連載コラム「銀幕の月光遊戯」第50回
映画『生理ちゃん』が2019年11月08日より、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショーされます。
多くの女性たちの共感を呼び、第23回手塚治虫文化賞<短編賞>を受賞した漫画家・イラストレーターの小山健のコミック『生理ちゃん』を実写映画化!
ヒロインの青子を二階堂ふみが演じるほか、伊藤沙莉、松風理咲、豊嶋花、須藤蓮、狩野見恭兵、岡田義徳など多彩な顔ぶれがそろいました。
CONTENTS
映画『生理ちゃん』の作品情報
【公開】
2019年公開(日本映画)
【原作】
小山健『生理ちゃん」(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
【監督】
品田俊介
【脚本】
赤松新
【音楽】
河内結衣
【主題歌】
the peggies「する」(Epic Records Japan)
【キャスト】
二階堂ふみ、伊藤沙莉、松風理咲、豊嶋花、須藤蓮、狩野見恭兵、岡田義徳、藤原光博
【作品概要】
手塚治虫文化賞を受賞した小山健の人気コミックを実写映画化。女性が抱える悩みの一つ「生理」を“生理ちゃん”と擬人化して描きながら、女性たちの日々の生活や悩みをみつめたドラマ。監督を務めたのは、本作が初の監督作品となる品田俊介。
映画『生理ちゃん』のあらすじ
米田青子はあまね出版で働く編集者。仕事はハードながらもやりがいがあり、プライベートでは久保雄勇輔という恋人もいて充実した毎日を送っていました。
でも忙しい時に限って生理がやってきます。仕事中、痛みを我慢していたら、上司から「眠そうだな」と雷がおちてきました。
久保勇輔は2年前に妻を亡くしており、1人娘のかりんと暮らしています。11歳のかりんは、亡くなったお母さんのことをとても大切に思っていて、青子の顔をみると態度を硬化させます。
久保は青子と結婚したがっているのですが、かりんの気持ちや仕事のことを考えたらなかなかプロポーズを受けることができません
青子もまた、早くに母を亡くしていました。父が再婚もせず、青子と妹のひかるを育ててくれたのでした。
あまね出版で清掃員として働く山本りほは、人付き合いが苦手で、バイトで外に出る以外は自室に引きこもり、両親ともあまり言葉を交わさず、レトロゲームにのめり込む生活を送っていました。
夢をあきらめ、誰とも付き合おうとしない彼女のもとにも生理がやってきます。生理ちゃんは、りほの唯一の友だちでした。
りほは感情を大きく揺さぶられるときは、SNSに思いをぶつけ毒を吐き続けていました。それが面白いと巷で評判になっていましたが、彼女はそんなことにはあまり興味がないようでした。
青子もまた、りほのSNSのファンでした。上司からを連絡先を調べて雑誌の連載を依頼するようにと命ぜられますが、なかなか正体を知ることができません。
そんな折、久保があわてた様子で青子に電話をかけてきました・・・。
映画『生理ちゃん』の感想と評価
小山健のコミック『生理ちゃん』を映画化
本作は、漫画家・イラストレーターの小山健が、2017年にWEBメディア「オモコロ」で連載を開始した『生理ちゃん』を原作にしています。
2018年にKADOKAWAより単行本化され、翌年、第23回手塚治虫文化賞<短編賞>を受賞した作品です。
「生理」というと、どこか公に語ってはいけないような、女性同士でもあまり話題にしないタブーの部分があることは否めません。その「生理」を題材にしたコミックの書き手が男性だということにまず驚かされます。
戸惑いつつも作品に目を通してみると、“生理あるある”な物語がコミカルに、温かみを持って描かれています。多くの女性が共感し、大ヒットとなったのも納得です。
映画の監督も男性です。品田俊介監督は本作で長編劇映画監督デビューを果たしました。原作のコミカルで温かな雰囲気をそのままに人間味溢れる作品に仕上げています。
主役の青子を演じる二階堂ふみが作品について「男性対女性の話ではない」と語ったように、年齢や性別を越えて、見て、楽しんで、考える映画になっています。
生理を巧みに擬人化
どうしようもなく忙しい時でも、大事な予定がある時でも、生理は待ってくれません。“生理ちゃん”という擬人化されたキャラクターが目の前に現れ、女性キャラターが眉をひそめるというシーンが繰り返されます。
ちょっと、今月は早いじゃない、あぁ~もう一ヶ月たったのか、など、反応はさまざまですが、女性にとっては見に覚えのある心の声でしょう。
生理の重さ、つらさが、“生理ちゃん”の大きさで表されていて、人によって、生理のつらさに違いがあること、同じ人でも日によってつらさが違うということなどが、ひと目でわかるようになっています。
めんどうだし、厄介なものに感じてしまうけれど、それでも自分の体にはとても大切なもの。”生理ちゃん”と女性キャラクターがそれぞれの形で寄り添っている様子が、絶妙な親近感を抱かせます。
男性の“性欲くん”、“童貞くん”といった擬人化キャラクターも登場し、広義の意味での人間の“生理”を、切実に、かつ、おおらかに描いています。
タブーからの解放
生理で調子の悪い日があっても男性の上司にはなかなか理解してもらえないもの。では女性同士なら通じ会えるかというとそうでない場合もあります。
生理を理由にしたくないの、と言葉をかけてくる女性社員。考え方は人それぞれですが、このシーンは、女性が女性にプレッシャーをかけている一つの例といってよいかもしれません。
「大変なのを生理を理由にできないから大変なんです」という台詞はとても説得力のある言葉です。コミカルでおおらかな語り口だからこそ、こうした問題提起は、男性、女性問わず、多くの人に響くのではないでしょうか。
デリケートで扱いにくいものだとか、恥ずかしくて隠さないといけないものとして捉えられがちな負のイメージから解放してくれるのが”生理ちゃん”なのです。
そんな”生理ちゃん”と付き合いながら、恋に、仕事に、人生に悩み迷う女性たちの姿を映画は慈しむように描いています。
まとめ
青子役の二階堂ふみの落ち着いた演技がとても素晴らしく、彼女の存在が映画全体に一種の品をもたらしています。その一方、伊藤沙莉にはコミカルな演技をさせて、大いに笑わせてくれます。
青仔の妹役の松風理咲や、青子の恋人の一人娘役の豊嶋花ら、今後日本映画界を背負って立つであろう若手も存在感たっぷりです。岡田義徳を始め、男性陣もいい味を出していて、女性だけでなく、男性の大変さもきっちり伝わってきます。。
75分という上映時間も長時間映画が増えている中、逆に魅力で、デートにも最適ではないでしょうか。
次回の銀幕の月光遊戯は…
2019年11月23日公開の日本映画『海抜』を取り上げる予定です。
お楽しみに。