連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第227回
南米最大のファンタ映画祭である2021ファンタスポア国際映画祭で最優秀美術賞を受賞した『キラー・ザ・ハイヒール』。
本作の特徴は、他に類を見ないクレイジーな世界観です。残酷でグロテクスなはずの惨殺死体でさえ、カラフルな個体として映し出されています。これらは観客を熱狂させ、世界中の映画祭で注目を浴びています。
人気インフルエンサーのジェニファーは、ファッション界の大物ミスター・ウォーレンドルフのひとり娘。金儲けに目がくらんだ両親に嫌気がさしています。
ひょんなことから、父が作り出した「赤いハイヒール」に隠された秘密と母親が探している大量の金塊の行方を知ったジェニファーは、ある決意をします。
脚本・監督・製作は『人間人形 デッドドヲル』(2004)のアダム・シャーマンが務め、エッジの効いたストーリーと、ポップでユニークな世界観が観客をダークなファンタジーの世界へ誘います。
映画『キラー・ザ・ハイヒール』は、2024年11月1日(金)よりシネマート新宿ほか、全国順次公開!
映画『キラー・ザ・ハイヒール』の作品情報
【日本公開】
2024年(カナダ映画)
【原題】
This Game’s Called Murder
【製作・脚本・監督】
アダム・シャーマン
【出演】
ヴァネッサ・マラーノ、ジェームズ・ラストヴィッチ、ナターシャ・ヘンストリッジ、ロン・パールマン
【作品概要】
『キラー・ザ・ハイヒール』は、情報に支配された世界や人間の果てなき欲望を、ダークなユーモアを交えて描いた新ジャンルのカナダ製スリラー。
脚本・監督・製作は『人間人形 デッドドヲル』(2004)のアダム・シャーマン。主演は、俳優の顔を持つ一方、監督やプロデューサーとマルチに活躍するヴァネッサ・マラーノ。その父親役を、『ヘルボーイ』(2004)で知られ、テレビ版『美女と野獣』ではゴールデングローブ賞テレビ部門主演男優賞を受賞した、名俳優ロン・パールマンが務めました。
2021ファンタスポア国際映画祭で最優秀美術賞を受賞し、2021バーバンク国際映画祭では最優秀ホラー/スリラー長編映画賞に輝きました。
映画『キラー・ザ・ハイヒール』のあらすじ
人気インフルエンサーのジェニファーは、ファッション界の大物ミスター・ウォーレンドルフのひとり娘。
大金持ちの家に生まれ、何の不自由もない暮らしをしていますが、両親をはじめとした金や権力にしか興味のない大人たちに嫌気がさし、恋人のケインとともに、荒れた日々を送っていました。
また、自分が世に売り出したおしゃれな赤いハイヒールに陶酔する父親の姿を見て、嫌悪感すら覚えます。
そんなある日、母親が大量の金塊を探していることを知ります。
実はそれは、ジェニファーの友だちであるシンシアが、仲間とともに襲ったトラックの荷物・ラーメンの箱の中にありました。
ジェニファーは金塊を手に入れるため動き出します。
そして、世界中で愛されている父親が作った赤いハイヒールに、恐るべき秘密があることを知り、彼女はある選択をします。
映画『キラー・ザ・ハイヒール』の感想と評価
大富豪の父親が売り出しているおしゃれな赤いハイヒールに、世界中を牛耳る恐るべき情報が・・・。
金と欲に目がくらんだ両親を持つ娘ジェニファーは、両親の秘密を知ると、狂った世界の中で自分も狂い始めます。
射殺がゲームのように行われ、それに関して何の躊躇も嫌悪感も持たない人々がクローズアップされ、クレイジーなパーティーの様子も観る人の注意を惹きます。
おかしな思想の大富豪を演じるのは、2004年の『ヘルボーイ』で知られ、テレビ版「美女と野獣」ではゴールデングローブ賞テレビ部門主演男優賞を受賞した、名俳優ロン・パールマン。
狂った自分の思想を顧みず、それに酔いしれる不気味な男を、ユーモアたっぷりに表現しています。
また主役である、人気インフルエンサーのジェニファーは、テレビ批評家賞受賞の番組「スイッチ~運命のいたずら~」で一躍有名となったヴァネッサ・マラーノが演じています。
彼女の持つクールで毅然とした存在感が、血が飛び散る残忍な殺害シーンや暗くなりがちな映画の印象を、ポップでカラフル、そしてユニークなものにしていると言えます。
清楚なイメージを一新させたヴァネッサ・マラーノにも注目です。
まとめ
アダム・シャーマン監督が撮りまとめた、ヴァネッサ・マラーノ主演の『キラー・ザ・ハイヒール』をご紹介しました。
「狂った世界で一番狂え!」のキャッチコピーがついた本作が描くのは、文字通りに金、性欲、権力に固執する狂った家族の姿です。
狂った両親を持つ娘は、どんな決意をするのでしょうか。衝撃の結末にご期待ください。
映画『キラー・ザ・ハイヒール』は、2024年11月1日(金)よりシネマート新宿ほか、全国順次公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。