタジオは密接な関係にあるということが一目瞭然の内容でした。

レコーディングスタジオこそ、のちに語り継がれる名曲や名盤を生み出す誕生の場。

そこにあるのは、音楽を通した人と人とのコミュニケーションがあり、もの作りの醍醐味で、充実した達成感と喜びの中、数多くの名曲が誕生したといえます。

今後もこの音響ハウスから、次世代へ歌い継がれる名曲が誕生していくのに違いありません。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』は、2020年11月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『テッドバンディ』ネタバレ感想と評価考察。ザックエフロン演じる実際の殺人鬼が観客を騙し魅了する|サスペンスの神様の鼓動26

連載コラム「サスペンスの神様の鼓動」第26回 こんにちは、映画ライターの金田まこちゃです。このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 前回『KIL …

連載コラム

【ネタバレ】イコライザー3THE FINAL|あらすじ感想と評価考察。“腕時計”外したマッコールが辿り着く最凶で最狂の“最後の仕事”【すべての映画はアクションから始まる40】

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第40回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画は …

連載コラム

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』 アッセンブルの歴史を詳細に解説|最強アメコミ番付評34

連載コラム「最強アメコミ番付評」第34回戦 こんにちは、野洲川亮です。 今回は全世界で特大ヒットを記録し、世界累計興行収入歴代1位の『アバター』超え間近に迫った『アベンジャーズ/エンドゲーム』、日本で …

連載コラム

映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』ネタバレあらすじと感想。タイトルの意味を解説|未体験ゾーンの映画たち2020見破録44

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第44回 「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第44回で紹介するのは、異色のハンティング映画『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』。 …

連載コラム

『ミッチェル家とマシンの反乱』あらすじ感想と評価解説。感動アニメとしてロボットの反乱に立ち向かう‟家族の絆”を描く|Netflix映画おすすめ86

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第86回 映画『ミッチェル家とマシンの反乱』は『スパイダーマン スパイダーバース』の製作陣が手がけた長編アニメーション作品です。 スマホのシ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学