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Entry 2019/02/22
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『キャプテンマーベル』映画解説。MCU初の女性ヒーロー主演はアベンジャーズへ繋がる物語|最強アメコミ番付評26

  • Writer :
  • 野洲川亮

連載コラム「最強アメコミ番付評」第26回戦

こんにちは、野洲川亮です。

今回は3月15日公開となるMCUシリーズ第21作、『キャプテン・マーベル』の作品情報を公開前に解説していきます。

MCU初の女性ヒーロー主演作、そこで描かれるアベンジャーズ誕生前の物語とはいかなるものか、キャスト、スタッフ情報と共に紹介していきます。

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『キャプテン・マーベル』のあらすじ

(C)Marvel Studios 2019

物語の舞台はアベンジャーズ誕生前、1990年代。

突如、レンタルビデオショップに墜落してきた女性、彼女の名前はキャロル・ダンバース(ブリー・ラーソン)。

彼女はエイリアンのクリー人、そして元地球人のアメリカ空軍パイロットでもあり、墜落した時点で過去の記憶を失っていました。

そんなキャロルの記憶を狙う敵が現れ、いつしか彼女はクリー人とスクラル人の間で起こる戦争に巻き込まれていきます。

戦争を止めるため、後のS.H.I.E.L.D.長官、若き日のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と出会ったキャロルは、時おり起こるフラッシュバックに戸惑いながらも、自らの記憶に秘密に迫っていきます。

MCU初の女性ヒーロー単独主演作

(C)Marvel Studios 2019

本作はMCUシリーズで『アントマン&ワスプ』(2018)に次ぐ第21作にして、シリーズ初の“女性ヒーロー単独主演作品”です。

これまでもMCUシリーズには多数の女性ヒーローが登場してきており、ブラック・ウィドウ、スカーレット・ウィッチ、ガモーラ、シュリ、オコエと、それぞれが主役級の存在感を放ってきましたが、“シリーズ11年目”にして、ようやく初の女性ヒーロー単独主演作が製作されました。

今後も、既に製作が決定しているブラック・ウィドウの過去を描く単独映画、ヴィジョンとスカーレット・ウィッチのダブル主演ドラマ、『ヴィジョン&スカーレット・ウィッチ』など、女性ヒーローがメインとなる作品が、その数を増やしていくことは間違いありません。

そして、この一連の流れを後押しした背景には、ライバルシリーズのDCEUが放った初の女性ヒーロー単独主演作品、全世界で大ヒットを記録した『ワンダーウーマン』(2017)の存在も大きかったことでしょう。

本作の主人公、キャプテン・マーベルを演じるのは、『ルーム』(2015)で主演女優賞を獲得したブリー・ラーソン。

アメコミヒーローを一線級の俳優が演じるようになって久しいですが、まだ29歳にして独自の存在感を身に付けている最中のラーソンが、どのように最強女性ヒーローを表現してくるか、楽しみなところです。

また本作は1990年代が舞台で、MCUシリーズの流れでは過去を描いています。

シリーズ通してのファンとしては『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のヴィランであるロナンが、クリー人の一員として登場する展開は、その後のロナンを知っているだけに、その過去とバックボーンがどのように描かれるかも注目でしょう。

そして本作は、MCUシリーズの次回作、2019年4月26日公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』へと繋がっていきます。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で“半滅”してしまった全宇宙の生命とアベンジャーズ、そのラストで消滅する寸前にニック・フューリーはポケベルを起動させます。

そのポケベルの画面に映しだされたのは、キャプテン・マーベルのロゴでした。

フューリーに招集されたキャプテン・マーベルが、どのような形でストーリーに絡んでいくのか?MCUシリーズの一つの集大成となる作品の出来栄えと共に注目ポイントなります。

DCヒーロー・シャザムとの、マーベルの名を巡るややこしい関係

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

『キャプテン・マーベル』のコミックは1940年に出版されましたが、実はこの作品を発表したのはマーベルコミックではなく、フォーセットコミックスでした。

主人公の少年ビリーが、ある時出会った魔術師によって、大人のスーパーヒーローへと変身する能力を得る、というあらすじは本作『キャプテン・マーベル』とは全く違います。

それもそのはず、このフォーセットコミックスが刊行した作品は、2019年4月19日に公開される『シャザム!』の原作にあたるものなのです。

このフォーセットコミックス版『キャプテン・マーベル』は、スーパーマンの盗作としてDCコミックスから訴訟を起こされてしまい、廃刊に追い込まれてしまいます。

その後、1970年代になりDCコミックスが作品の版権を持ちますが、その時にはマーベルコミックが“マーベル”を商標登録しており元のタイトルが使用できず、さらにマーベルから『キャプテン・マーベル』も出版されていたことから、主人公の能力にちなんだ(6人の神々に由来する能力で、その頭文字が「S.H.A.Z.A.M」)『シャザム』に改題することとなりました。

こうして、世にもややこしいキャプテン・マーベルとシャザムの関係が出来上がりましたが、キャラクターやストーリー上の類似性はほとんどありませんので、「昔、同じ名前だったヒーロー」とだけ覚えておけば充分です。

もう少しややこしい話をすると、キャプテン・マーベルは初期原作では「マー・ベル」という名前で、クリー人の男性ヒーローでした。

マー・ベルと共に爆発に巻き込まれた地球人の女性キャロル・ダンバースが、その爆発を機に超能力を得て、「ミズ・マーベル」を名乗りスーパーヒーローとして活躍し始めます。

2012年に出版されたコミックから、キャロル・ダンバースは「キャプテン・マーベル」を名乗ることになりましたが、このわずか7年後に映画化されたことを考えると、MCUシリーズの目玉になる女性ヒーローをマーベルが求めていたのでは?とも感じさせます。

次回の「最強アメコミ番付評」は…

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

いかがでしたか。

次回の第27回戦は、『スパイダーマン: スパイダーバース』の製作を手掛けたフィル・ロード&クリス・ミラーの監督作、「バットマン映画史上最高傑作」とも呼ばれた『レゴバットマン ザ・ムービー』を考察していきます。

お楽しみに!

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