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『ケナは韓国が嫌いで』あらすじ感想と評価レビュー。コ・アソンが小説を基にした映画で人生を模索して外国へ行く主人公を好演|映画という星空を知るひとよ247

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第247回

映画『ケナは韓国が嫌いで』は、現代の韓国社会を舞台に、生まれ育った場所で生きづらさを感じる女性が人生を模索する姿を描いた作品です。

映画『ケナは韓国が嫌いで』は、2025年3⽉7⽇(⾦)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開!

小説『82年生まれ、キム・ジヨン』に続くベストセラーとなった小説『韓国が嫌いで』(チャン・ガンミョン著)を原作に、チャン・ゴンジェ監督が手がけました。

生まれた国・韓国では自分の理想とする生き方は出来ないと思った主人公・ケナ。自分の幸せを求めて、韓国を抜け出すことを決めます。向かった先は、ニュージーランド! そこでケナは、新しい人生を歩み出すのですが……。

『ケナは韓国が嫌いで』の映画公開に先駆けて、本作をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ケナは韓国が嫌いで』の作品情報


(C)2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2025年(韓国映画)

【原作】
『韓国が嫌いで』(チャン・ガンミョン著)

【原題】
한국이 싫어서

【監督・脚本】
チャン・ゴンジェ

【キャスト】
コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョン

【作品情報】
本作は、小説『82年生まれ、キム・ジヨン』と同じ出版社から2015年に刊行され、ベストセラーとなった小説『韓国が嫌いで』(チャン・ガンミョン著)を原作に、韓国の若者が直面する現実を映し出しています。

「第2のホン・サンス」や「韓国の是枝裕和」と称される、チャン・ゴンジェ監督が本作を手がけました。

ケナを演じるのは、ポン・ジュノ監督『グエムル-漢江の怪物-』(2006)に中学生の娘役で出演し、天才子役として鮮烈な印象を残したコ・アソン。

ケナのかけがえのない友人となるジェインは、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で新人弁護士として奮闘するクォン・ミヌ役を務め、一気に知名度を上げたチュ・ジョンヒョクが演じています。

映画『ケナは韓国が嫌いで』のあらすじ


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ソウル郊外で両親と妹と共に暮らす28歳のケナ(コ・アソン)。大学を卒業後、金融会社に就職し、片道2時間かけて通勤しています。

仕事には面白みも遣り甲斐も感じられず、ただ通勤して疲れて帰る日々にケナは嫌気がさしていました。

学生時代からの恋人ジミョン(キム・ウギョム)にその気持ちをぶつけますが、ジミョンは「自分が就職したら支える」と言います。ピントのずれた考えを持つジミョンに、ケナは苛立ちを隠せません。

けれども、ケナの母は、裕福な家庭で育ったジミョンとの結婚を待ち望んでいました。

また、ケナが家族と暮らす小さな団地は老朽化が進み、再開発が予定されていますが、母は転居先の家の購入費用もケナに頼ろうとしていました。

ソウルの寒すぎる冬、地獄のような通勤、恋人との不透明な未来、仲は良いけれど息が詰まるような家族との日々ーー。

ここでは幸せになれないと思ったケナは、ニュージーランドへの移住を決意します。

映画『ケナは韓国が嫌いで』の感想と評価


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大学を卒業して町の会社に就職したものの、仕事にも周囲の環境にも明るい未来を見出せない主人公・ケナ。自分を愛してくれる恋人にも理解してもらえない‟夢のある生き方”を求めて、外国へ行きます。

故郷を脱出して自力で生きてみようと、28歳のケナを奮いたたせたものは何だったのでしょう。

まず、ケナは社会人となって働き出して、その通勤時間の長さにうんざりします。そして、会社の仕事にも遣り甲斐を見出せず、何のために働いているのかわからなくなっていました。

そこへもってきて、寒い冬到来。寒がりのケナには韓国の冬は嫌な季節でした。恋人とのすれ違いもあり、ケナはついに暖かな南の島・ニュージーランドへ行くことにしたのです。

自分の生まれ育った国なのに、どうしてもそこで暮らしたくないと、ケナは思います。

自分の殻を破るように新たな一歩を踏み出す勇気を持ったケナ。何がしたいかというはっきりした目標がないにしろ、その行動力に驚かされます。

観る人は、明るい未来が待っているのかどうかもわからないのに、行動をおこしたケナの勇気に拍手を贈りたくなることでしょう。

本作の見どころのひとつに、韓国とニュージーランドではケナの表情や外見も全く正反対になっているということがあります。

ケナを演じるコ・アソンも、ケナがいる国に応じて彼女の異なる一面を表現しています。冬と夏の季節そのもののようなケナの表情に注目です。


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まとめ


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生まれ育った場所で生きづらさを感じる女性が人生を模索する姿を描いた『ケナは韓国が嫌いで』をご紹介しました。

両親や家族をおいて、自分の理想とする生き方を求めるために外国へ飛び出したケナ。

果たして自分ならケナのようなことが出来るのかと、大きな疑問が残ります。ですが、どこまでも自分の気持ちに素直になって突き進むケナを応援したくなることでしょう。

映画『ケナは韓国が嫌いで』は、2025年3⽉7⽇(⾦)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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