連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第196回
少女の無邪気な悪意が、幸せな家族の「毒」を暴き出す! 『ミスミソウ』(2018)『許された子どもたち』(2020)の内藤瑛亮監督が手がけたパラサイト・ホラー『毒娘』。
映画『毒娘』は、2024年4月5日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開。
主演は『ヒメアノ~ル』(2016)の佐津川愛美。
毒娘とはどんな少女なのでしょうか。『惡の華』(2019)の漫画家・押見修造が生み出したキャラクターデザインを活かした映画『毒娘』をご紹介します。
映画『毒娘』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本映画)
【監督】
内藤瑛亮
【脚本】
内藤瑛亮、松久育紀
【キャラクタ―デザイン】
押見修造
【キャスト】
佐津川愛美、植原星空、伊礼姫奈、馬渕英里何、凛美、内田慈、クノ真季子、竹財輝之助
【作品概要】
『毒娘』は、2011年にインターネットの匿名掲示板で話題となった、ある新婚家族を襲った実際の出来事をモチーフとしたオリジナル脚本のホーム・パラサイト・ホラー。『ミスミソウ』(2018)『許された子どもたち』(2020)の内藤瑛亮監督が手がけました。
主演を務めるのは『ヒメアノ~ル』(2016)の佐津川愛美。植原星空、伊礼姫奈、馬渕英里何、凛美、内田慈、クノ真季子、竹財輝之助らが共演しています。キャラクターデザインは、『惡の華』(2019)『血の轍』で知られる漫画家・押見修造が担当しました。
映画『毒娘』のあらすじ
夫と娘の萌花と3人で中古の一軒家に越してきた萩乃(佐津川愛美)。家庭に恵まれなかった彼女にとって、夢に見た幸せな家庭です。
しかし、ある日外出中の萩乃に、「ショートケーキ3つとコーラ、買ってきて」と、娘の萌花から電話がかかってきました。まるで助けを求めているような悲痛な声です。
慌てて帰宅した萩乃が目にしたのは、荒れ果てた我が家と洋服をずたずたに切り裂かれた萌花、そして萌花に馬乗りになって大きな鋏を握りしめた見知らぬ少女の姿でした。
その少女の名前は<ちーちゃん>と言い、近所でも有名でした。
かつてこの家に暮らしていた<ちーちゃん>は、ある事件を起こして町を去ったはずでした。しかし、実際は町を去らず、この家によく出没しているというのです。
彼女の存在は、一見幸せに見えた萩乃たち家族が押し隠そうとしていた「毒」を暴き出し、悪夢のような日々の幕開けを告げます……。
映画『毒娘』の感想と評価
優しい夫と娘と一緒に、主人公の萩乃が夢見た幸せな生活をおくるはずの一軒家。引っ越してすぐにこの一家は、見知らぬ少女に襲われ、夫婦の間に小さなしこりを残します。
<ちーちゃん>というその少女は、真っ赤な衣装を着て真っ赤な鋏を持ち、家の住人を傷付けようとしました。
この少女は一体何者で、この家で何をしようとしているのと、観る者は興味をそそられます。
ですが、その反面、彼女が犯す残虐な振る舞いに目をそむけたくなります。狂気を纏っている反面どこか寂し気な<ちーちゃん>が、とても印象深い作品となっています。
また、そんな<ちーちゃん>から娘を守ろうとする萩乃を、時には優しく時には凛々しく演じる佐津川愛美に注目です。
キャッチコピーの「この家で幸せになることは<ちーちゃん>が許さない」は、本作品の核心をついている名言でした。
なお、本作のキャラクタービジュアルを担当した漫画家の押見修造が書き下ろしたイラストビジュアルも登場しています。
鋏を振りかざす真っ赤な衣装の少女……。イラストのインパクトも、映像で観る以上かもしれません。
<ちーちゃん>はショートケーキとコーラが大好きな少女です。そんな少女が持ち込む「悪意」が、おちゃめな「X」のハンドサインとともに、家族の歪みと絆の綻びを広げていきます。
もしかすると、<ちーちゃん>は近くにもいるのかも知れません。そんな身近な恐怖体験を劇場で味ってみてください。
まとめ
ある新婚家族を襲った実際の出来事をモチーフとしたオリジナル脚本で、『ミスミソウ』(2018)『許された子どもたち』(2020)の内藤瑛亮監督が手がけたホーム・パラサイト・ホラー『毒娘』。
家にこだわる不気味な少女<ちーちゃん>が、その家に引っ越してきた家族をターゲットに残虐な行為を繰り返します。
十代の女の子と新しく家族となる継母の関係を軸に、謎の少女「ちーちゃん」と家族の壮絶の争いを描いた漫画、押見修造の『ちーちゃん』も、2024年2月では『ヤングマガジン』(講談社)で連載されています。
ダークヒロインと呼べる<ちーちゃん>は、漫画でも話題をさらっていますが、果たしてリアルな劇場版ではどうなるのでしょうか。
映画『毒娘』は、2024年4月5日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。