Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/05/29
Update

映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』あらすじ感想と評価解説。荻颯太郎監督が描く様々なジャンルの要素を詰め込んだエンターテインメント|インディーズ映画発見伝9

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第9回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」

コラム第9回目では、荻颯太郎監督の映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』をご紹介いたします。

立命館大学映像学部に入学後映画を撮り始めた荻颯太郎監督。卒業成果作品『地球がこなごなになっても』(2017)で注目された荻颯太郎監督が在学時に制作した映画の一つが『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』です。

本作は43分という短編でありながら、青春、恋愛、シリアス、サスペンス、ヒューマンドラマ…と様々な要素を詰め込んだエンターテインメント作となっています。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』の作品情報


(c)荻颯太郎

【公開】
2014年(日本映画)

【監督、脚本、編集】
荻颯太郎

【キャスト】
合田達矢、田端奏衛、田之畑凌士、古池峻輔、佐藤柚里、杉本幸介、小森ちひろ、福井夏子、武田彩佳

【作品概要】
立命館大学映像学部に入学後、映画を作り始めた荻颯太郎監督。2016年に初監督作『2006のぷるーと』を制作。その後、『キエル』(2014)、『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』『風が吹けばキスをする』『うち湯』(共に2015)を制作します。

卒業成果作品として『地球がこなごなになっても』(2016年制作)を制作後、MV『WEEKEND』や『地球がこなごなになっても』のスピンオフ的短編『feral』を制作しています。ミュージックビデオ、企業コマーシャルなど様々な映像作品で意欲的に制作活動をしています。

映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』のあらすじ


(c)荻颯太郎

友人も彼女もいる、何不自由ない生活を送っていた普通の男子高校生の主人公。ある日、幼馴染の佐々本琴音がしばらく学校を休むことを担任から告げられます。

「琴音ちゃんはどこにいるんだよ」

何かがおかしいと思った主人公は琴音を探し始めます。必死になる主人公に友人らは探すのをやめた方がいいと言いますが主人公は聞き入れません。

次第に異変にたどり着いていく主人公でしたが、琴音を探し出すことはできるのか…

映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』感想と評価


(c)荻颯太郎

友達も彼女もいて、何不自由ない普通の高校生活を送っていた主人公の日常に大きな変異がやってきます。それが幼馴染の佐々本琴音がしばらく学校を休むということでした。

クラスメートの中で囁かれる噂に主人公は怒り、躍起になって琴音を探そうとします。隣にいる彼女のことにも気にかけないまでに琴音を探すことで頭がいっぱいになっている主人公を友人らは心配しますが、主人公には届かず。

琴音を探すうちに浮き彫りになった担任の裏の顔。いなくなった幼馴染を探す青春映画から次第にサスペンスへと雰囲気が様変わりしていきます。

主人公に対し、教師は中身のない正義感、肝心な時には決断できないと罵られます。それは何不自由ない普通な高校生活を送っていた主人公の有様そのものなのかもしれません。

幼馴染がいなくなるという非日常な出来事に必死になるのは、普通の日常に対する反動なのかもしれません。

様々な要素を詰め込んだエンターテインメント作でありながら、社会の情勢に対する視点も感じさせる一作になっています。

本作と比べ、『風が吹けばキスをする』(2015)は“風が吹けば桶屋が儲かる”を現代風にアレンジし、ファンタジックな要素を入れつつもコミカルで楽しい映画になっています。


荻颯太郎監督(c)Cinema Discoveries

『うち湯』も摩訶不思議で愛おしい人々が集まる銭湯を描き、ファンタジックでほのぼのとする優しい映画になっています。このようなコメディ要素の強い作品の中にもSFであったり様々な要素を混ぜ合わせ荻颯太郎監督独特の世界観を作り上げています。

まとめ


荻颯太郎監督(c)Cinema Discoveries

幼馴染の佐々本琴音がしばらく学校を休むということを知り何不自由ない普通の高校生活を送っていた主人公の日常が大きく変わっていく映画『琴音ちゃんのリコーダーが吹きたくて』。

幼馴染を探すことに必死になる主人公とその彼女や友人との関係性の変化を描く青春要素、そして探していくうちにサスペンス色の強い展開になっていく様々な要素が入り混じったエンターテイメント作になっています。

様々な要素が入り混ざり作り上げられた荻颯太郎監督独特の世界観。他の短編と合わせて堪能してみるのも良いかもしれません。

荻颯太郎Twitter

次回のインディーズ映画発見伝は…


(C)2017 morning film

次回の「インディーズ映画発見伝」第10回は、様々な登場人物が織りなす恋愛模様を描いた木村聡志監督の『恋愛依存症の女』。

次回もお楽しみに!

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら



関連記事

連載コラム

NETFLIX映画『カーゴ』ネタバレ感想と解説評価。短編から長編化したゾンビ作品|SF恐怖映画という名の観覧車96

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile096 誰でも自身の作成したショートムービーを投稿し応募できる、オーストラリアで毎年開催されるショートムービー・フェスティバル「TROPFEST …

連載コラム

『Cosmetic DNA』USJの美少女戦士セーラームーン・ザ・ミラクル4-D【自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦5】

連載コラム『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』 第5回「USJの『美少女戦士セーラームーン・ザ・ミラクル4-D』」 2021年7月10日、お疲れ様です。今秋劇場公開予定の映画『Cosmeti …

連載コラム

『夜明けの詩』あらすじ感想と評価解説。《韓国版ジョゼと虎と魚たち》キム・ジョングァン監督が描く“葛藤からの脱却”|広島国際映画祭2023リポート4

広島国際映画祭2023・特別招待作品『夜明けの詩』 2009年に開催された「ダマー映画祭inヒロシマ」を前前身として誕生した「広島国際映画祭」は、世界的にも注目されている日本の都市・広島で「ポジティブ …

連載コラム

『恋を知らない僕たちは』あらすじ感想と評価解説。実写キャストの⼤⻄流星と窪塚愛流が主題歌にのせて”恋と友情を等身大に”演じる|映画という星空を知るひとよ216

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第216回 ⽔野美波の漫画『恋を知らない僕たちは』が、映画化に。なにわ男子の⼤⻄流星が主役の英二役に抜擢され、映画初主演を飾っています。 青春真っ只中の6人の高 …

連載コラム

映画『バトルドローン』ネタバレ感想。マイケル・パレのかっこいい勇姿はB級SFファンの大好物だ⁉︎|未体験ゾーンの映画たち2019見破録40

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第40回 ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は、これぞ未体験ゾーンを代表する映画を紹介し …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学