連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第181回
映画『義父養父』は、第80回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した濱口竜介監督作『悪は存在しない』(2023)で主演を務めた大美賀均の初めての監督作品です。
映画『義父養父』は、シモキタ – エキマエ – シネマ K2 にて2023年 12月15日(金)より全国順次公開が決定。
元々は、制作部や演出部などスタッフとして映画に関わっていた大美賀均が、今回は監督として映画作りをした作品が完成しました。物語は、大美賀監督の知人の実際にあった出来事がモチーフとなっています。
存在感ある俳優陣と一緒に作り上げた作品の独特の世界観が楽しめます。
映画『義父養父』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【監督・脚本】
大美賀均
【プロデューサー】
笠原由貴子、中村優里
【編集】
中村幸貴
【キャスト】
澁谷麻美、松田弘子、有薗芳記、菅原大吉、黒沢あすか、カトウシンスケ、川添野愛、マリークレア、フランク景虎、久藤今日子
【作品概要】
本作『義父養父』は、濱口竜介監督作『悪は存在しない』(2023)で主演を務めた大美賀均が、監督として初めて作った作品で、大美賀均の知人の実話をモチーフにしています。
出演に澁谷麻美、松田弘子、有薗芳記、菅原大吉、黒沢あすかと実力派がそろいました。
映画『義父養父』のあらすじ
服飾デザイナー・リカ(34)の母は少し前、5度目の再婚をしました。
「男に経済力は求めていない」が口癖だった母の再婚相手のミノルは双子でした。
ある日、リカはミノルの双子の兄・ユタカ(65)を紹介されます。ユタカは、精神疾患のある妻を持ち、自身も末期癌でした。
リカは母から、ユタカの養子にならないかと相談され、リカは養子に行く決断をしました。
リカが初めて、ユタカの家へ訪れたとき、ユタカの妻・フミコとも対面をすませました。
頑なな挨拶をかわす2人。最初は緊張しましたが、養子として一緒に過ごすうちに、リカは2人に家族としての感情を抱き始めます。
その矢先、ユタカが逝ってしまい……。
映画『義父養父』の感想と評価
『義父養父』は、俳優の大美賀均が初めて監督を務めた作品で、大美賀監督の知人の実話をモチーフに誕生しました。
主人公・リカの母がミノルという男性と5度目の再婚をします。ある日リカは母から、ミノルの双子の兄・ユタカの養子にならないかと相談されました。
ユタカは末期癌であり、精神疾患のある妻・フミコと2人暮らしでした。ユタカの養子になるということは、将来的に病気のユタカとフミコの面倒を見ることでもあります。
よく考えて返事をしたい問題ですが、リカはあっさりと養子になることを承諾します。
義父とは、義理の父親のこと。結婚した配偶者の父親や、継父や養父などがそうです。また養父とは、養子縁組によって父親となった、血の繋がりの無い義理の父のことを言います。
リカにとって、ミノルは実母の再婚によって義父となり、ユタカは養子縁組によって養父となったのです。
実際にユタカたちと一緒に暮らすようになり、徐々に新しい生活になじむリカですが、その胸中は如何なるものだったのでしょう。
坦々とした日々を映し出す映像の中で、言葉少ない登場人物たちの気持ちの変化が、表情や景色の中に読み取れます。
現実にあった話ですから、自分の身にも起こり得るリアルさを感じることでしょう。
まとめ
本作は、『ドライブ・マイ・カー』(2022)でアカデミー国際長編映画賞、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した濱口竜介監督の長編『悪は存在しない』(2023)で主演を務めた大美賀均が監督としてとりまとめました。
5度目の母の再婚相手の兄の養子となった主人公。複雑な人間関係ですが、この話が実話だというから驚きます。
養父となったユタカとその妻の元で、リカはどんな生活を送るのでしょうか。
静かな時の流れの中で徐々に変化する人の気持ちを感じ取れる作品で、どこか懐かしい風景とともにお楽しみください。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。